ビアンエッセイ♪

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■13229 / ResNo.20)  CLUB ANGEL's L]Y
  
□投稿者/ A ちょと常連(99回)-(2005/10/08(Sat) 01:46:49)
    紗織と一緒に塔から出てきた道程を、うっすらとした記憶を頼りにアリサは進んだ。
    明かりは無く、まだ火は階下まで広がってはいなかったがむせ返るような煙の匂いと蒸し暑さがアリサを襲った。


    [きゃ―――――!!!]
    [助けてくれ!誰か!]

    [火がまわる!ダメだ!逃げられない!]

    上から聞こえてくるたくさんの悲鳴はやがて一つ一つ消えていくようにアリサの耳から遠退いていった。
    口元を押さえて階段を駆け上がる。


    もう一つ上の階にエリナはいる。そう思い、必死に階段を上ろうとした。



    エリナがいるのはもう一つ上の階。
    頭では分かっていても身体が目の前の光景に動きを失っていた。


    紅い火の粉がアリサの視界を覆う。
    真っ赤に染められた廊下には人影が見え隠れを繰り返し、拷問をうけているかのようなひどい叫び声をあげて火だるまになっていた。

    熱気によって流れ出る汗が、床に落ちた。
    その汗をなんとなく目で追うと自分の足首を人が掴んでいた。

    「きゃああぁ!!」
    恐怖で頭がパニックを起こしそうになる。
    足から力が抜けて、アリサは床に崩れ落ちた。


    握られた足首に絡まる手は、離されまいとものすごい力で締め付けた。

    「ぁ……あぅ…お願いだ……俺を…助けて………お願い………だ…」

    身体中に火傷を負った男は、誰が見ても人間には見えなかった。

    外に連れ出しても、ここにいても時期に死ぬことが分かっている。

    アリサは男のただれた身体に恐怖を抱いた。


    「い…いや…離して…」

    震えながらも、アリサは男の手を振り払おうと足をずらす。
    しかし男は余計に力を強めていく。


    足首にあった手は、次第に両足を抱えるように上がり、男の身体はアリサの腰辺りまで這うように乗り掛かった。

    「俺を助けてくれ……死にたくない……助け…てくれよ…」


    「いや…来ないで…来ないで…いや…」

    ただれた顔面がアリサの顔を覗いた。涙が溢れ、アリサは動くことが出来なかった



    「何してんの!バカ女!」
    絡み付く男が廊下に投げ出される。

    軽がるとアリサを抱きあげる紗利はそのまま階段を上がりはじめた。    



    階段の下からは、先程の男であろう断末魔のような叫び声が上がった。

    (携帯)
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■13261 / ResNo.21)  CLUB ANGEL's L]Z
□投稿者/ A 常連♪(100回)-(2005/10/10(Mon) 02:23:21)
    エリナは異常なまでの悲鳴に目が覚めた。
    冷たい床は熱気を帯び、周りには黒い煙が立ちこめている。

    「……っ…ゲホゲホ!」

    エリナは思わず口元を押さえた。視界が悪い部屋を手探りで歩き、格子のはめられた窓を覗く。

    紅い光がいたる所の窓から庭にさしこみ、小さな火の粉が舞っていた。

    エリナの目が見開かれた。
    「火事だ!…うそ…」

    急いで扉に向かい走りだす。ノブを何度も回し、必死に重い扉を叩いた。


    「誰か!助けて!…ゴホ…だれ…か…!」

    ギシギシと嫌な音が部屋に響きだす。足元からこの部屋の床の限界が近いと分かる。

    「……誰かぁ!助けてっ!出して!」

    恐怖から溢れだす涙を流し、エリナはそれでも扉を叩き続けた。       

    一際大きな軋みが鳴る。
    その途端にエリナがいるギリギリの所の床が崩れ落ちた。
    ベッドは階下に音を立てて落とされた。
    真っ赤な炎が床から抜け出し、エリナの目の前に現われた。


