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■15660
/ 親記事)
うさぎ病
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□投稿者/ れい
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ちょと常連(58回)-(2006/08/06(Sun) 21:52:28)
ねえ、あたしを見て。
ぎゅって、抱きしめて。
だれかにハグをしてもらえたら、
あたしそれだけで生きていける。
あたしを受け入れて。
あたしを嫌いにならないで。
おねがい。
あたしの乾いた心を癒して頂戴。
寂しいの。
寂しくて、こころが死んじゃいそうよ。
だれか。
だれか。
あたしを、愛して。
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/
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■15662
/ ResNo.1)
おひさしぶりです or はじめまして
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□投稿者/ れい
@
ちょと常連(59回)-(2006/08/06(Sun) 22:25:24)
2007/02/03(Sat) 23:20:37 編集(投稿者)
冬は、寒いですね。
いつも読んでくださっているみなさま
ならびに、偶然ここをクリックしてしまったみなさま
おひさしぶりです。
はじめまして。
れいと申します。
ええと。
こちらで書かないつもりだったのですが。
書いちゃいました。
理由は、ここに書かないと、
読者の目を意識しないと、
仕事に感けてあんまり更新しない予感がしたからです。笑
予感は的中してしまいました。
真夏のお話だったのに、もう冬ですね。
仕事の合間に頑張って書きます。
短編、と言って自身のHPで書き始めたのに、
すでに短編じゃないところが、
もうどうなんだろうという話ですが。
ゴールデンウィークには終わらせます。笑
宜しければお読みください。
引用返信
/
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■15663
/ ResNo.2)
うさぎ病>1.ランチタイムの憂鬱
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□投稿者/ れい
@
ちょと常連(60回)-(2006/08/06(Sun) 22:28:53)
「…△△化粧品がぁ、いまなら更に20%引きですよぉー。いらっしゃいませぇー」
通りを挟んだ向かい側のドラッグストアの店員が炎天下の中、
叫ぶのがここまで聞こえてきた。
全く大変なお仕事だ。暑いのに、よくやる。
あれでお給料、いくら貰えるというのだろう。
そんなことをぼーっと考えて、通りの向こうを眺めながら、
通り向かいのファーストフード店のベランダ席にてたばこをふかした。
数日振りの照り付けるような日射しは、もう梅雨が過ぎ、
夏が本格的に到来したかのように思わせる。
夏、ねぇ。厭な季節だわ。暑いし、蒸れるし、最悪。
夏には、あまりいい思い出はない。
恋に破れるのはいつも夏だったし、
貧血を起こしやすくなるし、
この気候自体が好きではなかった。
ハンバーガーを食べ終え、アイスコーヒーを何口か飲み、
ポテトを半分ほど食したころ、携帯電話がヴヴヴ、と鳴った。
――またか。
予想通りだわ、そう思って一息ため息を吐く。
私の仕事も、そんなに簡単じゃないらしい。
「はい、江藤ですが」
「しゅに〜ん…!」
職場の番号からの電話は、予想通り出来の悪い部下からのヘルプだった。
「お客さまがお探しのものがなくって…登山靴なんですけどぉー。
どこにあるんでしょおかぁ…」
「…すぐ行くわ。まってて」
そう言って電話を一方的に切る。
切って、ひとつため息を吐いて、口の中に、残ったポテトのうち数本を放り込む。
何回か咀嚼し、アイスコーヒーで流し込み、その勢いでアイスコーヒーを飲み干して、
トレーを持って席を立った。
慌てていたせいか、机の上に灰皿を置き忘れて、慌てて手を伸ばす。
背中越しに、席を立った私の気配に気付いた店員さんの
「そのままで結構でーす、ありがとうございましたー」という声が届く。
席を立って、店舗まで走った。
引用返信
/
