| 「楓さーん」
「んー?」
「好きです。すごく」
「ふふふ。ありがとう」
そうして楓さんは頭を撫でてくれた。 それが心地良くて目を細める。 けれど急いで頭を振ってそれを振り払う。 楓さんは凄く驚いた顔をしていた。 それを無視して、なるったけ真剣な顔をして楓さんを見つめる。
「楓さん。好きです。」
「うん」
「好きです」
「ありがとう」
「好きなんです」
「ええ。わかってる」
そこで私のしびれがきれて、思いきり机を叩きながら立ち上がった。 両の掌がひりひりしたけれど、今は無視をした。
顔を出来るだけしかめて、楓さんを見て
「なんで、楓さんは・・」
「ん?」
楓さんは柔らかく微笑んで首を傾げた。 ちくしょう可愛いなぁなんて気持ちを必死でかくして、しかめた顔を維持する。
「なんで・・・好きって言ってくれないんですか?」
最後はなんだか尻すぼみになってしまって、酷く格好悪い台詞になってしまった。 個人的には、忙しい彼氏に 『私と仕事どっちが大事なの!?』 と聞く彼女のように、そこまで深刻でないにしろ似たように緊張感をもたらす台詞にする予定だったのだ。結果は悲惨だったが。 楓さんは少しも驚いた顔しないで、私を見ていた。
「かえ・・・でさん?」
「葵は」
「はっはい!?」
「好きといって欲しいの?」 「はぃ・・・」
改めて言われると、凄く恥ずかしかった。 楓さんはにっこり微笑むと、私のほうに回って来て、私の顎を掴むとそのままおとがいを反らすように持ち上げた。 力はそのままかけつづけるので当然私は仰向けに倒れた。
「葵。私はね好きって言葉を大切にしたいの」
「?」
「軽々しく使わないで確かな重みをのせて使いたいのよ」
「ぇーと、すみません」
「あら、葵はいいのよ。私は葵に好きって言われるの大好きだもの。それが葵の好きがもたらす効果だわ」
「はぁ」
楓さんは笑うと、耳もとに顔を埋めてきて
「葵。好き」
耳元で囁かれて、おもわずぞくりとした。 いつもより少し低くて、艶っぽくて、頭がし痺れたような感覚に陥った。
「ふふ。顔が真っ赤」
楓さんは愉しそうに笑った。私は悔し紛れに顔をしかめて
「か・・かか楓さんは・・ずるい・・・です・・・!」
楓さんはただ悠然と微笑むだけだった。
おそまつでしたー。 弄ばれるのは可愛くて個人的に大好き(笑)
次は『お参りにいこう!』でお願いしますー
(携帯)
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