ビアンエッセイ♪

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■14146 / ResNo.20)  20
  
□投稿者/ 雅 一般♪(21回)-(2006/04/07(Fri) 08:18:54)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    奈子先輩は、優しく抱きしめてくれていた。


    「お腹すかない?」


    「うん。」


    奈子先輩は、ベッドから起き上がった。

    背中には、私のつけた無数の爪痕・・。

    少し血がにじんでいる。


    「先輩・・・。背中・・」


    奈子先輩は、にやっと笑って言った。

    「結構、痛かったわよ。ウフフ」


    可憐は立ち上がって、奈子先輩の背中にそっと寄り添った。

    「ごめんなさい・・・」


    可憐の舌先が、爪痕の上を這っていく。


    「アッァン」


    奈子先輩の肌に鳥肌が立ち、可憐の方に振り向いた。


    「そんな事したら、またしたくなっちゃうわよ」


    露わになった奈子先輩の乳首が反り立っている。


    「奈子・・先輩・・・・。」


    そっと可憐は、奈子先輩の乳首を口に含んだ。


    綺麗で柔らかな、ツンと上を向いた胸・・・。


    「アァァン・・可憐・・」


    奈子先輩は、可憐の頭に手を添え、ゆっくりと自らの茂った草むらへと

    可憐の舌を誘った。


    いい香り・・・。先輩の匂い・・・。


    可憐は、その茂みに舌を這わせた。


    「アァァァン、いいわ・・そこ、すごくいい。」


    初めてだったけど、自分がしてもらって気持ちいい事を

    先輩にもしてあげたい・・・。


    そして

    先輩の全てを

    舌と指で知りたかった・・・・・。


    その後・・・

    二人は、眠ってしまった。

    エクスタシーは眠りを誘う・・・。


    トゥルルルル・・・

    携帯の音で、可憐は目を覚ました。


    時計は既に11時をまわっていた。


    「もしもし・・」


    母からだった。

    残業って言っていたが帰りが遅いので電話をかけてきたらしい。


    奈子先輩は、よく眠っている。

    可憐は、起こさないように、静かに服に着替えた。


    帰り間際、そっと奈子先輩の唇にキスした。


    おやすみなさい・・・。


    ふと・・・

    部屋にかかっている奈子先輩のコートが目にとまった。


    先輩の香り・・・。


    あれ?この香り・・・・。


    肩のところのこの匂いって。。。


    楓の・・・・匂い?


    どうして・・・・。
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■14147 / ResNo.21)  21
□投稿者/ 雅 一般♪(22回)-(2006/04/07(Fri) 08:23:26)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    可憐は、帰り道、あのコートの香りの事が頭から離れなかった。

    ガランとした最終電車の中で、男の肩に女の子が頭を埋めて、見詰め合って話しを

    している。


    奈子先輩・・・

    もしかして、あんな風に、楓と・・・。


    まさか・・・

    そんなことはない。


    でも・・・

    今日の朝の会社での表情・・・

    あれも、何か関係あるの?


    あれは私の思い過ごし・・・。

    それなら、今夜だって誘ってくれなかっただろうし。

    きっと気のせいだ・・・。


    心の中で繰り返される、自問自答・・・。


    そこに何も真実を見ることはできないのに。。



    鼻に残る・・あの匂い。


    こんな風に考えている自分がとても嫌だった。



    奈子先輩に聞いたら、何て答えるんだろう。。

    でも、そんな事を考えているなんて知られたくない。

    イヤな女だって思われたくない・・・。


    駅から家までは少し距離があるので、タクシーに乗った。

    タクシーが家の前に着くと、家から母がでてきた。


    「遅かったわね・・・」


    「うん。急ぎの仕事だったの。疲れた・・。」


    母の視線が気になった。

    仕事で遅くなるっていってもこんなに遅くなったことは1度もない。


    母は、結構昔の女性っぽくて、そのあたりの考え方には、とても

    厳しい人だった。


    部屋に入って服を脱いだ。

    身体から、立ち込める奈子先輩の香り。。



    可憐はお風呂に入らずに、そのままベッドにもぐりこんだ。

    不安の消えない中で、奈子先輩の香りが身体に染みついているのは

    かすかな救いだった。


    今日、先輩に抱かれた・・・証。


    あの指で、そして唇で

    この身体を愛撫した証・・・。


    可憐は、その香りを何度も確かめながら、

    いつの間にか夢の世界へと入っていった。
引用返信/返信 削除キー/
■14148 / ResNo.22)  22
□投稿者/ 雅 一般♪(23回)-(2006/04/07(Fri) 08:27:20)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    次の朝、いつもの時間に電車に乗り、

