ビアンエッセイ♪

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■17190 / ResNo.40)  海鏡の月-32-
  
□投稿者/ 金丸 ベテラン(229回)-(2006/11/07(Tue) 00:52:47)
    ドトールに入り注文していると背後から花が挨拶してきた

    「おぉっ!!お久しぶりっ。」

    「お久しぶりですっ。お邪魔しますっ。」

    「はははっ。花さん髪バッサリ切ったんだね。」

    「あっ、そうなんですよ!!ほらー、気づいてくれるんだよ。」と花が外見の変化に疎い四季に言うと

    四季は苦笑した。

    「海ちゃん髪茶色くしました?」

    「そうそう。気づくの早いねぇ〜。」とあえて四季を見ながら笑った。


    先に出てきた二人分のコーヒーを手に四季が席をとり、花の告白の話が始まった。


    今日告白しに行ったのにどうしても言えなかった花と

    昨日今日と背中を押した四季と

    言えなかった気持ちが痛い程わかる海


    海は四季に告白した時の心中や状況を交えてアドバイスし

    四季は昨日と今日の朝に続き花の背中を押した

    二人は花の告白を心から応援し


    2つの灰皿がいっぱいになるまで話し続けた。


    海は腕時計を見てタイムリミットが来たことを知っていたが

    どうしても花の力になれないものかと時間を無視した。


    しばらくして話が一旦まとまり

    四季が時計を見ると

    とうに海が行かなければならない時間が過ぎていた


    『時間過ぎてんじゃん。』

    「知ってる。これ吸い終わったら行くよ。」

    「ん?」と花がキョトンと二人を見ると

    四季が『こいつ仕事なんだよ。』と答えた

    「こんな時間からですか?!」と相変わらず抜けない敬語で花が言う


    『そーなんだよ。なんたって水商売だから。』

    「意外でしょ?」と海は笑った


    花は相変わらずキョトンとしながら「うん。」と正直にも答えてくれた


    「はははっ。みんなそう答えるよ。」と笑いながら言い
    海はタバコを消した。


    海が鞄を腕にかけてトレーを持つと、既に準備していた花が「あっありがとうございますっ。」と言うと

    四季が『力持ちさんだから大丈夫。』と笑って言った


    まぁね

    と思いながら海は笑った。


    ドトールを出て駅に着きホームで海と四季、花で別れることになり


    また花は「お邪魔しました」と別れ際に二人に言った。


    『そんなことないよ。』と四季は優しく花に言い

    海は笑って見送ったが

    心の中で「花さんだったら邪魔とは思わないよ」と思っていた。



    改めて


    四季の大切な人に逢い

    その人に向ける四季の優しさ

    海の好きな四季の一面を目にして

    海は幸せな気分になっていた

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17191 / ResNo.41)  海鏡の月-33-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(230回)-(2006/11/07(Tue) 01:36:04)
    向かいのホームに花を見つけ

    電車の中から手を振った


    四季と花は電車が発進し見えなくなるまで手を振り合っていた


    その情景に海は二人に愛しさを抱く



    座席に戻り すぐに四季が降りる駅に着いた


    「明日連絡ちょーだい。」

    『へ?』

    「ほら逢えるか逢えないかって。」

    『あ〜わかった。』

    「気をつけてね。」

    『おぅ。』


    ドアが閉まり

    手を振った


    また

    姿が見えなくなるまで

    ずっと



    先程と同じ想いを抱きながら


    本当は仕事休みたかった と考えていた。



    そのまま花が言った「お邪魔しました」の一言を考えた


    花さんなら許せる

    四季の親友さんも許せる





    四季の彼氏も許せるな


    あとアコちゃん


    四季が大切にしている人なら

    邪魔とは思わない



    それにしたって仕事面倒だなぁ…



    電車の中でやむなく化粧をしながら


    ふとよぎる



    今日は

    四季どうしたんだろう


    なんかあったのかな

    話したいことがあったのかな


    ただ逢いたかっただけなんだろうか





    その日の仕事で海は

    ヘマが多かった

    そして

    珍しく酔っ払っていた



    深夜仕事が終わり家に帰り

    へべれけで着替え、顔を洗ってベッドに潜り込んだ





    明日


    逢えるといいな




    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17193 / ResNo.42)  海鏡の月-34-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(231回)-(2006/11/07(Tue) 21:39:25)
    ♪〜

    ん…

    ♪〜

    ん…?

