ビアンエッセイ♪

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■16536 / ResNo.80)  ちびさん、リトルさん─
  
□投稿者/ エビ 常連♪(106回)-(2006/09/18(Mon) 21:04:51)
    ちびつぁん─

    よ(笑)
    あー、あれ間違えたんです私。
    「ピンプン」はミス入力なんですよ、すみません(*_*)
    正しくは…。
    「ピンペン」(笑)
    いつだって何だってテキトーなのさ(いやん)
    話の繋がりみたいなもの、気付いて頂けたでしょうか?
    続きのタスキネタが見つからず6で終わってます(笑)
    今後ともよろしく♪


    リトルさん─

    こんばんは。
    エラーしょってましたですね(よ!)
    私も何回か経験あります、ハイ。
    無意味に凹むですねあれは(笑)
    書いてはいらっしゃるんでしょうか?
    やっぱす楽しみにしております♪




    (携帯)
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■16537 / ResNo.81)  ホネが折れる
□投稿者/ エビ 常連♪(107回)-(2006/09/18(Mon) 21:07:42)
    ベッド脇、
    東向きの大きな窓。
    白のブラインドから差し込む朝の光は割と眩しい。
    いつも彼女の左、東側で眠る私は。
    朝になると西側を向いている事が多い。
    彼女はそんな私の頭を包むように、
    東側を向いて眠っている。


    実は。
    実は彼女だって朝の光は眩しいんじゃないかと気付いたのは、
    つい最近だ。



    ちょっと変、
    ちょっぴり不審者の匂いがするオジサンが電車で近くに立っていた時。
    「こっちおいで」
    ニコニコと笑って扉の端のスペースに私を引き入れた彼女。
    「ん」
    相変わらずニコニコと笑う彼女はさりげなく。
    私と変なオジサンの間で壁になった。


    実は。
    実は彼女だって変なオジサンは気持ち悪いんじゃないかと気付いたのは、
    ついさっきだ。



    私が泣いた時は。
    抱きしめ、少なくても的確な言葉をくれて、最後には必ず笑わせてくれる。


    そんな彼女が。
    私とそんなに背丈は変わらなくて、歳もひとつしか違わなくて。
    感情任せに泣きたい時だってあるんじゃないかと気付いたのは。


    やっと気付けたのは。




    帰りの新幹線だ。






    自分の小ささを受け止めそれを優しさに変えようとするには。


    私は愛され過ぎている気がする。
    彼女はカッコ良すぎる気がする。


    私が彼女にもらう時間と空間、身体と心に満ち足りる優しさの中で。
    幸せな、
    幸せな時間のその中で。


    彼女への愛しさを自分の強さに変えるのは…。




    なかなかホネが折れるのだ。





    彼女の為に何かしたい、
    自分は何が出来るのだろう─


    この気持ちは多分永遠に尽きない。



    「ねー、今何か欲しいモノない?」


    間抜けな質問にはやっぱり。


    「ない」


    あっさり答えられちゃったけど(あれま)




    彼女が私にたったひとつ託してくれる、


    「笑ってて?」


    この願いを叶えることくらいは。


    一介の会社員の私にも出来ると思う。



    雨が空から舞い。
    秋深まる夜。


    「また来週」


    ミラクルな約束を交わしてバイバイしたこの夜。



    色んな想い溢れる、
    この夜に。





    ヘラヘラ笑顔で眠りについてみようと思う。







    身を焦がす逢瀬の後─


    あなたに降る夜が穏やかであるように。
    明日へ続く今日が穏やかに過ぎゆくように。



    ずっと愛してくれますように。





    打算を込めて─









    愛してる。




    (携帯)
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■16541 / ResNo.82)  階段を降りて、登る。
□投稿者/ つちふまず ファミリー(174回)-(2006/09/18(Mon) 22:15:03)
    バタン─



    「んもー…」



    イライラと廊下を歩く私の手には生ゴミの入った袋があって。
    霧雨が、夜の空から舞い降りていた。



    ヘソを曲げてしまう事は度々電話やメールで見て来たけれど、



    1Kの私の城には今─



    厄介な事に、
    その本人が。
    彼女がいる。







    10分前─


    「………はー…」


    「…………。」


    ふとした事で言い争いになってしまって、
    お互いが貝になって視線を合わせなくなって。




    沈黙が耐えきれなくなった私は、
    ゴミ袋を手に玄関のドアを開けた。




    階段を一歩─



    “何やってんだろう”