    いつものように出勤して、いつものように仕事をこなした。


    心の中が穏やかだ・・・って言ったら絶対嘘になる。

    でも・・・

    思い出す度に、まだ身体に残っている先輩の感触が

    そのイヤな気分を少し和らげくれた。


    その日の仕事が終わって、更衣室に行った。

    少し、時間が遅めだったので、人もまばらだった。


    着替えていると、楓が更衣室に入ってきた。


    「お疲れ。可憐も遅かったんだね。」


    「うん。今日は少し最後バタバタって仕事がはいちゃって。」


    「そうなんだ。うちもトラブルがあったらしくてね。やっとさっき終わったのよ」


    着替え終わって更衣室を出る時、奈子先輩と、数人の先輩たちが更衣室に入ってき

    た。


    「お先に失礼しまーす。」


    楓が先輩たちに声をかける。

    可憐も、軽く頭を下げて、挨拶した。


    ちらっとしか見れなかったけど

    奈子先輩の顔は、いつものように穏やかな表情だった。


    何となく、可憐はほっとした。




    会社を出て、駅に向かう途中


    「ね、可憐・・・」


    楓が、いきなり真面目な顔で言った。


    「あのさ・・・。ん・・・、やっぱいいや。」


    「どうしたの?」


    「やぁ・・ん・・・あのさ、誰にも言わないでくれる?」


    「うん。誰にも言わないけど・・・。」



    ちょうどその時、駅の改札についた。

    「ん・・。やっぱいいや。気にしないで。じゃ、可憐。また明日ね。」


    可憐は、楓の言いかけてた事が奈子先輩の事なのではと、想像した。


    ホームへの階段を登ると、電車が発車しかけていた。

    可憐は慌てて飛び乗った。


    奈子先輩に会いたい・・・。

    そうだ。先輩の降りる駅で、少し待ってみよう。


    可憐は、先輩の降りる駅の改札前にあるコンビニで少し時間潰しをしていた。

    そこなら、寒さも感じずに先輩が降りてくるのが見えるから。


    昨日先輩に渡された合鍵はあるけれど、勝手に先輩の家に上がりこむのは、

    抵抗があった。


    4本目かの電車が駅に到着した。

    可憐は、ファッション雑誌を立ち読みしながら、ガラス越しに

    先輩の姿を探していた。


    あっ・・・・。

    その時、奈子先輩が、改札から出てきた。


    その隣には楓の姿があった。


    可憐は、呆然と二人を見つめていた。


    どうして?

    さっき楓、向かいのホームにいたはず・・。


    奈子・・・先輩・・・・。


    可憐は、暫く同じ姿勢で固まったままだった。

    可憐の頭の中は、真っ白だった。

    悲しいというより、何も考えられない状態だった。


    暫くたって、可憐は駅のホームに向かった。

    風が強くなってきて、その冷たい風が、さらに可憐の心に

    寂しさを募らせた。


    目に焼きつく二人の姿・・・。

    仲の良い先輩後輩・・・。可憐には、それだけとは到底思えなかった。


    時間がたつにつれ、可憐の目からジワジワと涙が溢れ出てきた。

    周りに気づかれないように、ハンカチでそっと拭っても拭っても、

    その泉の流れは、停まることを知らなかった。


    この気持ち・・・

    どう処理したらいいんだろう・・・。


    可憐の手に冷たいものがあたった。

    そっと顔をあげると、雪がチラチラと舞っていた。


    奈子先輩・・・。

    今、

    何をしていますか?
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■14149 / ResNo.23)  23
□投稿者/ 雅 一般♪(24回)-(2006/04/07(Fri) 08:27:55)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    その時、ポンと肩を叩かれた。

