ビアンエッセイ♪

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■14391 / ResNo.20)  スマイルストリップ 14
  
□投稿者/ mama' 一般♪(17回)-(2006/05/08(Mon) 18:36:10)

    補習二日目。

    前回の確認テストから始まった授業のあと、私だけがなぜか杉鉄に呼び出された。



    「今回の答案…」

    差し出された一枚の紙切れ。
    「おっ♪満点♪」

    「…ねぇ。なんで?」

    「いや…私、やればできる子なんですよ〜」

    へらっと笑う。

    「仲田さん?」

    杉鉄の目は真剣。

    「いや。テストの日は頭痛がひどくて…」

    上目づかいにうかがうと、表情は硬いまま。

    「すいません。」

    ぺこっと一礼。
    なおも変わらない杉鉄の目。

    「私の教え子にも一人、白紙答案出した子がいたの。
    この学校の子じゃないけど。
    何か自分で解決出来ない悩みがあったら、ちゃんと誰かに頼ってね。
    もちろん私でもいいから。」

    へぇ…こんな模範的なお説教が、鉄の杉山から聞けるなんて…ちょっと意外だわ。
    同じことを理子にも言うのかって思ったら、複雑な気分だけどさ。


    そこから少し間があったから、話はそれだけなんだと思った。

    さっさとこの場を終えよう。
    そう思って切り出した。

    「私悩みなんてないんですよ。」

    いつもの営業スマイルを惜しみなく。

    「白紙答案もほんの出来心ってヤツで…反省してます。もうしません。まじめに補習も受けますんで」

    申し訳なさそうな表情もちゃんと演出…

    「すいませんでした。」

    一気に言って、一礼。
    ドアへ向かう。



    「仲田さんっ」



    私を追いかけるように杉鉄の声。


    呼び止めたくせに、
    ためらいを見せ
    そして、やっと口を開く。




    「良くない噂聞いたんだけど…本当?」



    なんか最近よく耳にするフレーズだな…。



    あぁ…本題は

    そっちか。



    (携帯)
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■14392 / ResNo.21)  スマイルストリップ 15
□投稿者/ mama' 一般♪(18回)-(2006/05/08(Mon) 18:39:57)
    “良くない”噂…その中身は、正確に理解できた。
    できたけど…

    「噂…?んー。何でしょう?」

    しらばっくれてみる。

    言葉に詰まる杉鉄。
    そりゃそうだ。あの後輩や理子みたいに、言えるわけがない。
    かりにも先生なんだし。

    「噂ってあてにならないもんですよ。
    ほら、女の子って、そういう話大好きだから。」

    ね?と安心を誘うようなことを言ってみる。
    それで終えるつもりだった。

    一応は納得したのか、表情がすこし緩む。

    うん。よしよし…
    さて帰るか…そう、

    そう思ったのに。



    「……じゃあ、


    今回倉山さんが白紙だったのと、仲田さんのとは関係ないのね?」

    念を押すような言い方だった。



    じゃあって…

    じゃあって、何?


    何を言い出すんだ?
    なんで、そんなことで安心してるんだ?


    理子の真剣なまなざしがよみがえる。

    嫌われた…と泣きながら、なのに必死で答案を埋めていた理子。

    迷惑をかけたかったわけじゃないと、私を睨んだ理子。


    こんなヤツが本当に好きなの?


    …秘密にしてくれる?

    心細そうに言った声色が浮かんできて、唇をかむ。

    あぁ…でも…
    踏み止どまれない。



    ごめん。


    (携帯)
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■14393 / ResNo.22)  sayaさんへ(予告付き・笑)
□投稿者/ mama' 一般♪(19回)-(2006/05/08(Mon) 19:12:23)
    sayaさん、再びありがとうございます(*^-^)

    距離が縮まっていく雰囲気…出したかった所なので、感じてもらえて嬉しいです。

    連休明けましたし、またちまちま更新しますのでお付き合い下さいませ。

    次回は、未樹ティによるS言葉責め…の予定。
    (また懲りずに書いてみました・笑)

    (携帯)
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■14410 / ResNo.23)  スマイルストリップ 16
□投稿者/ mama' 一般♪(20回)-(2006/05/09(Tue) 17:11:00)

