ビアンエッセイ♪

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■17662 / ResNo.90)  海鏡の光橋-26-
  
□投稿者/ 金丸 大御所(286回)-(2007/01/14(Sun) 02:23:24)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    吐き気がのどの奥に詰まり

    胃酸が込み上げる



    そんな中


    元から無かったものなのだ

    執着しすぎていつしか形になっていただけなのだ

    追い求めてもなにしても

    元から無かったものをどうして掴めようか

    『無い』は『無い』なのだ

    変わりようがない

    今苦しんでいるのは

    ただの―







    ならば

    あの母性愛も無かったものなのか


    私の大半を占めるこの母性愛を消去することになる


    一番私を作っている中心を

    消去した時

    私には何が残る?


    自分自身の中で一番大切なものを

    無くそうとしているのか


    苦しみから逃れたいがために



    吐き気が増す




    のどが渇く



    首筋は熱く痺れて重い




    何をしたいのか

    わからなくなってくる



    私は一体


    どうしたいのだろうか







    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17680 / ResNo.91)  海鏡の光橋-27-
□投稿者/ 金丸 大御所(287回)-(2007/01/15(Mon) 18:18:25)
    「どうしたの?」


    「大丈夫?」


    そう言われても私は

    枯れた笑い声を喉から出すだけ



    何を言っても

    今は相手を黙らす程

    何も言えなくなることしか言えない



    無意識に

    入るな

    解るはずがない

    私だけの問題なのだ


    と思っているかのように。



    それでも

    当たり散らすようには言わない。


    それが今できる精一杯の気遣いだから。


    何を言われても

    今の私には届かない。


    届かないと思っている。


    でも

    考えが堂々巡りな今

    助けを求めていることも事実。


    その矛盾にさえ

    苛立つこともある。


    最近聞き取りにくくなった左耳も

    紙を前にペンを手にしても何も浮かばないことにも

    笑えない自分にも

    薄れていく記憶にも

    周りの状況が把握できないことも



    心の中も



    悲しみにも似た苛立ちが湧く。




    全てを投げ出し

    貯金を握り締め

    青い海に白い砂浜に行けたら と


    思えば自分の情けなさが余計に苛立たせる。



    なんの意味もない。



    環境から逃げても自分からは逃げられない。


    探すしかないのだ


    自分の中


    何かを。



    それをわかっていてもまだ



    鎖に途方に暮れることしか出来ていない


    光を見つめようとする余力さえ


    今の私の手にはない


    現実を見つめることすら出来ていないのだから

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17720 / ResNo.92)  海鏡の光橋-28-
□投稿者/ 金丸 大御所(288回)-(2007/01/20(Sat) 22:54:31)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    また時を戻すようなことが起こった

    強い光が目を潰し
    耳を切り裂き
    全身を引き裂くような

    そしてそれが鮮烈であり

    鈍く

    一瞬のようで

    永久のように



    痛みが生き返る

    そして重なり

    頭の中が白くなる


    白なのか黒なのかわからない世界が

    私を引きずり込む


    叫びだしたくなる

    崩れ落ちたくなる

    気を失ってしまえば楽なのに



    こうして私は

    閉じ篭った


    自らに引きずり込まれ

    幽閉され


    立ちはだかる壁の中に

    狼狽する余裕もなく

    倒れ込んだ
引用返信/返信 削除キー/
■17721 / ResNo.93)  海鏡の光橋-29-
□投稿者/ 金丸 大御所(289回)-(2007/01/20(Sat) 23:10:53)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    笑うことさえ

    話す事さえ

    何かを目にすることさえ

    出来なくなるほど

    力を失った



    私の仕事は

    お客さんを相手に聞き、話し

    笑い、笑わせ

    その人の何かを読み取らなきゃいけなくて

    お酒をつくり

    灰皿を換え

    様々なことに気を配り

    頭をフル回転させなきゃならない


    仕事が休みの日は

    家事や生後半年の甥っ子の子守

    生活用品や、食材の買い物


    本当に独りになれるのは

    仕事の日の寝る前2時間


    今の自分の現状を受け入れようと意識するので精一杯で

    それ以上のことは出来ずに過ごしていた


    やらなきゃいけないことが多い

    投げ出せばたちまち仕事でも家庭でも非難されるだろう


    この先やりたい事の為にも投げ出したくはない


    何の気力も湧かぬまま

    時間は過ぎる
引用返信/返信 削除キー/
■17722 / ResNo.94)  海鏡の光橋-30-
□投稿者/ 金丸 大御所(290回)-(2007/01/21(Sun) 00:37:00)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    四季へメールすることさえ出来なかった