    ♪〜

    「んがっ!!!」
    海は目を開けると同時に携帯を開いた。
    四季からのメール

    『おはよ〜。ヤッパリ今日無理になった(>人<)』


    「マジか…。」

    画面を見て少し落胆する


    「おはよー。わかった(*´ω`)」


    さて

    今日はどうするか。
    タバコを吸って時計を見ればまだ午前中で、海は暇つぶしに掃除を始めた。

    頭の中が四季でいっぱいで落ち着いて居られなかったのだ。

    とうとう掃除する所が無くなり

    タバコに火をつける


    出かけようかな


    どこかに出かけたい


    行こう



    ヨシッとタバコを消して立ち上がりお風呂場に向かう。

    服を脱ぎながら


    あー

    新しい下着買わにゃーいけんなー…


    シャワーは熱めに浴びた


    あとストールと…


    あー髪切りてーが口癖になる程伸びた髪の毛は洗うのが面倒で


    まぁあのエスニックのお店行きゃいいか…


    急いでる訳でもないのに早めに上がる


    だいぶ伸びた髪はなかなか乾いてくれないので

    頭にタオルを巻いて歯磨きを始めた


    んー


    んー


    んー…



    今日は頭の中がいつも以上に四季だらけ

    何をしてても四季以外のことを考えている時間の方が少ない位だ


    服を着て、歯磨きをしたまま廊下に出ると海の姉の葉子と出くわした


    「ひょーはやへにかえふとおもふー」

    「あ?うんわかった。」

    「おひやへなんかひふー?」

    「お土産?毛布。」

    「ひゃーほれはむひはから ふっきーほか」

    「あーいつものクッキーで。」

    「ほーい」



    よく会話が成り立つなと思いながら口をゆすいだ


    さすが姉妹

    と感心しながら髪を乾かす。


    海は髪の毛だけには気を使う


    「いい髪だね。」と褒められる所だからだ


    めんどくせーし化粧はいいか

    と眉毛だけ描いて上着を羽織る


    腕時計をはめてタバコに火をつける


    フーッと煙を吐き出すと


    四季の顔が浮かんだ


    んー


    んー…


    ん゛ーっ…




    やっぱり少し


    寂しいな

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17195 / ResNo.43)  海鏡の月-35-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(232回)-(2006/11/09(Thu) 04:18:15)
    もう

