ビアンエッセイ♪

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■17781 / ResNo.20)  ◆世羅さんへ
  
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(1回)-(2007/01/24(Wed) 02:13:08)
    こんばんは。

    気になって下さってありがとうございます。
    (なんじゃそら・・)

    あいにく丈夫なもので、風邪ひとつひかずに生きております。
    近いうちに更新します!
    こんなペースでホントごめんなさいね〜。。
    おっと、それと、メッセージありがとうございます。嬉しいです♪


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■17782 / ResNo.21)  ◆ゆららさんへ
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(2回)-(2007/01/24(Wed) 02:14:37)
    モンローですか!
    ワタクシあまりモンローには詳しくないもので。
    ププッピドゥ、ひらり。くらいしか。
    研究してみます、モンローについてもっと!
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■17783 / ResNo.22)  ◆みこさんへ
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(3回)-(2007/01/24(Wed) 02:15:49)
    気になりますか。ありがとうございます。
    私も気になります。
    ちゃっちゃと進まんかい。

    ・・私がな!!
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■17784 / ResNo.23)  ◆シランさんへ
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(4回)-(2007/01/24(Wed) 02:20:11)
    “先日”じゃ、なくなってる・・!
    ごめんなさい。本当申し訳ない。
    いや、いやいやいや、そんなそんな、何をおっしゃいます!!
    幻滅って・・そんなコト言いつつ、
    やんわりと私が警戒されている???
    って思ってしまいますよ、そんな感じですよ。
    メール、私は送ってしまいますよ?
    なんだか色々ここで言うのもなんですし。

    本当に今更になっちゃって申し訳ないです。
    更新しなくとも、
    ちゃんと定期的に覗きに来るべきだということを、
    改めて思い知りました。
引用返信/返信 削除キー/
■17785 / ResNo.24)  ◆昴さんへ
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(5回)-(2007/01/24(Wed) 02:21:29)
    あ、ホントだ、常連だ。
    こんな状態の私が、その呼び名に果たして相応しいのでしょうか。
    品格が問われますね。。ははは。。
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■17809 / ResNo.25)  ALICE 【42】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(7回)-(2007/01/29(Mon) 02:06:19)
    「私のこと、愛してる?」