    ハッ。

    後ろを振り返ると、にっこりと微笑む楓がそこにいた。


    「どうしたの?何かあった?」


    「・・・。楓こそ、どうしたの?反対方面じゃなかったの?」

    可憐は、溢れてくる涙を拭きながら、答えた。


    「寒いしさ、時間あるなら、ちょっとお茶でもしない?」


    楓に誘われるまま、可憐は、改札を出て、駅前の喫茶店に入った。


    「雪だね。」


    「うん・・・」


    二人の間に、何とも言えない空気が漂っていた。


    「今日さ、奈子先輩のマンションにいる子ネコ見にきたんだ。頼まれててさ。うち

    で飼うかも知れない」


    可憐は楓の顔を見た。


    「可憐なら口固いし、信頼してるから言っちゃうけど。私、奈子先輩の事、

    好きみたい・・・。片思いなんだけど。。おかしいでしょ?」


    「そんなことないよ・・・。」


    片思い・・・。

    先輩と楓・・・何もなかったんだ。。

    可憐は心の中で少しほっとした。


    「でも、奈子先輩には・・・・。忘れられない人がいるんだよね。振られたんだ。夕べ

    私。」


    可憐は、耳を疑った。


    「先輩さ・・・。2年前まで、一緒に暮らしてた人がいたらしいんだ。結婚する予定

    だったんじゃないかな?一生一緒にいようって思ってたらしいから。」


    そう言えば・・・

    可憐は、ふと奈子先輩の家にあった、ペアの食器を思い出した。


    「バイクの事故で亡くなったらしいよ・・・。それからは誰とも付き合わない

    らしいけどね」


    楓は、運ばれてきた紅茶にたっぷりミルクを注いだ。

    私の知らない、奈子先輩の過去・・・。


    奈子先輩・・・。


    「先輩に、女性同士だから憧れみたいなもんでしょ?って笑い飛ばされた

    んだけどね。うまくはぐらかされちゃったんだけどさ。」


    その人のこと・・・。

    それも、結婚したいと思うくらい好きな人だったんだ・・・。


    それからも続いた楓の自分話には、相槌は打つものの、全く耳に入らなかった。


    可憐の殆ど口をつけなかった紅茶が冷えてきた頃、二人は喫茶店を出た。


    「今日のことは、内緒にしててね。じゃ、また明日」


    楓は、にこっと笑って、向かい電車に乗った。


    楓を乗せた電車が行った後、可憐は再び改札へと向かった。


    逢いたいよ・・・。

    先輩・・・・。


    可憐は、そのまま奈子先輩のマンションへと向かった。
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■14150 / ResNo.24)  24
□投稿者/ 雅 一般♪(25回)-(2006/04/07(Fri) 08:28:28)
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    奈子先輩のマンションにつくと、にゃぁと黒い子猫が傍にやってきた。