    電車に乗っても

    歩いても

    コーヒーを飲んでいても

    頭の中は四季だらけ。


    今頃

    親友さんのあのマシンガントークを聞いているか

    または悩みを聞いているか


    しているんだろうか。



    久しぶりに来たエスニックファッションばかりのお店に入ると

    強いお香の匂いがした


    上着ないかな

    んー…。


    あまり好きではないデザインばかりで


    パンツに手を伸ばす。


    あんま派手目じゃなくて

    生地が柔らかいので…


    なかなか見当たらないので店員に話しかけた


    すると奥からタイのパンツを持ってきてくれた


    「ちょっと面倒だけどはきやすいですよ。」


    海は一発でそのパンツに惚れた。


    「じゃぁこれください。あ、でもまだみます。」

    「じゃぁ預かっておきますね。」

    ドレッドヘアーのお姉さんはきつめの顔を接客用笑顔をする。


    ストールストール…麻…綿…


    海はマフラーと手袋がつけられない体質で、どのショップに行っても一瞬触って落胆する

    唯一つけられるのは麻の布だけだ。


    これでいっか


    ストールを抱え店内をうろつく。


    あ…


    四季のお香だ



    手に取り匂いを嗅ぐ


    鼻の奥と

    頭の中と

    胸の中に

    切なさが広がる。


    レジに行くと

    手にはお香を持ったままだった。


    「コレ全部お願いします。」


    袋の中にはタイパンツとお香とストール



    とうとう買ってしまった


    あぁ


    手を出すまいと思っていたのに…。



    駅ビルに行き

    下着売場に行った


    新しい下着はピッタリで


    2カップ大きくなった胸を見て落胆する。


    そんな姿を見て店員は「どうしたんですか?」と声をかける。

    「いや…胸がでかいのが嫌なんです。」と苦笑いをすると

    「私なんかパッドいっぱい入れてこの位にしてるんですよ。」と少し怒ったような笑顔になる。


    「ははっ…」

    気まずい…



    早々にその下着を買って駅ビルを出る


    コーヒーショップでクッキーを買い

    カプチーノを頼む



    まだ入りたてだろう店員さんはレジ打ちを先輩に確認する


    「カプチーノは店内でお召し上がりですか?」と慣れない笑顔が照れくさそうで


    優しい気持ちになり
    「はい。」と笑顔で答える。


    頑張れ新米


    と心の中で呟き


    テーブルに着いた。



    カプチーノの泡がきめ細かいこの店は



    海の大好きな場合だ

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17207 / ResNo.44)  海鏡の月-36-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(233回)-(2006/11/10(Fri) 20:23:46)

    カプチーノを一口飲む度

    ため息が出そうになる。



    4ヶ月か…



    思い浮かぶのは

    日の沈む光と共に見た

    あの横顔。



    携帯を開いても

    スケッチブックを開いても


    何をしよう、何を描こうよりも四季の姿が浮かぶ



    気づけばカプチーノは空になり

    タバコは灰皿に数本


    時が経つのが早い。


    重い腰を上げ

    「ありがとうございました。」と初々しい笑顔の店員に軽く会釈をして

    ホームに向かう。




    寒さに気づいた



    あぁもうこんなに寒くなっていたのか



    服の隙間から入り込む冷気に


    寂しさが増す



    電車の窓に流れる光を見やる


    木々の影を見やる



    握り締めた手は



    私の体温しかない








    私が月なら


    あなたは太陽だろうか



    月は太陽の光を浴びて


    青く

    朱く

    白く光る



    私は


    風の姿を


    失ってはいないだろうか

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17209 / ResNo.45)  海鏡の月-37-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(234回)-(2006/11/10(Fri) 20:39:35)
    暗い部屋は

    白い息が生まれる


    口をつぐみ

    電気をつけた。


    がらんどうな部屋


    なんの温かみもない。


    部屋着に着替え

    顔を洗う


    私は最近

    この義務的になった習慣が嫌いになりつつある



    部屋に戻り

    袋からお香を取り出す。



    そのまま匂いを嗅いだ


    強い強いその匂い


    四季の服に染み付いた匂いが蘇る


    ライターで火をつければ


    あの部屋で薫った匂いが蘇る


    気づかぬうちにお香は消えても


    匂いが残る



    手を握る


    あの温もりを探す


    蘇る景色


    蘇る情景


    蘇る幸せ


    蘇る


    切なさ




    ベッドの中でうずくまる



    目を瞑り


    頭の中に

    四季の温もりを呼び戻す



    あの安らぎが戻る



    今日は



    幸せと


    切なさと


    寂しさに包まれた日




    夢の中


    君に逢えるだろうか

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17222 / ResNo.46)  海鏡の月-38-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(235回)-(2006/11/11(Sat) 22:52:38)
    体温計の電子音が響く


    -37.9℃-


    喉も痛けりゃ鼻も詰まって

    節々が痛くてダルい

    完全に風邪だ。



    バカは冬に風邪引かないんじゃなかったっけ…


    バッチリ夏風邪は引いたのに…


    回らない頭はそんなことしか浮かばない。


    重い体は動いてないのに痛くて


    息をする度痛みが走る喉は声がかすれて

    それでも痛めつけるように口にするタバコ


    まずくても咳込んでも吸うのは

    寂しさを他で埋められないニコチン中毒者だからだろう。



    ぐったりした目線の先には鳴らない携帯


    心細くなりメールを送る


    しばらくして返ってきて光る画面に流れる着信音


    もうそれだけで少し元気になる。



    寂しい時は


    心細い時は


    君を思い出す



    目を瞑り


    匂いを呼び戻す



    そうやって


    私は強くなった



    そうやって


    私は




    君の色を濃くする





    気が付けば数年


    抱き締めたい想いは強く


    傍に居たい想いは強くなった。




    11月の寒空の下



    新たな感情が形になった



    それは戸惑いと


    まだモヤのかかる


    温かいもの



    これは


    私の強さとなる



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17234 / ResNo.47)  海鏡の月-39-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(236回)-(2006/11/14(Tue) 02:25:27)
    私が―

