ビアンエッセイ♪

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■14223 / ResNo.10)  【handclap】
  
□投稿者/ 秋 一般♪(3回)-(2006/04/17(Mon) 13:56:37)
    私の夢はお嫁さんです。

    ただのお嫁さんではありません。


    あの人の、花嫁になりたい。


    けれどそれは、どうしたって叶わないので。

    口にすれば、いつだってあの人を困らせてしまうだけなので。

    いつまでも私は、夢を見続けるのです。



    しかしながら、
    最近になってようやく気付く事ができました。

    私はあの人の花嫁になれやしないし、
    あの人は私の花婿にはなれないけれど。

    ふたりで居る事はできるのだ、と。

    あの人が隣で笑う日々は、それはそれは幸せだから。
    紙キレ一枚に誓う愛などいらないと、私はようやく気付いたのです。



    だから、願いません。
    あの人とのこの先以外は。
    何も、いりません。



    それでも、ささやかな何かを望んでいいのなら。

    純白のドレスを纏って寄り添うふたりへ。

    皆さん、どうか。

    どうか、小さな拍手を。

    (携帯)
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■14224 / ResNo.11)  【pillowtalk】
□投稿者/ 秋 一般♪(4回)-(2006/04/17(Mon) 13:57:51)
    隣で眠る彼女がもぞもぞと動く気配がした。
    「ねぇ、まだ起きてる?」
    掛けられた声の方へ寝返りを打つ。
    「眠れない?」
    手を伸ばすと、わずかに冷えた彼女の頬に触れた。
    「寝たくないの」
    私の手に自身の手の平を重ねた彼女は、吐息を漏らすように答えた。
    「何だかもったいなくて」
    くすりと笑う。
    「…二人で夜を過ごすのが?」
    私は彼女の小さな頭を引き寄せた。
    「そう、二人で夜を越えるのが」
    目が覚めれば一緒に朝も迎えるよ、耳元で囁くと「ほんと嘘みたい」また小さく笑った。
    「今度はいつ、こんな夜が来るかしら」
    独り言のように呟く彼女は、何だか心許ない。
    「寝るわ」
    私に答えを求めるでもなくそう言うと、私の腕からすり抜け、枕に顔を埋めた。
    「もうちょっとお喋りしようよ」
    私を起こしたのはあなただ、拗ねた口調で言ってみせたら、小さく吹き出す声が聞こえた。
    「子供みたい」
    「どうせ」
    「いいわ、どんな話を?」
    「そうだな…それじゃあ少し未来の話を」
    布団の中で彼女の手を探り出す。
    指と指とを絡めて。

    「この旅行から帰ったら、一緒に住もうか」

    細く華奢な彼女の指は、強く強く私の手を握り返した。


    そんな、或る夜のお話。

    (携帯)
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■14225 / ResNo.12)  【know】
□投稿者/ 秋 一般♪(5回)-(2006/04/17(Mon) 13:58:57)
    がたがたと電車は走る。

    平日昼間、田舎町のローカル線。
    降り損ねてしまったあたしと彼女は、がらがらの車内で肩を寄せていた。

    「今頃2限だ」
    「数学か。プリントやってないや」
    「やってても無意味じゃない?」
    「そりゃそうだ」

    他に乗客などいないのに声を潜めて、くだらない話にくすくす笑う。

    「さて、どうしよう」
    「そろそろ引き返す?」
    「遅刻ついでだ。どうせなら終点まで行こう」

    あたしはこくんと頷いた。


    沈黙の中、ゴトゴトと軋む車輪の音がやけに大きく響く。
    あたしは彼女の肩に頭を傾け、寝た振りをした。
    それに気付いた彼女が「寝た?」尋ねても。
    あたしはくぅくぅとニセモノの寝息を立て続ける。
    彼女はほっと息をつき、「今日は、付き合ってくれてありがとう」呟いた。
    「先生と不倫してる、なんて。驚かせちゃったね」
    ゆったりと言う。
    「でも昨日でちゃんと終わらせたから」
    泣きそうな、優しい声だった。


    あなたの終点が、あたしだったらいいのに。


    「…好きよ?」
    目を閉じたまま小さく漏らすと、

    「知ってる」
    苦笑するような、けれど柔らかなあなたの声が耳に届いた。


    あたしの終点は、いつだってあなただ。

    (携帯)
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■14226 / ResNo.13)  【we】
□投稿者/ 秋 一般♪(6回)-(2006/04/17(Mon) 13:59:55)
    ふたりで映画を観ていると、必ず彼女の機嫌を損ねる。

