ビアンエッセイ♪

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■13718 / 親記事)  親友に恋した、はるかの場合。
  
□投稿者/ れい 一般♪(3回)-(2006/02/25(Sat) 22:32:09)
    夏子からの呼び出しは、突然だった。

    いつも突然だけど。


    “ね、今日ご飯、無理かな。今わたし表参道なんだけど。”


    いきなり、今日。

    しかも場所まで指定、表参道。


    彼女はいつもそうだ。


    彼女の予定は決まっていて、

    あとはその予定に合う相手を携帯のメモリから選び出すのだ。


    私はいまのところ、その呼び出しリストのトップ集団にいる。幸いなことに。


    彼女はわがまま、というよりは極度の寂しがりやで、

    私にとってはそんなところが愛しかった。

    昔から、面倒見はいい方だった。



    頭の中でこれからこなす仕事の量と移動時間を瞬時に計算し、

    仕事中だというのに、すぐにメールを返した。


    “四十分後、青山通りのスタバで。”



    彼女は私の高校時代からの親友で。

    私の想い人だった。


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■13719 / ResNo.1)  短編を、書かせて戴きます。
□投稿者/ れい 一般♪(4回)-(2006/02/25(Sat) 22:36:15)
    久しぶりにゆっくりできる時間ができたので、

    短編でも書いてみようと思います。

    以前はここで長編を書いていました、れいといいます。

    一年位前の話なので、相当昔ですね…;;


    その続編もそのうちアップできたらしようかなと思っております。


    たのしんで戴けましたら幸いです。

    今日中に書き上げて、リアルタイムで更新していきます。


    途中で力尽きて寝てしまわぬようがんばります。

    感想、聞かせて戴けたら幸いです。
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■13721 / ResNo.2)  親友に恋した、はるかの場合。《2》
□投稿者/ れい 一般♪(5回)-(2006/02/25(Sat) 22:55:58)
    メールを返してから、仕事を明日できるものと、今日中にやらなければならないものに整理する。

    今日中にやらなければいけないこと三件を、

    うち一件の見積もりは同期に明日のランチと引き換えにお願いし、

    一件の提案書はお客さま先に電話をして締め切りを明日の朝一までにしてもらった。

    どうしても今日中にやらなきゃいけない稟議書類一件を無理矢理に片付けて、


    「おつかれさまです」


    すぐに会社を出た。

    いつもより3時間は早い退社時間に、

    擦れ違うスタッフの子たちが驚いているのが見て取れる。



    「デートですか」


    エレベーターホールでエレベーターを待っていると、後ろから声がした。

    派遣のスタッフの一人がちょうど帰るところだったのか、

    私の後をついてきたらしく、人懐こい笑顔を浮かべて立っている。

    先月あたりにうちの会社に来て、最近わりと話すようになった子だ。


    「まぁね」


    そう言って微笑む。

    派遣の彼女は私を見上げるようにして「いいなぁ」と呟いた。

    エレベーターの中で並ぶと、私はずいぶん身長が高いなと思わされた。


    小さくて、かわいらしい。

    彼女は男の人にモテるだろうな、と漠然と思った。

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■13722 / ResNo.3)  親友に恋した、はるかの場合。《3》
□投稿者/ れい 一般♪(6回)-(2006/02/25(Sat) 23:18:41)
    ここまでで、メールを返してから十分。

    駅のホームまでこのまま歩いて十分、

    乗り換えのタイムラグに五分をみて…

    残りはあと十五分。

    向こうに着いてから歩く時間を考えると、

    確実に間に合わない。


    弱ったな…走るしかないか。


    ビルを出たところで、派遣の子に


    「ごめん、急ぐんだ。走るね」


    「あ、はい!がんばってくださいね!!」


    そう告げて駅までハイスピードで走った。

    社会人になってまで、こんなに全力疾走するなんて。

    社会人になってからだいぶ経つせいか、体力の衰えが感じられたが、

    彼女に会える喜びで、気分が学生の頃に戻っているのが感じられて、少し笑った。

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■13725 / ResNo.4)  親友に恋した、はるかの場合。《4》
□投稿者/ れい 一般♪(8回)-(2006/02/25(Sat) 23:56:03)
    「おまたせ」

