ビアンエッセイ♪

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■16964 / ResNo.20)  海鏡の月-14-
  
□投稿者/ 金丸 ベテラン(209回)-(2006/10/18(Wed) 02:55:33)

    飴作りはやってみるとなかなか面白いものだった。

    でも店員以外の人間がやることに対してお客さんが知ったら嫌だろうし

    巻く飴の量のことも、これでいいのか と迷って

    あまり手を出さないようにしていた。


    やる時は四季がトイレに行く時位。


    トロい手つきで無くなった飴を補充する。


    お客さんが来ない間はたわいもない話をしていた。


    『ふーんふーん。他人の前じゃノロケるのに本人の前じゃノロケないんだぁ〜。』

    「ノロケませんっ。」

    『ふーん』

    「…


    本人の前でノロケられる人は積極的な人。」

    『あそぉ。(笑)』





    『お前だってキャスター大好きな癖に。』

    「…キャスターが好きな訳じゃねぇよ。…」

    『あーあー四季ちゃんが吸ってるから好きなのね。(笑)』


    「うっせぇっ。(笑)」




    青い飴にミカンが乗って星型の砂糖菓子が乗っているのを指し

    ぼーっとしていた私は何を思ったか

    「…ねぇ」

    『あん?』

    「これ夜空?」

    『へ?』

    「ぬぁっ!!!!いやいや忘れて!!!!」

    柄にもない発言を後悔してたのに


    『かわいいこと言うね〜(笑)』

    「いやいやいやいや忘れて!!!なかったことにして!!!!」

    『かわいいかわいいね〜(笑)』

    「うるせぇ!!!!!!!(笑)」



    もう外も暗くなり

    気温も低くなる


    上着を羽織る四季をみて



    赤く染まった四季の手をみたら

    冷え性の四季の手が

    余計に冷えてるように思えた


    でも

    私には

    四季の手を握る勇気はなくて




    「椅子動かして。」

    『あん?』

    「だから…」

    ガタガタと四季の座っていた椅子を動かし座らせ

    肩揉みを始めた


    『んぁー。』


    「…」


    『いででででっ』


    「この位?」


    『んー。』




    私が近づいて

    肩揉みして

    少しでも

    温かくなってほしかった

    (携帯)
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■16965 / ResNo.21)  海鏡の月-15-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(210回)-(2006/10/18(Wed) 03:22:23)

    すぐにお客さんが来て

    心のどこかで少し

    落胆していた。


    お客さんの波が過ぎて

    二人で別々に座っていると

    姉から電話がかかってきた


    <もしもし?いつ頃帰ってくる?>


    四季の顔を見る


    「ん〜10時位に終わるらしいから片付けしてから帰るよ。」

    <帰りにタバコ買ってきて〜>

    「あぃよ。じゃぁね。」


    携帯を閉じると四季が

    『大丈夫だよ。帰っていいよ。』

    「ううん。」

    『あそぉ。』










    「いいじゃんね。」

    『ん?』


    「1ヶ月ぶりなんだからいいじゃんねぇっ。」

    『あそぉ。ははっ(笑)』



    言っておきながら心の中は恥ずかしさでいっぱいだった。


    お客さんも子供からカップルが多くなり

    片手に日本酒の入った升を持ったお客さんも来るようになった時間

    少しずつ片付けを始めた。


    けど何をどうしたらいいかわからず

    ぼーっと眺めることしか出来なくて

    歯がゆかった。


    『アイツにこれどうすんのか聞いてきて』

    「ん。」


    チョコバナナの出店に向かって

    しゃがみ込む


    「久しぶり。」


    と笑顔で言う


    「…おー!!!久しぶり!!!わかんなかった!!!(笑)」


    相変わらず可愛いアコちゃんは

    髪が伸びていて


    「あははっ。あ、ねぇねぇ四季があれどうすんのかってさ。」

    「あーあーあー、全部紅白の中に入れるように言っておいて。」

    「わかった。じゃねっ。」

    「うんっ」


    小走りで四季の店に戻り

    「紅白んなか入れるんだって。」

    『そかそか。』


    ガタガタと片付ける姿をみて

    何か手伝うことはないかと探してみるけど

    勝手がわからない…


    『下に箱があるから取って。口あいてるやつ。』

    「なんか乗ってるよ。」

    『適当にどかして。』

    「んっ」



    結局ほとんど手伝うことが出来ずに

    パパさんが来て片付け終わってしまった。


    「四季」

    『ん?』

    四季の腕と私の腕を組み

    「ほっ」と

    昔授業でやったストレッチを始めた

    『あ゛〜っ帽子脱げる帽子脱げるっ』


    四季を下ろして

    「手。」

    今度は脇腹を伸ばした。

    『あででででっ』


    「ほいっ。じゃぁあれに座って。」

    『ん』


    しまわれた店の影で肩揉みを始める



    その肩がかたくて

    ちゃんとほぐしてあげたいと

    むしろ全身ほぐしてやりたいなぁと

    心の中で思っていた

    (携帯)
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■16966 / ResNo.22)  海鏡の月-16-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(211回)-(2006/10/18(Wed) 03:33:47)

    駅までアコちゃんを含め数人で歩き

    私だけは少し離れた駅に向かう為

    軽く挨拶をして

    別々になった。


    繁華街はギャルやB-boyやギャル男、ホストやキャバ嬢、ちらほらと店をしまう人で

    賑わっていた。



    なぁんも出来なかったなぁと少し落ち込みながら

    疲れて早く帰りたいと早足で歩く


    三人でたむろしていたギャルがでかい声で話していた

    「ねぇ〜声かけられた?!
    私一回も声かけられなかったんだけど!!
    最近マジかけられないんだけど!!