    階段を一歩─



    “喧嘩なんてしたくないのに”



    階段を一歩─



    “さっきまであんなに仲良しだったのに”




    階段を降りきった所で、二階の端のドアを見上げてみる。



    いきなり立ち上がって、外に出てしまった私を彼女はどう思ったのだろう。



    視線を曲げずに、まだ、壁を見つめたままなのだろうか。



    真っ直ぐなあの茶色な瞳は曇っているのだろうか。




    収集場所のネットを上げて袋を静かに置いた。




    一歩一歩、
    また階段を上がる。




    一歩─



    “…………。”



    一歩─



    “ごめんって言おう”



    一歩─



    “言わなきゃ”




    昨日。


    八幡宮のライトに照らされた彼女の横顔が、



    綺麗だったなと。




    ふいに思い出す。




    ペタペタとサンダルが鳴った。





    機嫌を…。
    機嫌を、


    直してもらいたいな。




    ああそうだ。
    春雨ヌードル。
    買ってあったっけ。


    きっと小腹が空いてるだろうから。




    一緒に食べよう。
    半分こにしようかな。



    二人でふーふーして食べたら、その後にごめんって頑張って言おう。




    私が彼女に何かしたいと思う時は─




    打算で一杯だけど、




    仲直りしたいんだ。






    昨日の今頃は─



    鎌倉を散歩して、
    この部屋に帰って。
    二人寄り添って、
    笑ってた。



    それからお風呂に入ってベッドに入って。



    夜が更けて行くのがもったいなくて。



    もったいなくて…。







    あんな風に、
    今夜もなりたいな。







    ドアの前に立って─










    私はノブに手をかけた。



    (携帯)
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■16549 / ResNo.83)  小さな彼
□投稿者/ つちふまず ファミリー(175回)-(2006/09/19(Tue) 10:16:07)
    我が家には─




    我が家には、
    同居人がいる。


    あ、語弊がある。
    同居“人”ではない。




    小さな彼だ。
    背中に五本縞を持つ。
    好物はどんぐり。


    彼は窓際に部屋を構えていて、
    誤解されやすいが彼は昼行性だ。




    そんな彼は─




    「また見てる」




    笑いながら言う彼女。




    視線をそちらに向けると彼女曰わく『おぼこい』瞳と視線が合う。




    ベッドサイドに居るが故に─


    “見てはならない光景”までも彼に見られる事も数多い。


    昼間っからそんな事をしてるのも非生産的ではあるけれど。


    そこは今が旬な恋人同士昼だろうが夜だろうが。




    欲求に素直だ。



    だが性懲りもなく明るい光が差し込む部屋。
    二人裸になってベッドの上で抱き合っている時に限って。




    何度となく、
    彼と目が合うのだ。




    「見ちゃダメ」




    私が彼に諭すと。




    ふさふさの尻尾を翻して興味なさそうに寝床に入って行った。




    「リスなりに気を遣ってるんじゃない?」




    彼女は口に私の耳を含んで笑う。



    気を遣っているかどうかは定かでないが。



    そう云えば、
    私と彼女が戯れに夢中になっている時の彼は大人しい。




    確かに─



    “リスなりに”



    気を遣ってるのかもしれない。




    だが─




    “シャーッ”


    「いだっ!!」


    「え?」




    秋は、
    秋は機嫌が悪いのだ。


    彼女の下半身に埋めていた頭を慌てて離し、
    足の裏を撫でる。


    夢中になるあまりだらしなく伸びていた足がカゴに届いていたようだ。




    「きっと今まで色んな光景を見てるんだろうね…?この子」




    彼女は意地悪に笑う。



    それには答えずに、再び彼女の部分に頭を舌を伸ばした。



    彼はベッド下方に家を構えているから─


    かなり際どい視点なはず。
    それはそれは刺激的な光景に違いない。




    私の大好きなおへそや、2つの山の向こうに見える眉間に皺を寄せた綺麗な顔。




    この景色が一番好き。




    一番綺麗。




    他に見せる訳には行かないんだけど…。




    “カサカサ”



    すぐそこで昼寝をしようとしている彼は特別。





    私と彼だけが、
    抱く秘密。







    墓まで─










    墓までちゃんと持って行ってよ?