    そう言ってスタバに着いたのは、メールを出してから四十五分後。

    彼女はテーブル席に座って、フリーペーパーを眺めていた。

    私の姿を認めると、ふんわりと微笑む。

    その一瞬にして空気が緩む感じが私は好きだった。


    そこに私がいてもいいと、認められている感じがして。


    「お仕事、おつかれさま。大丈夫だったの?こんなに早く出てきちゃって」


    私が毎日残業続きで帰りが遅いのを知っている彼女が、

    心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


    「ん、平気平気。なんとかなるよ」


    そう軽く返して、私は彼女の向かいの席に座った。


    彼女は今日がおやすみだったらしく、仕事帰りにたまに会える日に比べて

    メイクも服装もずいぶんときれいに整えられていた。


    改めて見て、彼女はきれいになったなぁと思わされる。

    高校の頃から、周りの友達に比べて夏子はきれいな方だったけれど、

    彼女は歳を重ねるごとにきれいに、魅力的になっていく。


    「今日、ありがとうね。いきなり呼び出してごめんね」

    「いや、私も夏子に会いたかったしさ」


    心の底からの本心をそうして言葉にすると、彼女は嬉しそうに笑って


    「ありがとう。そういってくれると、すごく嬉しい」


    私の目をじっと見て、そう言った。


    彼女のその言葉に顔が赤くなりそうになる。なったかもしれない。

    白熱灯の照明で良かった。多少ごまかせてはいるだろう。

    私は、更に赤くなって夏子に不審がられないよう、慌てて彼女から目を逸らした。


    ――きれいになったね。


    言おうと思っていたその一言は、そんな状態の私には言えるわけもなく。

    赤面している私の心の中に、今はまだ、そっとしまっておくことにした。

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■13727 / ResNo.5)  親友に恋した、はるかの場合。《5》
□投稿者/ れい 一般♪(9回)-(2006/02/26(Sun) 00:26:41)
    表参道近く、青山通りのスタバを待ち合わせに指定した時点で、

    電車での移動中に、今日行く店はピックアップしてあった。

    地下に階段を降りていく、ライティングのきれいなイタリアン。

    店員さんがイケメン揃いなのは場所柄だろうか。

    ここはお料理も、スウィーツもわりとおいしい。

    甘いもの好きの彼女を連れて行くのには打ってつけの店だった。



    彼女との日々の報告のような会話、最近あった出来事を一通り話し終え、

    食後のコーヒーとケーキを食べていたときに、彼女はその話を切り出した。


    「ね、はるか。WEBで日記とか、書いてるって言ってたよね?」

    「え、あ…うん。どうしたの、いきなり?」


    そういえば書き始めの頃、二人で飲んでいるときに彼女に話したのかもしれない。

    機械があまり得意ではない彼女はPCもその例外ではないらしく、

    その手の話には普段興味すら示さないのだけれど。


    その彼女にしては急な話題だったので、私は動揺した。

    最近、大流行しているブログについて書いてある雑誌の記事でも読んで、

    自分もやってみようとでも思ったのだろうか。



    しかし、なんだか厭な予感が、尾骶骨のあたりから伝わってくるのをわたしは感じていた。


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■13728 / ResNo.6)  親友に恋した、はるかの場合。《6》
□投稿者/ れい 一般♪(10回)-(2006/02/26(Sun) 00:36:16)
    どうしたの、との私の問いかけに、夏子は何故か言葉を躊躇っているようだった。


    「夏子?」


    らしくない彼女の行動を、不思議に思う。


    「…やっぱり、なんでもない」

    「夏子」

    「……。」


    彼女は普段、一度自分から振った話を、言葉を躊躇ったり、

    言いかけた話を撤回したりするタイプではなかったので、気になった。






    「ごめん。たぶんわたし、それ見つけちゃったかも」



    「えっ…」



    迷った末、夏子の口から発された言葉に思わず、言葉に詰まる。

    私の体から、血の気が引くのが感じられた。


    私のブログが、夏子に読まれた…?!


