| 夏子からの呼び出しは、突然だった。
いつも突然だけど。
“ね、今日ご飯、無理かな。今わたし表参道なんだけど。”
いきなり、今日。
しかも場所まで指定、表参道。
彼女はいつもそうだ。
彼女の予定は決まっていて、
あとはその予定に合う相手を携帯のメモリから選び出すのだ。
私はいまのところ、その呼び出しリストのトップ集団にいる。幸いなことに。
彼女はわがまま、というよりは極度の寂しがりやで、
私にとってはそんなところが愛しかった。
昔から、面倒見はいい方だった。
頭の中でこれからこなす仕事の量と移動時間を瞬時に計算し、
仕事中だというのに、すぐにメールを返した。
“四十分後、青山通りのスタバで。”
彼女は私の高校時代からの親友で。
私の想い人だった。
|