ビアンエッセイ♪

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■14156 / ResNo.30)  30
  
□投稿者/ 雅 一般♪(32回)-(2006/04/07(Fri) 08:37:33)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    それから・・・

    二人は、自然な形でベッドを共にした。

    それは

    とても、とても悲しくて

    虚しいそれまでの自分自身をなだめるかのように・・・


    ただ、それだけのための

    激しく、悲しい愛撫だった。


    でも、奈子にとっても、

    さっきまでの意思とは関係ない、男とのベッドの記憶が

    激しい愛撫で、頭が真っ白になって

    どんどんかき消されていくのが

    心地よかった。



    「ごめん・・・」

    椿は呟いた。


    「ね、椿の好きだった人って、女の人だったの?」


    椿は、静かにうなづいた。

    椿は、好きになった人はいつも女性だったらしい。


    「私、女の人に抱かれたの初めてだよ。」

    奈子は、少し微笑んで、椿に言った。


    椿は、それについては、何も言わなかった。


    「あの時さ・・・何でキスしたの?」

    奈子の質問に、天井を見ながら、椿が答えた。


    「可愛いって思ったから。」



    その日から・・・

    二人でたまに会うようになった。

    いつも連絡は、椿からだけだったけど・・


    何故なら・・・

    椿の連絡先は、わからなかったから。



    「奈子、最近少し変わったね」

    大学の友達たちに言われた言葉。


    自分では余り気づいていなかったけど、

    椿と会うようになってからというもの、椿以外の人に身体を許す事はなかった。


    モデル事務所から以来されたCMの依頼も

    あの忌まわしいことでの代償なだけ・・

    だからその仕事は断った。


    「もったいないよ。こんなチャンスなかなかないよ。」

    事務所の社長に散々いわれたけど、

    断固として、意思を曲げることはしなかった。


    就職活動も真面目にした。

    幸い、今の会社に内定をもらった。

    両親も、そのことをとても喜んだ。


    椿はといと・・

    後でわかったことだけど、親の経営する病院の事務局で働いていた。


    あの事故のことで、学校でかなりの噂になり、

    両親にも、セクシャリティがばれてしまったらしい。


    当初、両親もかなり傷ついている娘の心中を察して、その話に触れないでいたら

    しいが、早く結婚させたほうが、娘のためだと、落ち着いた頃には

    見合い話を何度となく持ってきた。

    その度に、言い争いが絶えないらしく、

    それに疲れた時、度々、家を抜け出して、あのホテルで過ごしていると

    いうことだった。


    連絡先も教えてくれなかったのは・・

    両親の目が相当厳しいらしく、奈子に迷惑をかけたくないという椿の配慮だった

    のだった。
引用返信/返信 削除キー/
■14157 / ResNo.31)  31
□投稿者/ 雅 一般♪(33回)-(2006/04/07(Fri) 08:57:54)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    大学の卒業式も終わり・・