    それはまずいことになったと、瞬時に悟る。

    私の日記、ブログサイトは、仕事の愚痴が4割、その他の日常が1割、

    そしてほぼ半数は、他では決して口外できない、切なる彼女への想いを綴っていたから。


    そこが読まれた、ということは、私の想いが彼女に伝わってしまうということだ。




    確かに、Webなんかで彼女への想いを綴ってた私が悪い。

    それは自覚している。


    でも、それを本人に読まれていて、あまつさえその事実を

    彼女本人に突きつけられるなんて事態、誰が予想しただろうか。


    こんな事態、どうやって反応していいのかすらわからない。

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■13729 / ResNo.7)  親友に恋した、はるかの場合。《7》
□投稿者/ れい 一般♪(11回)-(2006/02/26(Sun) 08:59:56)
    私の頭はショート寸前で(いや、ショートしてたかも)

    私の口の端には、直前まで浮かべていた笑みが、

    薄ら笑いに変わってへばりついたままになっていた。


    「このサイト、違ってたらいいんだけど…」


    そんな私の胸中を知ってか知らずか、夏子は、最近買い換えたという

    PCサイトビューアのついた新しい携帯を操作して、

    丁寧にも、そのサイトをわざわざ私に見せてくれた。



    夏子が見せてくれたサイトは、紛れもなく私のブログサイトで、


    画面には、昨日の夜、私が書いた仕事の愚痴の日記が表示されていた。


    彼女が私の反応を待っているのが分かる。


    「えーと。んー…」


    いろいろ誤魔化してみようと試みたけれど、

    それを見られている以上、どう誤魔化していいのかすら、わからなかった。




    しばらくショートしていた頭が復旧するまで、そんなに時間はかからなかった。

    簡単なことだ。誤魔化しようがないものを一生懸命誤魔化そうとするから難しいのだ。

    「誤魔化しようがない」のだから、もう諦めるしかない。


    あと私に残された道はひとつだけだった。


    開き直るしか、方法がない。



    あとは、彼女がどう出るかだ。

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■13730 / ResNo.8)  親友に恋した、はるかの場合。《8》
□投稿者/ れい 一般♪(12回)-(2006/02/26(Sun) 09:18:47)
    2006/02/26(Sun) 09:35:37 編集(投稿者)

    少しだけ椅子を後ろに引いて、椅子の背もたれに寄りかかるようにして座り直した。

    彼女の表情をみることなんて、できなかった。

    食事の時に散々飲んだワインの酔いが、一瞬にして抜けたのが分かった。


    「…全部、よんだ?」


    やっとの思いでそれだけ質問する。


    「三分の一くらい…かな…」


    三分の一読んでいて、彼女のことを書いた記事だけを

    運良く読み逃しているなんて都合のいい話は、まずありえない。



    「…あー…。じゃあ、読んだ、よね?」



    「…うん」


    念のため、確認してみる。

    何を“読んだ”のかは、言わなくても当然伝わっていた。

    分かってはいたけれど…絶望的な気分になる。


    まさか、今まで細心の注意を払って彼女に接してきた私の気持ちが、

    こんな形で彼女本人に伝わってしまうとは思わなかったから。

    泣きたい気分だった。


    「軽蔑、した?」


    「そんなこと、ないけど…」

    「…けど?」


    「……。びっくりした」


    彼女が当然の感想を漏らす。


    「そりゃ…そうだよね。……なんか、ごめんね」


    「あやまらないで」



    気分がどんどん落ち込んでいくのが分かる。

    会話を続けていないと、泣いてしまいそうだった。

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■13731 / ResNo.9)  親友に恋した、はるかの場合。《9》
□投稿者/ れい 一般♪(13回)-(2006/02/26(Sun) 09:44:13)
    「どうやって、私のサイトを発見したの?」


    軽い、世間話でもするように、努めて明るく彼女に話を振った。

    自虐的な気分になっている。

    これ以上聞いてしまったら、傷が深くなるのは目に見えているというのに…


    「リンクサイトから…」

    「リンクサイト…?」


    てっきり、Yahoo!やGoogleなどの検索サイトから来たのだと思っていたから、

    その返答は予想外だった。リンクサイトと言ったら、思い当たるのはひとつしかない。

    私のブログは、ひとつ、ビアン系のリンクサイトに登録している。

    そのサイトのリンクは、当然ビアン系のサイトばかりのはずだった。



    「ねぇ、はるか。はるかの日記に書いてあった人って…わたしだよね?」


    今更ながらに、夏子はそんなことを確認してくる。

    あの日記を読んだのなら、そんなの本人なら明白なのに。

    高校の頃の思い出から何から、あそこに全部吐き出してあるのだから。

    分かっていて、私の傷を深くしたくて、そんなことを聞いてくるのか…


    「そうだよ」


    少し、ふてくされたように彼女に返事をした。


    「はるか」

    「何?」

    「わたしも、はるかが好き」



    「え?」


    予想外の展開に、また、頭がショートしかけた。

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