ビアンエッセイ♪

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■14126 / 親記事)  心のアルバム
  
□投稿者/ 雅 一般♪(1回)-(2006/04/07(Fri) 08:01:46)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    消失したここの板で、途中まで(30話位?)投稿させていただいていました小説です。
    以前、沢山の感想をいただいていましたので、大変申し訳なく思い、この度HPにて完結いたしましたので、まとめて投稿させていただきます。

    是非感想などお寄せいただければ幸いです。(^^)


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■14127 / ResNo.1)  1
□投稿者/ 雅 一般♪(2回)-(2006/04/07(Fri) 08:04:09)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    そっと、目を閉じてみたら



    そこに現れたのは


    古ぼけた表紙の1冊のアルバム・・・。



    開けてみましょうか。。




    思い出の1ページ。


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■14128 / ResNo.2)  2
□投稿者/ 雅 一般♪(3回)-(2006/04/07(Fri) 08:05:30)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    あの頃・・・

    女性を愛することなんて、ありえないと思っていた。


    ただ心の中は、

    ぽっかりと穴が開いたように・・・


    寂しいのに、それを口にすることさえせず

    気乗りしない誘いも、断ることもできない。


    「今日、皆でケーキ食べに行こうって話あるんだけど、行く?」


    「うん。じゃ、頑張って早く仕事終わらすね。」


    楓は、私と違って明るく活発で、同期の中でもリーダー的存在だった。


    終業のチャイムが鳴って暫くすると、電算室の扉が開いて楓がひょこっと顔を覗か

    せた。


    「可憐。終われそう?」


    「うん。後、10分くらいで終わるかな・・」


    「じゃ、先に更衣室行って着替えて待ってるから。」


    可憐が頷くと、楓は微笑んで部屋の扉を閉めた。


    可憐は、小さくため息をついた。

    今日は、朝から体調が余りすぐれなくて、たまにクラッと目眩がする。

    少し熱っぽい。

    昔から、そういうことを他人に漏らすようなことに慣れてない。


    可憐は、打ち出しした書類のチェックをし、電算の電源を切った。


    更衣室に向かうと、女の子達の賑やかな笑い声が廊下まで響いていた。

    いつもの光景・・・。

    扉を開けると、化粧直しをする女性達で一杯になっていた。


    「お疲れ。遅かったね。他の皆は、先に店行って席確保してるってさ。」

    楓はそう言って、更衣室脇に置いてある長いすに腰掛けた。


    可憐は、ロッカーの鍵をあけ、制服を脱いだ。

    「可憐ちゃん。その下着とっても可愛いね。」


    隣のロッカーの同じ課の先輩が、可憐のブラを見てにっこり微笑んで言った。

    余りにまじまじと見つめられ、可憐は、顔を赤らめて慌てて黒いセーターを

    かぶった。


    可憐は、慌てて簡単に化粧を直して楓のところへ行った。

    「ごめんね。待たせちゃって・・・。」


    楓は、微笑んで

    「構わないよ。気にしないで。奈子先輩ももう来るはずだから。」


    「お待たせ。ごめんね、遅くなっちゃって。」

    お洒落な黒いセーターにベージュのパンツをはいた背の高い女性・・・。


    「奈子先輩。お疲れさまです。」

    楓が、ニコニコと立ち上がって言った。


    可憐は、その人に軽く会釈した。


    「お待たせ。」

    その女性は、可憐を見て、にっこりと笑って言った。


    こんな綺麗な人、会社にいたんだ・・・。

    目が大きくて、色白で・・・、スタイルも抜群で。。

    可憐は、その人に見とれていた。


    その時・・・

    それに気づいたのか・・・

    奈子先輩が、可憐の方を見て、フフっと微笑んだ。


    ハッと

    可憐は顔を赤らめて、目を伏せた。


    それがあの人との始まりの日・・・。
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■14129 / ResNo.3)  3
□投稿者/ 雅 一般♪(4回)-(2006/04/07(Fri) 08:06:25)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    お店に着くと、同期の面々が、しっかりと席を確保し、一人が、こっちに気がつい

