| 亜紀に手を引かれて、歩き慣れた道を辿る。 けれど自身の殻に籠もっていた私には、とても久しく感じられた。 泣き疲れた私達は無言のまま亜紀の家へ向かい。 繋いだ手だけは固く結ばれていた。
家族よりも、
友達よりも、
恋人よりも、
あなたが好きでした。
大好きでした。
大切だと、強く強く思っていました。
その唇に触れたいだとか、その細い肩を抱きたいだとか、そんな事は一度だって考えた事はなくて。 それは恋愛感情なんてものではなくて。 切に私の心を締め付ける。
ただ側に居られるだけで。
それだけで良かったんです。
それだけで。
隣であなたが笑っていてくれさえすれば、こんな私でも自然に笑えたんだ。
「……早紀、さん」
彼女の遺影の目の前で、私は初めて口にした。 彼女の名を。
そして次に紡ぐのは、 別れの言葉と感謝の言葉。
ようやく私は前を向いた。
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