    (携帯)
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■16927 / ResNo.84)  宏子と悠紀 1
□投稿者/ つちふまず ファミリー(177回)-(2006/10/16(Mon) 23:45:06)
    ─メールありがとう!びっくりしちゃった。心からの幸せをお祈り申し上げます。
    当日の参加は葉書で返信もしたんだけど…、




    「ただいまー」



    カタカタ─


    あ、帰って来た…。


    思わず手を止める。


    だがもう一度画面に目を遣り、末文を添える。




    「あれ、………と」




    背後のドアが開くと同時に声が飛び込んで来た。



    「おかえり」



    送信のボタンを押した。



    「仕事?」



    光を放つ小さな画面を覗き込まれて、



    「ううん、メール」



    若干慌ててその画面を閉じる。



    首筋に、
    ふわっと柔らかい髪と温もりが乗る。



    「怪しい…」



    頬と頬が擦れ合い、首に腕が回る。

    1日を終えた匂いと共にキンモクセイの香りが鼻腔に届いた。



    「いい匂い」



    スンスン、と。細い腕に鼻を押し付ける。



    「秋だから」



    ただいま、と。
    おかえり、を。
    同時に言うタイミングでキスを乗せた。




    「誰とメールしてたのさ」



    「祐子だよ、ほら。大学ん時の」



    「んー…」



    「田中真紀子のモノマネ」


    「ああ!あー!あの子ね!思い出した」



    はいはい、と。
    改めて上着を脱ぎながら笑顔で頷いている。



    「結婚するんだって」



    “て”を言い終える前にノートPCをシャットダウンさせた。



    「ほー、それはそれは」


    クローゼットを開けて室内着に着替える彼女の顔はこちらからは。




    見えない。



    「披露宴の誘いが来てたんだけど…」



    「行ってくればー?」



    背を向けて着替える彼女の顔は、


    見えない。



    「ううん、断っちゃった」


    「え?」


    ようやく着替えを終えた彼女は、こっちを向いてくれた。




    「断ったの」



    「予定入ってるの?」



    私のすぐ隣のベッドに彼女は腰を下ろす。



    「予定はないよ」



    「……。」




    んー、と。
    私の目を数秒見たのち、一回腕を組んで。





    「そっか」




    それだけ言った。



    「うん」



    彼女を見ずに、頷いた。


    「お腹減ったーご飯食べた?」



    流れを、
    変える時の彼女の声が響いて。




    「ううん、まだ」





    許されたような、でも不安なような。








    中途半端な笑顔でそう答えた。





    (携帯)
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■16929 / ResNo.85)  宏子と悠紀 2
□投稿者/ つちふまず ファミリー(178回)-(2006/10/16(Mon) 23:47:50)
    悠紀とこのマンションに暮らし始めて─


