ビアンエッセイ♪

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■13280 / ResNo.10)  紅い月9
  
□投稿者/ 雅 ちょと常連(82回)-(2005/10/11(Tue) 03:34:16)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    はぁ・・

    車に乗り込み、葉月はため息をついた。

    あっ、あの子・・。

    大学の駐車場の端で、座り込んでる・・。

    葉月は、車を降りて、その子の傍まで寄って行った。


    「どうしたの?こんなとこで座って。」


    「ほら・・。見て・・。」


    その子は、しゃがんだまま指差した。


    「ん?」


    その子の、指差した先には、行列を作って、アリが誰かが捨てたであろうお菓

    子をせっせと運んでいる。


    「もしかしてさ・・これ、ずっと見てた訳?」


    葉月は少しあきれたように言った。


    「だって、すごく面白いよ。」


    「で、いつまでそうして、見てるの?良かったら、一緒にお茶でもしにいく?」


    その子は、葉月を見て、嬉しそうにうなづいた。


    車に乗ったその子は、言った。


    「アリさんのとこは、通らないでね。」


    わかってるよ、そんなことさ・・。フフ。


    「で、行きたいとこある?」


    「じゃ、山!」


    「山ん中じゃ、喫茶店ないよ。」


    「自動販売機でかってく。」


    はいはい。わかりました。お姫様。

    私、すっかり、この子のペースにはまってる・・。

    ま、たまには、いいね。心地いい。


    葉月は、夜景が綺麗だと言われる、ドライブスポットへと向かった。

    車で30分。

    まだ、明るい時間だから、そんなに混んでない。

    山の麓にある自動販売機で、ジュースを買って、展望台へと向かう。


    「わぁ〜。ここ初めてなんだ。」


    今まで、彼氏いなかったのか?

    ここは、誰もが来るって言われてるスポットなのに。

    昼間そこへ行くのは、葉月も初めてだった。

    夜とはまた違って、目の前に広がる景色は、結構いいものだった。


    「ここ、夜景最高だよ。で、長谷部さんは、彼氏いないの?」


    「今は・・、いないの。」


    二人は、その広い景色をただ、じっと眺めていた。

    夕日が真っ赤に景色を染める。

    海で、夕日が沈むの見るのも好きだけど、山でこうして日没迎えるってもの、

    なかなか、いいもんだね。


    ふと、夕日に照らされた、その子の横顔を見た。

    涙が、いっぱい溢れていた。

    夕べのこと?

    葉月は、何も聞かなかった。

    ただ、そっと後ろから、その子を包むように抱きしめて、二人で沈む夕日を見ていた。

    その時、いつもみたいに下心なんてなかった。

    ただ、静かに

    包んであげたかったんだ。


    (つづく)
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■13281 / ResNo.11)  毎回読むのを楽しみにしています☆
□投稿者/ 美穂 一般♪(1回)-(2005/10/11(Tue) 09:11:39)
    すごくうらやましぃです(><。)あたしもこんなふうに見つけてもらいたぃ〜!って思っちゃいました★なんかあったたかくて切なくて静かですごくこの物語が好きです!

    (携帯)
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■13286 / ResNo.12)  美穂さんへ♪
□投稿者/ 雅 ちょと常連(83回)-(2005/10/11(Tue) 14:07:21)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    美穂さん、初めまして♪
    毎回、読んでくださってありがとうございます。(^o^)/
    この物語好きって言ってくださって、とっても嬉しいです。
    頑張って更新していきます♪
    これからも、温かく見守ってくださいね♪

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■13290 / ResNo.13)  紅い月10
□投稿者/ 雅 ちょと常連(84回)-(2005/10/11(Tue) 23:16:34)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    「宝石箱みたいだね・・」