    アリスがそう言った時、

    草原に風が吹いた。



    5メートル程の距離を置いて向かい合っている私達の他には、

    揺れる草花しかここには居ない。


    質問はどうやら私に向けて放たれたようだ。




    「愛しているわ」

    というセリフが私の口から自然と零れた。



    どこからか鳥のさえずりが聞こえ、

    草原を日差しが優しく包んでいた。


    なんて穏やかなところだろうと、

    私は思う。




    「私のことを愛しているなんて、ルーイはきっと言えなくなる」


    アリスが言った。



    その表情を読み取ろうとするが、
    逆光で彼女の顔は見えない。

    輪郭を日食の輪のように光らせたアリスは、

    「きっと言えなくなる」

    もう一度そう繰り返し、後ずさり始める。

    「私の本当の姿を知ったら。愛してるなんて言えなくなる」



    「“本当の姿”って何?」


    私がそう訊いても、アリスは何も答えずにどんどん私から離れて行ってしまう。



    気が付けば、

    穏やかに晴れていた空はいつの間にか、
    灰色の分厚い雲に覆われ、

    草原には黒い影が立ちこめていた。


    「アリス!“本当の姿”って何なの!?」


    答えの代わりに降り出した、

    冷たい雨が私の頬を打つ。


    「待って、アリスお願い!待って!!」



    いくら叫んでも走っても、

    一向に追いつけない。



    激しい雨風が音を立てて吹き荒れていた。




    「私は・・」


    微かにアリスの声が耳に届いたが、

    それは不吉な風の音に遮られ、


    彼女の姿と共に暗闇に掻き消された。




    「アリス!アリス!!アリス!!!!」























    叫びながら私は目を覚ました。


    体がうっすらと汗ばんでいる。


    ・・夢を、見ていたのか。


    今でも耳に夢で聞いた不吉な風音が焼き付いているようだ。


    ・・・いや、気のせいではない。



    確かに、まだ聞こえる。あの音が。



    私はハッとして上体を起こし、

    手探りで枕元のライトを灯した。


    「アリス!?」


    不吉な音は、風などではなく、
    アリスの呻き声だったのだ。

    隣で目を閉じるアリスは、
    苦しそうにもがき、必死で呼吸をしていた。


    私は名前を呼びながら、アリスの頬をぴしゃりと叩いた。

    その肌は汗で冷たく濡れていた。


    「アリス!アリスどうしたの!?アリス!!」



    私の呼びかけに、アリスがパッと目を開いた。


    薄明かりでも分かるほど、顔面が蒼白だ。


    「大丈夫!?」



    すると突然、

    彼女が私の胸に縋り付いて来たので、

    その勢いに押された私はベッドのヘッドボードにぶつかり、
    背中に小さな痛みを感じた。


    一部分を擦り剥いたらしかった。



    戸惑いつつ、

    私はアリスの痩せた身体に腕を回し、

    彼女を抱き締めた。



    速まった私の鼓動の速度に合わせて、



    背中の傷がツキンツキンと痛んだ。
引用返信/返信 削除キー/
■17830 / ResNo.26)  ALICE 【43】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(13回)-(2007/01/30(Tue) 22:06:09)
    私の腕の中で、


    アリスは小さく震えていた。



    「どうしたのアリス。大丈夫よ」


    私自身、ただならぬアリスの様子に動揺し、
    少なからず不安を覚えていたのだが、

    この腕の中から今にも消えて無くなってしまいそうな少女に、

    精一杯穏やかな声をつくり、
    彼女の痩せた背中をさすった。



    「薔薇が・・赤い・・」
    「え?」

    「白だと思ったのに・・!」


    囁きよりも小さな声で、
    アリスが言う。

    その声は何かに怯えているようだ。


    「怖い夢を見たの?」

    まだ、目が覚めきっていないのだろうか。

    震えの止まらない肩を抱き締める手に、
    私は更に力を込めた。


    「怖い夢を、見ていたのね?」


    私の胸に顔をうずめながら、アリスが頷く。

    「見てしまうの、嫌なのに・・」


    アリスが声を出す度に、
    薄い綿の生地を一枚隔てて、
    その温かな吐息が私の胸にじわりと広がる。

    その艶めかしい感覚に、一瞬、
    全身が鳥肌を立てる。


    「よく見るの?怖い夢」

    「同じ夢を、同じ夢を、何度も、何度も。ずっとずっと。10年前からずっとずっとずっと・・」


    同じ単語を繰り返すアリスのそのセリフが、
    呪文のように真夜中の部屋に響く。


    「それは、辛いね。どんな夢なの?話せば、少し楽になるかもしれないわよ」
    「・・・誰にも、話した事がないの。上手く説明できるか分からない」

    「ゆっくり話せばいいのよ。勿論、無理ならいいのよ」
    「ガーデンを・・」

    「うん?」
    「ガーデンを、歩いてるの」


    「・・うん。歩いてるのね」


    提案をしたのは私の方だが、
    こんなにすんなりと言われるままに夢の内容を語り出すとは思っておらず、
    相槌を打つのに少し間が空いた。

    だがアリスは私の反応など、気にも留めていないようだ。


    「私はガーデンを歩いてる。
     見事なまでに薔薇の木で埋め尽くされたガーデン。
     今にも動き出しそうな程、生き生きとした濃い緑の葉と競い合うように、
     白の、真っ白の薔薇が、全ての木々に咲き乱れている。
     ガーデンの中心には薔薇のアーチがあって、それは半円のような曲線を描くトンネルになっている。
     ガーデンはいつもとても綺麗に晴れていて、
     私はいつも、イイ気持ち。そこにいると私は、穏やかな気持ち」


    「うん」

    私は、アリスの髪を優しく優しく撫でながら、
    夢の語りに耳を傾けた。
    胸に掛かる吐息と、髪から舞い上がるアリスの香りに、
    頭がくらくらする。