    あ…。先輩が餌やってた子猫だ。。


    「ほら、こっちおいで。」


    子猫は、可憐の足元に、擦り寄ってきた。

    可憐は、ひょいと子猫を抱き上げた。


    「寒いよね・・・。」


    可憐はコートの中に子猫を入れて、子猫を温めていた。

    すると、後ろから


    「クロちゃ〜ん。もぉ、何処行ったのかしら・・・。」


    後ろを振り返ると奈子先輩が立っていた。


    「あの…。ここにいますけど。」

    可憐は、コートの中からひっこり顔を覗かせてる子猫を指さした。


    奈子先輩は少し驚いたような顔をしていた。


    「玄関開けたら、いきなり飛び出していったのよ。さ、おいで。」


    可憐は、そっと子猫を先輩に渡した。


    「寒かったでしょう。家に入って休んでいって。」


    奈子先輩は子猫を抱えて、にっこり微笑んだ。


    奈子先輩の家に入ると、暖房がきいててとても暖かい。


    「そこのハンガー勝手に使ってて。今お茶入れるから」


    ふとテーブルを見ると、飲みかけの紅茶の入ったカップが二つ。

    多分、楓と先輩が使ったものだろう。。


    「さっき、楓と会いました・・・。」


    「そう。」


    奈子先輩は、それ以上何も言わなかった。


    「さ、温かいほうじ茶。」


    「ありがとうございます。」


    可憐は、コートをハンガーにかけて、温かいほうじ茶を飲んだ。

    身体が、冷え切っていて、ほうじ茶が、口から喉、そして食道を通っていく

    のがわかる。


    「で・・・。今日はどうしたのかな?」

    奈子先輩は、子猫を膝に抱きながら、可憐の顔を覗き込んだ。


    「楓から、聞きました。。楓、先輩のこと…」


    奈子先輩は笑って答えた。

    「あっは。あの子おしゃべりねぇ。でも、言っとくけど、何もないわよ。

    楓ちゃんとは」


    「あの…」


    「何?」

    不思議そうな顔で、奈子先輩は、可憐の顔を見た。


    「あの…。やっぱりやめときます。」


    「何?気持ち悪いじゃない、言ってよ。可憐」


    「先輩の過去の話…」


    「楓ちゃんから聞いたのね。聞きたい?」


    「・・・」


    奈子先輩は、子猫を撫でながら静かに話しはじめた。
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■14151 / ResNo.25)  25
□投稿者/ 雅 一般♪(26回)-(2006/04/07(Fri) 08:30:31)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    あれは・・・