    そっと涙をぬぐって、その子は、葉月に言った。

    周りを見ると、チラホラとカップル達が増えてきた。

    葉月は、回した手をそっと外そうとしたが、その子はその手を離すことはなかっ

    た。

    こそこそと、周囲のカップルの声が耳に入ってくる。

    葉月は、その子の方を見たが、全く気にしている様子もなかった。

    ただ、その子は、後ろから回された葉月の腕を、しっかりと掴んでいた。


    「ねぇ・・。紅い月って見たことある?」


    その子は、囁いた。


    「うん。たまにあるよね・・。何か大きくて、妖しげな月・・。」


    「その月見たとき、どう思った?怖いと思った?」


    「ん・・。正直言ってやっぱ、怖いかな。人から聞いたけど、紅い月の出る日は

    不吉な事が起こるだって。」


    「不吉なこと・・・。」


    その子は、黙って、月を見上げた。

    その日の月は、綺麗な青みがかった真っ白な月だった。


    「私ね・・。紅い月って、不吉なことが起こるんじゃなくて、人が素直になれる日

    じゃないかと思うの・・」


    「それは、どうして?」

    葉月は、少し不思議そうに聞いた。


    「ん・・・っとね・・。言葉で表現しにくいんだけど・・」

    その子は、少し首をかしげながら、言った。


    「紅い月の出る日は、自分自身を見ることができる日・・そんな気がするの。」

    葉月は、全くその意味がわからなかった。


    「難しい表現だね。」


    「うん。それでいいと思う。」


    何が、それでいいんだろう・・。

    その時、葉月には、その意味を理解することはできなかった。


    「少し、肌寒くなってきたね。そろそろ車に戻ろうか・・」


    その子は、黙ってうなづいた。


    「さ、お姫さま、この後、どうしましょうか?」

    にっこりと微笑んで、葉月は言った。


    「お星様の沢山見えるとこへいきたい。」


    えっ?

    そんな、こんな都会じゃ街の明かりが多すぎて、

    どこにもないよ・・そんなとこ・・。


    助手席に乗っているその子は、プっと吹き出した。


    「そんな困った顔しないで。フフ。プラネタリウムでいいよ。」


    それなら、そうと、そう言ってくれればいいのに・・。

    葉月は、その子に、困らされている自分自身が、何となく滑稽で、心の中でフフっ

    と笑った。

    そうだ、確かあったな・・あそこにプラネタリウム・・。そこへ行こう。


    (つづく)
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■13292 / ResNo.14)  紅い月11
□投稿者/ 雅 ちょと常連(85回)-(2005/10/12(Wed) 00:30:40)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    「あ・・。」

    二人が、揃って発した言葉・・。

    駐車場にチェーンがかかり、その前には立て看板・・・。

    本日、休館日。

    あ〜、何てついてないんだろう・・。


    「フフフ。」

    その子は、誰もいない駐車場警備室の窓に書いてある表示を指さした。

    駐車場午後8時まで。(プラネタリウム最終上映午後7時)

    んと・・只今、午後8時半

    はぁ・・どっちにしても、見れなかったんだね。

    あっ、そうだ・・あそこなら・・。でもなぁ・・。


    「ん?どうしたの?どっかいいとこ思い出したの?」


    その子の声に、葉月は、一瞬、動きが止まった。


    「いやさ・・。ラブホになら、心当たりがあるけど・・。」


    やっぱ、まずいよね。フフ。


    「じゃ、そこいこ。」


    えっ?ほんとにいいの?

    それって、まずいんじゃないの?


    「でもさ・・」

    葉月は少し戸惑っていた。


    「いこうよ。二人だけで星の鑑賞できるなんて、素敵。でも・・」


    「でも?」

    葉月は、その子の顔を覗きこむように言った。


    「教授と行った?その部屋に。」


    「いんや。私も入ったことのない部屋だよ。値段が一番高い部屋でね。平日詰まっ

    てるのみたことない。」


    「いくら位するの?」


    「確か、休憩2時間で1万5千円、宿泊2万円だったかな。」

    葉月は、煙草に火をつけながら言った。


    「それって、宿泊しないと損だね。5千円しか変わらないなんて。じゃ、そこでお

    泊りで決まり!私も1万円出すからね。」


    その子は、にっこり微笑んだ。


    えっ?

    いきなりお泊りですか?

    確かに5千円しか変わらないんだけど・・。

    ま、いいっか。


    この子が、喜ぶなら・・

    この無邪気な子の、笑顔が見れるなら・・。

    それだけでいい。

    さっき

    君の心の泉から溢れてしまった雫を

    少しだけでも、

    戻してあげたかったんだ。


    アッハッハ。

    やっぱ、私、

    いかれてる。


    (つづく)
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■13315 / ResNo.15)  紅い月12
□投稿者/ 雅 ちょと常連(87回)-(2005/10/13(Thu) 00:05:38)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    二人で、軽く夕食をとって、コンビニによって、お菓子と飲み物かって・・。