    「けれど、雨が降ってくる。いつも、いつも、雨が、降ってくる。
     いつもの事なのに、私はいつもいつもその雨に驚く」



    先刻までアリスの隣で見ていた私の夢にも、
    突然の雨が招かれざる客として出演した事を私はぼんやり思い出す。


    「私は雨を凌ぐ為に、アーチに駆け込む。
     濡れた肌を手で拭っていると、指先が、アーチから伸びていたツタに当たる。
     その衝撃で、花がひとつ、地面に落ちてしまう」


    私に話しかけるというよりも、
    ただ紙面上の物語を朗読するようにアリスは語った。


    「私は屈んで、その白い薔薇の花を両手ですくい上げる。その時―――」


    アリスが唾を呑み込むのが分かった。


    「花弁から、白色が、流れ落ちるの」


    アリスの体の震えが、大きくなる。


    「その薔薇は本当は、赤色だったのよ。白いペンキで染められていただけだった。
     雨が本当の姿を見破ったのよ!!」



    ―――“本当の姿”



    私の夢の中で、
    確かにアリスはそれと同じ言葉を語っていた。


    「私は驚いて、その偽物の花を下に落とす。そうしたら、今度はあちこちから、白い雫が落ちてくる。
     アーチの薔薇は、本当はみんな、みんなみんなみんな、赤だったの・・!!」


    アリスの声は、もはや泣きそうだった。


    「うん・・不思議の国のお話とは、色が逆なのね。そこで目が覚めるの?」


    アリスがかぶりを振る。


    「私、走って逃げる。アーチから抜け出そうとするの。でも、走っても走っても、出口が見えない。
     外から見た時は、ほんの短いトンネルだったのに。
     走っても走っても走っても外に出られなくて、そうしているうちに、アーチの薔薇はみな赤色になった」



    何かから逃れようとしたり、
    出口のない迷路で彷徨ったりする夢を、
    人は何の前触れもなしに見る夜がある。

    私も時々、
    その何とも言えない恐怖感と共に目覚める事があるが、
    現実に戻ってしまえば、
    今まで自分の精神が身を置いていたその世界の詳細はいつも朧気で、
    思い出そうとしても、
    夢に登場した人物や建物や景色や言葉の荒い外観を、
    ぼんやりと浮かべるくらいにしか出来ず、
    ただ、“怖かった、夢で良かった” と胸を撫で下ろすのだ。



    他人に話すのは初めてだと言いながら、
    記憶を辿る為のわずかな沈黙さえ置かず、
    夢で見た映像を流れるように言葉に変換する事ができるほど、

    その悪夢の一秒一秒がアリスの脳と心に焼き付いているのだろう。

    10年という年月の間で、
    いったいアリスは幾度、

    悪夢の雨に打たれたのだろう。




    「するとアーチの側面から一本の黒い手が伸びて来て、私の腕を強く掴んだ。
     そして私を薔薇の垣根の中に引きずり込む。
     そこには階段がある。螺旋状にずっとずっと遠く下まで続いている。
     私はその手に腕を引かれながら、長い長い階段を下へ下へと駆け下りていく。
     何かが私の体中にまとわりつく。
     振り返ると、上から薔薇のツタが追いかけて来ていて、生きているみたいに私を縛り付けるの。
     首に、腕に、足首に緑が巻き付く。引き抜こうとすると、くい込んだ棘が私の皮膚を掻き裂く。
     無理矢理引きちぎると、ツタが血を流した。
     そうして私は自分の血とツタの血で、真っ赤になりながら進んだ」


    アリスの語りを聞きながら、
    だんだん私は映画を観ているような気分になってきていた。
    イメージが頭の中に沸き上がる。

    抑揚の無いアリスのその話し方が、
    かえって想像の中の色彩を鮮やかに仕立てるようで、
    白や黒や赤や緑の絵の具が、
    我を我をと激しく自己主張しながら、
    脳内のキャンパスに無尽蔵に飛び散る。