    「嫌だ!熱いよ…っ熱い…ゴホ…ゴホ…助け…」


    扉を叩いた腕は力を失い、エリナの身体が力なく崩れ落ちる。
    扉の向こうから聞こえる言葉に返すこともできずに、意識は遠退いていった。

    (携帯)
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■13262 / ResNo.22)  CLUB ANGEL's L][
□投稿者/ A 常連♪(101回)-(2005/10/10(Mon) 03:09:06)
    「エリナ!エリナ!お願い!返事して!」

    煙が立ちこめる廊下。
    名前を呼ぶアリサは、口に煙が入り苦しいはずなのに叫ぶことを止めなかった。
    紗利が服で壁を作ってやり、アリサと自分を守る。

    「ゴホ…アリサ…こんな所で叫んでもダメだ!私が道具を取りに行くから待ってて!」

    そう言うと紗利はアリサに上着を預け、煙の奥のへと走っていった。


    さっきまで聞こえていたエリナの扉を叩く音が無くなり、アリサの頭に嫌な予感がよぎった。

    「エリナ!扉を叩いて!返事をして!」





    紗利は廊下の一番端にある部屋に入った。そこには庭の手入れの為に昔使われていたチェーンソーが置かれていた。
    重いそれを持ち上げて、紗利はよろめきながらも再び走りだす。

    「早く戻らなきゃ…」

    アリサの声が途切れ途切れだが聞こえてくる。
    その声を頼りに霞む視界の中を進んでいった。


    ガシャ

    「はっ…はぁ…これで開けよう……ゲホ…ゲホ…」

    大きな音を立てて、鋭い派が扉の隙間に入れられる。
    ガチガチと金属の削れる音がし、思い機械をアリサも支えた。

    一つ一つ、確かな手応えを感じて鍵が外れていく。
    ギンッと最後であろう鉄の塊が削られた。
    二人に思わず安堵の表情と笑顔が浮かんだ。
    アリサは勢い良く扉を前に押しやった。

    「エリナ!……?」

    ガチャ…ガチャガチャ…

    「どうしたの…アリサ」

    紗利が不安げにアリサを覗き込む。アリサの顔から笑顔が消えた。      
    アリサは紗利の問い掛けに答えずに、扉を手前に引いた。
    先程と同様に、何かが扉をとどめているような手応えが腕を伝う。

    紗利も異変に気が付いて、必死に扉を押した。
    チェーンソーの刃をテコにし、扉の隙間に入れて引いてみてもびくともしなかった。

    「なんでよ!開けて!エリナを返して!」



    アリサの悲痛な声が廊下に響いた。

    (携帯)
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■13287 / ResNo.23)  Aさん
□投稿者/ まみ 一般♪(3回)-(2005/10/11(Tue) 14:20:17)
    一安心と思いきや‥なんでドア開かないの?(>_<)

    ‥淋しかったの?ごめんね(>_<)
    あたしもAさんがお休みしてたとき淋しかったけど、戻ってきてくれたから嬉し〜です☆
    また楽しみにしてますね(*^_^*)

    (携帯)
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■13367 / ResNo.24)  CLUB ANGEL's L]\
□投稿者/ A 常連♪(102回)-(2005/10/16(Sun) 21:31:17)
    扉が開かないという絶望感と、周りに立ちこめた煙の為に、二人は意識がもうろうとしていた。

    「ゲホ…ゲホ…ありさ…残念だけど…私たちまで死んでしまう…」

    ありさの肩を掴み、引っ張ろうとしても、ありさは扉にしがみついて離れようとしない。

    「紗利は逃げな…はぁ……私は…ここにいる。」


    「バカ言わないで…あんたまで死んだら…はぁ…」

    紗利は限界だった。あまりに多くの煙を吸いすぎた。ありさの肩にかけられた手が力を失い、同時に紗利の身体も床に倒れこんだ。

    「紗利!紗利!あんただけでも…ゴホ…っ…」


    ありさも扉にもたれかかった。呼吸をすることもままならない。

    薄れていく意識の中で、ありさの目の前に綺麗な足が現われた。

    その人物はフッと軽く扉に触れた。コンクリートに見えた扉には液晶画面が映し出され、〈指紋認証〉という表示が出された。
    先程の鉄の固まりのような扉はいとも簡単に開け放たれる。


    中に倒れているエリナを抱えて、その人物はありさと紗利に酸素マスクを与えた。
    […誰…綺麗な…人……]

