ビアンエッセイ♪

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■12836 / ResNo.20)  雨に似ている21
  
□投稿者/ 秋 一般♪(27回)-(2005/09/12(Mon) 16:13:58)
    亜紀に手を引かれて、歩き慣れた道を辿る。
    けれど自身の殻に籠もっていた私には、とても久しく感じられた。
    泣き疲れた私達は無言のまま亜紀の家へ向かい。
    繋いだ手だけは固く結ばれていた。





    家族よりも、

    友達よりも、

    恋人よりも、

    あなたが好きでした。

    大好きでした。

    大切だと、強く強く思っていました。

    その唇に触れたいだとか、その細い肩を抱きたいだとか、そんな事は一度だって考えた事はなくて。
    それは恋愛感情なんてものではなくて。
    切に私の心を締め付ける。

    ただ側に居られるだけで。

    それだけで良かったんです。

    それだけで。

    隣であなたが笑っていてくれさえすれば、こんな私でも自然に笑えたんだ。








    「……早紀、さん」

    彼女の遺影の目の前で、私は初めて口にした。
    彼女の名を。

    そして次に紡ぐのは、
    別れの言葉と感謝の言葉。



    ようやく私は前を向いた。



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■12837 / ResNo.21)  雨に似ている22
□投稿者/ 秋 一般♪(28回)-(2005/09/12(Mon) 16:14:34)
    今年もまた、雪の季節が訪れる。
    もうすぐ私は21になるよ。
    出会った頃のあなたの歳を追い越した亜紀は、やはりどことなくあなたに似てきて。
    時折見せる笑う仕草に懐かしさを覚えても、けれどそれはもちろん亜紀の笑顔だから。
    やっぱり全然似ていない。
    面影なんて求めはしないよ、私は。
    亜紀は、亜紀として側に居てくれればいい。
    あなたが、あなた以外の誰でもなかったように。
    私が、ただ一人の私という存在だと教えてくれたように。

    再来年大学を卒業したら、日本を出てみようと思っている。
    あなたに影響されたわけじゃないけれど、あの頃のあなたの歳と並んだ私の目で、あの頃のあなたが見ていた景色を見てみたいと、そう思うんだ。
    …やっぱり、あなたの影響かな。





    高校を卒業してから別々の道を進んだ私と亜紀は、昔ほど日々を共に過ごすというわけにはいかなくなっていた。
    けれど雪の舞い始めるこの時期には、申し合わせる事などせずとも決まって顔を合わせていた。

    「もうすぐだね、お姉ちゃんの三回忌」

    白い息を吐き出して亜紀が言う。
    私は何も答えず、彼女の名が刻まれた墓石をじっと見つめていた。
    この地面の下に、彼女は居る。
    命日が近付くと足を向ける、この場所。
    何故かいつも亜紀も居た。
    お互いに驚いて、決まり悪そうにはにかんで、そして手を合わせる。
    数日後にはどうせ、亜紀の家でまた会うのにね。
    そう言って毎年笑った。

    「今ならさ、何でいつもあの人が笑ってたのかわかる気がする」

    ぽつりと漏らすと、しゃがみ込んで手を合わせていた亜紀は「え?」と顔を上げた。
    「どうしたの、急に」
    立ち上がりながら、私の方を向く。

    「冷めた顔して生きる事がどれほどつまらないか、わかっちゃったから」

    亜紀は。
    何も言わなかったけれど、白い息を吐きながら微笑んだ。

    そう言えばいつだって、亜紀も私に笑い掛けてくれていた。

    墓前の彼女に、目の前の彼女に。
    いつのまにか俯いていた私は、静かに瞼を閉じてありがとうと呟いた。



    「あ、雨」


    不意に上がった亜紀の声に目を開ける。
    顔を上げると、ぱらぱらと小雨が降り始めていた。
    「雪に、なるかな…」
    呟くように言った亜紀に、
    「なるよ、きっと」
    空を見上げたまま答えた。



    しとしとと、雨は私達の頬を濡らす。
    きっとまだまだ大人にはなりきれないんだ。
    小さく口にした。
    上手な涙の流し方なんて、急いで覚えなくてもいいから。
    今はまだ、心に任せたままで。







    あんたはもういないけれど、私の生きてるこの世界は、そう捨てたものじゃない。




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■12838 / ResNo.22)  雨に似ている23
□投稿者/ 秋 一般♪(29回)-(2005/09/12(Mon) 16:15:12)
    きっといっぱい愛された。