    「そして、私はようやく階段を下りきって、外に抜け出す。
     今まで私がいたアーチのトンネルを振り返ると、
     それは天まで届きそうな巨大な塔になっていた。
     外の光に包まれた私は、安堵感でその場に倒れ込んでしまう。
     けれど・・・」


    アリスはそこで、一度息を呑んだ。


    「ガーデンの薔薇は・・」


    その声は、まるで怪談話をする時のような、
    不気味な音で響いた。


    「ガーデンの薔薇は、一つ残らず、赤色になっていた。
     白い薔薇なんて、初めから一つも無かったのよ。
     私は地に膝を着いたまま、傷だらけになった自分の体を見る。
     私と薔薇の血でまだらになった肌に、未だ赤い雫が点々と落ちて広がる。
     私はゆっくりと天を仰ぐ。
     青く晴れた空から、血の雨が、その生々しい匂いと共に、
     とどまることなく私に降り注いでいた」










    そこまで喋り終えると、
    アリスが強ばらせていた体を少し柔らかくしたので、
    私もいつの間にか緊張でしばし止めたままにしていた息を吐いた。


    「・・そこで、目が覚めるのね?」

    「そう。この夢を見た時はいつも、
     絶望感と吐き気を纏って目を覚まして、それから私は一日を始めるの。
     でも今日は、階段の途中で、ルーイが起こしてくれたから」

    「そぉ・・」


    正夢だとか、夢占いだとかには全くもって興味も信仰も無いが、
    背後に何かがあるとは思わずにはいられない、

    なんとも不吉な夢だ。



    「・・・ったのかもしれない」

    「え??」

    「こうやって、ただ抱き締めてくれる誰かを探していたのかもしれない」






    所長に比べれば私など、
    アリスとはまったくもって希薄な関係で、

    寝起きに彼女のあくび姿を見ることも出来ないと、
    心の中で愚痴りはしたが、


    まさかその半日後に、

    あくびどころか、
    真夜中に腕に抱いた彼女の香りに包まれて、


    そしてこんな言葉を贈られる立場になろうとは。



    胡散臭い占い師でも自称予言者でも何でも、

    この異例の昇格を前もって予測できた者がいたなら、



    朝のニュースの血液型占いさえ毛嫌いする私は、

    今すぐアンタの信者になって、


    ちゃちな水晶玉でもカードでも、


    自費出版の自伝小説だって何だって片っ端から買い占めてやるさ。





    だから私に力を貸して、

    アリスの眠りを脅かす悪夢の正体を暴いてくれと、



    投げやりな気持ちで私は祈った。

引用返信/返信 削除キー/
■17842 / ResNo.27)  あおい志乃さん♪
□投稿者/ 昴 大御所(327回)-(2007/02/01(Thu) 00:39:58)
http://id34.fm-p.jp/44/subarunchi/
    あーあ、勿体無いなぁ・・・これだけ凄い作品を書いているのに
    1ヶ月あいたから一般になっちゃった

    今回は純粋に感想です
    夢の描写を拝読して【凄い!やっぱり志乃さんは天才だ!】と思いました

    ルイ子がアリスの話しを聞いて情景が浮かんだように
    私にも、その情景がカラーで浮かびましたので・・・

    お仕事は少し落ち着かれたのでしょうか?
    如月、これからが寒さの本番です
    どうぞ御自愛下さいませ
引用返信/返信 削除キー/
■17843 / ResNo.28)  NO TITLE
□投稿者/ ビヨンセ 一般♪(1回)-(2007/02/01(Thu) 00:51:20)
    初めまして★
    もう毎日毎日ALICE読みたい為に寝る前ここ開いてます!!
    更新されてた日にゃぁテンション上がりまくりで読ませてもらってます!!
    毎回読み終えるのがもったいない程大好きです(>_<)
    これからもあおい志乃さんのペースで更新頑張ってください(^O^)