    高校2年の冬季講習。


    「奈子。今日は急ぎだから、先出るね。」


    「うん。じゃ、また明日」


    受験を控えて、仕方ない。。

    そう思いながらも、

    何か、心に虚しさを感じてた。


    「ほら、これ。落し物」


    肩をポンと叩かれ振り向くと、

    私の手袋を持った

    ロングヘアの可愛い、女の子。


    「あ、ありがとう・・」


    その女の子は、手袋を手渡すと、にっこりと微笑んで

    そのまま、講習室から出て行った。


    次の日、講習が終わって、

    一緒に講習に通ってる友達と、駅前のクレープ屋に寄った。


    「ね、奈子さ、最近中山君と、連絡とってるの?」


    「ううん・・・忙しいしね。」


    「中山君も、奈子も、国公立目指してるんだもんなぁ。恋愛どころじゃない

    か・・。私には無理かな。そんな風に割り切ちゃうって。」


    奈子は、フフと笑った。



    ほんとは・・・


    「2年の冬までの期限付きで付き合わない?」


    ずっと好きだった中山君・・。

    だから、OKした。


    この1年間、とっても楽しかったし本当に好きでいてくれてるって実感もあった。


    初めて、男性を知ったのも彼。


    終業式のあの日まで・・

    すっかり忘れちゃってたのよね。。


    期限付きだったってこと。


    「今日で終わりにしよう。冬季講習とかで忙しくなるし。明日からはお互い

    別々で頑張ろう。」


    にっこりと笑いながら、終業式の後のデートで言われた言葉。。

    正直・・・かなりショックだった。


    でも

    そんなこと、人に言って聞いてもらっても

    かえって、自分を傷つけるだけ。


    だから、誰にも言わなかった。


    クレープ屋を出て、家に帰る途中

    電車の窓から外を見ていたら、いきなり雪が降ってきた。


    大きなぼたん雪。

    あっという間に辺りが雪景色に変わっていく。


    駅を降りて、家へ帰るまで5分。


    どてっ。

    「キャー!!」


    奈子は、鉄板の敷いてある所で、いきなり足が滑った。


    「痛っ。」


    足を挫いたのか、足首に激痛が走った。


    「大丈夫?」

    通りすがりの、バイクに乗った女性が、声をかけてくれた。


    バイクを降りて、フルフェイスのヘルメットを取ったその女性・・・


    「あっ。」

    昨日、手袋ひろってくれた、あの子。


    「大丈夫?立ち上がれる?」


    「うん。ちょっと痛いけど、何とかなる。」


    「家この近く?」


    「うん。。あそこに見えてる茶色の屋根の家。」


    結局、雪で危ないからと、その子に肩を借りて、家まで連れて帰ってもらう羽目と

    なった。


    「ほんと助かった。ありがとう。」


    「うん。構わないよ。」


    そういって、彼女はにっこりと微笑んだ。


    「もし時間あるんなら、お茶でも入れるよ。家誰もいないし。」


    「そ?じゃ、熱いコーヒーでもいただいて帰ろうかなぁ。バイクまわしてくるわ」


    それが、彼女との出会いだった。
引用返信/返信 削除キー/
■14152 / ResNo.26)  26
□投稿者/ 雅 一般♪(27回)-(2006/04/07(Fri) 08:31:11)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    「どうぞ。インスタントだけど」

    奈子が、コーヒーカップを差し出した。


    「あ、ちゃんとシップしといたほうがいいよ」

    熱いコーヒーを一口飲んで、その子は言った。


    まだ少し痛むが、滑った直後よりはずいぶん痛みも楽になってきていた。

    物置から薬箱を出して、シップを取り出すと

    その子は、


    「巻いてあげるから、私、結構上手だよ。フフ」

    綺麗なロングヘアを左手でかき上げながら笑った。


    「そうだ、私、小出 椿。椿でいいよ。古臭い名前でしょ?」

    奈子の右足首にシップを巻きながら、言った。


    「私は、友永 奈子。奈子って皆呼んでる。」


    「そうなんだ。奈子も、鉄板の上とか滑りやすいから、気をつけないとダメだ

    よ。はい。できあがり。」


    ほんと、手馴れた感じで、綺麗に包帯が巻けている。


    「上手だね。看護婦さんみたい。」


    「ハハハ。父母ともに医者でね。こういうのは子供の時からの見様見真似。」


    椿は、少し照れながら、髪をかき上げて言った。


    「も、もしかして、すぐそこの、小出病院の娘なの?」


    「うん。そうだよ。ちょっと呼ばれて、病院に行った帰り通りがかったの」


    「そうだったんだぁ。」


    小出病院は、奈子も子供の時からかかりつけで、よく親に連れていかれてた。


    「じゃ、椿はやっぱり医学部志望なの?」


    「ん。人間じゃなくて、動物の方を目指してるんだけどね」


    色々、塾の話や、志望校のこと・・・

    暫く、二人で話しをした。


    椿は、とっても話しやすくて、

    他の学校の子だったということもあってか、素直に話せた。


    「彼氏とかいないの?」


    奈子はその質問に少し躊躇したけど、今まで誰にも話せなかったこともあって

    まるで、機関銃のように、泣きながら椿に話した。

    椿は、その話っぷりに少しびっくりした表情だったけれど

    黙って、話を聞いてくれた。


    「私だったら・・・奈子にそんな傷つけるような事しないけどなぁ」


    椿は、そう言って、優しく肩を抱いてくれた。

    奈子は、椿の胸の中で泣いた。


    今まで布団の中で、一人で泣いていたけど

    泣ける場所があるという安堵感を

    奈子は、その時初めて知ったのだった。


    奈子が、そっと顔をあげると

    椿が優しい目で微笑んでいた。


    そして、

    そっと軽くだけど

    奈子の唇に、キスした。


    奈子は、びっくりした。

    女性にキスされたのは初めてだった。


    でも・・・

    不思議と、全然イヤじゃなかった。


    それから椿とは、

    塾で少し話す程度で、冬季講習が終わると、塾に椿の姿はなかった。


    多分、冬季講習だけを、この塾で受講したにすぎなかったんだろう。


    少し寂しい気がしたけれど、

    それからの受験勉強で、その記憶もどんどんと遠のいていった。
引用返信/返信 削除キー/
■14153 / ResNo.27)  27
□投稿者/ 雅 一般♪(28回)-(2006/04/07(Fri) 08:31:54)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    それから・・。4年。

