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■13235
/ 親記事)
風ニ舞ウ花ビラ
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□投稿者/ 夏風みかん
一般♪(1回)-(2005/10/08(Sat) 13:55:17)
カタカタカタカタ・・・
オフィス内に乾いた音がひっきりなしに響いている。
「夏風さん、これお願いします」
隣のデスクに座っている女性が、ホチキスで留められている書類を何枚かこちらのデスクに置いた。
「は〜い、ありがとうございます」
私はパソコンから目を離すことなく答えると、慣れた手つきでテンキーを打つ。
入力が終わると山のような書類の束をほんの少しよけて、さっき置かれた書類の処理に移る。
ふと周りを見渡すと、みんな仕事に没頭している。
彼女たちとは殆ど話したことがない。
中には名前すら知らない人もいる。
私達の仕事はグループに分かれており、例えば私の目の前に広がるシマは、総勢十数人からなるグループで、
私の感覚からすると大所帯だ。
対する私のグループはこのオフィスで最も人数が少ないグループで、メンバーはたったの二人。
私と、さっき私の机の上に書類を置いた彼女だけ。
少し寂しい気もするが、逆に余計な人付き合いをしなくて済むことが幸運に思えた。
私の隣に座っている女性、
紫良
しりょう
美咲
みさき
は私の仕事のパートナーである。
私より彼女の方が年上であるが、会社に入ったのはわずかだが私の方が早かった。
それが丁度プラマイゼロとなって、私達は対等な関係を築いていた。
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■13237
/ ResNo.1)
風ニ舞ウ花ビラ -1-
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□投稿者/ 夏風みかん
一般♪(3回)-(2005/10/08(Sat) 14:21:28)
紫良さんは大人っぽい。
けれど時折見せる子どもっぽさ、無邪気さ。
そんな彼女の横顔を見つめる自分がいる。
そんな私に気づき、彼女はパソコンを見つめたまま笑う。
「ちょっと待ってくださいね(笑)いま終わらせますから。」
どうやら彼女は私が紫良さんの端末にあるデータをみたいのだと勘違いしたようだ。
「いや・・・データを見たいわけじゃないんだけど・・・」
「あっ、そうなんだぁ」
なんの疑いもなく納得する彼女。年上にこういうのは失礼かもしれないけど・・・でも、やっぱり可愛い。
これは恋?
いや、でも私には無謀な恋に手を出すような勇気はない。
彼女は魅力的すぎる。
綺麗で、可愛くて、かといって遊んでいるような感じでもなく、近づきがたい雰囲気がある。
もし私が男ならよっぽど自分に自信がなければ手は出さないだろう。
彼女を愛しいと思う気持ちをそっと心の中に閉じ込めて、私は彼女に対する感情を閉め出した。
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■13239
/ ResNo.2)
風ニ舞ウ花ビラ -2-
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□投稿者/ 夏風みかん
一般♪(4回)-(2005/10/08(Sat) 14:40:50)
私は気分転換に髪を明るく染め、髪型も変えた。
鏡に映る自分は少し新鮮で、それまでの暗い表情が少し明るくなったような気がした。
次の日、先に出勤していた私を見るや否や、紫良さんは私の頭を撫でながら
「髪切ってるぅー可愛いー!」
と言ってきた。
そんな紫良さんの方が可愛いよ。
なーんてことを言えるわけもなく、「そんなことないですよ」と無難な返事を返しただけだった。