    お気の毒に…


    私はナンパされたよ。



    パンチパーマのおじちゃんに。



    うれしくねー



    と心の中で呟いた。


    混みもしていない電車に乗り

    地元の駅に着く


    自転車で来なかったことに後悔しながら

    暗い夜道を

    空と星を見ながら歩き出した

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16967 / ResNo.23)  海鏡の月-17-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(212回)-(2006/10/18(Wed) 03:46:52)

    御陰様で地元はとんでもない田舎で

    月を眺めながら

    歌っていた。



    疲れた体の


    心の中



    四季の温もりを思い出す




    少しは役に立ったのだろうか



    赤く染まった手は かじかんでいたのだろうか




    四季は楽しかったかな



    疲れた体

    もっとちゃんとマッサージしてやりたかったな



    傍に居たいなぁ



    口ずさむのは


    スタンド バイ ミー。



    明日早いのかな



    月が



    綺麗だ




    吐く息が白いことに気づく



    四季が


    風邪ひかないといいな




    隣で


    寝たいなぁ




    私は




    私は





    いつか



    キス出来る時がくるんだろうか

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16968 / ResNo.24)  海鏡の月-18-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(213回)-(2006/10/18(Wed) 04:01:09)

    だいぶ怖くはなくなった


    けど


    だけど




    あいにく根性がないんだよなぁ(笑)



    いつになることやら…



    歌は終わって


    静かに考えだした。




    もし


    キスができた時


    私は


    泣くかもしれない。


    拭えなかった恐怖と

    嬉しさと


    戸惑い



    色々なものが押し寄せて


    泣くかもしれない。


    はははっ


    困るだろうなあいつは。(笑)




    でも



    キスしなくても幸せだよな


    ただ逢えるだけで


    ただ喋るだけで


    ただ隣で眠るだけで。



    家に着く直前



    最近体の調子が悪いと言っていたことに


    私に出来ることはあるだろうかと考えていた。



    それは眠りに落ちる直前まで続いた。




    夕方

    店で

    四季が顔を上げた時

    海が驚きとっさに出した言葉



    「こわい」



    それは



    拭えなかった恐怖から生まれた言葉だと


    海が気づくのは



    翌日




    その時の四季の表情を


    海は見逃していた


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16997 / ResNo.25)  海鏡の月-19-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(214回)-(2006/10/21(Sat) 13:09:47)

    誰も居ない

    ガランとした空間


    白い壁

    間接照明のように薄暗い光

    だけど優しくはない


    冷たく硬い床


    一つ小さな鏡がある

    窓はとても高い場所に


    背伸びをして腕を伸ばしやっと指先が触れる程度



    落ちる影はゆらゆらと

    ぼやけるように私の分身を床に映す



    血の通わないこの部屋に


    どんどん体温は奪われる



    冷たくなり始めた指先



    縮こまることなく

    ただ海は突っ立っている




    探すこともせず


    ただ何かを見つめる



    やがて

    部屋の隅に

    膝を抱えて座り込む


    ただ己の呼吸に耳を澄ませ


    一点を見つめる




    寒さはもうない




    高い窓からは


    夕空が見えた



    部屋がオレンジに染まる



    ふっと



    あのお香が薫る




    静かに目を瞑り


    海は立ち上がり


    部屋を出る

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■16998 / ResNo.26)  海鏡の月-20-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(215回)-(2006/10/21(Sat) 14:16:25)


    「一緒に


    歩こうか。」


    「うん。」



    手を繋ぎ


    同じ歩幅で歩く



    細い路を


    同じ背中が並んで


    月灯りに影が落ちる



    「早くない?大丈夫?」


    「うん。」


    「そっか。」



    「下弦だっけあの月…」


    「多分。」


    「綺麗だね。」


    「うん。」


    強く手を握りしめられた


    「ん?」


    ただ

    見つめてくるだけ



    「んん?どした?」


    手が緩む


    「ううん。」



    「んん?」



    軽く握られた手は

    離れることなく

    温かさが伝わる



    「少し

    寒いね。」


    「うん。」




    薄くだけど

    息が白い



    空を見上げる


    「お弁当箱に梅干しみっつ♪」


    「え?」


    「ん?あぁオリオン座。」


    「?」


    空を指差し

    「ほら。あれ。」


    「……あっ。」


    「めっかった?」

    「うん。」


    二人でニヒヒと笑った



    「あれしかわかんないんだよね。」


    「充分じゃない?」

    「そうかな?」


    「うん。」


    「そっかそっか。」



    心の中


    会話する




    二人の私






    小さな海と

    普段の海



    二人手を繋ぎ


    寒空を歩く



    繋いだ手は

    離れることなく



    月灯りに照らされる

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17019 / ResNo.27)  海鏡の月-21-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(216回)-(2006/10/23(Mon) 02:22:04)

