ビアンエッセイ♪

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■15901 / ResNo.30)  想い想われ7
  
□投稿者/ エビ ちょと常連(77回)-(2006/08/14(Mon) 16:49:29)
    「明日早いから」


    その日も私は下を向き、遠藤の誘いを断った。



    「…………」



    遠藤の表情が強ばっているのが分かる。



    「…お疲れ」



    私は首のタオルを取り準備室から出ていく。



    キュッキュッ─


    10歩、20歩。


    後ろは振り向けない。


    ごめん、遠藤。



    ちょっと苦しいんだ。



    キュッ─



    30歩。



    キュッ─



    40…歩。




    キュっ!



    バッシュがこすれる音が聞こえて。




    「近藤」




    静かな体育館に、

    遠藤の声が響いた。




    思わず肩が上がり立ち止まる。


    でも…。



    「お疲れ」


    私は後ろを見ずにもう一度伝えた。




    キュっ。


    キュっキュっ、
    キュっキュっ…。


    私達のシューズの音が重なり合う。



    「待ってよ近藤」


    「…………」


    私は歩みの速度を上げた。



    「近藤!」



    腕に触れられたから思わず。



    「やめて」


    振り払った。




    そこは広い体育館のど真ん中─



    「…………」



    「…………」



    西日が。



    長く静かな影を作り出していた。






    「何で避けんの?」



    「別に避けてない…」



    分かりきった嘘は。



    「そうゆうの嫌だ」



    嫌いな人だとは知っている。



    「ごめん…」



    色んな意味での謝罪が口をつく。



    「何で?」



    「…………」



    「何で避ける?理由が知りたい」



    そう訊かれるだろうとは分かっていたから。



    こんな態度は取りたくなかった。



    でも…。



    「近藤?」



    優しく呼ばないで欲しい。



    「どしたんだよー」



    茶化さないで欲しい。



    「……………」



    「……………」



    諦めるなら今だから─



    「近藤、」


    初めて聴く、
    遠藤のとても真剣な声。


    「あの、さ」


    遠藤の目が私をしっかり据えているのが分かる。




    『あのさ』



    発した言葉はふたり同じ。









    『ぐーきゅるる…』



    絶妙のタイミングで鳴った腹の虫の声の大きさも。


    ふたり同じで…。





    「…空気読め」



    「お互い様」





    体育バカの私達。



    深刻な場面には弱いんだなと。






    「ふ」







    どちらからともなく笑った。





    (携帯)
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■15903 / ResNo.31)  想い想われ8
□投稿者/ エビ ちょと常連(78回)-(2006/08/14(Mon) 16:52:11)
    その日は─


    久しぶりに遠藤と一緒に帰った。


    海沿いの道を、
    ふたり自転車を押しながら歩く。



    「遠藤、好きな人いるんだよね」



    面と向かっては恐くて聞けないと思ってたけど。


    今なら大丈夫だ。



    「うん、まぁ…」



    「どんな人?」



    「どんなって…、普通」



    「アハハ普通って何よ」



    「普通の…ボクシングバカ」



    「…バカなんだ?」



    「うん、バカだね」



    “バカだね”と言った時。



    その人の事を思い出したんだろうか?