正直言って、こんなに年上の人を可愛いと思ったことは一度もなかった。
心から愛しく思えて、抱きしめたいし、抱きしめられたいって思う。
でもそれはダメだ。叶わない。
それに、紫良さんに対する感情を心の奥深くにしまったんだと、私は私に言い聞かせた。
けれど私の頭の中は、仕事に忙殺されながらも紫良さんのことばかりが浮かんだ。
そんなんだから、私は仕事中に一つミスを犯してしまった。
注意を怠って今日中に終わせなければならない仕事の転送先を間違えてしまったのだ。
別の部署から内線がかかってきて事態が発覚。
幸い、別グループのベテランさんが対応してくれて事なきを得たが、私は動揺を隠し切れなかった。
仕事が山のようにつまれてはいるが、どうも手につかない。
ぼけーっとしていたら、紫良さんが私の肩をたたいた。
「大丈夫だって!気にしない気にしない」
そういって彼女はあの可愛い笑顔で私に微笑んだ。
・・・自然と顔がほころぶ自分がいた。
ダメだ。私は紫良さんへの気持ちを閉じ込めるなんてできそうもないや。
沈んだ私の心を一瞬で明るくできる。
彼女は私にとって必要な人なんだ。
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■13246
/ ResNo.3)
風ニ舞ウ花ビラ -3-
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□投稿者/ 夏風みかん
一般♪(5回)-(2005/10/08(Sat) 23:18:57)
この日は仕事が忙しかった。
特に彼女は出社してすぐに仕事を始めて、昼食も仕事をしながら摂るような感じで、ずっと働きっぱなしだった。
手伝いたいのも山々だが、私も自分の仕事が忙しく、とてもそんな余裕がなかった。
彼女の力になれない自分を腹立たしいと痛切に感じた。
・・・が、結局仕事が早く終わったのは彼女の方で、何度も断ったにもかかわらず、彼女が私の仕事を手伝ってくれた。
仕事が終わったころには、時間はもう9時を回っていた。
「ほんとに申し訳ないです。こんなに遅くなるまで手伝わせてしまって・・・」
エレベーターの中、私はひたすら頭を下げた。
「いいっていいって。あたしもこの間手伝ってもらったしさ。」
二人で会話をしながらビルの高層階から一気に1Fへ降りる。
耳がふさがれるような感覚になり、二人で顔を見合わせては肩をすくめて微笑んだ。
エレベーターが1Fに着くと、ガラス張りの玄関から外の様子が見えた。
「雨降ってる・・・」
「うん、そうだね」
私ははっと気がついた。
そういえば私ったら傘もってきてないんだった!!
会社から駅までは歩いて5分。
けれどこの雨の中ではどんなに早く走っても駅に着く頃には下着までびっしょり濡れてしまう。
不安げな私の表情を見たのか、紫良さんは傘をさし、その中に私を入れてくれた。
「入れてあげるから安心しなよ」
そういって紫良さんは微笑む。
「い、いえ、それでは紫良さんが濡れてしまいますよ!いいんです、自業自得なんですから・・・!!」
謙遜する私に、紫良さんは
「いいからいいから。どうせ傘差しても濡れることは濡れるんだしさ。
気にしなくていいよ」
お言葉に甘えて、傘の中に入れてもらった。
あまり大きくない傘だから、二人の身体の距離は触れそうなほど近かくなる。
紫良さんがこんなに近くにいると思うだけでどきどきする。
そんな私の気持ちを察することもなく、紫良さんは他愛のない話をしてきた。
「昨日さ、帰りにコンビニ寄ってビール買っちゃったよ」
「ええっ、酒豪なんですか?」
「違うよぉ〜!飲み会とはよく行くけど、お酒そのものよりかは飲み会とかの雰囲気が好きなんだよね。でも全然行ってないんだよぉ」
「えーっ、仕事忙しいからですか?」
「う〜ん、それがさぁ、友達みんな主婦やってて、全然遊んでくれないんだぁ。」
主婦という言葉に私は反応した。
そういえば、紫良さんは結婚してるのかなぁ・・・?