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■17847 / ResNo.29)  ALICE 【44】
□投稿者/ あおい志乃 一般♪(14回)-(2007/02/02(Fri) 04:27:30)
    あまりに意外なアリスのセリフに、


    驚嘆や狂喜や請願など様々な感情でごった返していた私の頭は、

    適切な返事をすぐに思い浮かべる事が出来ず、


    私は言葉を返すタイミングを失った。




    その間を拒絶と感じ取ったのか、

    一瞬の隙をついて、
    アリスは身を翻して私の腕の中から抜け出し、

    顔を背ける。


    懐きかけた野良猫が、
    人間に対しての警戒心を再び思い出し、
    突然爪を出すような、

    愛らしいが心がチクリと痛む仕草だった。



    「いや、それくらいお安い御用だけど」


    慌ててアリスの肩に手を伸ばすと、
    彼女がビクッと全身で小さく身構えたので、
    私はその腕を引っ込めた。


    「怖い夢でうなされてたら、所・・誰だって、抱き締めるくらいするでしょう?」

    「抱き締めた後に、必ず続きがある」


    相変わらず抑揚の無い声で、アリスがそう答える。



    ・・・続き、か。


    真夜中に怯えて震える娘を、
    ただで慰める事をせずに、
    毎回sexに流れ込ませるというのか。

    ダイナも所長も、そんな野蛮な人間ではないだろう。

    恐らく、だが。


    ただ、
    急に自分に縋り付いてきたアリスの行為に見当違いの応えを示し、
    つまり誘惑だと受け止めたという事だが、
    アリスの性格から言って、そう展開した時に、

    「ただ抱き締めていて」

    などとは言えず、
    求められるがまま体を開き、心を閉ざす。

    ・・・という事なら、十分ありえる話だ。


    だいいち、

    ダイナも所長も、
    このアリスに、弱々しい部分があるなどとは、
    夢にも思っていないのではないだろうか。

    容姿と同じように中身まで、
    無表情で無感動な、
    何も感じない、傷付いたりなどしない、
    人形のような存在だと、
    そんな意識をアリスに対して抱いているように感じられる。

    きっとそれは、
    アリス自身にも原因があるのだ。

    自分を金で買った女達に、
    機械的な態度を取っているのは、
    それはアリスの自発的な行動であって、
    そんなアリスに女達は余計に精神を乱される。


    そういう悪循環を、
    繰り返してきたのではないだろうか。

    所長もダイナも、
    それ以前の、私の知らない数々の女達も。

    そうしてアリスは何年もの間、
    たった独りで悪夢の恐怖を耐え忍んできたのだろうか。


    どうして、なぜ、誰も、
    無表情の仮面の下に隠された、
    アリスの寂しげな顔に気付かないのだろう。


    どうして、なぜ、アリスは、
    こんなにも不器用で、
    そしてこんなにも、
    その不器用さを隠す事において器用なのだろう。



    目の前の少女が、
    とてつもなく不憫に感じられて、
    今度は私から、
    思いっきり抱き締めてやりたいという衝動に駆られた。


    「ね、抱き締めてイイ?」


    先刻のアリスに負けじと劣らずの、
    そんな驚きのセリフが私の口を突いて出る。



    「・・何って?」 


    アリスが怪訝そうに眉をひそめる。




    その素直すぎる表情が、
    更に私の衝動を後押しした。


    そして素早くアリスの背後に回った私は、

    腕を開いてガバッと乱暴に彼女の肩に巻き付けた。



    「ぅあ!何!?暑苦しいルーイ!」

    「うるさい!この小娘が!」


    額をゴツンとアリスの後頭部にぶつける。


    「イッタっ。ルーイってバーカ!バーカ!!」


    私に羽交い締めにされながら、

    アリスは跳ねるような声を上げて笑った。




    “さっき泣いた子がもう笑う” そのものだ。




    アリスがこんなに喜怒哀楽を表に出すのは、

    もしかしたら私といる時だけなのかもしれない。





    ―――なんて、





    そんな風に感じるのは私の思い上がりだろうか。
引用返信/返信 削除キー/

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