    遠藤の目が細くなった。



    少し痛む胸は。



    「コクっちゃえよー」



    笑う事で誤魔化せる。



    「コクらないよ」



    「何で」



    「あり得ない」



    「気軽にコクっちゃっえばいいんだよ〜。ダメならそれまでじゃん」



    今、自分がたたいている軽口。



    後になって“バカだな”と思うことは分かってる。



    でも。



    バカは今に始まったことじゃない。



    私もバカ。



    遠藤もバカ。



    彼もまたバカ、
    らしい。



    走って投げるしか脳のないバカが三人揃ったら。



    賢くいる必要なんてない、もっとバカでいればいい。



    「もし付き合うとかなったらちゃんと紹介してよねー。アハ」



    「…………」



    「私も彼氏作ろうっと。遠藤だけに抜け駆けされちゃ悔しいもんね〜」



    「…………」




    遠藤は静かに笑って聴いていた。





    「じゃ」



    私の家に先に着く。



    あっという間の帰り道。



    ギイ─



    門扉を開け自転車の先を入れる。



    「お疲れー」



    私が遠藤に背中を向けた時。







    「分かってるから」





    「ちゃんと分かったから」





    遠藤は私の背中に向け、そう言った。






    「じゃ、また月曜」





    自転車をまたぎ、
    遠藤が去っていくのを。


    音だけで感じる。







    はは…。



    バカなくせに。



    赤点は私より多いバカなくせに。





    そんなとこだけは敏感なんだね。







    もっと。
    いつもみたいに。






    バカでいてくれたらいいのに─










    「めっちゃ好きなんだよ遠藤!!」






    バカでかい私の声が。






    遠藤に届いたかは、
    分からない。







    (携帯)
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■15904 / ResNo.32)  想い想われ9
□投稿者/ エビ ちょと常連(79回)-(2006/08/14(Mon) 16:55:22)
    すうっと息を吸い込んで─




    「ただいまー!」






    「おかえり千夏」



    「おねーちゃんおかえり」



    「おう千夏、今日の部活はどうだった?」



    既に始まっている夕食の席につく。



    「はーもう超腹減ったー。今日はご飯何?」



    カバンを放り投げ。


    スカートの足をダイナミックに開いて戦闘(メシ)態勢。



    「エビフライよ。たくさん揚げたから」



    お母さんが運んでくれる。



    「ご飯大盛りね」



    「ハイハイ」






    「いただきまーす」










    「きょうのおねえちゃんげんきだったねー」



    「千夏の悩みも解決したんだろう。ハッハ」



    「はぁ。平和ね…。男の人は」



    「ど、どういう意味だい母さん」



    「さあね〜。でも少しは」




    素直になれたんじゃないかしら─










    サー。





    流れ落ちる水。






    泡立てたビオレ。







    私のオデコのニキビは…。






    相変わらず鎮座している。






    でも─






    「おはよー中田」





    変わらぬ朝。





    「おはよ〜。って、あ」





    でも少しは。






    「今日もデコ全開ですか〜」





    何かが変わった気がする今日この頃。






    消えるに消えないこのニキビ。



    消すに消せないこの想い。



    愛しくすら思えてきた私は。





    今までおろしていた前髪を上げるようにしている。







    “ピッカリン”



    なんてあだ名をつけられてはしまったけど…(涙)





    いいのだ。





    バカはバカらしく。




    考える事はやめて。







    このニキビを育てていこうと思ってる。










    「おはよ、遠藤」








    「おはよ、近藤」







    (携帯)
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■15905 / ResNo.33)  想い想われ10
□投稿者/ エビ ちょと常連(80回)-(2006/08/14(Mon) 16:57:59)
    “騎馬戦に出場の皆さんは…”



    体育祭の日─




    「走れ走れ〜!」



    「あっ今ズルしなかった?アノヤロー」



    「表彰式の準備OKです」



    「応援団の衣装に着替えてくるねー」




    私と遠藤。



    体育バカが最も熱くなる一日。



    競技に準備に走り回っていた。



    汗をかき。



    笑いころげると。



    腹が減る。




    バカとして実に健全な一日。





    そのラストは─




    “クラブ対抗リレーに出場の皆さんはゲートにお集まりください”




    そうコレ。




    体育バカのプライドをかけた100m走。




    女子バレー部の代表、
    私が入場口に並んでいると。




    「よ」




    やってきた女子バスケ部代表。




    「よ。遠藤」





    ふたりしてリレーのメンバーを見渡す。





    『ぐふ』




    悪いね陸上部。




    今日は私と遠藤の一騎打ちになる。






    “スタートラインまでお進みください”


    オーディエンスの盛り上がりは最高潮で。



    3レーン、
    4レーン。



    並んだ私達。





    屈み。




    クラウチングスタートの足場を探していると。






    「近藤」




    不意に遠藤に話しかけられた。





    「何?」






    “位置について”







    「このリレーで私らのどっちかが勝ったらデートしよう」







    “よーい”







    …………あ。




    あ〜!!!





    「ちょ、あ、え、え、遠藤!!」





    「ななな何だよこんな時に!?」














    「オデコにニキビできてるよ♪」











    “よーいドン!”










    fin.