「紫良さんは・・・主婦にならないんですか?」
我ながら直球すぎるなって思いつつ、その次にくる紫良さんの言葉を待った。
「なれたらとっくになってるよ(笑)」
ということは・・・とりあえず結婚はしてないんだ・・・。
ほっと胸を撫で下ろす。
「紫良さんモテそうなのに・・・。彼氏いない歴3日とか」
「いや、ありえないから!!」
「いや、ありえます!意外ですよ!」
これは本心だった。
紫良さんなら何もしなくても男どもがよってきそうな感じがする。
謙遜しているのかもしれないけど、でも少し安心した。
「まぁ、出会いがないんだよねぇ・・・。前の仕事とか男ばっかりだったけど、寡黙な人ばかりだったし、高校は女子校だったしさぁ。」
女子校だったと聞いて、かすかな期待を寄せる。
女子校ったなら、そういうことに抵抗はないのでは!?と考えた。
いつの間にか駅についてしまい、紫良さんとは逆のホームなので改札を抜けると別れることになる。
もうちょっと話をしたかったけど、仕方がない。
「それじゃあまた明日ね」といって、紫良さんはホームへ降りていった。
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■13274
/ ResNo.4)
なんか、、
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□投稿者/ ぶるう
一般♪(3回)-(2005/10/10(Mon) 19:17:04)
純粋な感じでいいですね でもせつないです 早く続きがよみたいです
(携帯)
完結!
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■13289
/ ResNo.5)
完結はまだしてないですけどね(笑)
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□投稿者/ 夏風みかん
一般♪(6回)-(2005/10/11(Tue) 23:10:26)
ぶるうさん、はじめまして夏風みかんです。
この話は現実のことを元にして書いてみました。
元っていうか今の所まんまですが(笑)
一応通勤途中に書いているのでゆっくりなんですが
2日、3日に1話の割合で投稿していけたらなぁと思ってます。
どうか飽きずに最後まで読んでいただけたら幸いです。
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■13330
/ ResNo.6)
風ニ舞ウ花ビラ -4-
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□投稿者/ 夏風みかん
一般♪(7回)-(2005/10/13(Thu) 22:07:52)
ピピッ、カチャ
ICカードを機械にかざすと、ロックが外れる音がした。
ドアを開けると真っ先に彼女の席を見る。
机の上も整理されたままだし、パソコンもついていない。
どうやら彼女はまだ来ていないようだ。
時計をみると始業時間の20分前で、いつもなら既にきていて仕事に取り掛かっているはずだった。
おかしい・・・遅刻かな。
頭の中では色々考えを張り巡らせていたが、行動には出さずにいつも通り自分の席に着いた。
「おはよう!」
振り向くと、出勤してきたばかりの樫本さんだった。
「おはようございます」
樫本さんは主に業務や各社員などの管理をしているグループの人だった。
樫本さんなら何か知ってるかも知れない。
そう思って口を開こうとしたとき、樫本さんの方から話しかけてきた。
「今日は大変だと思うけど頑張ってな。俺も手が空いたら手伝うから」
は??
「まぁ風邪ひいてしまったものは仕方がないし、今日だけ一人で頑張ってくれよ」
風邪??一人??
まさか・・・。
「今日って紫良さんお休みなんですか?」
「うん、風邪ひいて熱があるんだってさ。昨日雨降ってたしねー」
昨日の雨・・・ってもしかして私のせい?!