    呼び出された教室に二人。
    クーラーのファンが音立てて回ってる。
    普段はこんなにしないのに…。

    意識が冴えるって不思議だ。
    頭に血は上ってるのにさ。


    「無関係ですよ。今はまだ。」

    営業スマイルのまま言った。

    「でも、かわいいですよね。確かに。」

    杉鉄の表情が変わる。

    「どこまで優等生でいられるのか、試したくなる。
    意外な一面が見れるかも…。ね?先生?
    ほら、思春期だし?好奇心旺盛なんですよ。」

    杉鉄の表情から、血の気がひいていって
    加虐心が煽られていく。


    「私遊んでるから、そっち系ならイロイロ教えてあげられるかも。」


    …ガタンッ


    いきなり立ち上がるものだから
    椅子が勢いよく倒れた。

    「本気なの?」

    「…なんでそんなこと聞くんですか?」

    「………。」

    そのまま切なくゆがんでいく。

    「私は…私は…。」

    言葉に詰まる杉鉄。


    「ねぇ?先生?」



    遠くで

    セミの鳴き声がする。


    うるさい位に夏の恋を歌いあげて…
    なんて分かりやすいんだろう。
    これ位、全てが明らかなら
    いいのに。




    (携帯)
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■14419 / ResNo.24)  スマイルストリップ 17
□投稿者/ mama' 一般♪(21回)-(2006/05/10(Wed) 17:29:00)
    そして、沈黙の後。
    口を開いたのは杉鉄。


    「理…倉山さんをそういう対象にしないで」


    それは、今日聞いた杉鉄の声の中で、

    一番真剣なものだった。


    気持ちが一気に冷静を取り戻す。

    質問を悔やむくらい追い詰めてやりたいと、そんな欲求が満たされた後…
    残ったのは、後味の悪さだけだった。


    感情にまかせた、単なる自己満足…


    床に置いていたカバンを取り上げ、私は改めてドアに向かう。
    取っ手に指を掛けて、振り返った。

    「いろいろ噂はあるかもしれないけど、私はそういうつもり…ないし、
    別に倉山さんのことも、そういう目で見てるわけじゃないから。」

    言葉のない、杉鉄。

    「さっき言ったこと、真に受けないで下さい。

    失礼しました。」


    目を見て言うこともできず、

    一礼して、
    ドアを開け…
    下駄箱へ向かって歩こうとし、


    あっ…


    廊下の人影。
    一瞬だけ、目があった。


    理子。


    ひるがえる制服のエリ。



    聞かれて…た?




    (携帯)
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■14420 / ResNo.25)  スマイルストリップ 18
□投稿者/ mama' 一般♪(22回)-(2006/05/10(Wed) 17:30:46)

    「待ってよっ理子っ。」

    追いついたのは下駄箱前。
    ローファーに手を掛ける理子の腕をつかむ。

    「離してっ」

    振り払われる腕をつかみ直すと、壁に押しつけるような格好になった。

    「どこから聞いたの?」

    間抜けだ。
    そんなことしか聞けない。


    「噂…」

    かすれた声。


    「良くない…噂って…」


    微かに湿度を伴い
    小さく
    こもったように響く。

    こんな声が聞きたいわけじゃないのに…。


    言葉が…出てこない…。



    「手…離してっ

    私…帰るから…。」



    なす術もなく、
    呆然と。



    見送ることしか出来なかった。




    (携帯)
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■14422 / ResNo.26)  スマイルストリップ 19
□投稿者/ mama' 一般♪(23回)-(2006/05/11(Thu) 17:30:17)


    家に帰っても、理子の後ろ姿が離れない。
    どんな想いで帰ったんだろう…。


    “……じゃあ、

    今回倉山さんが白紙だったのと、仲田さんのとは

    関係ないのね?”


    念を押すように杉鉄に言われ

    単なる噂と理子の行為が
    同列に扱われてたんだと感じた…

    あの瞬間。


    私はたまらなかった。

    信じられなかった。


    杉鉄に対する苛立ちが止まらなかった。


    理子がどんな表情で再テストの答案を埋めたか。
    それすらも知らないくせに。

    何も知らないくせに。
    何も、知らないくせに…。


    でも。



    それでも。


    見たことないような真剣な顔して私に頼むんだ。


    そういう対象にしないで…と。


    それは、教師として?
    それとも、個人として?


    記憶を反芻する。
    あの時、一瞬言いかけてなかったか…


    理子…と。


    杉鉄は確かに

    そう呼ぼうとしてなかった?

    なんで?