    (携帯)
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■15907 / ResNo.34)  こんばんわ☆★
□投稿者/ 愛浬 一般♪(2回)-(2006/08/14(Mon) 17:57:13)
    メルではお世話になりました(*ゝωб)←って程会話もしてない(爆)

    どーしよーO(><;)(;><)O純粋な小説でドキドキしちゃう(ノ∇≦*)みたいな心境です(笑)

    想い想われニキビ……私もあったときに、母に言われました☆★


    懐かしいなぁ〜
    ま、私には近藤と遠藤みたいな素敵な恋物語はなかったんですけどね(ノ ̄▽ ̄)ノ

    小説、めっちゃ楽しかったです♪♪♪
    次も楽しみにしてますね(=゚ω゚)ノ

    (携帯)
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■15911 / ResNo.35)  嫌なニキビ(笑)
□投稿者/ 海烏 一般♪(5回)-(2006/08/14(Mon) 23:42:57)
    こんばんは。
    私が学生の頃は『左頬のニキビは自分からフる、右頬のニキビは相手にフられる』と言ってて。
    つまり、頬のニキビは失恋宣告(笑)

    唐突ですが、ここで一句。

    『ひまじん』を
    並び変えたら
    『ひまんじ』に

    こんな事を考えてる私が一番の肥満児もとい暇人だと(笑)
    ニン♪

    (携帯)
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■15916 / ResNo.36)  にゃは♪
□投稿者/ ちび 一般♪(2回)-(2006/08/15(Tue) 02:30:26)
    ニンニ〜ン♪

    (携帯)
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■15984 / ResNo.37)  デヘ
□投稿者/ エビ ちょと常連(81回)-(2006/08/17(Thu) 21:44:23)
    んー…眩しい…。


    8月の強い朝日は、
    寝起きの私の頭に響く。


    なかなか上がらない瞼をやれやれと開ける。




    冷たくなっていた自分の肩を撫でて、


    初めて何も身に付けていない事を知る。




    寝息を立てている隣に静かに頭を向けると、


    改めてあなたと夜を越えた事実を知る。





    ……………。





    デヘ(照)





    華奢な肩が寒くはないだろうかと布団を上げて、起きないようにと願う。


    小さな頭を覆う薄茶の柔らかい髪が癖になって跳ねているのを見て微笑む。





    ……………。






    デヘ(笑)







    ベッドがあまり沈まないように注意しながらフローリングに降りると。


    やけに冷たかった。


    時計を見ると二つの針が午前の8時過ぎを差していて。


    睡眠時間を計算した。





    ……………。






    デヘ(赤)





    タオルを巻いてテーブルの上の煙草に手を伸ばし、音がしないように火を点ける。


    煙が部屋に舞う。


    起き出したら何を作ろうかなと冷蔵庫にあるものを想像する。


    どうせなら喜ばせたい。





    …………。






    デヘ(謎)





    「…………んー…ふに。」




    あ、


    起きた。



    頭がこちらに振り返り、隣の存在を確認するかのようにポスポスと枕を叩く仕草を見て。




    ……………。




    デヘ(萌)←古





    煙草を消してベッドに戻ると、




    「んー…ん。」




    眩しいか。




    薄く目を開けて、上からのぞき込んでいた私を確認すると。




    「………………。」




    あれ、という表情の後に両手で小さな顔を覆った。





    ……………。






    デヘ(愛)




    その手をよけて前髪を払って額にキスすると。




    「…………ん。」




    目は開けずに微笑む。






    ……………。







    デヘ(幸)





    改めてベッドに入り直すと、小さな体を私にしがみつくように寄せる。


    熱は冷めてない。




    ぴったり隙間が出来ないようにくっついて私も体に手を回すと。




    徐々に火照る体が夏みたいだった。









    「………おはよ」









    熱い夏の朝。










    醒めない夢の続きを─













    デヘデヘ(笑)




    (携帯)
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■15985 / ResNo.38)  良く晴れた日に
□投稿者/ エビ ちょと常連(82回)-(2006/08/17(Thu) 21:47:02)
    テレビも着けず、
    音楽も聴かずに。