紫良さんは傘も持っていたし、地元の駅からはバスだと言っていた。
考えられることはただ一つ。
私を傘に入れてくれたばかりに紫良さんは半身濡れてしまい、そのまま帰った結果、風邪をひいてしまったのだ。
私は心の中で自分を責めた。
自分が傘を忘れなければ紫良さんは風邪を引かなかったのに・・・。
そんな様子に全く気づいていない樫本さんは、どちらかというと仕事の心配をしているようだった。
そういえば、私はまだ紫良さんの方の仕事は全くできなかったんだっけ・・・。
いつかお互いに仕事を教え合おうとは話していたものの、まさか本当にこんな日がくるとは思わなかった。
「私・・・紫良さんの分までマニュアルみながら頑張ります」
これも紫良さんのためだ。
というか、仕事をやっておいてあげて次着たときに驚かせてあげようという下心が働いた。
気合十分な私を樫本さんは不安げに見つめ、やがてその熱意を感じたのかウンウンと頷き始めた。
「そうだな。それしかないもんな」
私は早速自分のパソコンと、紫良さんのパソコンのスイッチを入れる。
きちんと教えてもらったことはないが、大体はわかっているつもりだった。
デスクの引き出しにはマニュアルもある。
・・・が、問題はすぐに起きた。
紫良さんの端末のログインパスワードがわからない。
これがわからなきゃ話が進まない。
仕方がないので紫良さんに電話をする。
初めての電話で緊張する。
・・・・おかけになった電話は電波の届かないところか・・・・・・
通話口から聞こえるのは電話会社の機械音。
何回かけても結果は同じだった。
仕方がないので樫本さんに相談する。
すると樫本さんも携帯電話を取り出して、紫良さんに電話をかけた。
「ダメだ、出ないや」
力なく首を振る樫本さん。
「もしかしてどっか遊びに行ってるんじゃないよなぁ」
笑いながら、でも100%冗談で言っているわけでもなさそうだ。
紫良さんはそんな人じゃない。
私は樫本さんを睨んだ。
「あーごめん、ごめん。冗談だよ。・・・とりあえず、自分の方の仕事やっといていいよ」
仕方がない。今はそうするしかなかった。
しばらくして、私の後ろで樫本さんの声が聞こえてきた。
内容からして、どうやら紫良さんと電話がつながったらしい。
樫本さんは携帯電話を片手に紫良さんの端末のキーボードを手早く叩く。
「おぉ!できたできた」
樫本さんの声が一段高くなり、紫良さんにお礼を述べている。
どうやらログインできたようだ。
けれど私としては素直に喜ぶことはできず、「なぜ樫本さんとつながって私とは電話がつながらないのか」という疑念が浮かんだ。
私は自分の仕事をある程度片付けた後、紫良さんの仕事に取り掛かった。
マニュアル見ながらやるが、どうもよくわからない。
その度に紫良さんに電話しようと試みるが、相変わらず留守番サービスセンターにつながり、結局紫良さん本人が電話に出ることも、紫良さんから電話がかかってくることもなかった。
仕事の方は何とか半分ほど片付けたが、まだまだ未熟な私の自分の能力の限界と無力さを思い知らされた。
しかし、昼間あれだけ電話をしても一度も出なかったことが凄く気になった。
樫本さんが朝に言った「どっか遊びに行ったんじゃないだろうなぁ」という言葉が頭の中でリフレインする。
もし、本当に具合が悪かったならずっと家にいるはずだ。
家にいたなら、一日中電話が留守電ということはおかしいし、なぜ樫本さんとは電話が繋がったのか・・・。
もしかしたら着信拒否されたのではないかという考えも浮かんだ。
身体はもちろん、精神的にも疲れが出た一日だった。
帰りの電車の中でぐったりするが、目をつぶると眠ることもできずにいやな考えばかりが頭に浮かんでは消えていった・・・。
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■13389
/ ResNo.7)
風ニ舞ウ花ビラ -5-
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□投稿者/ 夏風みかん
一般♪(8回)-(2005/10/17(Mon) 23:10:55)
家に帰ってすぐお風呂に入った。
ぬるめのお湯に肩までどっぷり浸かる。
疲れた身体が少し軽くなるような感じがした。