    約二年になる。


    2DKの間取りは、二人で住むには使い勝手のいいものではない。


    築年数だって、私たちと産まれた年とさほど変わらないのだから大したものだ。


    それだけではなく、隣にピタリと寄り添うように建てられた無駄に儲かっているであろう整形外科のビルがあって。


    決して日当たりがいいとは言えない。




    でも駅から5分。


    走って3分。


    途中には99円ショップもある。


    いつも客が入ってないけどドトールだってある。


    遊具は無いけど小さな正方形の公園だって。




    あるのだから─


    ここに住んで“後悔”という言葉を呑み込んだ事は無い。




    「夕飯どうしよっか」



    買い物してくれば良かったな、と。
    ほぼ空に近い冷蔵庫を眺めながら悠紀は言った。


    「あ、ごめん」


    私の方が早く帰って来てたのに。

    夕飯の事など、
    忘れていた。




    メールの件のせいで─



    空腹を忘れていたのは、わかりやすい事実だった。




    「んー、買い物行こうか」




    パタンと悠紀は冷蔵庫を閉めた。



    何となく、
    言葉が出なかった私は二人がけのソファに私は座る。




    「どうしたの」




    スタスタと裸足でフローリングを歩く悠紀は、
    敢えてソファに座らずに私の目の前の床にべタリとあぐらをかいて座った。




    「なんでもない」




    はー、と一発私がため息をついたのは、別に悠紀のせいでも何でも無くて。


    テレビが未だにブラウン管だからでもなく、


    ましてや雨戸が閉まらなくなってしまったからでもない。




    今年に入って─




    三回目だからだ。




    「三回目…」




    脳裏に浮かんだ数字を思わず口にしてしまった。



    「え?三回目?」




    何が?
    と形のいい眉を悠紀は潜める。


    素直な前髪の隙間から、二重の色素の薄い瞳が私を捉える。


    あどけなさは、この人はずっと変わらない。




    「ううん、何でもない」



    頭を振って、
    私は悠紀の頭に両手を乗せた。
    わしゃわしゃと不揃いの髪を、私の指が捕まえる。




    今年に入って三回目。





    仕方がないのだ。





    何故なら私たちは、




    いわゆる『結婚適齢期』



    世間が身勝手に決めたその期間を、









    今生きている。

    (携帯)
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■16930 / ResNo.86)  宏子と悠紀 3
□投稿者/ つちふまず ファミリー(179回)-(2006/10/16(Mon) 23:51:50)
    網戸から外気が入り込み。


    つい先程、悠紀の腕から伝わった季節の香りが舞った。



    「んー…」



    なすがままに、頭を撫でられている悠紀。


    綺麗に渦を巻くつむじの中心からちょっとズレた所に、
    小さなほくろが見える。




    悠紀も気付いては、
    いる。




    私が大きなため息を吐いた理由も、
    私がさっきから言葉が出ない理由も。




    本当はわかっている。



    私が『結婚』というリアルなようでリアルではない単語を発した時─


    大抵悠紀はこんな困った顔をして口を真横に結んで、


    んーと唸る。



    それを見て私は言葉が出ない。


    これもまた、今年に入って3回目。



    「あっ」


    悠紀は二重の瞳を大きく見開いた。


    「え」


    「マグロ祭りだよ」


    ニッと並びのいい白い歯を剥き出しにした。


    「?」


    「お寿司取ろう。久しぶりに、ね?」


    パッと立ち上がったと思ったら、テレビの横にあったマガジンラックをガサゴソと探り出す。


    まぐろ〜まぐろ〜と。


    訳のわからない曲調で、歌を奏でている。




    そしてすぐに、
    あった!
    と小さく呟いた後。



    「……マグロ祭り」



    再びニッと笑って、嬉しそうにその出前チラシを私に見せた。




    お寿司…ねぇ。




    「まだ給料まで日があるよ?」




    出前が自炊よりも高くつく事位、わかっている。



    「たまにはいいじゃん。私がご馳走するよー」



    お互い安月給のクセに…。


    私の迷いとは裏腹に、悠紀は既に腹が決まっているのか。


    赤身ばかりが並ぶそのメニューを眺めていた。



    「いいよ。じゃあお寿司にしよう」



    少々呆れながら言うと。




    悠紀は顔を上げて、あまり見せなくなった真剣な顔をして。





    私を一瞬捉えた後─





    またチラシに目を落とし、笑った。




    「電話するよ」



    私がテーブルの上に置きっぱなしにしていた携帯を手に取ると。




    「の前にビールでも買いに行こうよ」



    悠紀は立ち上がって窓に手を伸ばし、パタンと外気を遮断した。





    「うん、わかった」





    診療が終わったのだろう、整形外科の看板から放たれる光が窓ガラス越しに消えた。




    あれが消える瞬間は、



    出来れば一人でいたくないと。






    いつも思う。






    (携帯)
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■16931 / ResNo.87)  つちふまずさん
□投稿者/ 北原 一般♪(21回)-(2006/10/16(Mon) 23:52:26)
    初めまして、北原と申します(*^^*)




    …実は。


    初めましてじゃないんです、私(笑)
    前に少しだけ、メールでやりとりさせてもらっていました。(その時は違う名前だったんですが…)

    またこうやってつちさんと接することができて、とても嬉しいです(*^_^*)

    新たなお話が始まるようですね!

    楽しみにしています(*^^*)


    (携帯)
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■16932 / ResNo.88)  宏子と悠紀 4
□投稿者/ つちふまず ファミリー(180回)-(2006/10/16(Mon) 23:54:11)
    悠紀のスニーカーと私のつっかけが。
    夜の住宅街を抜ける。