    苦しい時

    もがいても、もがいても行き着く場所は四季だったのに


    もがくことさえしなかった



    堂々巡り出来ればまだいい


    その気力を失った時

    ここまで何も出来なくなるのかと漠然と思っていた。



    ただ

    私が命を絶つような真似はしないと四季がわかっていても


    生きていると

    それだけでいいから伝えなきゃならないと


    仕事に行く途中

    一行のメールを送った

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17723 / ResNo.95)  海鏡の光橋-31-
□投稿者/ 金丸 大御所(291回)-(2007/01/21(Sun) 01:06:58)
    [気力がギリギリ]


    なぜそう送ったのかは自分でもわからない


    [メールできないけど心配いらない]

    そう送れば済むのに、メールを送ることさえやっとな筈なのに

    私は返事を待つように

    送信画面を見届けて携帯を閉じた。


    コーヒーショップに行くと

    大学の試験の為に店を休んでいた優奈が
    試験勉強をして居た


    「元気ないね。大丈夫?」

    私は生返事をして枯れた笑い声をだした


    テーブルの上には教科書やプリントが並び、ダーバンを巻いた男が弦楽器を持っている姿が見えた



    「なんかあったの?」


    泣きそうな顔をして私の腕に触れた


    「んー…」

    目線をプリントに落とし私は今の状態を話し始めた


    少しでもわかりやすく説明することで精一杯で表情までは気がいかなかった


    話し終え優奈を見ると


    もう目から涙が出そうになっていた


    「そっちは?」


    私も今辛いと話し始めた


    みるみるうちに余計に泣き顔になっていく


    唇が震えて

    眉間にシワが寄っている



    「海は独りになりたくて私は独りが嫌で、真逆だね。取り替えられればいいのに。」と優奈は笑った

    「そうだね。試験勉強は嫌だけど。」と笑うと


    安心したように優奈は笑った


    「コーヒー買ってくる。」と席を立ち



    今この状況すら少し辛い

    笑うことさえ無理やりで

    たった独りでどこかに閉じ込もりたい

    幽閉されるくらいでもいい


    けど



    「携帯鳴ってたよ。スタン。」

    「ありがと。」


    スタンは四季専用の着信音


    あのメールの返事が来たのだ



    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17724 / ResNo.96)  海鏡の光橋-32-
□投稿者/ 金丸 大御所(292回)-(2007/01/21(Sun) 01:34:41)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    [なら、やめてしまいなさい]


    頭が回らない


    やっと出てきた言葉をやっとの思いで打つ


    [店を?考えるのを?

    メールもやっとだよ]



    優奈が心配そうな目をしていた


    スタンが鳴る


    [ぜーんぶ。
    そこまでして立ってる必要ある?]



    叫びたくなった


    [目標を失いたくない]そう打って携帯を閉じた



    悟られまいと息を深く吐いて優奈を見ると


    未だに泣きそうな顔をしていた


    ポツリポツリと優奈が話し始めた


    「あのね。友達に「優奈は仕事に逃げすぎだよ」って言われたの。」

    「うん」

    「実際に辛いことがあると仕事に行くことが多くて、逃げ場なんだと思う。現実逃避なんだよ。」

    「それも必要だと思うけどね。」

    「友達はもっと頼りなよって言ってくれたけど、迷惑なんじゃないかって思ってできない。」

    「高校の時のトラウマじゃない?また裏切られるんじゃないかって心の底にあってできないんじゃね?」

    「そうかもね…。でも友達は今会いたいって言っても来れないのが当たり前だけど、お客さんなら必ず来てくれるから…」

    「トラウマで甘えることが出来ないんだよ。同い年だからっていうのもあるかもしれないけど、相手に果たして自分を受け入れる余裕があるのか解んないんじゃない?余裕が無ければ拒否されるんじゃないかって思ってんじゃね?」

    「うん…」

    「もしかしたら実際にそのキャパはないかもしれないよ。でも友達がいくら手を差し伸べても、その手を拒否してたら何も変わらないよ。踏み出さなきゃその人の器さえ見えないままだよ。」


    「…うん…」


    あ、優奈が泣く


    その時スタンが鳴り響いた

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17810 / ResNo.97)  海鏡の光橋-33-
□投稿者/ 金丸 大御所(293回)-(2007/01/29(Mon) 02:22:06)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    [そのままでたどり着けんのかよ
    休む事を覚えろ]


    憤りが襲った


    [完全に休めて塞ぎ込めるならば、したいよ]


    家庭の事情


    それが大きい原因だった。


    休みの日も独りになることすら難しい状況


    休めるなら


    独りになって己と向き合えるなら




    「そろそろ行かなくて大丈夫?」


    「あ…うん。そろそろ行かなきゃね。」


    心配そうに優奈が見ていた


    「トイレ行くから私も行くよ。」

    「おう。」


    優奈がぴったりと寄り添ってきた


    「ありがとうね。」

    「私もだよ。」


    「じゃぁ…ね。」


    「うん。無理しないでね。」


    優奈が私の服の袖をギュッと掴む


    「ありがとう。君も無理しないように。」


    そう言って抱き締めてバイバイした。



    私の中は


    憤りでいっぱいで


    落ちるのか怒りにまかせたいのかわからなかった



    店に着き、着替え、化粧をして髪をセットする


    店のボーイ達が大声で笑っている横を通り抜け

    待機席に座った


    店の女の子達と一言も交わさぬ内に朝礼が始まる



    夜の7時前に響く「おはようございます」


    朝礼の内容は筒抜けで気がつけば終わっていた



    溜め息も出ない位

    私の中は静かに嵐になっていた

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17811 / ResNo.98)  海鏡の光橋-34-
□投稿者/ 金丸 大御所(294回)-(2007/01/29(Mon) 02:39:19)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    サイレントマナーにした携帯が光る