自分はこれからあの仕事を続けられるのだろうか・・・。
お風呂から上がり、濡れた髪をタオルで水気を取る。
ふと、携帯電話が光っているような感じがして目をやると、
着信があったことを示すブルーのランプが点滅していた。
「まさか」という期待を胸に着信履歴を見ると、やはり紫良さんからだった。
心臓が高鳴る。
風呂上りで緩みきっていた気持ちが一気に引き締まる。
震える手ではっしんのボタンを押す。
トゥルルルル・・・
トゥルルルル・・・
昼間とは違って呼び出し音が鳴り響く。
だが、紫良さんが出る気配は全くなかった。
諦めて携帯を閉じると、すぐに電話がかかってきた。
とっさに通話ボタンを押すと、受話器の奥から紫良さんの声がした。
『ごめんね〜』
紫良さんの第一声はそれだった。
「いえ、大丈夫です。風邪なら仕方がありませんよ」
恐縮しながら答える私に、紫良さんは
『・・・ねぇ、普通に「大丈夫だったよ」とか言える関係になろうよー。敬語使わなくていいしさぁ』
と、嬉しい言葉を言ってくれた。
「あっ、じゃあお言葉に甘えてそうしま・・・そうするよ」
私の片言のタメ口を紫良さんは受話器の奥で笑いながら聞いていた。
『どうだった?仕事。大変だったでしょ?』
「んー仕事が大変っていうか、淋しいし、心細かったかなぁ」
『だよねぇ・・・。一人だったんだもんねぇ。ごめんね、ホントに・・・』
「ううん、そんなことないよ。紫良さんこそ身体の方大丈夫なんですか?」
『うん、昼間ずっと寝てたから、今は大分楽になったよ』
昼間と聞いて、私は心に引っかかってたことを思い切って口にしてみることにした。
「紫良さん、あのっ・・・」
『んー?』
「昼間結構電話したんだけど、何回かけても留守番サービスセンターに繋がっちゃったんだよね・・・」
すると、紫良さんは思い出したように
『ああっ!あたしの家さぁ、電波ないんだよねぇ。よく友達からもよく言われるんだ。「電話かけてるのに繋がらないんだけど!!」って 笑』
「なんだぁ、電波がなかったのかー。あまりにも繋がらないんで着信拒否されたと思ったよ」
本気半分、冗談半分で言ってみた。
すると紫良さんは笑い声をあげて
「違う違う!そんなことしないし!でもそう思わせちゃったならごめんね〜」
と完全否定。
私はほっとした。
紫良さんに嫌われてるわけじゃなかった・・・。
「良かった・・・。嫌われてるのかと思った」
『んなわけないよぉ!むしろこれからもっと仲良くなりたいしさ』
紫良さんは私と仲良くなりたいといってくれた。
冗談でも嬉しかった。
『本当に今日はごめんね』
「いえ、火曜日から紫良さんがまた元気に出社してくれれば私はそれで満足だよ」
『ありがとう』
電話って言うのは不思議なものだ。
普段照れくさいことや言えないこともこうして伝えることができる。
紫良さんとの初めての電話は緊張と嬉しさでいっぱいで、長い連休になりそうだった。
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■13494
/ ResNo.8)
風ニ舞ウ花ビラ -6-
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□投稿者/ 夏風みかん
一般♪(9回)-(2005/10/22(Sat) 19:08:12)
あたしがあなたを変えるから・・・。
アイツは言った。
私がまだ高校生だったとき。
人を信じられなくなり、人間というものに嫌悪感を感じていた。
そんな私にアイツが言った言葉・・・。
それと同じセリフを紫良さんがたった今、口にした。
アイツのことは忘れたはずなのに、アイツの姿が、アイツとの思い出がフラッシュバックする。
「夏風さん?どうしたの?」
気がつくと、紫良さんが私の顔を心配そうに見つめていた。
「あ、いや、なんでもないよ!」
つい目をそらしてしまった。
紫良さんに見つめられて恥ずかしかったというのもあるけど、それ以上にアイツと紫良さんがダブるのを避けたかったからだ。
紫良さんは何か言いたそうな顔をしてたけど、口を開くことはなかった。
きっと、今の私は凄い顔をしているんだろう。
駅の改札が近づいてきて、自然と私と紫良さんの会話はなくなった。
この日もいつものように会社から駅に向かって歩いていた。