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■15664
/ ResNo.3)
うさぎ病>2.昔の女
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■
□投稿者/ れい
@
ちょと常連(61回)-(2006/08/06(Sun) 22:40:19)
2006/09/17(Sun) 23:10:44 編集(投稿者)
裏手の受付にいる守衛さんに会釈をして、社員用入り口から入って、
すぐ突き当たりの店内に出るドアを出たところが私の職場、
百貨店のスポーツ用品売り場だ。
一組のお客さまの相手を必死でしている女の子の姿が見える。篠原だ。
…私から、ランチの貴重な休み時間を奪った張本人。
毎度のことなので、もう怒る気にもなれない。
篠原の一歩後ろから、篠原の背中を軽く叩いて、お客さまに声をかける。
「いらっしゃいませ。何をお探しでいらっしゃいますか」
私の顔を見上げた途端、明らかにほっとした顔をする篠原。
そんな顔をするんじゃないの。お客さまに見られるでしょう。
「あ、主任、こちらのお客さま…」
「登山用の、この靴を探しているんだが」
お客さまは、雑誌の切抜きを手に持って私の方を向いた。
小柄な初老の男性の方だ。
やっとハナシの分かる人間が出てきたか、という顔をしているけれど
予想以上に大柄な女だったことに驚いたのか、
私に圧倒されていらっしゃる。
篠原が私の影に隠れるように、一歩退いた。
「あ、こちらの靴ですね、どちらにいかれるんですか」
「今度、妻と富士山に登ろうという話になってね」
「何合目まで行かれるんですか」
「頂上までだよ」
「あら、すごい。よくお登りになるんですか」
そんな話をしながら、お客様が探していらっしゃるブランドの登山靴は
どこの店舗で扱っていたっけなと思い返す。
うちの店舗では、残念ながら取扱いのないブランドだった。
確か、△△店にならあったかもしれない。
サイズと色をお客さまに確認して、
「確認して参りますので、少々お待ちくださいませ」
そう言って、バックに引っ込み、△△店に電話をかける。
…3ヶ月前まで私がいた店舗だ。
正直言えば、あまりかけたくない。
理由もある。けれど…
「おつかれさまです、○○店の江藤ですが」
―あ…おつかれさまです、上条です。
落ち着いた、少し動揺している若い女性スタッフの声がする。
思わず、額に手を当てた。
…こともあろうに、ビンゴだ。
タイミングが悪すぎる。他のスタッフがいるのに、上条が出なくても。
反射的に受話器を置きたくなったが、自分から名乗ってしまっている以上、
そしてお客さまの対応中である以上、そんなことはできなかった。
「そちらの在庫を確認したいのですけど…」
―はい、どうぞ。
冷静な声で、彼女は応対をしている。
私の心はこんなに掻き乱されているというのに。
この違いは、一体なんだというのだろう。
まるで、私と彼女の間には何も無かったと言わんばかりの。
「〜〜の登山靴、色はブラックで、26なんですが」
―あ、一点だけありますね。持ってきましょうか。いつまでですか?
「わかりました、ありがとう。じゃあちょっとお客様に聞いてみますね」
―お願いします。
「また電話します、おつかれさまです」
―お疲れさまでーす。
電話を切った後、ふーっと力が抜けるのが分かる。
上条…可南子との、先々月のやりとりが、頭を掠めた。
――淳子さん、あたし…やっぱりマサヤが好き。これ以上、マサヤを裏切れないよ。
私の店舗移動とほぼ同時に、二人の関係は別れを告げた。
彼女に男がいたなんて、そのとき初めて知ったのだった。
可南子と過ごしたのは、たった半年。
その間、彼女は私を裏切り続けていたというのか。
甘く甘く過ごしていたと思っていたのは、私だけだったのか。
人を信じていいのか分からない、なんて言うつもりはないけれど、
あの時ばかりはしばらく人間不信に陥った。
私は未だに、失恋の痛手から抜け出せずにいる。
引用返信
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■15665
/ ResNo.4)
Re[3]: うさぎ病>3.背が高い女は嫌ですか
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□投稿者/ れい
@
ちょと常連(62回)-(2006/08/06(Sun) 22:45:49)
軽く頭を振って、気持ちを切り替えて、店舗に出る。