    て、大きく手を振り手招きをしていた。


    「ワァー、奈子先輩だぁ〜」


    結構、同期たちは、彼女の事を知っているようで、奈子先輩は、同期に手を引かれ

    て席についた。

    楓はその隣の席についたので、余った端の席に可憐は腰かけた。


    「ここのミルフィーユが絶品らしいよ。どうする?」

    楓が、私に聞いてきた。


    「じゃ、それにする。レモンティで。」


    可憐は、ジャケットを椅子にかけた。

    余り食欲もないけれど、食事よりは甘いものの方がましだった。


    奈子先輩の参加で、同期たちは沸いていた。

    可憐は、運ばれてきたミルフィーユを口にしながら、その様子を笑いながら見て

    見ていた。


    少し、身体が、だるいな・・・。


    そんな可憐の様子に気づく者など誰一人いなかった。


    「美味しかった〜。ねね、後、皆で食事でもいかない?」

    同期の1人が、皆に声をかけた。


    楓が、今日は都合が悪いからと断った。

    可憐も、楓が断ったので、これ幸いと


    「私も、今日は・・・。」


    結局3人程が、食事に行くことになり、駅で皆別れた。

    可憐は皆と、電車の方面が逆方向だった。


    「じゃ、また明日ね。」

    可憐は、ホームへの階段のところで、皆に手を振った。


    「私も、こっちなの。じゃ、また明日ね。」

    奈子先輩が、そういって私の傍へ来て、皆に手を振った。


    「奈子先輩お疲れさまでーす。可憐、お疲れー、またね。」

    同期たちは、にこやかに手を振って、歩いて行った。


    「大丈夫?少し顔色悪いよ」

    奈子先輩は、優しく可憐の顔を見て、声をかけた。


    「大丈夫です。ありがとうございます。」

    可憐は、少し恥ずかしそうに、頭をペコリと下げた。


    ホームの椅子に奈子先輩と可憐は腰かけた。

    向かいのホームでは、賑やかそうに同期たちが騒いでいる。


    「賑やかねぇ。フフ」

    奈子先輩は、微笑んだ。

    向かいの電車が、到着し、電車の窓ガラス越しに、同期が手を振っていた。

    奈子先輩と、可憐も、にこっと笑いながら、手を振った。


    「次の駅で降りましょ。送っていってあげるから。」


    「えっ?」

    可憐は、驚いた。


    奈子先輩は、にっこり微笑んで

    「私の家、隣の駅前だから。顔色悪いし、車で送っていってあげる。」


    「そんな、悪いですから、いいですよ。大丈夫ですから。」

    可憐は、遠慮ぎみに奈子先輩に言った。


    「そんな遠慮なんていらないわよ。こんな時は先輩に甘えなさい。フフ」


    結局可憐は、言われるがまま、次の駅で降りた。


    「すみません・・。じゃ、お言葉に甘えます。」


    奈子先輩は、にっこり微笑んで、そっと可憐の肩を軽く抱きかかえるように歩いた。

    可憐は、緊張した。


    駅からほんの2,3分。

    「ここ、私の家。」


    こじんまりとした、5階建てのマンション。

    「ちょっと休憩したらいいよ。その後で送っていくから。」


    奈子先輩の部屋・・。

    きちんと整えられていて、女性らしい。

    クラッ・・・

    また目眩。。


    「遠慮は無用だから。真っ青だよ・・・。ベッドに横になってなさい。」

    脱いだ上着を、奈子先輩は、ハンガーにかけてくれた。


    「でも・・・」


    奈子先輩は微笑んで

    「気にしなくていいから。少し頭下げたほうがいいよ。ねっ」


    こんな風に気にしてくれる人いるんだなぁ・・・って

    何も言わなくても、気がついてくれる人・・・


    可憐は、なんだかほっとした不思議な気持ちだった。
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■14130 / ResNo.4)  4
□投稿者/ 雅 一般♪(5回)-(2006/04/07(Fri) 08:07:22)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    「ンン・・・。あっ、すみません。」

