| とある昼下がり
普段はこの屋敷のメイド長として
忙しく業務をこなしているマキは
有給休暇と言うことで
業務から離れ
しかし特にこれと言った用事もなかった為
ゆっくりと自室で紅茶を楽しんでいる
このお屋敷にご奉公して三十年余り
メイド長になり
ご主人様の薫様の信頼も受け
お屋敷の一切を取り仕切っている
だけど…
こんな日にすることがないと言うのも問題だ
そんなことを思い苦笑いしていた
コンコン
ノックと共に
慌てた様子で
メイドが一人駆け込んで来た
『マキ様
お休みのところを
申し訳ありません』
駆け込んで来たメイドに声を掛ける
「何かあったのかしら?
そんなに慌てて」
息を整えながら
そのメイドが言う
『たった今
連絡があったのを
奥様が出られて
亜美さんの実家のお母さまが倒れたそうです』
メイドの一人である亜美の
実家の母親が倒れた
ゆっくり紅茶をしている場合ではない
「そう
わかったわ
それで亜美は…」
『実家に帰る為に
着替えています』
「そう
着替えたら
私のところに来るように伝えて」
ご主人様の会社に電話をして
「手が空いたら折り返し電話を」と
秘書に伝言を頼み
帰省の切符の手配
そのまま
忙しい日常の業務に戻る
長年お屋敷で仕えていると
色んなことが起こる
その一つ一つにパニックになる訳には行かない
私はこのお屋敷を預かるメイド長
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