篠原と雑談をしているお客さまの視線が、私に移った。
「お客さま、お探しの商品なのですが」
そう言って距離を縮める。
「当店では取扱いがないんですよ、申し訳ありません…」
お客さまの落胆した表情が見て取れた。
「ただ、弊社の△△店には一足、在庫がございまして、」
そういうと、少し明るい表情になる。
「もし宜しければ取り寄せさせて戴きますが…
いつ頃までに必要でいらっしゃいますか」
「今週末までには必要なんだ」
「明日までにこちらにご用意できますが、こちらの店舗には…?」
「会社が近くてね。じゃあまた明日寄るよ」
ありがとうございます、と頭を下げる。
連絡先とお名前をお伺いして、丁寧にお見送りをした。
店舗を出られる途中、よほど私の身長に圧倒されたのだろう。
「君、身長たかいねぇ、何センチあるの?」
お客さまからそんな質問が出た。
よく聞かれる質問だ。もう慣れてしまっていた。
「私、高いでしょう。178cmあるんですよ」
物心つく前から、同級生の中では飛びぬけて身長が高かった。
とにかくそれが人目を引いて。
バスケやバレーをやっていれば、別だったかもしれないけれど。
闘争心などまるで無かった私にはそんなスポーツは好きではなくて。
成長期だった高校時代は水泳部として過ごした。
今でも泳ぐのは好きだ。
あのころと比べると、ずいぶんと太ってしまったけれど。
今では肩幅も、下手したら、体格も。
そこらへんのひょろひょろしている男よりはしっかりしている自信がある。
筋肉量では敵わないとしても。
引用返信
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■15666
/ ResNo.5)
Re[4]: うさぎ病>心弾む来客
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□投稿者/ れい
@
ちょと常連(63回)-(2006/08/06(Sun) 22:48:18)
「篠原さん、お昼。行ってきていいわよ」
「え、でも主任…」
「私はもう食べたから」
「す、すみませんっ。行ってきまーす」
お客さまをお見送りし、ぼーっと突っ立っている篠原の背中を叩き、
お昼に行かせる。
今からお昼休みの続きに戻るのはなんだか馬鹿らしかった。
篠原の背中を見送って、ため息をひとつ吐く。
彼女の教育担当になって、3ヶ月が経とうとしているが、
彼女を教えるようになって、何度教えても覚えない人間、
成長性が見られない人間に対しても、寛容な心が生まれるようになった。
女も30を過ぎると、ずいぶん心が広くなるのかとも思う。
20代の頃にあんな子を持たされていたら、
ストレスで胃に穴があいていたかもしれない。
この仕事で私は、お客さまにしろ、従業員にしろ、
様々な人に接し、色々なタイプの人間がいるのを知った。
周りの人間を、自分の都合だけで動かす人、
自分を立ててくれないと気がすまない人、
あからさまにマイナス感情を表に出す小学生のような人、
店員や部下は自分の下僕だと思っている人……
そんな人たちを見ていると、篠原の手のかかり具合など
ずいぶんかわいい存在のように見えてくるから不思議だ。
そんな事を考えていると、店舗に1人の女性が入ってくるのが視界に映った。
「いらっしゃいませ」
頭を切り替え、接客モードに入る。
20代中盤〜後半の女性だ。何かを探しているようだった。
身長がわりと高い。一般的に見ればの話だけれど。
168cmくらいだろうか。
手足が細く白く、長くてすらっとしている。
モデルのように華奢な体付きに、思わず目が奪われた。
どうせ身長が高いのなら、ああなりたかったなと思わされるような
モデルのような体型。
どうやったらあんな体型が維持できるのだろう。
身長とともに体重も増えてしまった私の体と、つい比べてしまう。
ショートパンツから覗く、
筋肉のないほっそりとしたふくらはぎに、釘付けになる。
自分でスポーツをやるために、
このお店に来たのではないだろうなと思った。
「何かお探しでいらっしゃいますか」
声をかけると、顔を上げて、まっすぐにこちらを見た。
透き通るような白い肌、柔らかそうな頬、
長い睫毛に縁取られた茶色の瞳。
緩やかにウェーブしている、長くてきれいな髪の毛。
薄くてピンク色の唇。
ぱっちりした二重の瞼。
どこかのモデルさんのようだった。
引用返信
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■15667
/ ResNo.6)
Re[5]: うさぎ病>探し物はなんですか