    ありさは紗利を後ろに背負い、その人物に付いて歩きだした。

    大きな絵画だとばかり思っていた所が回転して新たな道になった。


    「あなたは…誰?…」

    何も答えずに進む女。
    よく見ると、その人物の身体には落ちてきた物がぶつかったような傷や、腕には大きな火傷があった。


    「あなた…大丈夫なの?…マスクもしないで…」


    その瞬間、今までにはなかった一際大きな爆発が起こった。調理場のガスに引火し、扉を破り、炎がありさ達に追い付いてきた。

    「……はぁ‥はぁ…やばいじゃん…」

    紗利の重さが、ありさの体力を奪っていく。

    ありさの先を行く女の傷口からは、血が流れているのか、点々と床に赤い染みを作っていった。


    炎はありさのすぐ近くまで来ていた。
    もうろうとした意識のなか、ありさの足がもつれた。その途端、膝の力が抜けてありさは床に倒れこんだ


    「ゴホ…ありさ?!ここは…」

    倒れた衝撃で沙利の意識が戻る。

    勢い良く炎は二人に襲い掛かる。
    ありさの身体は、背負っていた沙利ごと強い力で扉の外へと押し出された。
    同時に炎は渦を巻いて、ありさ達を追うことを辞めた





    「……ゴホ…ゴホ」


    身体をさすり、辺りを見回す。すると突然ありさの目が見開かれた。
    投げ出された所は静かな裏庭。エリナはその草むらに横たわっていた。


    (携帯)
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■13374 / ResNo.25)  CLUB ANGEL's L]]
□投稿者/ A 常連♪(103回)-(2005/10/17(Mon) 00:44:53)
    横たわるエリナを抱き抱え、胸の鼓動を確認する。

    弱々しくもトクンと鳴る度にありさからは笑みがこぼれた。


    「沙利!沙利来て♪エリナ生きてるよ♪」

    手招きをして、笑顔のまま沙利の方を見る。
    沙利の顔は、ありさと対照的に笑顔が無かった。

    ありさは何も言わない沙利の視線の先を見る。
    そこには、まるで塔から出られない事に怒り狂うように炎が渦巻いていた。


    「あ!さっきの人は?!」
    辺りを見ても、周りには静かな木々や夜空しか見当たらない。

    「私たちより先にいたのに……まさか…」

    ありさは炎に包まれる瞬間に身体にあった衝撃を思い出した。
    ありさは扉の前に走りだそうとする。その手を沙利は強く握った。

    「駄目だよ!行かないとあの人が……」

    ありさの手を握り締める沙利の瞳には涙が溢れていた。
    店で話したときの沙利からは想像も出来ない程の弱い一面に、ありさは声が出なかった。

    「……早く、エリナに救急車を呼んであげて…」

    「でも…」

    「いいから早く!」

    助けてくれた人物の安否が気になったが、エリナの事も気に掛かり、沙利に言われるまま、ありさは屋敷に電話を掛けに行った。  




    「最後に母親らしくしないでよ……」


    炎が迫り来る直前、沙利が目にしたのは自分を盾にしてありさ達を扉の外に逃がした恭子の姿だった。

    今までに向けられたことがない優しいほほ笑みを浮かべ、恭子は炎に包まれた。


    「沙利!」

    紗織が救急隊を連れて向かってくる。
    沙利は苦笑いを浮かべ、紗織にもたれかかった。

    「紗織の事、姉さんって呼ぼうかな…」

    沙利が自分に身体を預け、初めて妹らしく見えた瞬間だった。


    紗織は微笑み、沙利の肩を抱いて救急車に乗り込んだ

    (携帯)
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■13376 / ResNo.26)  CLUB ANGEL's L]]T
□投稿者/ A 常連♪(104回)-(2005/10/17(Mon) 01:52:33)

