| 2007/03/12(Mon) 17:45:12 編集(投稿者)
「パッコン買いに行こう。」
親しき仲に言葉は不必要と言うけれど、
「……へ?」
色々と補う必要がある会話もある訳で。
陽の差し込むリビングで新聞に目を通していた私は頭を傾けた。
「パッコン?」
なんだそりゃ、 の目で同居人を見ると。
「…洗面所が詰まった」
ガシガシとタオルで顔を拭いた後、それを首に巻きつけている。
「あー…」
そっか。
パッコンの意味をやっと理解した。
トイレが詰まった時に使うアレの事だ。
「パッコンか」
私が言うと。
うん、と腕を組み、私の新聞の先に映るサンデージャボンに目を向けている。
その道具の名前はパッコンかどうかは定かでは無いが…。
「じゃ、買いに行こう」
珍しく重なった二人の休日に目的が産まれた。
〜♪
ハードディスクに登録された当たり障りの無い、音楽を聞きながら。
私の車で郊外のショッピングセンターを目指す。
休日─ 晴れた日曜日。
梅が咲いてる、と。 あんなお店あったっけ、と。
当たり障りの無い会話を交わして、 大規模な駐車場へと車を停める。
目的のパッコンは─ 意外にも100円ショップに並んでいて。
私達の目的は早々に果たされてしまった。
ので─
「何か食べて帰ろうか」
顔を見ると。 うん、と口の端を持ち上げて、二人手を繋いで歩き出す。
何も言わずに私の手からキーを取り、運転席へ。
日差しが眩しいだろうと思い、サングラスを小物入れから取り出すと。
また何も言わずにそれを受け取った。
その日は─
久しぶりに二人一緒の休日で。
でも、 特に何かをしよう、と目的を立ててはいなかった。
あの頃は─
早く会いたくてそれでも待ちきれなくて長電話をしていた土曜日や。
今が何曜日なのか何時なのか自分の体なのか相手の体なのか、 分からなくなる位体を重ねていたけど。
それはもう記憶の彼方へ。
けれど─
帰りの牛丼屋では、大好きな紅しょうがを私の丼に沢山盛ってくれた。
帰ってから。 パッコンパッコンと洗面所で格闘したのち、 コポコポとスムーズに流れる水を見て。
二人で笑った。
若かった土曜日から、
一緒に生きていく─
そんな日曜日へ。
次は…『東京メトロ』で。
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