    社会人1年生になった時、二人の関係もすっかりと定着したもの

    となっていた。

    でも、奈子の中では、その定着した関係が、どういう関係であるのか

    とても、疑問で、それを考えると、何とも言えない不安な気持ちが芽生えだして

    いた。


    ある日・・・

    いつものようにベッドでの情事が終わって、


    「ねぇ・・私たちの関係って何なのかな?」

    奈子の言葉に、椿の返事はなかった。


    奈子の心は締め付けられるように重く苦しかった。

    この気持ちは・・


    そう・・自分の思いに、はっきり気づいた瞬間だった。


    「あのさ・・。来週の奈子の誕生日まで、その返事待ってくれる?」


    別れ際、椿はそういい残して家へ帰っていった。


    今日は特に・・・

    それぞれの家へ帰っていく瞬間がとてもいやだった。

    寂しいような、悲しいような

    何とも言えない、この気持ち・・・。


    それから1週間。

    椿からの連絡もなく・・・


    今日は、私の誕生日。

    忘れちゃってるのかな・・椿・・。


    仕事が終わって、門を出ると

    そこには、にっこりと笑った椿が立っていた。


    「お疲れ♪」

    奈子は、驚きを隠せなかった。


    「どうしたの?そんなびっくりした顔して。。」

    椿は、照れくさそうに髪をかきあげて、笑った。


    「忘れちゃったのかと思ってた・・」


    「忘れる訳ないじゃない。何いってんの?」


    椿はそう言って、奈子の頭をコツンと小突いた。


    「今日はね・・。ま、私についてきてよ。ねっ?」


    電車に乗って、数十分。

    椿は、行き先を全く教えてくれない。


    何なんだろう・・。何処に行くんだろう・・。


    駅を降りて、暫く歩くと

    マンションの前で立ち止まった。


    何も言わない椿に、黙って奈子はついて行った。


    椿が鍵を開けて、玄関から中に入ると・・

    ピンクの薔薇の飾られたテーブル。


    その上には、バースデーケーキと食器とスプーンとシャンパングラスが

    並べられてあった。


    「これ・・・」


    奈子は、びっくりして椿の顔を見た。


    「親説得して、マンション借りた。料理そんな上手じゃないから、ビーフシチュー

    しか作れなかったんだけど。」


    奈子は、とても嬉しかった。

    椿が自分のために、料理作ってくれて・・

    忘れてなかったんだ・・。


    「ねぇ。一緒に住まない?奈子。これがこないだの質問の答えだよ。」


    奈子の目から、涙が一気に零れ落ちた。


    私の気持ちに、気づいていたんだね・・。


    椿は、そっと奈子の涙を指で拭った。


    「お誕生日おめでとう。奈子。」

    そう言って、そっと奈子の唇にキスした。
引用返信/返信 削除キー/
■14158 / ResNo.32)  32
□投稿者/ 雅 一般♪(34回)-(2006/04/07(Fri) 08:58:51)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    その日・・

    椿の彼女なんだって実感しながらの誕生日は、

    今までのどの誕生日より、嬉しくて、そして幸せだった。


    椿の作ってくれたビーフシチューは、人参の皮が剥かれてなくて

    少しびっくりしたけど、

    一生懸命作ってくれたんだな・・って思うと

    とても微笑ましくて、くすっと笑ってしまった。


    「何?美味しくない?」

    椿が心配そうに覗き込んだ。


    「ううん。すごく美味しいよ。」


    椿は、私が食べるのを、優しい目でじっと見つめていた。


    「同棲のこと、家の人のこともあるだろうから、慌てないでいいから。

    ここでゆっくり待ってるから。」


    「うん」


    その後・・

    真新しい香りのする部屋で、二人は抱き合った。


    「また、バイクに乗ってみようかな。」

    椿は、奈子に呟いた。


    バイクという言葉は、二人の中では禁句のようになっていた。

    奈子は、驚いて、椿の顔を見た。


    「やっとさ、思い出になったの・・。今日、先生のお墓に奈子の事、報告してきた。」


    「そっか・・。」


    奈子が、うなづくと、椿は、ぎゅっと奈子を抱きしめた。


    「奈子、大好きだよ。愛してる・・。」



    奈子にとっても、椿はかけがえのない存在だった。

    あの日、椿に出会わなかったら、

    きっと

    イヤな自分のままだったかも知れない。



    それから半年が過ぎ・・

    ようやく、両親がシブシブながら、椿との同居を認めてくれた。

    もちろん、愛し合ってるとは話さずに、友達と一緒に住むということだけ

    話した。

    よく知ってる病院の娘が、同居相手だということで

    身元もしっかりしているしと、何とか両親の許可がおりたのだった。



    引越しも無事に済み・・。

    一緒に暮らしだして、初めての夜だった。


    「ねぇ・・」


    「ん?」


    「ずっと一緒にいてね・・。椿・・。」


    椿は、にっこりと微笑んで、そっと奈子を優しく抱きしめた。



    それが、二人で過ごす最後の夜となった。
引用返信/返信 削除キー/
■14159 / ResNo.33)  33
□投稿者/ 雅 一般♪(35回)-(2006/04/07(Fri) 08:59:33)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    奈子は、早起きして、スクランブルエッグと、サラダを用意して、