    あぁ…違う。
    それよりも…。
    そうじゃなくて、まずはちゃんと



    理子に


    謝らなきゃ…。






    (携帯)
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■14423 / ResNo.27)  スマイルストリップ 20
□投稿者/ mama' 一般♪(24回)-(2006/05/11(Thu) 17:32:27)

    冷静になれば…

    理子に想われてるなんて、杉鉄は知らないはずなんだから…
    あれは当然の思考プロセスで。

    現役優等生と、浮わついた劣等生。
    Aクラスの生徒が二人揃って、しかも同じ英語でさ。

    よく考えれば、噂も妄想も…入る隙間がありすぎた位だ。


    責任はすべて、私。

    あの時、私が興味本位で白紙の答案を出さなかったら…

    あの集団で補習は辛いかもしれないけど
    私なんかと出て、こんな事になるんだったら…
    一人で混ざってた方が良かったに違いないし。


    ガバッと、タオルケットを頭からかぶる。


    あぁ…軽はずみなコトした…私。

    自分自身に苛つく。


    チッ


    チッ


    チッ



    あぁ…っ、暑いっっ。

    タオルケットを蹴り下げ
    扇風機の風にさらすように
    携帯を眺める。

    うかつなことに、まだ私は…


    理子のアドレスすら知らない。


    そういえば、
    それ位の関係だったのだと…
    今更のように
    気がついた。


    なんだ…情けない。

    私だって、まだ何も知らないじゃない。




    (携帯)
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■14442 / ResNo.28)  スマイルストリップ 21
□投稿者/ mama' 一般♪(27回)-(2006/05/12(Fri) 18:01:02)

    次の補習まではまだあと一週間もある。

    答えのないまま逡巡し…


    ベットの上で考えて…。
    あっ…と思い付く。



    クラス名簿…。




    そこから丸一時間。ずっと携帯と名簿とを見比べてた。

    載ってるのはもちろん家の電話番号の方だけ。

    親が出たらかなり気まずいかも…てか、いきなり電話切られそう
    そもそも、やっぱり電話じゃ話しづらい。
    いやでも…待つのか?補習まで…

    ぐるぐる巡る選択肢。

    そして
    ふと、思い付く別のやり方。


    名簿に載ってるのは、
    名前と電話番号だけじゃなく、


    住所…。



    なんだ。
    定期で行ける距離じゃないかと

    補習の後は用事を入れてないなんて…確か今朝言っていたと

    思い出した。



    こんなに必死に切羽つまった感じで

    会いに行くなんて。

    でも。みっともない自分に
    苦笑する余裕もない。


    こんなに
    おさえのきかない自分は初めてで



    どうしちゃったんだろ


    いてもたってもいられなかった。




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■14443 / ResNo.29)  スマイルストリップ 22
□投稿者/ mama' 一般♪(28回)-(2006/05/12(Fri) 18:03:52)
    2006/05/12(Fri) 18:09:05 編集(投稿者)

    電車に乗って二駅。

    理子んちは、びっくりな位のお住まいで
    それこそ邸宅っていう方がぴったりくるような門構えだった。


    うーん。

    ベルの前でためらって

    帰りかけて

    やっぱり向かい合い…。


    最初になんて言おうか反芻し

    あっやばい、お母さんとかが出てきたときのセリフ考えてなかったじゃん…

    なんて
    また、向きを変え

    右往左往。



    いつでもふてぶてしい位、ドンと来いやっな自分は
    どこに行ったんだろ…。


    はぁ…


    溜め息をついて…

    やっぱり
    準備し直そうと決意した

    その時だった。


    後ろから、声をかけられた。


    「未樹?」



    それは、

    制服姿の理子だった。




    突然の登場に、考えてた言葉をすっかり忘れてしまった。
    頭は真っ白。

    「…えっと。あの…」

    口ごもる。


    「未樹…ごめん。」


    …え?

    いきなり言ったのは、理子の方。

    “何しに来たの”
    冷たく言い放たれる…それ位のことを覚悟してたのに。


    「全部、

    私のせいだから…

    私、いきなり帰っちゃったし。
    やな気持ちにさせたよね。」

    すまなさそうに、私を見上げる理子。


    だから、謝るのはむしろ
    私で。


    それに、間違いなく理子のせいではないし…。


    初めてそこで顔をあげた。



    「家入ろっか…?
    麦茶位しかないけど…」


    女の子はナゾだらけ。
    ?マークの飛び交う中、門の内側に招き入れられた。





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