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□投稿者/ れい
@
ちょと常連(64回)-(2006/08/06(Sun) 22:50:08)
ストレートに言おう。
私の好みだった。
ど真ん中もいいところだ。
何かの雑誌のモデルかもしれない、と思い始めた頃に
「スニーカーを、探しているんですけど…」
その女性が想像していたよりもハスキーな声で口を開く。
「メーカーやモデルなど、もしお分かりでしたら…」
接客マニュアルのようなコメントが口をついて出たところで、
「これ、なんですけれど…」
そう言って差し出されたのは、ぼろぼろになった雑誌の切抜き。
写っていたのは、ナイキの限定モデルスニーカーだった。
一時期若者に大ブームを起こして、プレミアまでついたモデルの
最新版の2〜3代前のヴァージョンだった。
あるとしても、専門店でしか見かけられないだろう。
「あー、こちら、ですか。これはうちでは扱ってないんですよ」
「そうですか…」
落胆の色が見て取れて、少し可哀相になる。
「このあたりの専門店ですとー…」
そう言って、思いつく限りの専門店を列挙していくと、
最初は縋るような目で私を見ていた彼女も、
次第に落胆の色を濃くしていくようだった。
「…あ、もうこのあたり、全部回られたんですか…?」
目の前の美女はこくんと頷いた。
「あー…」
かける言葉か見つからない。
彼女にとってそれだけ探さなくてはいけない大事なものらしかった。
彼女が身につけるためのものじゃないだろう。
雑誌の切抜きを持ち歩いていたということは彼氏へのプレゼントだろうか。
引用返信
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■15668
/ ResNo.7)
Re[6]: うさぎ病>勇気の一歩
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□投稿者/ れい
@
ちょと常連(65回)-(2006/08/06(Sun) 22:51:54)
「これ、どうしても必要なものなんですね…?」
この店員、立ち入ったことを聞くなー、と思われるかと思ったが、
このまま彼女を帰すのが惜しくて、そんな質問を投げ掛けた。
「大事な友達に、あげたかったんです」
「彼氏、ですか」
「…いえ、…あ、女の子なんですけれど」
ん、と少し引っかかりを感じる。
もしかして、とは思うものの、さすがにそこまでは聞けず、
「そうなんですか」と言って流した。
それはさすがに、私の都合のいい解釈というものだろう。
「それでしたら…私のほうでも手配をしてみましょうか。
もし宜しければ、ご連絡先、教えて戴けますか」
仕事のためだ、と頭の中で言い聞かせて、
彼女との繋がりをまだ持っていたいと思っていたとき、
私の口から、びっくりするくらい自然に言葉が出てきた。
自分の大胆な発言と、公私混同じゃないかという良心に
心臓がばくばくしていたけれど
彼女は「ありがとうございます」とものすごく嬉しそうに言って
うちの顧客管理カードを書いてくれた。
「杉山 美春」
携帯電話とメールアドレス、そして
ご丁寧に住所まで書いてくれている。
しかも、驚くことにわりとうちの近所だ。
「あ、家、私とちかいですね」とはさすがに言えなかった。
心臓がうるさいくらい、高鳴っていた。
今まで私が、こんなに恋愛に対して頑張ろうとしたことなんてあっただろうか。
引用返信
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■15669
/ ResNo.8)
Re[7]: うさぎ病>第一ミッション完了
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□投稿者/ れい
@
ちょと常連(66回)-(2006/08/06(Sun) 22:53:27)
彼女が私に顧客管理カードを渡し、
「必ず連絡しますね」
そう言って彼女を見送り、
顧客管理カードをポケットに忍ばせてから二組の接客をしたあとに、
篠原はやっと帰ってきた。
「ただいま戻りましたぁ。」
「おつかれさまです。ちょっとチェック行ってくるから、篠原さん宜しくね」
「はーいっ」
お手洗いに行くことを篠原に伝えて、バックに入る。
そのままお手洗いに行き、顧客管理カードを小さく折りたたみ、
本来、ブラのパッドを入れるところにカードを織り込んだ。
これで、帰る時の荷物チェックで引っかかることも無いだろう。