    コーヒー豆を挽いていた。


    「おはよ・・朝起きたら、部屋温めてくれる人がいるって最高。」

    椿が、寝ぼけながら、奈子の後ろから抱き付いて、頬にキスした。


    「おはよう」

    奈子は、少し照れくさい笑みを浮かべていた。


    「今日は朝から嬉しそうだね。朝食まで作ってくれてるんだ」


    奈子は、にっこりと頷いて、挽けたコーヒーを箱から取り出した。


    「いい香り・・・」

    椿は、挽きたてのコーヒに顔を近づけて、大きく息を吸い込んだ。


    「ちょっと待っててね。すぐコーヒー入れるから。」


    奈子は、何となく、新妻の気分だった。

    新婚さんってこういう感じなんだろうなって・・。


    二人で朝食を食べて、お互い仕事の行く準備をした。

    出勤は、椿の方が15分程早い。


    「じゃ、私そろそろ出るから。今日は、帰り9時くらいになるから。」


    「いってらっしゃい。気をつけてね。」


    「ほーい。」


    椿は、少し照れくさそうに、いつものように髪をかきあげて微笑んだ。


    「何か忘れてない?」


    「え?」


    奈子は、考えてみたけど、さっぱりわからなかった。


    すると椿は、ぐっと奈子を引き寄せて、


    「いってらっしゃいのキス。」


    そして、そっと奈子の唇に口づけた。


    「じゃ、行ってきまーす。」


    椿は、振り向きもしないで、走りながら手を軽く振って

    廊下を走って行った。


    奈子は、マンションの廊下から、椿がバイクに乗って出勤するのを

    見送った。


    それにしても、今日は少し冷えるな・・。

    天気も余りよくないし。

    椿帰ってくる時、雨降ってないといいけど・・。


    会社の帰り・・

    駅の裏にあるスーパーで夕食の買い物をしていた。


    何にしよっかな・・。


    そうだ・・。今日は寒いし、おでん鍋にしよう。


    色々材料を買ったけど、結構大きな荷物になった。


    寒さのせいで、荷物が余計に重たく感じる。

    余りに手が痛かったので、途中で立ち止まって荷物を置いた。


    あ・・。

    綺麗・・。


    鮮やかに咲くその花に見入っていたら、その家の玄関から老婆が出てきた。


    「綺麗でしょう?」

    にっこりと、その老婆は微笑んだ。


    「ええ。見入っちゃいました。」


    「良かったら、差し上げましょうか?私も丁度切りにきたんですよ。」


    老婆はそう言うと、花切りバサミで枝を切り出した。


    「いいんですか?ありがとうございます。」


    「お若い方なら、椿よりバラの方がお好きでしょうに。」


    椿・・・。


    「さ、早く持ってお帰りなさい。すぐ雨が来ますよ。」

    老婆は椿の枝を数本、奈子に手渡した。


    「ありがとうございます」


    奈子は老婆に深々と頭を下げ、両手一杯の荷物を下げて

    マンションへと帰宅した。
引用返信/返信 削除キー/
■14160 / ResNo.34)  34
□投稿者/ 雅 一般♪(36回)-(2006/04/07(Fri) 09:00:12)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    家へ帰ってすぐ、老婆に頂いた椿を花瓶に生けた。