    可憐は、慌てて起き上がった。


    奈子先輩は、ベッドを背に、本を片手に持ってコーヒーを飲みながら、

    振り返って、にっこりと微笑んだ。

    「余りによく眠っていたから・・・。よく眠れた?」


    「はい。少し楽になりました。」

    可憐は、時計を見ると、既に8時を回っていた。


    「お腹すかない?お鍋でもどう?材料ならあるのよ。一人で食べても

    美味しくないし。ねっ。」


    奈子先輩はそういうと、立ち上がって台所に行った。

    モデル級に綺麗な人が、こじんまりとしたキッチンでスエット姿で

    料理してるって、何となく滑稽な感じがした。


    「いつも自分で作るんですか?料理。」


    奈子先輩は、笑いながら

    「見えない?でも結構ほとんど家で作って食べてるのよ。」


    いいお嫁さんになるんだろうなぁ・・奈子先輩って。。


    「さ、用意完了。」


    「何か運びましょうか?」


    「じゃ、コップとお茶碗と。はい、これもお願いね。」


    小さい食器棚には、ペアのマグカップが並んで置いてあった。

    やっぱり彼氏いるんだ・・。こんなに綺麗な人、ほっとかないよね。


    鶏肉と野菜が入ったお鍋と、野菜の盛られた皿が運ばれてきた。


    「さ、どんどん食べてね。」

    奈子先輩は、微笑んで可憐に言った。


    「はい。じゃ、いただきます。」


    可憐は、ぺこりと頭を下げ、お鍋に手をつけた。

    とっても温かくて、鶏肉も柔らかくて、とても美味しい。

    ふと、見ると奈子先輩が、微笑んで可憐を見つめていた。


    「美味しそうに食べるね。見てて気持ちいい。」


    可憐は、顔を赤らめて、俯きながら野菜を一つまみ口へ運んだ。


    「あのさ・・。無理しちゃだめよ。いっつも無理して周りに合わせる

    必要なんてないんだから。」


    奈子先輩は、食べながら可憐に呟いた。


    いっつも・・・。

    全然気がつかなかったけど、楓と一緒にいる時の私、どこかで

    見られてたのかも知れない・・・。


    「そんな風に見えますか?」

    可憐は、奈子先輩を見て言った。


    奈子先輩は、微笑んで頷いた。とても優しい目だった。

    可憐は、それ以上、その話には触れなかった。

    同じ会社の先輩・・・それも、楓と同じ課の先輩。


    「ごちそうさまでした。とっても温まりました。美味しかったです。」


    「やっぱり二人で食べた方が美味しいね。付き合ってくれてありがとう」

    そう言って奈子先輩は笑ってくれた。


    食べ終わって、ゆっくりお茶を飲んだ後、奈子先輩は時計を見てた。

    「じゃ、そろそろ送っていきましょうか。」


    「いえ、電車まだありますから、電車で帰ります」

    可憐は、すっと立ち上がった。


    「今日は、寒いしね。体調の悪い時は甘えたらいいのよ。」

    奈子先輩は、ウインクして可憐に言った。


    結局、奈子先輩に車で送ってもらうことになった。

    車で30分。助手席で、奈子先輩の運転する横顔を見た。

    鼻が通っていて、少し茶色い髪のウェーブが女らしくて・・・

    運転してる横顔もとても素敵だった。

    バックミラーに映る奈子先輩の目、とても綺麗・・・。


    その時、バックミラー越しに奈子先輩と目が合った。

    可憐は、慌てて目を反らせた。


    「そんなに見られると穴があいちゃう。フフ」


    バレてた・・。

    可憐は、とても恥ずかしくて何を言っていいのかもわからなかった。


    可憐の家についた時、母が車の音に気付いて、外に出てきた。


    「お母さん、会社の先輩に送ってもらったの。」


    母は、丁寧に頭を下げて、家でお茶でもと奈子先輩を誘った。

    奈子先輩は、もう遅いので、またあらためますと、頭を下げ

    そのまま帰っていった。


    可憐は、家に入ってから、部屋に戻って、今日のことを思い出していた。

    奈子先輩・・・、ほんと素敵な人・・・。
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■14131 / ResNo.5)  5
□投稿者/ 雅 一般♪(6回)-(2006/04/07(Fri) 08:08:07)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    次の日、可憐は急ぎの仕事が入って、残業だった。