ユニフォームである紺のポロシャツの上から胸を押さえ、
ブラの中の彼女の個人情報の存在を確認する。
まだ心臓がバクバクいっていた。
鏡の中の自分を見る。
彼女と比べて冴えない容姿、
太い二の腕、肉のついたおなか、
細くない、足。
身長が通常サイズよりもずいぶんと高いので、
それらの太さは余計私を大きく見せていた。
よくこんなルックスで彼女の連絡先を聞けたと思う。
…女だからできる技だろう。自分を褒めてやりたい。
普段の自信の無い私だったら、そんなことできなかっただろうけど。
仕事中の私は、違うのだ。
仕事をしている間は、自信を持って生き生きしているのが自分でも分かる。
少し乱れていたひとつに結んでいた髪の毛を、
撫で付けるようにして結びなおし、前髪を整え、
紫のふちのセルフレームの眼鏡を直す。
それまで地味一辺倒だった私が、結構冒険して、
勇気を持って買い換えた眼鏡だ。
たまに派手かな、とも思うけれど、
地味すぎる私にはちょうどいいんじゃない、と友達は笑う。
厚くて少し色の沈んだ唇に、リップクリームを塗りながら、
さっきの彼女の、ピンクで柔らかそうな薄い唇を思い出した。
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■15696
/ ResNo.9)
Re[8]: うさぎ病>思わぬ申し出
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□投稿者/ れい
@
ちょと常連(69回)-(2006/08/08(Tue) 00:43:25)
彼女がうちの店に来店して2日。
その間に私は彼女が探していたスニーカーを押さえていた。
全ては、学生時代の友人たちのおかげといっても過言ではないだろう。
こういう時に、友達というのは便利だ。
心当たりある学生時代の友達数人にそのスニーカーのことを尋ねると、
「確かうちの近くの靴屋にあったぜ。
おれはバンズにしか目がないけどな」
スニーカーバカ(うちにバンズのコレクションが、もう20以上あるという)
のうちの一人からそんな回答が帰ってきたので
そのショップの店員に電話をして商品を押さえた。
次の日にお店まで現物を確認しに行くと、
それは彼女が探していたまさにその靴だった。
お店のお兄ちゃんに事情を話し、直接交渉すると
卸値、とまでは行かないけれど、
特別安くしてくれることになった。
「△△百貨店スポーツ売り場の江藤と申しますが」
彼女に電話したのは、その次の日。
―あ、杉山です。
午前の遅い時間、連絡を入れた彼女の声はハスキーで
寝起きであることが容易に想像できて、
私は一人、電話のこちら側で申し訳なく思った。
「お客様がお探しでいらっしゃいましたスニーカーが
確保できたのですが…」
―本当ですか!?ありがとうございます!
電話の向こうで彼女が起き上がり、テンションも跳ね上がったのがわかった。
こちら側も、ついつい嬉しくなってしまう。
「いつ頃、取りにいらっしゃいますか」
―……。あ、そうか…。
しばらくの無音。
―江藤さん、でしたよね?
「はい?」
彼女の突然の呼びかけに対して、動揺する私がいた。
―大変申し上げ辛いのですが…今日、何時上がりですか?
今晩何かご予定などありますか?
「えっ……」
彼女の思わぬ発言に、一瞬パニックに陥る私。
―あ、いえ。あのですね。
私、どうしてもそれ、明日か明後日の朝までに必要なのですが、
今日も明日も、取りにいけそうにないのです…。
私、バーで働いておりまして、
もし、もしですよ?
江藤さんさえ宜しければ、
食べ物、飲み物、全て私が持ちますので
いらして戴けないかなと思いまして…
…やっぱり、勝手なお願いですよね…すみません。
「…場所は、どちらになるのですか」
―! ○○線、□□駅歩いてすぐなのですが。
予想通り、うちから歩いていける距離だった。
「構いませんよ。本当はこういうことは絶対しないんですけど…
内緒にしておいてくださいね」
釘を刺して、同意をすると、彼女は嬉しそうに笑って
―ありがとうございます!いや、本当すみません。
そう言った。
見た目からして意外とずいぶんさばさばとしている子だ。
見た目はファッション誌に出てきそうなくらい、
ずいぶんと女の子らしい子だったけれど。
でも、逆に、そんな彼女にまた会ってみたいのも事実だった。
そして翌日、私は彼女の店に伺う約束をした。
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