    酒屋までは、歩いて10分ほどだ。



    「おーお月さん、今日も綺麗だねぇ」



    悠紀はジーンズのお尻のポケットに財布を突っ込みながら、
    夜空を見上げた。




    「寒くない?」




    私がカットソーの腕を抱えるようにさすると。




    「全然」




    悠紀はTシャツから伸びた細い腕を見て笑った。



    童顔なのは仕方がないとして、悠紀の服装は季節と年齢を感じさせない。



    冠婚葬祭の時しか着ないスーツも、私は結構好きなんだけど…。




    「もうすぐクリスマスだねー、ねー。」


    「全然先だし」


    「えーアッと言う間だよー」



    確かに。
    ここ何年かは、
    時間が過ぎるのが早いと感じてならない。



    いつからそう感じるようになったのかは。




    私にも良くわからない。


    「…三年前のクリスマスって何あげたっけ」


    あれ?
    と悠紀は首を傾げた。




    三年前…は。


    カンカンカン、と。遮断機が降りる音に、私達は足を止めた。



    三年前…。



    「今年は何がいいー?」


    快速電車が私達の目の前を駆け抜ける瞬間、悠紀は声を張り上げた。



    「……ん〜そうだなぁ、悠紀は?」



    「私?私は…」



    再び遮断機が上がって、私達は歩き出した。



    「…………。」



    「…………。」




    何か欲しいものあったっけかなぁ…。




    「思い出した」


    「え?」


    「三年前に宏子にあげたモノ」


    「なんだっけ?」


    「お互い金無くて、」


    「あー思い出した!」




    ヘラヘラと足元を見ながら、私達は笑った。




    三年前の私達は─


    お互いに一人暮らしで、精一杯で。


    「お金出し合って宏子んちで鍋パーティーしたんだよね」


    「ふふ、どうりで思い出せないはずだ」




    貧乏だった。




    でも確か、




    あの夜は─


    鍋もそこそこに、すぐにベッドに飛び込んで。



    飽きるまで愛し合った。



    次の日の昼過ぎに─


    「……焼き肉が食べたい」




    悠紀がそう言って二人で笑った事をよく覚えてる。




    三年前の私達は─


    今より確実に、
    喧嘩も沢山して、
    エッチも沢山して、




    その後は必ず、
    お肉が食べたいねって、





    笑い合ってた。





    (携帯)
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■16933 / ResNo.89)  宏子と悠紀 5
□投稿者/ つちふまず ファミリー(181回)-(2006/10/16(Mon) 23:57:06)
    今の私達の“関係”が、幸せかと聴かれれば、私は間違いなく。


    “Yes”


    そう答えるだろう。


    「モルツ〜モルツ〜」


    買い物カゴにビールを投げ込む悠紀を見る。


    “関係”


    いいも悪いも、
    自分自身の心の内で決める事だと私は思う。


    客観的事実からは、何も見えないものであると。



    客観的事実─


    例えば、“同棲”しているということ。
    例えば、“お互いに働いている”ということ。


    私達は正社員ではないけれど、
    健康保険にも、
    生命保険にも、
    きちんと入っている。


    内容よりも待遇で仕事を選ばざるを得ない時代。


    でも─


    “保険”


    一体私達は何を、
    保証されているのか。


    健康?
    未来?
    日々の生活?


    ふと、分からなくなる時がある。




    三回目─


    そう、
    こんな夜は特に、だ。


    「さー帰ってマグロ祭り〜」


    自動ドアが開いて─


    私達は再び家路に向かった。




    暗く─


    割と広い車道を二人、街灯の下を歩く。




    なんとなく。


    灯りの点いた一軒家から目を背けたくなる夜だと気付く。



    「ひーろこちゃん」



    ふいに名前を呼ばれ、右隣の悠紀を見る。



    悠紀は私の顔を見て、口元を緩めた後。



    「手つなごっか」



    左手を差し出した。



    「………」



    一軒家から目を逸らす夜。


    友人からの誘いを、断らなければならなかった夜。


    「やだ」


    私は悠紀の左手を取る事はしなかった。





    悠紀は一瞬目を曇らせた後、再び笑い、


    「まーぐろ〜まーぐろ〜」


    前だけを見て、
    また歌い出した。




    私は俯いて、何も言葉が出なかった。




    三年前のクリスマスを思い出した踏切を再び渡り、




    犬を連れて歩く女性とすれ違うまで、私達は言葉を交わさなかった。




    「ひろこ」




    声と同時に、
    悠紀は立ち止まった。




    私は振り返る。




    「何?」


    「………うーん」


    見ると悠紀は腕を組んで、周りを見渡した後。


    「あっ」


    思い付いたように声を上げた。




    「なーに?」



    「あそこで飲んじゃおうか」




    悠紀は袋を上げて、
    空いている方の手で、公園を指差した。


    正方形の、
    ベンチしか無い公園。









    私は小さく頷いた。




    (携帯)
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