    最初に一人暮らししたいと思ったのは

    家族から解放されたいが為


    後付けで―

    独りで何もかも出来るようになりたいから

    家族から離れて甘えのない生活を送ることが

    自分を成長させるんじゃないかと

    思ったから。


    最近は

    あまり家族から離れたいと思わなくなった

    ちゃんとそう感じてはいるけど


    それよりも


    疲れたって一言が


    君の疲れたって一言が

    一人暮らしを願わせる。


    疲れたって言われても

    今は飛んで行けないし

    長くは居られない。


    限られた私の出来ることすら

    ままならないこの距離


    ままならないこの状況


    歯がゆい思いは

    日に日に強くなる。


    逢いたい


    そう言わなくなったのは


    色々理由はあるけど


    逢いたい


    言葉にしてしまえば

    出来ないことは目に見えて

    やれないことが目の当たりにされて

    自分が無力に思えて


    心の中で


    ごめんね


    って呟く



    ただ一緒に寝ることさえ

    滅多に出来ない今



    ただ一緒に寝るだけでも出来る

    一人暮らしを叶えようと躍起になる。





    『ただいま』



    「おかえり」



    『疲れた』



    その会話が


    早く出来るようになりたい




    ありがとうが聞きたい訳じゃない


    ただ


    ただ私は


    気持ち良さそうに寝る

    君の顔を

    ただ眺めたい



    起きた時


    スッキリした顔が見たい



    君が元気になれるようなことをしたいんだ


    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17303 / ResNo.48)  海鏡の月-40-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(239回)-(2006/11/23(Thu) 03:20:46)
    優しい眼で笑う

    優しい歌を歌う


    そんな貴女に

    手を伸ばし

    抱き締められる勇気が私にあれば


    そう願う時がある。


    大好きの一言が

    メールじゃなく

    ちゃんと私の声で貴女に届けられる勇気があれば


    そう願う時がある。


    ため息をつく貴女の横に

    寄り添える勇気があればと

    願う時がある。



    同じ道を歩く時

    私から手を繋ごうと

    手を出せる勇気があればと

    願う時がある。


    愛しいと胸が切なくなった時

    抱き寄せられる勇気があればと

    願う時がある。



    ごめんの一言が

    ちゃんと言えればと


    悔しくなる時がある。




    あぁ


    あの頃

    呆れたように見えたあの眼差しは

    愛情の眼差しだったのかもしれない



    訳もわからず涙がでる



    沢山気づかなかったことがある


    ありがとうの言葉が

    言えない代わりに涙になる



    幾千のありがとうが

    いっぱい詰まった涙が

    一粒


    また一粒



    あの眼差しを浮かべる



    ありがとうも
    ごめんなさいも

    ロクに言えない


    気づくのだって

    これでもかって程遅い



    ありがとうが溢れてくる


    ごめんなさいが溢れてくる



    あの眼差しには愛情が溢れてる

    あの腕には愛情が溢れてる

    歩くスピードにだって

    握り締めたあの手にも

    あの時貴女から流れた言葉にも


    空を見上げた時にだって


    愛情が溢れてる



    なんで気づかなかったんだろう


    涙は


    ありがとうの数より少なく


    流れ続ける

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17304 / ResNo.49)  海鏡の月-41-
□投稿者/ 金丸 ベテラン(240回)-(2006/11/23(Thu) 03:52:28)
    悔しさの涙でも

    寂しさでも

    自分への怒りでも

    後悔の涙でもない




    ただ

    ただ

    ありがとう

    ごめんなさい


    あの時の四季を思い出すと涙が流れる



    ごめんなさい


    ありがとう



    ごめんなさい


    ありがとう




    ごめんなさい


    ありがとう



    いくら書いても足りない

    いくら言っても足りない

    いくら涙を流しても足りない

    何をしても

    何を言っても

    到底追い付かない程


    私は


    愛情をもらってる



    なんで気づかなかったんだろう


    私は


    何に怯えていたんだろう



    もう

    怯えることはない


    尽きないありがとうを

    尽きないごめんなさいを

    そして

    届くかわからないけど

    今以上の愛情を


    貴女に

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/

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