    結局、某私大の推薦で大学に入学して、

    それまでの受験勉強からの開放感で、大学生活は遊びまくった。

    背も高いし、回りから担がれて、

    1年の時、ミスコンなるものに出場させられ、優勝してからというもの

    モデル事務所に所属したりして、

    お金もだけど、男にも不自由しなかった。


    レースクイーンにも事務所からの薦めで応募したら

    あっさりと優勝。


    ちょうど、その後、昔振られた、中山くんと同窓会で顔を合わせた。


    「レースクイーンやってるんだって?驚いたよ。」



    その日・・

    別に、今そんな気持ちとかじゃなかったけど

    懐かしい気持ちだけで

    中山君と、ベッドインした。


    「すっかり、ベッドテクニックもお手のものだね」


    フフと奈子は、鼻で笑った。


    そういうアンタは最低よ?

    彼女いる癖に

    女一人、イカすこともできないなんて。


    あの頃の私は、

    少し、イヤなタイプの高慢チキだったかも知れない。


    4回生になった時、就職活動で回りの話はもちきりだった。

    奈子は、モデル業のほうも、結構忙しくしてたので

    余り、実感はなかった。

    両親からも、そんな仕事は若いときだけなんだからと

    普通の就職を勧められていた。


    そんなある日、モデル事務所からの紹介で、

    あるホテルで、プロダクション関係の人と食事をした。


    その日は、そんなに飲んでなかったのに

    急に足がふらついて、一人で立てない状況だった。


    「上に部屋をとってあるから、そこで少し休んで帰りなさい。」


    その人に、抱えられるように、ホテルの部屋へと連れていかれた。

    はめられた。。

    心の中で、奈子は思った。


    案の定・・

    ホテルの部屋で、その人に抱かれた。


    「君・・今度のN社のCMの仕事してみないか?」


    ベッドで、その人が言った。

    この人に取り入れば、きっと大きな仕事がまわってくる・・

    だから、事務所も、私に紹介してくれたに違いない。


    ふとその時・・・

    自分のやってることが、単なる娼婦に見えた。


    「今日、何か私に飲ませました?」


    「どうしても君を手にいれたかったから、少しウォッカの量を多くしても

    らった。」


    どうりで、足がふら付いたわけだ。

    やっぱり見知らぬ人と、カクテルなんて飲むものじゃない。


    帰り際、

    「正式には、来週に事務所通じて、CMの件依頼入ると思うから。楽しみにしてなさ

    い」


    そう言って、その人は去っていった。

    結構、いい男だったな。フフ。
引用返信/返信 削除キー/
■14154 / ResNo.28)  28
□投稿者/ 雅 一般♪(30回)-(2006/04/07(Fri) 08:36:13)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    その日・・・