    「準備OK!プラネタリウムへGo!」

    ほんと、わかってんのかね・・。

    一応さ、あんな事こんな事しちゃったりするホテルに行くんだよ・・。

    葉月は、空港方面へと車を走らせた。


    空港に近いラブホ街・・。

    沢山のネオンから少しだけ外れたところにあるホテル。

    「ここね、結構穴場なの。2時間で3500円ポッキリ。なのに、結構部屋広めだ

    し、いいんだよねぇ」


    「ふーん」


    何言ってんだ、私。

    いちいちそんな説明することないのに。


    車が、駐車場に入ると、すぐ中年の男性がでてきて、エントランス前で立ってい

    た。

    「ねっ、あの人なに?」


    「あ〜、ここね、車かってに駐車場に入れてくれるんだよ。だから、そこで降りた

    らいいのよ。」


    二人は、エントランス前で車から降りて、そのまま中へと入った。


    中のパネル・・。やっぱり空いてる。


    最上階の、その部屋・・。

    中ドアを開けた。

    天井がドームみたいになってて、かなり広い。

    何と、露天風呂までついてるし・・。

    自分でお湯いれなきゃいけないけど、その方が、清潔な感じがして気持ちいい。


    「わぁ〜っ、この部屋、すごいね。お風呂が二つもあるよ。」

    その子は、嬉しそうに部屋を見渡している。


    「どうする?先、お風呂でも入る?やっぱ露天風呂がいいよね!」

    その子は、テラスへ出て、露天風呂にお湯を張りに行った。


    マジですかぁ?

    露天風呂、確かに気持ちいいんですけど、余りにも無防備というか、何というか

    戸惑っちゃうんですけど・・。


    少し戸惑ったような顔をしている葉月にその子は、

    「ねぇ、何か、いやらしい事考えてるでしょ。ウフフ」


    ウフフって・・

    あーっ、一体、何振り回されてるんだろ。

    そのつもりなら、美味しい思いさせてもらっちゃうよ。


    「あっ、これかぁ・・。」

    部屋に投影器がおいてあった。

    葉月が、それに触れようとした瞬間


    「ダメっ。」


    えっ?

    いきなり大きな声でいうもんだから、葉月は、驚いてその子の顔を見た。


    「二人で、ゆっくり準備してから。楽しみは、後までとっておくの。

    だから触っちゃダメ。」


    ハイハイ。


    その子は、買ってきた飲み物を冷蔵庫の中へしまい、ベッドの頭元にある遠隔スイ

    ッチで、部屋全部の電気を消した。


    「この方が、落ち着く・・。」


    その子は、そう言って、服を脱ぎだした。

    葉月は、ただ黙ったまま、じっと見つめていた。


    青白く肌が、照らされて・・

    全然今まで気づかなかったけど・・

    すごく綺麗な身体してたんだね・・。

    月明かりが、そう思わせるのかも知れないけど、

    何か、映画のワンシーンのような・・

    そのくらい

    綺麗だった・・。


    (つづく)
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■13316 / ResNo.16)  紅い月13
□投稿者/ 雅 ちょと常連(88回)-(2005/10/13(Thu) 01:24:42)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    「早くおいでよ。」


    その子は、そう言って、露天風呂に向かった。

    脇においてある洗面器でかけ湯をするその子。。

    真っ白い肌が、キラキラ光って、

    大きな胸の膨らみが、横から見るととても悩ましくて。。

    ゆっくり足先から、湯船に浸かっていくその子が

    たまらなく葉月を刺激する。


    あの時思ったんだ・・。

    他の誰にも、触れさせたくない・・って。


    葉月は、ゆっくりと服を脱いだ。

    そして、その子のもとへ近づいていった。


    葉月もかけ湯をして、その子の隣に入った。

    結構広さがあるから、二人で脚を伸ばして入れた。


    「ねぇ。今までに、本当に好きになった人はいる?」


    「ん・・。」

    葉月は返答に困った。

    何故なら、そんな気持ちになったのって、

    遠い昔の淡い恋くらいのもので・・

    身体の関係をもった人で、そんな人など一人もいないっていうことを

    自分が一番わかっていたから。


    「せんせ?」


    「違うよ。そんなんじゃないのよ、教授とは・・」


    「良かった・・」


    良かった?何が良かったの?