    ―――二週間後―――


    「はい、あ〜んして♪」

    個室の病室で、アリサの甘い声が響く。

    『全然元気なんで。手とか自分で動かせますから』

    アリサの手から、りんごの乗った皿を取ろうとする。しかしバランスを崩してその手はアリサの胸に押しつけられた。

    「きゃあ♪エリナのえっち、あたしの胸高いんだからね♪」

    笑いながらエリナにキスをする。

    『違っ…わざと…違…』

    焦ってアリサの胸から手を離そうとすると、エリナの手がりんごの皿に当たった。

    「エリナ危ないっ!」
    『きゃっ!』

    落ちそうになった皿とフォークをアリサはキャッチした。

    「危なかったぁ。」

    『だね…。じゃあ、どいて下さい』

    ベッドの上でエリナはアリサに押さえ付けられているような状態になっていた。

    「どきたくない♪」

    アリサは皿をベッドの脇にある棚に乗せると、エリナの両腕を掴んだ。

    『いや、病院だから。アリサさん』        
    ほんの数センチ程の距離にあるアリサの顔を直視出来ずに、エリナは顔を左右にずらす。

    「やだぁ。こんなに近くにエリナがいるんだもん。我慢できない…」

    ふっと見せたアリサの妖艶な表情からエリナは目が離せなかった。      

    柔らかなアリサの唇がエリナの唇に重なる。
    何度も確かめるように、触れるようなキスは繰り返された。


    『…ん…アリサ…さん…』
    いつの間にか、エリナを押さえ付けていた力は無くなり、アリサの手はエリナの顔を優しく包んでいた。



    長いキスを終え、互いの唇は離された。
    それでもアリサの瞳はエリナを見つめたまま。
    エリナもまた、アリサの瞳をじっと見ていた。



    「あのね…」

    小さな声でアリサが話しだす。
    見つめていた瞳は徐々に床に下がっていった。

    『どうしたんですか?』

    覗き込むようにアリサの顔を見る。

    子供のようにアリサは下を向いて、何かを考えている表情を浮かべた。


    「あのね…、あの…」

    寝そべっていた身体を起こし、エリナはアリサの顔を見つめる。

    『うん。何?』

    アリサの顔は上がったり下がったりを繰り替えし、それを見ているエリナからは笑みがこぼれだす。


    (はは♪アリサさんのこんな顔初めてかな…。くるくるしてて…可愛い♪)


    何分か後に、アリサは決心したようにしっかりとエリナの瞳を見つめた。

    (あ、何か言う…分かりやすい…)

    『どうしたの?♪』

    にこにこと可愛らしい笑顔で、エリナはアリサの正面に身体を向けた。


    「っ…あのね、今更って思うかもしれないけど…。」
    また顔を逸らそうとしたが、アリサはエリナに視線を戻した。

    (上目遣いしてるつもりじゃないんだろうけど……この位置がまずかったなぁ。…なんかエロいし…。弱気なアリサさん可愛すぎて…やばい…)

    照れ臭くなり、アリサから視線を外そうとする。

    〔エリナ呆れちゃったかな…私…待たせすぎだよね?も〜!こっち向いてよ…〕

    エリナの顔を自分に向けようとした瞬間、アリサの唇が塞がった。


    『アリサさん可愛すぎ…』
    「エリナの方が可愛いんだよ…」

    誉められて照れ臭くなり、エリナはアリサの頬に顔を擦り付ける。

    「エリナ…顔見えない」

    『恥ずかしいです…』

    アリサはエリナの頭を優しく撫でた。

    「顔見て言いたい。さっき言いそびれたから」


    アリサの真剣な声に、いやいやと顔を振っていたエリナがアリサに瞳を向けた



    「やっと言える。今更だけど、もう一度…もう一回私と付き合ってください」




    『…っ……はぃ…』

    エリナの瞳は暖かい涙でいっぱいになった。
    アリサの心にも。暖かい気持ちが溢れていた。

    (携帯)
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■13381 / ResNo.27)  Aさ〜ん♪
□投稿者/ まみ 一般♪(4回)-(2005/10/17(Mon) 13:04:20)
    すっごい展開でどうなっちゃうのかと思ってたけど(>_<) アリサとエリナに笑顔が戻ってほんとによかったです(*^_^*)

    (携帯)
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■13385 / ResNo.28)  まみさんへ♪
□投稿者/ A 常連♪(105回)-(2005/10/17(Mon) 19:02:45)
    返事遅くなった(>△<)ごめんなしゃい♪やぁ〜っと二人が結ばれましたね★でも後少しだけ真相が残ってるんで、もうちょっと待っててくださいね(´∀`)