    椿に椿か・・・フフフ。

    奈子は、テーブルに飾った鮮やかに咲く椿を

    暫く眺めていた。


    その時・・・

    いきなり窓の外から、雨の打つ音が聞こえてきた。


    やっぱ雨だ・・。


    椿が帰ってくる頃には、やむといいな。。

    風邪引いちゃう。


    すると、いきなり地響きのような、大きな雷の音が聞こえた。


    椿、今日は遅くなるって言ってたけど・・逆に良かったかも。

    まともに帰ってきてたら、今頃ズブ濡れだわ。


    時計を見ると、午後6時半をまわった所だった。


    その時、花瓶に生けた椿の花が1つ

    ボロッと落ちた。


    こんなに綺麗に咲いてて、まだ枯れてもいないのに

    ボロっと取れちゃうんだね・・。この花。

    奈子は、その落ちた花を片付けて、夕食の仕度を始めた。


    午後9時。そろそろ椿の帰ってくる時間・・。

    さっきまでの雨はすっかりやんでいた。

    奈子は、おでん鍋を温めて椿の帰りを待った。


    午後9時半・・。

    遅いな・・。仕事長引いてるのかな。


    午後11時。

    もうっ遅い・・。

    こんなに遅くなるなら、連絡くらい入れてくれたっていいのに。


    そうしているうちに、奈子は転寝してしまっていた。

    時計を見ると、午前1時をまわっていた。


    どうしたんだろ・・椿。

    何だか変な胸騒ぎがした。

    連絡とってみようかな・・。椿怒るかな。


    やっぱり、病院に電話してみよう。。


    番号案内で小出病院の番号を調べ、電話入れてみた。


    「あの・・友永と申しますが、小出 椿さん、まだそちらにいらっしゃいます

    か?」


    夜診救急受付の人らしき人が、何やら口ごもった感じで言った。


    「お知り合いの方でしょうか?」


    「はい・・。」


    「私の方では、詳しい事は答えかねますが・・。」


    「はい?どういう事なのでしょうか?同居しているものなのですが、帰りが

    遅いので、仕事中ご迷惑かと思ったのですが、電話させていただいたのです。」


    「そうですか。そういうご事情なら・・。」


    「えっ?」

    次の瞬間、奈子は自分の耳を疑った。


    「もう1度、聞こえにくいのですが、もう1度おしゃってください」


    「椿さんは・・・お亡くなりになりました。」



    ・・・・・

    つ・・・・

    ・・・・・

    椿が・・・

    ・・・・・


    死んだ・・。




    奈子は、そのまま何も言わず、電話を切った。
引用返信/返信 削除キー/
■14161 / ResNo.35)  35
□投稿者/ 雅 一般♪(37回)-(2006/04/07(Fri) 09:00:46)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    奈子は、呆然と電話の前で座り込んだ。

    その時、玄関のインターホンが鳴った。


    「椿・・!」


    奈子は、走って玄関の鍵をあけ扉を開けた。


    そこには、椿ではなく、見たこともない中年男性が立っていた。


    「奈子さまでいらっしゃいますね?私、高瀬というものです。

    急ぎのご連絡と、お渡ししたいものがございまして参りました」


    「・・・・」


    「奈子さま・・落ち着いて、聞いてください。実は、お嬢様は、午後6時29分

    事故のため、お亡くなりになりました。

    昨日、お嬢様から、もし自分に万が一があった時は、奈子さまに必ず連絡する

    ようにと・・。それと、このお手紙を渡してほしいとお預かりいたしておりま

    した。」


    その男性は、奈子に封筒とメモを手渡した。


    「奈子さま、葬儀のご予定は、メモに書いてあります。では私、すぐ戻らねばなり

    ませんので、失礼いたします・・」


    深々と頭を下げて、その男性は静かに扉を閉めた。


    奈子は、今起こっている現実を、まだ信じられずにいた。

    でも・・

    これが現実。。


    これ・・が・・


    げ・・ん・・・じ・・つ・・




    たった一人残された部屋のテーブルには、

    ニ客の色違いのお茶碗とお皿とお箸・・


    そして・・

    その中央に置かれた花瓶には

    椿の花が咲いていた。



    ひっそりと、ただ静かに・・。
引用返信/返信 削除キー/
■14162 / ResNo.36)  36
□投稿者/ 雅 一般♪(38回)-(2006/04/07(Fri) 09:01:21)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    メモに書かれた葬儀に参列したことは覚えているけど…