最初は中学・高校時代の思い出という会話が、だんだんお互いの中学・高校時代の嫌な思い出についての話に変化し、気づけば本心を言っていた。
人を信じることができない。
いつも自分は人と距離を置いていた。
私がそう言ったら、紫良さんが言ったのだ。
アイツと同じセリフ・・・。
そういえば、紫良さんとアイツにはダブるところがある気がする・・・。
そう考えたのを頭を振って思い直す。
違う!私は紫良さんを好きなんだ。
私は紫良さんのあの笑顔と大人っぽい雰囲気、さり気ないしぐさが好きなんであって、決してアイツと紫良さんを重ねてるわけじゃないんだ。
紫良さんに言われた言葉を嬉しいと思った。
けど、それ以上に素直に喜べない私がいた。
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■No13389に返信(夏風みかんさんの記事) > 家に帰ってすぐお風呂に入った。 > ぬるめのお湯に肩までどっぷり浸かる。 > 疲れた身体が少し軽くなるような感じがした。 > 自分はこれからあの仕事を続けられるのだろうか・・・。 > > > お風呂から上がり、濡れた髪をタオルで水気を取る。 > ふと、携帯電話が光っているような感じがして目をやると、 > 着信があったことを示すブルーのランプが点滅していた。 > 「まさか」という期待を胸に着信履歴を見ると、やはり紫良さんからだった。 > 心臓が高鳴る。 > 風呂上りで緩みきっていた気持ちが一気に引き締まる。 > 震える手ではっしんのボタンを押す。 > トゥルルルル・・・ > トゥルルルル・・・ > 昼間とは違って呼び出し音が鳴り響く。 > だが、紫良さんが出る気配は全くなかった。 > 諦めて携帯を閉じると、すぐに電話がかかってきた。 > とっさに通話ボタンを押すと、受話器の奥から紫良さんの声がした。 > 『ごめんね〜』 > 紫良さんの第一声はそれだった。 > 「いえ、大丈夫です。風邪なら仕方がありませんよ」 > 恐縮しながら答える私に、紫良さんは > 『・・・ねぇ、普通に「大丈夫だったよ」とか言える関係になろうよー。敬語使わなくていいしさぁ』 > と、嬉しい言葉を言ってくれた。 > 「あっ、じゃあお言葉に甘えてそうしま・・・そうするよ」 > 私の片言のタメ口を紫良さんは受話器の奥で笑いながら聞いていた。 > 『どうだった?仕事。大変だったでしょ?』 > 「んー仕事が大変っていうか、淋しいし、心細かったかなぁ」 > 『だよねぇ・・・。一人だったんだもんねぇ。ごめんね、ホントに・・・』 > 「ううん、そんなことないよ。紫良さんこそ身体の方大丈夫なんですか?」 > 『うん、昼間ずっと寝てたから、今は大分楽になったよ』 > 昼間と聞いて、私は心に引っかかってたことを思い切って口にしてみることにした。 > 「紫良さん、あのっ・・・」 > 『んー?』 > 「昼間結構電話したんだけど、何回かけても留守番サービスセンターに繋がっちゃったんだよね・・・」 > すると、紫良さんは思い出したように > 『ああっ!あたしの家さぁ、電波ないんだよねぇ。よく友達からもよく言われるんだ。「電話かけてるのに繋がらないんだけど!!」って 笑』 > 「なんだぁ、電波がなかったのかー。あまりにも繋がらないんで着信拒否されたと思ったよ」 > 本気半分、冗談半分で言ってみた。 > すると紫良さんは笑い声をあげて > 「違う違う!そんなことしないし!でもそう思わせちゃったならごめんね〜」 > と完全否定。 > 私はほっとした。 > 紫良さんに嫌われてるわけじゃなかった・・・。 > 「良かった・・・。嫌われてるのかと思った」 > 『んなわけないよぉ!むしろこれからもっと仲良くなりたいしさ』 > 紫良さんは私と仲良くなりたいといってくれた。 > 冗談でも嬉しかった。 > 『本当に今日はごめんね』 > 「いえ、火曜日から紫良さんがまた元気に出社してくれれば私はそれで満足だよ」 > 『ありがとう』 > > 電話って言うのは不思議なものだ。 > 普段照れくさいことや言えないこともこうして伝えることができる。 > 紫良さんとの初めての電話は緊張と嬉しさでいっぱいで、長い連休になりそうだった。
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