    (携帯)
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■13386 / ResNo.29)  CLUB ANGEL's L]]U
□投稿者/ A 常連♪(106回)-(2005/10/17(Mon) 20:03:13)
    暖かい秋の日差しが病室を包む。
    二人がいた個室には、ひっそりとだが、幸せをいっぱいに表現した小さな相合傘が刻まれていた。






    『おはよおございます♪』
    再びCLUB ANGEL'sにエリナの可愛らしい笑顔が咲いた
    ホステス達は暖かくエリナ達を迎え、明るい声が部屋に満ちた。



    開店前の控え室に高い、上品な声が響いた。
    その声の主は、エリナ達の復帰を聞いて慌ててやってきたママの奈保だ。

    「あぁ〜、ほんまアリサ達が戻ってくれて良かったわぁ。この子達だけじゃ店の経営が不安で寝られへんかったんよぉ」

    奈保がソファに座るエリナの肩を抱き、満面の笑みを浮かべて頭を撫でた。

    『久しぶりです、いろいろと迷惑かけて…』

    照れ臭そうにエリナは頭を下げる。

    奈保は嬉しそうに笑い、エリナの隣にいるアリサの頭も撫でた。

    「やめてよママ♪この子達だけでも十分やってけるって♪」

    アリサがホステス達に極上の笑顔を向ける。
    その笑顔にそこにいる全員が見惚れた。

    [この人にはかなわない]
    ホステス達は再びアリサに憧れの念を抱いた。
    そしてアリサは誰もが認めるbPの座に文句無しにおさまった。




    店が開店し、徐々に店には活気が満ちはじめる。

    「アリサさんエリナさんご指名です」


    二人が向かったテーブルには、見慣れた顔があった。
    「アリサ、久しぶり」

    「エリナぁ♪こっちおいで♪」

    対照的な姉妹の声が二人に掛かる。

    エリナは沙利の隣に座り、紗織との関係を聞いて驚いた。
    紗織も昔とは違い、優しい顔で話をしていた。



    「じゃあ、そろそろ帰るよ。これ、使いな」

    重みのある札束を紗織は鞄から取出し、それとは別に勘定の代金も払っていった
    「ちょっ、紗織待って!こんなに貰えない!」

    お金を紗織に返そうとすると、沙利がアリサを止めた。
    「じゃあこれはエリナにあげる♪」

    あまりの金額が目の前を飛びかい茫然としているエリナの腕に、重い感覚が走った。

    『え…?あ…れ…?』

    しばらく現金を見つめていたが、我に返り顔を上げた。そこにはすでに沙利達の姿は無かった。

    エリナは店の外に急いで走り出た。
    アリサもエリナの後を追い掛ける。

    「はぁっ…いきなり走らないでよ……エリナ…?」


    アリサは立ったまま動かないエリナの視線の先を見る。そこには紗織達の乗る車の前に立つ、上品なおばあさんがいた。


    『おばあちゃん?どうしてここに…』

    チンピラに絡まれていた所を助け、ほんの少しの間だがエリナが心を開いた老人がそこにいた。

    おばあさんは、エリナを優しい瞳で見つめ、暖かい手でエリナの手を包んだ。


    「この前はありがとう。ずっとエリナちゃんにお礼を言いそびれたわ。もう少し早く来たかったんだけどね…。私の娘がえりなちゃんに迷惑をかけてしまって」
    そう言うと、おばあさんは鞄から名刺を取り出すとエリナに差し出した。

    『これ…』


    エリナの目が見開かれる。おばあさんは微笑み、深々と頭を下げた。

    「若西雪子と申します。」
    『そんな…。頭なんか下げないでよ、おばあちゃん』
    エリナが慌てておばあさんの身体を起こそうとすると、ふっふっと可愛くおばあさんは笑った。

    「名刺、いただいたからね。お返しに。そのお金はエリナちゃんにあげたのよ。あなたがそれをどう使おうと口出しはしない」


    そう言うと、おばあさんは微笑み、紗織達の待つ車に乗って去っていった。

    (携帯)
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