    その日の記憶といえば・・


    沢山の病院関係者らしい人々の群れ、そして

    大きな祭壇に飾られた、椿の写真





    共に生きていこうとした人の

    亡骸に手を触れることも許されず


    現実かどうかもわからないままに


    ただ呆然と


    進んでいく読経。




    たった一言・・・


    冷たくてもいいから


    そっと肌に触れて




    さよならって

    ありがとうって


    どうして

    何も言わずに逝っちゃったのよって


    叫びたかった・・・・・・・。



    あの日の記憶は、ただそれだけ・・。
引用返信/返信 削除キー/
■14163 / ResNo.37)  37
□投稿者/ 雅 一般♪(39回)-(2006/04/07(Fri) 09:01:55)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    1週間後・・・


    手紙を届けてくれたあの男性が、部屋を訪ねてきた。


    「少しお痩せになりましたね。」


    奈子は腫上がった瞼を閉じ、ただ黙っていた。


    「今日は、ここの部屋の事で参りました。院長から、荷物を片付けて引き払うよう

    にと言われまして・・」


    奈子のバッと重い瞼が開いた。


    愛する人がいなくなったというのに、ただ悲しむ時間でさえ与えてはくれないの

    か・・。


    椿・・・。



    「その件につきましては、私のほうから家主に、連絡する予定でございます。

    私どものほうで、多少の配慮はさせていただけるはず・・。

    先に、引き続き奈子さまがここにお住みになるのかどうか・・、それを確認するた

    めに参りました。」


    「・・・そんなこと、まだ・・考えられません・・・。」


    「そうですか・・・」


    その男性は少し困った顔をして考えている様子だった。


    「では、今月の末にもう一度、ここへ参りますので、それまでにどうされるのか

    決めておいてください。」


    玄関を出る時、その男性が言った。


    「お嬢様からの封書、お読みになりましたか?」


    「・・まだ・・読んでません・・」


    「何かお書きになっているはずです。万が一の時にと、おしゃっていましたの

    で。」


    男性は、深々と頭を下げ、玄関の扉を閉めた。



    椿のいなくなったこの部屋で

    私は・・




    奈子は、開けられずにいた封書を手に取った。




    貴女の・・


    最初で最後の手紙・・・



    そして、最期のメッセージ・・



    開けれずにいたけど・・



    聞かせて。。


    貴女が何を望んでるのか・・。



    私、今


    何も決めれないよ・・・。
引用返信/返信 削除キー/
■14164 / ResNo.38)  38
□投稿者/ 雅 一般♪(40回)-(2006/04/07(Fri) 09:02:35)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    奈子へ


    これを読んでいるということは、もう、この世で、奈子に自分の言葉で伝えること

    ができなくなってるんだろうな・・。


    明日から、一緒に暮らすことになって

    ちゃんと書いておかなければ・・って思ってね。

    じゃないと、多分、余計辛い思いすると思ったから。


    前にも話したけど、先生を亡くしてしまった時、

    あんなに愛し合っていたけれど、最期の時、手を握ってあげることさえ

    できなかった。


    私も、まだ両親に奈子のこと話せてないんだけど、今話しても、多分

    また見合いどうのって、引き離そうとするに決まってるから。

    だからさ、二人で歳を重ねて、いつか認めてくれるように

    ゆっくりと話していこうって思ってる。


    奈子にも、それは一緒に暮らしだしたら、話そうって決めてることなんだけどね。


    これを読んでいるってことは、きっと

    まだそれが叶ってない・・・。


    多分、私が急にいなくなって

    どうしていいのか、わかんなくて、きっと泣いてるんだろうな・・。


    泣きたいだけ、泣いて(笑)


