| 夜の海―
私は名前も知らないその場所で
あなたを待つ。
固い殻は
私に残されたせめてもの防具。
その中をあなたに触れられたら
………。
私の内側は簡単に溶け出してしまう。
それはまだ
恐いんだよ…?
あなたはいつも水の中を上手に泳ぎ
あなたはいつも腹立たしいほどにしなやかで。
………。
本とはちょっと嫌いや。
いとも簡単に
堕ちてしまいそうな自分が。
あなたを待つテトラポット―
私の傍らにはいつも…
きんかんのど飴(笑)
喫煙ヤドカリ、私。
マルボロライトで声がガラガラしちゃうのは
あなたの前ではシャレになんない。
だからいつも
「10時に…」
時計の針がその時刻を指す10分前から―
………。
………。
口の中と
舌と
喉を潤す
準備運動。
あなたがいつも約束の時間より
少しだけ遅れてくること―
もう知っとる(怒)
私は定位置に座り。
空を見上げ―
その夜の色をまぶたに妬きつけながら
時を待つ。
小さなヤドカリ
固い殻。
関西弁で増長させる防御力―
………。
色々頑張ってみるんやけど…
嬉しさには勝たれへん。
“コンコン”
鳴らされたノック。
「どもども」
優しい声。
月が角度を変えるまで―
夜の空がその色を深め
星が天を渡る夜の時間。
………。
会社員ヤドカリと
会社員サーファー。
ちょっと不健康な
深夜の逢い引き。
一週間に2〜3日は
幸せな寝不足。
水に慣らされ
慣らされた。
私の身体―
いつのまにか
呼吸が楽になってた。
(携帯)
|