    「私はね・・。たった一人だけいるの。今も、心の中に」


    そう言って、その子は、フフっと微笑んだ。


    葉月は、胸が締め付けられた。

    何なんだろ・・この感覚・・。

    やりきれない・・

    この気持ち悪さ・・。

    やっぱ、一緒なのかな・・君も。



    葉月は、上を向いて、目を閉じた。


    「どうしたの?眠い?」

    その子は、葉月の顔を覗き込んで言った。


    葉月は、いきなり、その子をぐっと引き寄せ、キスした。


    「ンン・・」

    腕に力が入ってて、荒っぽいキス・・。

    そのまま、その子の首筋へと唇を這わせた。


    「いやっ!」

    その子は、顔を横に背け、葉月から逃れようとした。

    でも、葉月は離そうとしなかった。


    葉月は、妖しい笑みを浮かべて言った。

    「ここへ来たってことは、そういうことじゃない。フフ」


    そう言って、その子の大きな白い胸を鷲掴みにしながら、

    唇にキスした。

    その子は、今度は抵抗しなかった。

    ただ・・

    哀しい目をして、葉月を見つめていた。


    葉月は、その手を外した。

    そして、夜空を見上げて、ただぼーっと眺めていた。


    ほんと、イヤな奴だよね、私。


    (つづく)

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■13334 / ResNo.17)  紅い月14
□投稿者/ 雅 ちょと常連(89回)-(2005/10/14(Fri) 01:53:35)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    「そろそろ上がろうよ。逆上せちゃうよ。」

    その子は笑顔で、言った。

    だが、葉月は、黙って目を閉じたままだった。


    その子は、湯船の縁に腰を掛け、ゆっくりと話だした。

    「ねぇ、私ね、アンデルセン童話の人魚姫って、本当はとても幸せな物語だと

    思うの。」


    確かあれって、人魚が、人間の王子に恋をして、もう一目逢いたいと魔女に自分の

    美しい声と引き換えに人間の身体になって、王子が他の人を好きになってしまっ

    て・・

    最後は、海の泡に消えていくっていう話・・?

    どこが幸せなんだ・・。

    不幸のどん底の物語じゃないか・・。

    てか、この雰囲気の中で、よくもそんな話ができるもんだ・・。


    葉月は、小さな声で言った。

    「・・・どうして?」


    「だってね、自分の大事なものを失ってでもいいって思えるくらいに、

    その人を、愛することができたから。」


    葉月は、どうも理解に苦しんだ。

    確かに、言ってることはわかるけど、何でそれを今話す訳?


    その子は、にっこりと微笑んで言った。

    「私には、そんな勇気はないんだけどね。」


    いらないんじゃない?

    そんな勇気なんてさ。

    どんなに愛したって、結局は独りなんだからさ・・。

    それができるのは、聖人だけの話。

    肉の欲がある限り、そんなの綺麗ごとにすぎないよ・・。


    その子は、微笑んで、葉月の手をとり

    「そろそろ、見ようよ。プラネタリウム。」


    そうだね。

    君が何を考えているのかわからないけどさ・・

    その笑顔を見てると

    その綺麗事も、本当に思えてくる。

    心が、和むよ・・。


    私らしくないけどね・・。フフ

    (つづく)
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■13337 / ResNo.18)  紅い月15
□投稿者/ 雅 ちょと常連(90回)-(2005/10/14(Fri) 04:15:11)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    部屋に戻って、備え付けのバスローブを羽織り、