    こんな事、いったら怒るかも知れないけど、

    辛い時さ、涙堪えるくらい、辛いもんないから。

    だから、一杯泣いていいよ。


    でも、これだけは分かっててほしい・・。

    ほんと、奈子と一緒時間を過ごす事ができたこと・・

    とても感謝してる。


    だからこそ、

    奈子には幸せになってほしいの。


    いつか、必ず、私が過去に変わる時がくる。

    人間ってうまくできてるよ。

    時間は、必ず過去に変えてくれるから。


    遠くからだけど、その日を心待ちにしてると思う。

    だってさ、悲しいよ?好きな人が悲しんでる姿見てるのってさ。


    これからの出会いの中で、

    奈子が心を許せる誰かができた時、私も遠くで笑ってる・・。

    奈子の笑顔が大好きだから。


    その日が来る事、いつまでも見守っているから。


    一人で泣いてるかもしんないけど、一人じゃないから。

    奈子が泣いてる時、必ず傍でいてるから。

    多分、見えてないかも知れないけど(笑)


    現実に、傍にいてくれる誰かが現れるまで、傍にいるつもり(笑)


    その日が来ること、待ってるから・・・。


    こないだ、ふと考えて、マンション借りるの私の名義になってたからさ

    一応、家主さんには、こないだ、話してあるんだ。

    女の子なら・・ってことで、了解は得てある。


    でも、私としては・・

    引き払ってほしいってのが本音。


    でないと、いつまでも思い出が残ってしまうから。

    思い出は、心の中だけにしまっておいてほしいの。

    一歩一歩でいいから・・

    少しづつ前に歩いていってほしいから。


    何てひどいこと言うんだって、奈子の怒る顔が目に浮かぶけど(笑)


    あとは、奈子の好きにすればいい。


    それと・・

    奈子に秘密の小箱をあげよう(笑)

    ってたいしたもんじゃないけど、それ受け取ってほしい。


    押入れの奥に、私の衣装ケースがある。

    そこに、お菓子の缶が1つ埋もれてるから。

    それ、あげる(笑)


    結局たいした事、書いてないね(笑)今読み返してみたけど。

    もっと、こましな事書けって、怒って読んでるかな?(笑)



    ま、この手紙は、信頼できる人に預けるつもりだから、その人が色々と配慮してく

    れて、私に何かあった時は、連絡してもらうように、頼むつもり。


    これからの人生、

    奈子が幸せになれますように・・。


    ほんと、幸せな時間を・・

    ありがと。


    椿
引用返信/返信 削除キー/
■14165 / ResNo.39)  39
□投稿者/ 雅 一般♪(41回)-(2006/04/07(Fri) 09:03:12)
http://id7.fm-p.jp/23/bianmiyabi/
    「お辛かったでしょうね・・・」

    可憐がそういうと奈子は、にっこりと微笑んだ。


    「確かに辛すぎた。でもね・・時間って不思議よ。ゆっくりと思い出に変えてく

    れるわ・・」


    「で、そのお菓子の缶には、何が入ってたんですか?」


    「実はね・・まだ開けてないの・・」


    少し俯き加減に言う奈子先輩は、少し寂しそうな顔をしていた。


    それから奈子先輩は、にっこり微笑んだけど・・

    無理してるのが、すごくわかった。


    可憐は、今も箱を開けれない奈子先輩の気持ちが少し分かるような

    気がした。


    この人を・・暖めてあげたい・・。

    そう思った


    でも・・・



    それと同時に、すごく可憐の胸が痛んだ。


    だって・・

    私では、きっと奈子先輩の心を占める事は難しいって事に気づいてしまったから。


    奈子先輩の全てが知りたくて

    聞きたかった過去・・


    暖めてあげたいって思った・・

    それは本当・・。


    でも・・


    聞かなかったほうが


    何も知らなかったほうが・・



    私には

    幸せだったかも知れない。
引用返信/返信 削除キー/

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