    夜9時すぎ、ようやく仕事が終わった。

    同じ課の先輩3人も一緒だったが、会社の門の警備室の所で、可憐は携帯電話

    を忘れたのに気がついた。


    「すみません。先に行ってください。忘れ物ありますから。」


    「遅い時間だから、ここで待っててあげるから、早く取っておいで」


    可憐は、慌てて更衣室に戻った。

    人気のない更衣室。

    結構寂しい雰囲気・・・。


    ロッカーを開けると、上棚に、携帯があった。

    早く戻らなくちゃ。

    その時、


    ガチャ・・・。


    いきなり更衣室の扉が開いた。

    可憐は、ビクッとした。


    「あら・・。そんなお化けでも出たような顔しないの。ウフフ」

    そこには、奈子先輩が立っていた。


    「あっ・・・。お疲れさまです。」

    可憐は、ペコリと頭を下げた。


    「残業?珍しいわね。」


    「はい。あっ、夕べはありがとうございました。」


    奈子先輩は、にっこり微笑んだ。


    「今日の予定は?」


    「特に何もありませんけど・・・」


    「じゃ、一緒に雑炊食べましょう。夕べの残りのお鍋のだけど。」


    「でも・・2日もご馳走してもらうなんて、悪いですし・・・。下で、同じ課の先輩が

    待ってるんです。」


    「それは構わないの。遠慮しないで。私の駅の改札で待ち合わせましょう。私もす

    ぐ追いかけるから。」


    奈子先輩はそういうと、自分のロッカーへと歩いて行ってしまった。

    可憐も、先輩が待ってるので、慌てて下へ降りた。


    今日も奈子先輩の家で、食事・・・。

    本当に迷惑じゃないかしら・・・。


    可憐は、そんなことを考えながら、先輩達と駅に向かった。


    でも、可憐は、何だか嬉しかった。

    そんな時、先輩が


    「一緒にご飯食べに行く?」


    「すみません。私、予定があって・・。」


    「明日休みだもんねぇ〜。彼氏とデート、ゆっくり楽しんで。じゃ、お疲れさま」


    先輩達は、そう言って手を振って、駅前の店へと消えていった。


    彼氏か。。違うのに・・・。ウフフ。

    可憐は、一人微笑みながら、電車を待っていた。


    駅のホームで、奈子先輩と一緒になった。

    今日は、少し風が強くて、奈子先輩の髪が、ふわっと風で舞った。

    柔らかなウェーブの髪を手で押さえる仕草は、何か映画みたいに綺麗で

    少しの間、見とれてしまった。

    一瞬だったけど、風に乗って、髪の甘い香りが漂ってきた。


    いい匂い・・・。


    奈子先輩が、こっちを見て、にこっと笑った。

    可憐は、恥ずかしくなって、すぐ目を逸らした。


    奈子先輩に、見つめられると・・・。

    緊張してしまう・・。

    何か変だ、私・・・。
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■14132 / ResNo.6)  6
□投稿者/ 雅 一般♪(7回)-(2006/04/07(Fri) 08:09:09)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    2度目の奈子先輩の家・・・。


