| 夢。
そういえば私の卒論は。
夢分析に関する物だった。
見る夢。
望む夢。
叶える夢。
彼女には夢があった。
彩子の持っている語学力。
それは日本の一企業では持て余す程で。
正直私も。
正確に彼女が何ヶ国語話せるかは知らない。
彼女の実家は大きな農園を持っていて。
日本の田園や畑は比にならない。
私も実際にこの目で見て来た。
彼女はその、
眼下一杯に広がるコーヒー園を見て。
目を細めてたね。
彼女の語学力。 経済知識。 そして商品。
ビジネスとして成功する条件は、揃ってた。
いつか、と。
私も思った事があるよ。
けれど伝える事はしなかったね。
それは後悔してるよ。
でも。
彩子の口から。
その夢の話を聞いたのは。
一回きりだった。
だから。
リアルには感じていなかったんだよ。
本当は確実に。
その夢に向かってたんだよね。
“アンディーと走ろう”
の最後は。
成田で見送る私そのままに。
帰りの車は。
霞んで前が良く見えなかったのを、覚えてるよ。
馬鹿だよね。
私の小さな頃の夢は。
“イルカの調教師”
だったっけかな。
すっかり忘れてたよ。
(携帯)
|