    「一緒にいるのに何だか独りぼっちなんだもの」

    そんな事を言われても、私は大の映画好きで、誰と居ようが一人で観ようがその世界にとっぷり浸ってしまうのだ。

    困ったなぁ、苦笑する度に彼女は頬を膨らませる。
    その仕草が小動物のようで、それはそれは愛らしいものだから、昔飼っていたハムスターを思い出してめちゃくちゃに甘やかしてしまいたくなる。

    「映画の後は構いたがりね」
    本当に気まぐれなんだから、溜め息を吐く彼女にちょっかいを出しては睨まれて、それでも愛しくて堪らない。

    その内にソファへと腰掛け大好きな推理小説を読み出す彼女は、べたべたと引っ付きたがる私を煩わしそうに払い除ける。
    終いにはしっしっと犬にするそれのように、手をひらひらと振る始末だ。
    私がうーと唸ってみせても、彼女は全く見向きもしない。
    何とも言えない寂しさ。

    ふと、思い当たって。

    私のあれも。
    彼女のこれも。
    つまりはそう、同じ事。

    だから黙って彼女の横にちょこんと座ると、視線を本へと落としたまま私の頭を優しく撫でた。



    今度二人並んで映画を観る時は、隣へとそっと手を伸ばしてみよう。

    (携帯)
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■14227 / ResNo.14)  【end】
□投稿者/ 秋 一般♪(7回)-(2006/04/17(Mon) 14:00:57)
    前の恋人に似てるんですって、私。

    だからあなたと付き合っていたのだと、別れを切り出されちゃいました。

    申し訳なさそうに顔を伏せて何度もごめんなさいを呟く彼女が何だかいたたまれなくて、あぁこの華奢な肩を今すぐ抱き寄せてはいけないだろうか、などと別れ話の最中に本気で考えていた私です。


    だってね、私。
    悲しみよりも怒りよりも、何よりも先に。


    その人に似ている¨私¨という存在があなたの救いになっていたのなら、私はそれで構わないのに。


    ただ単純に。
    心の底からそう思ったんです。


    だってそれは私にしかできないんだから。

    例え代わりだったとしても。



    素直にそう伝えると、
    「馬鹿ね…」
    なんて悪態を吐きながら、彼女はようやく今日初めての笑顔を見せてくれました。



    「私」を好きになっていきたい。

    そう言ってくれたから。
    私には小さくこぼれたこの言葉だけで十分です。



    気まぐれなあなたに付き合えるのは、私だけでしょう。
    戯れが過ぎる私に付き合えるのも、あなたしかいないのです。





    今まで、を終わらせて。これから、を始めませんか。

    ねぇ?
    私と貴方で。

    (携帯)
完結!
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■14230 / ResNo.15)  秋さん!
□投稿者/ N県民 一般♪(1回)-(2006/04/17(Mon) 21:59:24)
    こんばんわ!
    久しぶりの秋さんの更新、嬉しく思います☆
    やっぱり秋さんの文章は何だか暖かくて、それでいて不思議な感じがします(^^*
    この話は…endってことは終わりでしょうか?
    どのシリーズも大好きですけどね♪やっぱり私としては、BLUE AGEの続きが早く読みたい…
    あわわ、急かすなんて無神経、とお叱りを受けそうですが(~~;
    これからも素敵な文章を待ってます!
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■14960 / ResNo.16)  N県民さんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(1回)-(2006/06/12(Mon) 14:37:35)
    感想、ありがとうございます。
    お礼を言うのが大変遅くなってしまいました。
    こちらは【end】で終わりとなっています。
    BLUE AGEも読んでいてくださったようで、とても嬉しく思います。
    そちらの方も、ようやく本日完結させる事ができました。
    お暇な時にでもご覧いただけたら幸いです。



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■20565 / ResNo.17)  Re[1]: play of words
□投稿者/ ゆう 一般♪(2回)-(2008/02/13(Wed) 00:42:17)
    一気に読みました!秋さんの書いた文章にひきこまれます
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■21496 / ResNo.18)  皆に読んで欲しい
□投稿者/ 匿名希望 一般♪(38回)-(2012/04/26(Thu) 04:28:57)
    秋先生の作品は、触れたら壊してしまいそうで怖くなる、そんな綺麗な小説です。ホントにすべての人に読んで欲しい。

    (携帯)
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