    「すぐ作るからね。ちょっと座って待ってて。」


    そう言うと奈子先輩は、服を脱ぎだした。

    可憐は、目のやり場に困った。

    白い肌に、チラリと見えた、胸の谷間・・・。

    そんなの、女同士だから、当たり前の光景なのに・・・。


    そんな可憐を見て、奈子先輩が、ちらっと見て微笑んだ。


    奈子先輩は、スエットに着替えるとキッチンの前に立った。


    何気なく、可憐は部屋を見渡した。

    すると、部屋の隅の棚の上にある、小箱に目が止まった。

    小さいけど、茶色のその小箱には、繊細な彫刻が施されてあって、

    とても素敵だった。


    「あっ、オルゴール?先週気に入って買ったのよ。開けてみてごらん。」


    可憐は、そっとそのオルゴールを手にとって、蓋を開けてみた。


    綺麗な音色・・・。

    聴いたことのない曲なんだけど、どことなく懐かしいような・・・

    温かい、優しい音色だった。


    「これ、何ていう曲ですか?」


    「それね、ヘンデルの私を泣かせてくださいっていう曲なの。珍しいでしょ。」


    確かに珍しい。普通オルゴールの曲の定番って何種類かあるけれど

    その曲は、聴いたことがない。


    「すごく綺麗な曲ですね。」


    「ええ。だから飛びついて買っちゃったの。フフ」


    そうこう言ううちに、雑炊が運ばれてきた。


    「お待たせ。熱いうちに食べましょうね。」

    卵がふわっとしていて、その上に刻み海苔が入っていた。


    「美味しい。」


    「ありがと」

    奈子先輩は、嬉しそうに微笑んだ。


    「ねぇ。明日とか予定あるの?」


    「特にないですけど・・・。」


    「良かったら、今日泊まらない?お母様には、私からもお願いしてあげるから。」


    「でも・・・ご迷惑じゃ・・・」


    「その方が楽しいし。ねっ?」


    奈子先輩は、電話を差し出して、可憐に渡した。


    「あ・・お母さん?今仕事終わったんだけど、今日、奈子先輩の家に泊めて

    いただこうかと思ってるんだけど・・・。」


    すると、奈子先輩がすぐに電話に出てくれた。


    「夕べは失礼しました。もう遅くなりましたし、良ければってお誘いしたんで

    す。・・・はい。全然私は、構いませんので。・・・はい。わかりました。失礼しま

    す。」


    電話を切ると、奈子先輩は、

    「よろしくお願いしますって。じゃ、これで決まりね。」


    母は、結構うるさい人だけど、同じ会社の人だし、夕べの礼儀正しさで、安心して

    いるのだろう。


    「じゃ、今日はお言葉に甘えます。」

    可憐は、ペコリと頭を下げた。
引用返信/返信 削除キー/
■14133 / ResNo.7)  7
□投稿者/ 雅 一般♪(8回)-(2006/04/07(Fri) 08:10:09)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    「ご馳走さまでした。とっても美味しかったです」

    「いえいえ。どういたしまして。」

    奈子先輩は嬉しそうに、微笑んだ。


    「ちょっと待っててもらっても、いいかな?」

    「いいですよ。」


    奈子先輩は、冷蔵庫から何やら袋を取り出した。

    「すぐ戻ってくるから。」

    そう言うと、そのまま出て行ってしまった。


    何所にいったんだろ・・・。

    可憐は、暫く待っていたけど、なかなか帰ってこない先輩が気になった。


    ちょっと外覗いてみよう・・・。

    可憐は玄関を出て、マンションの周りを見渡してみた。

    すると、1階の奥まった所に、奈子先輩のスエットがちらっと見えた。

    可憐は、下に降りてそっと、覗いてみた。


    あ・・真っ黒い子猫だ。

    奈子先輩は、餌を食べている子猫を、静かに見つめていた。

    優しい横顔・・・。


    「クロちゃん。今日はとっても可愛い人がうちに泊まるんだよ」

    子猫は、小さくニャァと言って、奈子先輩の足元に擦りよっている。


    可愛い人って・・・・私?

    可憐は、少し気恥ずかしくなった。


    気づかれないように部屋に戻らなきゃ・・・。

    可憐は、そっと部屋へ戻った。


    暫くすると奈子先輩が戻ってきた。

    「ごめんね、少し遅くなちゃったね。」


    奈子先輩はそれ以上何も言わなかったけど、

    また1つ、奈子先輩を知ることができたようで

    とても嬉しかった。
引用返信/返信 削除キー/
■14134 / ResNo.8)  8
□投稿者/ 雅 一般♪(9回)-(2006/04/07(Fri) 08:10:55)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    その夜、可憐は、奈子先輩と同じベッドで眠った。

    初め、ベッドで一緒に寝るって聞いた時は少し緊張したけれど、

    奈子先輩は、とっても温たかくて、次第に緊張もほぐれて、とても気持ち良かっ

    た。


    「ン・・・。」


    可憐は、夜中に目が覚めて、何気なく隣で眠っている奈子先輩を見た。

    奈子先輩は、とても静かに、優しい顔で眠っている。


    薄暗い部屋の中だったけど、

    微かな光でも

    何て、綺麗な人・・・。


    その時、パッと奈子先輩の目が開いた。


    「どうしたの?眠れない?」


    「・・・いいえ。ちょっと目が覚めただけですから。」


    奈子先輩は、ぐっと可憐の腕を引き寄せた。


    「腕枕して眠らせてあげる・・・」


    奈子先輩、寝ぼけてる?


