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「ゆず〜」
「ああ。やっほ」
愛が近づいてきて、私を覗き込む。
あのあと、私の生活はやっぱり続いてる。
大学にいって、講義を受けて、たまにこうしてサボる。
これも彼女の望みどおり。
唯一望みと違うのは
「何見てるの?」
「写真」
「何それ。だれ切り抜いたの?」
「好きだった人」
さやかを、私は忘れてない。
私がそういうと、愛は変な顔をした。
「フラれたの?」
「違うよ。」
愛はなんとも言えない顔をして、私の隣に座って
「あのさ。突然で本当に申し訳ないんだけど」
「うん?」
「好きっていったらどうする?」
「・・・・へ?」
面食らった顔をしていると、愛は真剣な顔で私を見た。 いつもヘラヘラしてる愛。
不思議な気分だった。
「え〜と・・恋愛対象として?」
「そっ・・・そりゃあ」
「付き合いたい?」
「できれば」
そういう愛に、私はしばらく考えて
「私はね、この写真の人のことが忘れられないし、忘れる気も無いよ」
「・・・・」
「それでもいいの?」
「もちろん」
愛は鼻息荒く私を見た。
「もう一つ条件」
「何でしょう?」
構える愛に、私は微笑んで
「その好きな人の話を聞いてもらいたい。とても大切で貴重な日々だから」
私はさやかを忘れない。
それが、少しでも彼女を救うことになる気がしたから。
あぁ、ああ さようなら。
そして
これからもよろしく。
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