| 「最近様子が変だったのって、そういう事?」 私の頭を抱きしめたまま、マイはくすくすと笑った。 時折髪の毛先が彼女の指に遊ばれているのがわかる。 私はそれをされるがままにして。 マイの背中に腕を回した。 彼女もまた、自身の腕に力を加える。 こんな風にしっかりと抱き合ったのはどれくらい振りだろう。 マイの心臓の鼓動が、私に落ち着きを取り戻していた。 しばらくして。 マイはゆっくりと体を離し、腕を私の肩に乗せたまま覗き込むようにして私の目を見た。 「大体ね。アヤみたいなひねくれ者と付き合える人間が、あたしの他にいると思う?」 にっと笑う。 「アヤはまだ二十歳のくせに達観しちゃってるのよ。大人びてるっていうより偏屈なのね。可愛げのない」 「…マイが二十六の割に幼すぎるんだよ」 「そーゆーとこが可愛くないのっ」 彼女は唇を尖らせた。 そして、すぐに口元を緩めると。 「人に対して不器用だから、そんなんじゃ一人になっちゃうでしょ」 私の目元の涙を人差し指で拭って、
「だからあたしが一緒に居てあげる」
─ずっとね。 そう柔らかく微笑んだ彼女に、また目が熱くなって。 そんな私に、彼女は苦笑した。 そして私の額に口付ける。 そのまま頬へとキスをして。 一度顔を離し、互いにじっと見つめ合う。
再び、彼女の顔が寄せられて─
ゆっくりと視界が狭まってゆく中。 私は彼女と築くこの先を、何の恐れも抱かずに思い浮かべる事ができたのだ。
そして私は─
今日もまた、
幸せの数だけ瞼を閉じる。
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