| それから・・・
二人は、自然な形でベッドを共にした。
それは
とても、とても悲しくて
虚しいそれまでの自分自身をなだめるかのように・・・
ただ、それだけのための
激しく、悲しい愛撫だった。
でも、奈子にとっても、
さっきまでの意思とは関係ない、男とのベッドの記憶が
激しい愛撫で、頭が真っ白になって
どんどんかき消されていくのが
心地よかった。
「ごめん・・・」
椿は呟いた。
「ね、椿の好きだった人って、女の人だったの?」
椿は、静かにうなづいた。
椿は、好きになった人はいつも女性だったらしい。
「私、女の人に抱かれたの初めてだよ。」
奈子は、少し微笑んで、椿に言った。
椿は、それについては、何も言わなかった。
「あの時さ・・・何でキスしたの?」
奈子の質問に、天井を見ながら、椿が答えた。
「可愛いって思ったから。」
その日から・・・
二人でたまに会うようになった。
いつも連絡は、椿からだけだったけど・・
何故なら・・・
椿の連絡先は、わからなかったから。
「奈子、最近少し変わったね」
大学の友達たちに言われた言葉。
自分では余り気づいていなかったけど、
椿と会うようになってからというもの、椿以外の人に身体を許す事はなかった。
モデル事務所から以来されたCMの依頼も
あの忌まわしいことでの代償なだけ・・
だからその仕事は断った。
「もったいないよ。こんなチャンスなかなかないよ。」
事務所の社長に散々いわれたけど、
断固として、意思を曲げることはしなかった。
就職活動も真面目にした。
幸い、今の会社に内定をもらった。
両親も、そのことをとても喜んだ。
椿はといと・・
後でわかったことだけど、親の経営する病院の事務局で働いていた。
あの事故のことで、学校でかなりの噂になり、
両親にも、セクシャリティがばれてしまったらしい。
当初、両親もかなり傷ついている娘の心中を察して、その話に触れないでいたら
しいが、早く結婚させたほうが、娘のためだと、落ち着いた頃には
見合い話を何度となく持ってきた。
その度に、言い争いが絶えないらしく、
それに疲れた時、度々、家を抜け出して、あのホテルで過ごしていると
いうことだった。
連絡先も教えてくれなかったのは・・
両親の目が相当厳しいらしく、奈子に迷惑をかけたくないという椿の配慮だった
のだった。
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