    よく晴れた日曜日─




    あなたの事を思って、


    ベッドで膝を抱え込んで窓からの景色を眺めてた。





    “もう”


    どこから何が間違っていたのか私には分からない。



    「ごめんね」


    「………ううん」



    唯一分かり合えたのは、最後の瞬間。





    好きで好きで、
    あんなに流した涙も。




    好きで好きで、
    交わし合った笑顔も。





    時に流れる。





    いつかあなたは─




    違う恋をして。




    いつかあなたは─




    違うキスをして。




    “こんな恋もした”




    そう笑って誰かに話すのだろう。







    あなたの大好きなナンバーを何度もリピートする位ずっと一緒にいたのに。


    あなたの肘の傷も深爪の指も眉を上げるクセも。


    強く強く私を抱いていた安心も腕の温もりも。






    時に流れる。









    きっと私は─





    違う恋をして。





    きっと私は─





    愛してると、
    誰かに耳元で囁いて。





    “あんな恋もあった”





    いつか恋人の前で笑うのだろう。








    一つの嘘さえ、
    なかったよ。




    握った手にも、
    伝えた想いも。




    叫んでかすれた声も。





    どこにも─





    きっと二人、
    始まりの鼓動も忘れて。


    きっと二人、
    幸せな寝不足も忘れて。



    きっと二人、
    初めての喧嘩も忘れて。



    きっと二人、
    流した涙も忘れて。



    きっと二人、
    交わしたキスの数も忘れて。



    きっと二人、
    重ね合った温もりも忘れて。



    きっと二人、
    過ごした記念日も忘れて。








    きっと二人、
    さよならの痛みも忘れて。







    “こんな恋もした”









    そう笑って話すのだろう。







    今日みたいに晴れた日─








    空に向かって、
    語るんだろう。









    (携帯)
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■15986 / ResNo.39)  犬になりたい
□投稿者/ エビ ちょと常連(83回)-(2006/08/17(Thu) 21:49:30)
    犬でも猫でも─




    どっちでもいいんだけど。




    イーンジャン…



    「ほい」
    「ほい」



    グーで私が勝ちね。
    ってことは…、




    私が犬─




    彼女の上に覆い被さって、両手で頬を挟む。



    「…どうして欲しい?」



    犬は主人に忠実に。




    願いあらばその通りに。



    「…………優しく」




    出来るの?と、
    私の心を見透かす。




    「できるよ」




    犬は主人に忠実に。




    キスはゆっくり。




    舌もゆっくり。




    徐々に暴れ出す吐息。




    クールダウンさせるように首筋に唇を。




    ラインに沿って、
    長い散歩を。



    耳たぶまで辿り着いたなら、




    「喉がかわいた」




    お願いしよう。




    散歩の後は、
    喉が乾くから。




    「いいよ」




    再び強く唇を合わせたら、全部吸い取ろう。




    暖かい唾液で、
    喉を潤わせて。




    唇の端から愛が溢れたら、残らず拭き取る。




    喉が潤ったら、
    次は遊ばせてもらおう。



    「どっちがいい」


    「……こっちから」




    それは二つあるから。


    迷ったら、
    聴いてみよう。


    好きな方を、
    聴いてみよう。




    「…………っ」


    「……いい?」




    あくまでも、
    犬は主人に忠実に。




    感じる部分は、
    的確に。




    「………好きなようにしていいよ」




    主人から首輪を外されたら、




    その合図が出たら。




    自由に駆け回ろう。




    茂みにはまって、




    迷わないように。




    的確に探し当てよう。




    「…………っ」




    溢れ出したら、
    舌で掬い取ろう。




    犬は主人に忠実に。


    悦ぶ顔を見る為に。


    感じる声を聴く為に。




    「もう………。」




    願いあらばその通りに。




    「……入れるよ」


    「……うん」




    あなたの好きなように。



    「…………っ!」




    あなたの好きな場所に。



    「………ああ」




    あなたの悦ぶ顔を見る為に。




    「……んー……っ」




    あなたの果てる瞬間まで。




    「………もうすぐ…」




    犬は忠実であれ。




    犬は忠実であれ。





    あなたの為なら─









    私は犬になる。




    (携帯)
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