| ご主人様の会社に着いて
受付の方に話しかける
「あのぅ
ごしゅ…
あっ、違った
社長に
お届け物があるのですが…」
『伺っておりますので…
そのまま
社長室にお持ち下さいますか?』
受付の方に
エレベーターの方を指された
エレベーターホールで
[▲]の釦を押す
移動中に
少し乱れた髪を
手櫛で整えて
いー
大丈夫
歯に口紅は着いてない
大きな鏡だから
クルッと回って
全身チェック
クr…
受付の方と目が合って
微笑まれちゃった
思わず少しシュンとなる
エレベーターに乗り込んで
社長室の階の釦を押す
エレベーターが昇って行く
心臓の音が
自分に聞こえる位に
ドキドキしている
エレベーターが開くと
秘書の方が待っていて
社長室に案内された
コンコン
ノックをして
扉を開く
『社長
お待ちかねの方ですよ』
お待ちかねだなんて…
頬が少し熱くなる
「失礼します
お待たせ致しました」
そう言いながら
社長室の中に入った
『ありがとう
待っていたわ
ごめんなさいね
わざわざ持って来てもらって』
そう優しく微笑まれた
「いえ
ご主人様
私でお役に立つことでしたら
何なりとお申し付け下さいませ」
ご主人様に
大きな封筒を渡して
帰ろうとすると
ご主人様に呼び止められた
『せっかく来てくれたのだから
一緒に帰りましょう』
『でも今から
ミーティングがあるのよ
少し待っていて
そして、その間に
奥の仮眠室を
片付けておいて欲しいの
昨日のままだから』
そう仰って
仮眠室の方を向かれた
仮眠室の方に歩いていると
後ろから
抱きしめられた
『今日は
貴女の顔を見ていないから
会いたかったわ』
ご
ご主人様
そんなことを仰らないで
本当に…
ご主人様は
腕を離して
机に向かわれた
私がお持ちした
大きな封筒から
何枚かの書類を出されて
『ミーティングで使う
資料なのよ
本当に助かったわ』
『じゃあ
ちょっと行ってくるわね』
そう仰った後で
私の顎を摘んで
『忘れ物』
そっと唇を重ねて下さった
「行ってらっしゃいませ」
社長室の中で
ご主人様を見送った
仮眠室に入ると
女性な匂いが
残っていて
ベッドも
昨日私が乱したままで
どうしても
昨日の出来事を
思い出してしまう
ご主人様
私が熱くなるのを
感じる
でも
そんなことを
思っている場合じゃないので
窓を開けて
風を入れる
小さなクローゼットを開けると
掃除道具や
新しいシーツが
入っていた
シーツを交換して
ベッドメイクをする
お部屋に
軽く掃除機を掛けて
ゴミ箱の中身をまとめる
ご主人様
このお部屋を
昨日のままで
残しておいて下さって
良かった
このゴミを
他の人に片付けられるのは
恥ずかし過ぎる
ドレッサーとか
拭き掃除をしていたら
コンコン
仮眠室の扉がノックされて
『お待たせ
行きましょうか?』
ご主人様が
顔を覗かせていらした
「あっ
でも、もう少し残っていますので
お待ち頂けますか?」
そう尋ねると
『クスッ
相変わらず真面目ね
もう充分に綺麗よ
この部屋』
微笑みながら
窓を閉めて下さった
『それとも
私と出掛けるのは
イヤかしら?』
ご主人様は
半分笑って
冗談めかして仰ったけど
「いえ
とんでもない」
私は慌てて
思いっきり首を横に振って
答えてしまった
ご主人様ったら
まだ悪戯っぽい目で
クスクスと笑っていらっしゃる
ご主人様
おかげで肩の力が抜けて
あれっ
ご主人様相手に
少し緊張していたんだ私
交換したシーツと
まとめたゴミ袋を持つと
また
ご主人様が
笑っていらした
ご主人様は
シーツを
私から取り上げて
先にお部屋を出られた
急いで着いて行くと
ご主人様は
秘書の方に
シーツを渡して
『クリーニングに出しておいてね』
と仰っていた
ゴミ袋を持ったままで
ご主人様の後ろを歩くと
『その角を曲がった所に
〈燃えるゴミ〉ってあるので
そこに入れておいて』
振り向いて
そう仰った
こんなに大きな会社の
社長なのに
そんなことまで
ご存知で…
やっぱり不思議な方だな
ご主人様って
会社を出て
そのまま
並んで歩く
今日は
いつものリムジンを
断られたそうだ
『可愛らしい服装ね
よく似合っているわよ』
前を向いたままで
私のことなんて
ご覧になられていないと
思っていたのに
『その服装に
もっと似合う靴を
選びに行きましょうか?』
ご主人様が
私の為に
お買い物をして下さるって?
まるで
本当にデートしているみたい
夢でなければいいけど
本当に
夢みたいで
何軒かの靴屋を覗く
『あっ
あれがいいわ』
ご主人様が
お店の中に入って行かれた
店員さんを捕まえて
少しお話しをしていらして
店員さんが何足かの靴を運んで来た
ご主人様は
私にそれを履かせて
サイズの確認をすると
『それ
全部頂くわ』
『今は荷物になるから
自宅に運んでおいてくれるかしら?』
えっ
えっ
え〜ぇっ
全部って
ご主人様ったら
豪快過ぎます
(携帯)
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