    「あっ・・・」

    奈子先輩の柔らかい唇が、可憐の唇に触れた。

    温かい・・・。

    可憐は、不思議と抵抗もしなかった。

    相手は女性なのに・・・。

    きっと寝ぼけているんだ・・・。


    そのまま、可憐は奈子先輩の腕の中で眠った。


    朝、目が覚めたら、隣に奈子先輩はいなかった。


    「おはよう。夕べはよく眠れた?」

    奈子先輩は、優しい笑顔で現れた。

    可憐は、夜中の事を思い出した。

    普通の表情の奈子先輩・・・。

    きっと、覚えてないんだ・・・・・。


    「はい。よく眠れました。」


    「良かった。今ちょうど朝食できたとこだから。一緒に食べよっか」


    テーブルにスクランブルエッグと、サラダ。コーヒーにトースト。


    「じゃ、いただきます。」

    可憐はペコリと頭を下げて、コーヒーを一口飲んだ。


    可憐は、ふと奈子先輩を見た。

    食べている奈子先輩の唇・・・。

    夕べの・・温かかった唇・・・。


    私、何考えてるんだろう。

    奈子先輩は、寝ぼけてただけなのに。。


    「夕べ、あれからすぐ寝息が聞こえてたよ。ウフフ。」


    夕べって、どの夕べですか?

    可憐は、顔が真っ赤になったのが自分でわかった。


    「は・・はい。」


    「温かく眠れたでしょ。」

    奈子先輩は、にこっと笑った。


    覚えてるのか、覚えてないのか・・・

    微妙・・・。


    可憐は、そのまま黙って朝食を食べた。
引用返信/返信 削除キー/
■14135 / ResNo.9)  9
□投稿者/ 雅 一般♪(10回)-(2006/04/07(Fri) 08:11:32)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    二人で、話をしていたら、気がつくと、もう3時だった。

    「今から、ちょっとお出かけしない?」

    奈子先輩は嬉しそうに可憐に言った。


    「いいですよ。どこか行きたいとこあるんですか?」


    「ま、それは行ってのお楽しみ。歯ブラシとかは洗面所においといたから。後

    は、その辺りのもの勝手に使って。ウフフ。」


    可憐が、洗面所に行くと、そこには新しい箱に入ったピンク色の歯ブラシと、コッ

    プが置いてあった。

    奈子先輩は、ブルーの歯ブラシ。


    何か、恋人同士みたい・・・。

    可憐は、一人笑みを浮かべた。


    「用意できた?」

    洗面所でお化粧してたら、奈子先輩が覗きに来た。


    「はい、もう終わります。」


    「そんなたいしたとこ行くつもりないから、化粧しなくても良かったのに。」


    奈子先輩は、お化粧してなくても、綺麗だからいいけど・・・。

    可憐は、鏡に映った自分の顔を見てそう思っていた。


    「早くいかないと、時間なくなっちゃうよ。」


    奈子先輩は、どうやら急いでいるらしい。

    可憐は慌てて、口紅をひいた。


    奈子先輩は、ジーンズに白いニット。その上にジャケットをはおった。

    スラリと長身だけに、ジーンズ姿は見ごたえがある。


    「さ、行きましょうか。」


    車に乗って高速に乗って小1時間。

    波止場に到着した。

    冬の海にしたら、結構穏やかで、久しぶりだな・・・。海見に来るのって。


    奈子先輩は、海ギリギリのとで、車を止めた。

    周りを見ると、結構釣りを楽しむ人たちが、車を横付けにして楽しんでいる。


    「さ、今から夕食のおかずを調達するわよ。」


    「えっ??」


    どこをどう見ても、奈子先輩は釣りをするような風には見えない。

    冗談いってるんだろうな。


    奈子先輩は笑いながら、トランクを開けると、竿と、クーラーボックスを取り出し

    た。

    可憐は、目を疑ったけど、どうやら間違いないらしい。


    「はい、これ。可憐ちゃんに貸してあげる。ウフフ」


    奈子先輩に1本の竿を手渡された。

    先の針のところに、作り物の魚がついてある。


    「こうやって、持って、そうそう。そして、この瞬間に糸を離す。なかなか上手じ

    ゃない。」


    手取り足取りで教えてくれる奈子先輩。

    そっと、手に触れる、奈子先輩の温もり・・・息遣い・・・。

    可憐は、そっちの方に気を取られて、緊張した。

    奈子先輩に聞こえないかな・・・。この心臓の音・・・。
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