    何となく、自分が売春でもしたような・・

    とても虚しい気分がした。


    抱かれることは、別に初めてでもない。

    でも・・

    自分が望んだ上で、抱かれた訳ではなかったから

    こんな、気持ちになるんだろうか・・。


    奈子は、服を着て、ホテルの部屋を出た。


    ホテルのエレベーターボタンを押した。

    少し酔ってはいるけど、もう大丈夫だ。


    エレベーター扉が開いた瞬間

    「あっ!」


    二人ともが、指差しあって、叫んだ。


    それが、椿との再会だった。


    「奈子ちゃんだったよね。元気?びっくりしたよ」


    「うん。椿ちゃんこそ元気?」


    椿の笑顔は、全く変わっていなかった。

    お化粧もしてるし、少し大人っぽくはなっているけど。


    「どうしたの?こんなとこで。」

    奈子は、少し躊躇したが、仕事、とだけ答えた。


    「椿ちゃんは?」


    「うん。知り合いが、ここに泊まる予定だったんだけど。急に、帰ることになっち

    ゃって。だから、私一人、ここへ泊まっちゃおうかと思ってね。もったいない

    し。」


    笑いながら、髪をかきあげる椿を見た時、

    懐かしいなぁと思った。

    癖も変わってない。


    「時間あるなら、部屋にくる?」


    「うん。」


    何だか、ほっとしたようなそんな気分がした。

    部屋に入ると、さっき抱かれた部屋と、同じ作り。


    「奈子さ・・・。また何かヤな事あるんでしょ?」


    奈子はびっくりした。

    それは図星だったから。


    「さ、前みたいに話しちゃっていいよ。」


    椿の笑顔を見たとたん・・

    何が悲しいのか、自分でもわからないけど

    涙がいっぱい溢れてきて、止まらなかった。


    椿は、そっと奈子をベッドへ腰掛させて、隣に座ってそっと肩を抱いた。

    奈子は、昔みたいに、話さなかったけど

    ただ、そっと傍にいてくれている椿の温かさが

    身にしみて嬉しかった。


    椿もそれ以上、何も聞かなかった。

    多分・・・

    言いたくないことなんだろうと、察してくれたのだろう。


    少し落ち着いてきた時、

    椿は、そっと立ち上がって、紅茶を入れてくれた。

    ホテルのティーバックだったけど、

    温かくて、とっても美味しかった。


    「今日、泊まっていかない?良かったらだけど。私もちょっと色々あってさ。

    傍にいてくれてると嬉しいんだけど。」


    そんな経緯で、その日、二人でそのホテルで過ごすこととなった。
引用返信/返信 削除キー/
■14155 / ResNo.29)  29
□投稿者/ 雅 一般♪(31回)-(2006/04/07(Fri) 08:36:55)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    これ使っていいよ。

    1つづつしかない備え付けの浴衣とバスローブ。

    何となく、奈子は、バスローブを手にとった。

    シャワーを使って、何となくすっきりした。


    ふと・・・

    数年前の、あの柔らかい優しいキスを思い出した。

    女の子とした初めてのキス。。


    奈子と入れ替わりで入った椿は、残った方の浴衣をまとい、

    気持ちよさそうな清々しい顔で、バスルームから出てきた。


    「はぁ、すっきりした」


    冷蔵庫から、おもむろにミネラルウォーターを取り出し、

    1本を備え付けのコップに入れて、奈子に差し出した。

    椿は、喉を鳴らせながら、一気にゴクゴクと飲み干した。


    「今日人が泊まる予定だってってのね、あれ嘘なんだ」


    「え?」

    奈子は、さっぱり椿の言っている意味がわからなかった。


    「ちょっと疲れちゃってさ。少し頭休めにここ予約してたの。

    いつも、疲れがたまると、ここに泊まるの。

    ほら、すごく夜景が綺麗に見えるでしょ?」


    そういって、椿はカーテンをあけた。

    最上階に近いこの部屋からの眺めは確かに素晴らしい。

    でも、奈子はそれよりも、椿の行動に興味があった。


    「で、椿はやっぱり獣医学科に進んだの?」

    椿は、無言だった。

    どうやら少し事情があるらしい。


    「何かあった?」


    「ん・・・」


    ちょっと考えるようして、俯き加減に椿は言った。


    「辞めちゃったの。大学。」


    「えっ?」

    奈子は、少し驚いた。


    「ちょっと問題起こしちゃってさ、いれなくなったんだ。学校に。」


    「何があったの?イヤなら話さないでいいけど・・」


    椿は、奈子の方を見て、苦し紛れな顔でにこっと微笑んだ。


    「私、先生を殺しちゃったんだ。」


    奈子は絶句した。

    頭の中が混乱して、次の言葉がでてこなかった。


    「大学に入学して、講師の先生だったんだけどね。。

    お互いに、何処となく惹かれあって、付き合いだしたんだけど。

    ほんと、一緒にいれる時間が楽しくて、そして愛おしかった。

    年上だなんて、ちっとも感じさせない可愛い人でさ。

    私の運転するバイクの後ろに乗るのが好きで、よく走ったの。

    ・・・でもね・・・」


    椿は、言葉が詰まった。

    目には、うっすらと涙が光っていた。


    「私の悪ふざけ・・で。。掴まっていた・・・はずの手が。。」


    椿は、それ以上何も言えなくなっていた。

    奈子は、その先は、聞かなくても理解できた。


    奈子は、そっと、椿を抱きしめた。


    「もういいよ。椿・・・」
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