    私の


    甘い香りに


    アナタは気づいているだろうか


    儚く香る


    僅かな匂い―





    「…」

    無言でつつく


    同じように手をあげて と仕草する


    引き上げられた手を引き寄せ


    袖をくんくんと嗅ぐ


    「よし。」と手を放す


    『なにがや(笑)』

    くんくんと嗅いで

    『なんの匂いもせん。』


    「するよ。」

    『あたしにゃわからん。』


    「お香の匂いと…ね。」


    『ふ〜ん。』




    一つしか無い香り



    そんな匂いが


    私にも僅かにある


    タバコや

    香水

    シャンプーの匂いに消されている


    ココナッツに似た匂い



    気づいているだろうか


    知らないだろう





    「あっ…海の匂いがする。」


    後ろを歩く同級生が言った


    「えぇ?!クサイ?!」

    「ううん。
    なんか…
    少し甘いってゆうか…
    なんていうか…
    とにかく海の匂いっ。」


    「えぇ?!わけわからん!!!臭くはないの?」


    「うん。」



    どれだけ鼻が良いんだか。



    匂いに気づいたのは


    その時から4年後




    この匂いに気づいた人は



    どれだけ居るんだろうか



    男口調の


    こんな私の


    甘い香りに

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17063 / ResNo.28)  海鏡の月-22-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(217回)-(2006/10/25(Wed) 03:24:09)
    どこからか

    甘い香りがした


    あの匂い


    あのタバコの

    あの頃の匂い



    キョロキョロと探してみたけど

    君は居る筈もなく


    タバコの姿も無かった。



    恋しいのだろうか。



    手を握った


    首筋を撫でた


    頬を撫でた




    恋しいのだろうか。



    唇に触れた指先が冷たくて


    窓の外は雨が降る。


    うざったい程長くなった髪を手グシを通した



    あの日の

    この髪に触れた君の手が


    恋しくなる。



    君の


    あの柔らかいほっぺたが


    またおでこに感じられないかなぁと

    目を瞑る。



    体の力が抜ける。



    夕方

    落書きをして


    気づけば君の眼を描いていた


    睫が多くて

    長くて

    少し垂れ目で

    二重の幅が広くて


    あぁ濃いな


    眉毛は少しキツくて


    あぁこれこれ。



    君の眼を思い出す


    君の肩を思い出す


    君の手を思い出す




    デコルテ

    背中



    優しく笑う口元




    この想いが届けなどとは思わない


    私のことを考えてほしいなどとも思わない


    ただ


    ただ


    ただなんだろう



    ただ…



    もう今は


    君の胸の中で眠りたい



    ただ


    恋しい



    君の隣で


    無垢に笑いたい

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17073 / ResNo.29)  海鏡の月-23-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(218回)-(2006/10/25(Wed) 21:21:25)
    海は極端に嫉妬をしないし、束縛もしない。


    四季が彼氏を作ろうと

    海が抱くのは

    四季の周りに居る人々への嫉妬


    ―すぐに逢える―


    それだけだ。


    海は四季とゆう彼女が居る。

    海は幸せで四季をとても好きだ。

    四季には海とゆう彼女が居る。

    とても真っ直ぐに愛してくれる不器用な奴。


    四季には彼氏がいる。

    とても自然を愛している優しい

    子供みたいな人。



    三角関係というものなのだろう。



    海は四季に彼氏が居ることを知っている。


    海は願っている


    彼氏を大切にしてほしい と


    自分のことはいいから彼氏を優先させてほしい と


    なるべくうまくいってほしい と。



    海は四季を愛している。

    それは変わらず昔も今も。


    海はただ


    たまに四季に逢い


    笑って

    温もりを感じて

    小さな幸せを一つもらうだけで


    本当に満足している。



    これを話すと

    「うーん…」や

    「本当にいいの?」や

    「すごいね」と言われる。


    みんな眉間にシワを寄せて首をもたげたり、傾げたり。


    「幸せだよ。」と言うとみんな不思議がりながらも

    「海が幸せならいいか。」と言う。



    愛に定義がないのなら

    不思議はない。

    そこに愛があるのなら

    不思議はない。


    幸せは

    柔らかくて

    どの形にもなる。


    心の中にある受け止める器さえしっかりしていれば

    幸せは

    愛は


    その形になり

    温かさとなる。



    今日もまた

    笑う海が居る


    笑う四季が居る


    笑う彼がいる。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/

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