    多分もっと愛してた。

    だからたくさん傷つけて、

    だけどその度許されて、

    言葉少なに手を伸ばす。



    ありがとう。
    ありがとう。

    在りし日のあなたへ。





    これから先も、ずっとずっと。
    歳をひとつ取る度に、私は笑って言うだろう。




完結!
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■12847 / ResNo.23)  Re[1]: 雨に似ている
□投稿者/ そに 一般♪(17回)-(2005/09/12(Mon) 23:19:52)

    誰も感想書いてらっしゃらないけど・・
    面白いです!リアルタイムで読めなかったのが残念。
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■12867 / ResNo.24)  涙が…
□投稿者/ ritsu 一般♪(1回)-(2005/09/13(Tue) 02:09:43)
    久しぶりに小説を読んで泣いた気がします。
    読み進めるにつれて涙の数が増えていきました。
    こんな風に思い切り泣けたのは、悲しい結末の後にしっかりお話が続いていたからですね…
    それは、読んだ後に悲しい気持ちだけじゃなくて、何か温かいものに包まれているような気持ちにもさせてくれて。
    やっぱり秋さんの文章は大好きです。
    秋さんが書かれる登場人物もみんな大好きです。
    それと、律が(名前が重なって何だか嬉しいです… 笑)早紀に抱いていた感情は本当に、書かれているように恋愛感情とは違ったのでしょうか…でもこの気持ちも分かるような…
    な、何だか長々と(しかもまとまっていなくて;)すみません(汗)
    BLUE AGEの方も更新されているので、楽しみに読ませてもらっています。
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■12873 / ResNo.25)  とても・・
□投稿者/ サト 一般♪(1回)-(2005/09/13(Tue) 15:59:33)
    心にジ〜ンときました。純粋に人を愛する気持ちを思い出したように
    思えます。いろんな方の作品を読ませて頂いて,どれも とてもいいお話しで
    みなさん尊敬する人たちばかりです。けど、感想を書かせて頂いたのは
    初めてです。本当に感動しました。これからも頑張って下さい♪
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■12894 / ResNo.26)  感想ですが、ネタばれ注意です。
□投稿者/ haco 一般♪(1回)-(2005/09/13(Tue) 23:03:56)
    初めて感想を書かせて頂きます。

    秋さんの作品は全部読ませて頂いています。日々、更新を楽しみにしている一読者です。

    唐突で恐縮ですが…、登場人物が交通事故で亡くなってしまうのは、実は好みではありません。小説の中のエピソードとしては多用され過ぎているような気がして…。m(_)m

    んが!しかし、この作品ではそれが気になりません。事故その後の主人公の成長が、しっかりと描かれているからなのでしょうか?むしろ、その後の場面に引き込まれます!

    「もう会えないけど!教えてもらった生き方まで忘れんなっ!」

    …ここ、泣きのピークでした。ぶわっと来ましたね!「もぅ秋さん、勘弁して下さい」って感じでした。笑

    ココロヨイ作品をありがとうございました。
    m(_)m

    (携帯)
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■12899 / ResNo.27)  そにさんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(30回)-(2005/09/14(Wed) 00:58:08)
    感想をありがとうございます。
    時季外れの話を、しかも一気にアップしたので、リアルタイムにはなりませんでしたね。私は書き上げたものをまとめていっぺんに出してしまいたいので、どうしてもこうした投稿方法になってしまいます。
    現実の季節よりわずかに先ではありますが、作中の季節を少しでも感じて頂ければ幸いです。


    (携帯)
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■12900 / ResNo.28)  ritsuさんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(31回)-(2005/09/14(Wed) 01:01:51)
    「好き」と、一口に言っても。様々な形があると思うのです。それは、相手との距離であったり、関係であったり、幾通りも存在して。
    早紀が律に与えたものも、律が感じていたものも、「恋」という一括りに囚われない、それこそそこには含むものなど何も存在しない、ただただ純粋なだけのまっさらな感情だったのだと私は考えています。
    とても恋とは呼べないような拙い想いだけれど、それでも大切である事だけははっきりわかる。そんな曖昧で未熟な感情に少しでも共感して頂けたら、と。
    再びの感想、とても嬉しく思いました。ありがとうございます。

    (携帯)
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■12901 / ResNo.29)  サトさんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(32回)-(2005/09/14(Wed) 01:05:12)
    はじめまして。
    サトさんの心に何か残るものがあったなら、それはとても嬉しい事です。
    初めての感想という事で少しばかり照れますが、励みになりました。
    またこちらでお会いできた時には、目を止めて頂けたら幸いです。


    (携帯)
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