    葉月は、投影器のスイッチを入れた。


    「うぁ〜っ、綺麗!」

    その子は、天井を見上げて叫んだ。


    ドーム型の天井に映し出された、満天の星空・・。



    プラネタリウムの小型版って感じだけど・・

    その子は、ベッドに横になって、その星空を見上げた。

    大きな目を見開いて、まるで子供のように・・。


    「早く。隣にきて・・」


    葉月も、ベッドに横になって、その空を見上げた。

    まるで、異世界のような・・

    そんな気さえした。


    その子は、そっと葉月の手を握った。

    その手は、冷たかった。

    葉月は、その手をとって、そっと自分のお腹に入れた。


    「あったかい・・」


    「風邪引いちゃうと困るから・・・。中に入ってみる?」


    その子は、頷いた。


    二人で、ベッドにもぐりこんで、空を眺めた。

    何も言わず、ただじっと空を見つめていた。


    「ありがとう・・。」


    その子は、起き上がって、葉月に覆いかぶさるように・・

    そっと葉月の唇にキスした。


    葉月は、そのまま優しく引き寄せた。

    暗がりの中だったけど

    その子の顔は、確かに微笑んでいた。


    「そんな事したら、ほんとに抑えられなくなるよ」


    その子は、黙ったまま頷いた。


    さっきは、そんな意味じゃなかったけど

    今は、何だか自分でも、わからないけど

    自然に

    君を抱きたいと


    そう思ったんだ・・。


    その子は、横たわる葉月の腹部を跨いだ。

    葉月は、星の微かな光を頼りに、バスローブを脱がせた。

    さっき話してくれた人魚じゃないけれど

    その髪のウェーブも、その乳房も・・

    その透けるような光る肌も

    まるで人魚のようだと葉月は、思った。


    それは、いやらしい肉欲の雌なんかじゃなくて

    本当に愛しくて

    全てを包んでしまいたい・・。

    そう思って抱いた。


    君の喘ぐ声は、私の耳にこだまして

    君の奥の温かみが、

    私の指を温かく包み込む。


    君が立てた、背中の爪痕は

    余りにも心地よくて

    何度も何度も、

    君を愛した。


    でも、君は・・

    本当にそれでよかったのかな・・・。

    (つづく)
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■13350 / ResNo.19)  紅い月16
□投稿者/ 雅 ちょと常連(91回)-(2005/10/15(Sat) 23:26:49)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    それから、大学でその子に会うことはなかった。

    あの学生会館の裏のベンチにいれば、逢えるような気がして、

    葉月は、毎日足を運んだ。

    だが、その子の姿は、なかった。


    橋岡教授に、何気なく訪ねてみた。

    どうやら、家の事情で、休学したらしいということだった。


    葉月は、どうしてもその子が気になった。

    ゼミ仲間に、聞いても詳しい事を知るものはなかったが、

    確か、駅前の楽器屋の娘らしいということがわかった。


    葉月は、教授にその日誘われていた。

    だがうまくかわして、駅前の楽器屋へ向かった。


    「いらっしゃいませ。」


    中から老人が現れた。

    こじんまりとした、小さな楽器店。

    主に弦楽器を扱う店のようで、ギター、マンドリンetc・・

    有名な奏者らしい人の写真が飾られてある。


    この老人は、彼女のおじいさんなのだろうか?


    「すみません。あの・・」


    その時、後ろから、声がした。


    「おじいちゃん、ただいま。」


    後ろを振り返ると、そこにあの子の姿があった。


    「あっ、よく分かったね。教授に聞いた?」


    老人は、葉月ににっこりと頭を下げ、そのまま奥に消えていった。


    「ゼミの子に、ここの娘って聞いて来てみた。」


    「そうなんだ・・。良かったら、そこの椅子に座って。私店番しないとダメだから

    ここにいるし。」


    その子は、そうい言いながら、小さなテーブルの脇に置いてあるポットでお茶を

    入れてくれた。

    葉月は、椅子に腰掛けて、お茶をすすった。


    「店手伝わなきゃダメになってね、大学休学したの。」


    「そうなんだ・・。でも元気そうで良かった。」


    店に流れるギターの調べは、心地よかった。


    「ねぇ、ギター弾けるの?」

    葉月は、訪ねた。


    「うん、少しならね。物心ついた時から、ギターがあったから。」


    この子がギターを弾く・・。ちょっと見てみたいな・・。


    「弾いてあげようか?ちょっとだけ。ウフフ」


    その子は、奥の方にあるギターケースを取り出して、その中から、綺麗に手入れ

    されたギターを取り出した。


    その子は、足を組んだ。スカートが少し上がって、綺麗な足が露になる。

    そこへ、ハンカチをふわっとかけて、ギターを構え、ゆっくりと弾きだした。


    葉月は、驚いた。

    今までフォークギターとか、エレキギターとか、そういうものしか知らなかった

    けど、このギターは、何て甘い音が出るんだろう・・。

    そして、この指の動き・・。

    滑らかに、指が、まるで他の生き物のように・・・

    それに、こんなに愛しく弦を奏でる・・。

    でも、なんか切ないこの曲・・。


    1曲弾き終えると、その子は、少し恥ずかしそうに葉月を見て


    「はい。演奏終了。」

    そう言って、ギターを片付けだした。


    「ね、今の曲は何ていう曲?」


    「今のは、アルハンブラの想い出っていうの。ギターでは有名な曲よ。」

    その子は、にっこり笑って、葉月に答えた。


    お客さんらしき人が、店に入ってきた。

    葉月は、すぐに、立ち上がった。


    店を出る時に、その子に言った。

    「あのさ、夜とかも忙しいの?」


    「あれ?もしかして、デートのお誘い?ウフフ」


    「忙しいならいいよ。またここへ来てもいいかな?」


    「じゃ、10時に迎えにきて。」


    そう言って、その子は、入ってきたお客の接客についた。

    葉月は、店を出て、車に戻った。

    葉月は運転しながら、あの子の奏でるギターを思い出していた。


    私・・

    あの子に恋してる。

    (つづく)
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