    画面を開くと四季が笑っていた


    [仕事だけ辞めちゃえば?]


    かき乱される


    仕事をやめれば貯金が出来ない


    貯金が出来なければ1人暮らしの資金がなくなる


    1人暮らしが出来なければ



    四季の傍に行くことは出来ない




    [もーどうしていいかわかんね]



    そう打ってる最中


    「あーもー携帯へし折りたい」

    そうもらすと「どうしたの?」と笑って店の女の子が聞く


    私は笑いながら「携帯壁に投げつけるんでもいいんですけどね。」と気力の無い声をだした


    携帯が光る


    [お前が選んでここまで来たんだから、これからもお前が決めるしかないだろ
    ]



    私は


    早くお前の傍に行きたいんだ



    家庭からも解放されて


    早く自由になりたいんだよ


    早く



    [逃げたいけど逃げたくない

    もう既に自分の中で自分から逃げようとしててそれすら嫌気がさす


    誰でもかれでも罵倒したくなる]



    [休む事がなんで逃げになんの?
    そんな状態で働かれるのも八つ当たりされるのも迷惑だよ]



    [現実から逃げるように感じる


    仕事はちゃんとやってるよ。
    仕事以外でなりそうになる
    無反応かブチ切れそうになる

    今四季に八つ当たりするのもすげーやだ]


    [別に八つ当たりされてるとは感じないけど、今はまだいいけど周りがその内耐えられないで離れていく人も出てくるんじゃないか。
    ちゃんとやってるようでも、これから仕事でも支障が出てくると思うよ。
    背負う性分なら、背負って潰れる事も覚悟しろよ。お前は悩みだすといつも中途半端なんだよ。本気で嫌ならどっちかに転がり込めばいいだろ。中途半端だから今は苛立ちしか覚えないよ。]



    私はいつもこうなんだろうか


    中途半端だから

    悩んだり悲しかったりすると周りが苛立つんだろうか



    そう考えると

    憤りと共に悲しみが湧いた




    [とりあえず来月前期は休む方向で考える

    今月後期は店と家以外で人に逢わないようにする


    多分メールも日記もする気力ないと思う


    それが今私が出来ること]



    悲しみを断ち切るように目を閉じると


    ボーイに呼ばれ


    仕事が始まった

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17821 / ResNo.99)  海鏡の光橋-35-
□投稿者/ 金丸 大御所(295回)-(2007/01/30(Tue) 02:05:08)
http://id26.fm-p.jp/4/nxnxnxn/
    ヘルプから戻ると四季から[はいよ]とゆうメールがきた。



    私の中では

    不安と憤りと悲しみが渦巻いていた


    本当に独りになり

    私は何かを見つけることは出来るんだろうか


    四季は見放さないとわかっていても

    呆れられた、と自分の不甲斐なさに腹が立ち落胆する


    いつまでも私は中途半端なんだろうか


    逃げに行こうと

    楽な方に行こうとしている今


    その意志への怒りとこれから立ち向かうことへの不安が心いっぱいになる。



    待機席からテーブルに行く際、仮面をつけるように切り替える度


    疲れが増した。



    仕事が終わる頃には疲労困憊になり、笑う顔も引きつっていた。


    無表情で「お疲れ様でした。」と吐き捨てるように言い家路につく



    着替えて顔を洗い部屋に戻ると携帯がチカチカと光っていた

    なんだろうか


    パスワードを打ちメールフォルダが開かれると、四季のフォルダに一件の数字



    [あたしがお前に出来る事は、とても限られてる。こういう時、まざまざと思い知る。
    笑顔にしてやる事も、苦しい時側に居てやる事も、出来ない。
    お前の屈託のない子供みたいな笑顔が好きなんだ。あんなものを作らなければって、お前から笑顔が消えていく度に心底思うよ。
    どんなになってもいい、あたしの為に乗り越えてくれないか。
    あんな風に当たったけど、お前の笑顔を作れない自分が苛立たしいんだ。
    辛い時にあんな風に言ってごめんな。
    お前がバカみたいに幸せな笑顔を早く見たいよ]



    かじかみ痺れた心の深く奥が

    滲むように温かくなる


    その温かさは

    あの紙が持っていた温かさ



    気がつくと涙が出ていた

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/

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