ビアンエッセイ♪

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■18198 / ResNo.10)  続きを…
  
□投稿者/ 槇 一般♪(9回)-(2007/03/02(Fri) 01:45:45)
    ゆららさん、七生さん、感想ありがとうございました。
    私の中で山本さんがかなり大きなものになってきて、本気で続きを書いてみようと思います。
    山本さんの話が本編みたいになってしまいそうです。量的に。
    更新はゆっくりとしたものになるかもしれませんが、お付き合いのほど、よろしくお願いします。
    追伸、「完結」マークは後から消すことは出来るんでしょうか?

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■18199 / ResNo.11)  君が教えてくれるもの 7
□投稿者/ 槇 一般♪(10回)-(2007/03/02(Fri) 01:49:28)
    まいったなあ〜…
    ロッカーの陰に隠れて、途方にくれていた。

    昨日、サークルの仲間と飲んで、そのままここで夜を明かした。仲間は当然のごとく、私を置いてさっさと家に帰ったみたいで、いつものごとく、独りで目を覚ました。
    ふと、人が入ってきた気配がして、扉のほうを見てみると、後輩がひとり、浮かない顔をして入ってきたところだった。
    向こうは私に気がついていない。常日頃、クールぶって生意気な口を利くこいつを驚かしてやろうと、ロッカーの陰に隠れた…のまではよかったが、やつの最愛の彼女まで入ってきてしまった…。

    やばい…そういう(エッチなというか)雰囲気になったらどうしよう…

    と、さっきから身動きとれないでいた…。

    やつはベンチに寝転がって、可愛い彼女はその枕もとに座って頭をなでてやっている。ラブラブな感じだ。本格的に始まっちゃう前に出て行こうかと足を踏み出した瞬間…

    「別れようか」

    また、固まってしまった…。


    「あいつのとこいきなよ」「あいつはいいやつだよ」「私より大事にしてくれるよ」

    親友に譲っちゃうんだねぇ…自分だって負けないくらい好きなくせにさ…
    本人たちだって気付かれてないと思ってるんだから、知らない振りしてたらいいのに…
    誰もそんなの気付いてないよ。あんたたちは傍目には、うまくいってるようにしか見えないんだから…
    あんたの親友だってほっとけば諦めるかも知んないのに…
    ばかだねえ…かっこつけて…平気な振りして…

    だからあんたはほっとけないのよ



    「あんた…何気にいいやつなんだね〜」

    彼女を送り出した扉の前の、泣きそうな背中に声をかけた。
    このまま、隠れているつもりだったのに、あの生意気なクソガキが独りで泣くところなんか見たくなかった。
    からんで、からかって、最後には「付き合おう」とまで言った。

    何も考えなければいい。何も考えられないほど、私に振り回されてたらいい…。
    振り回されてるうちに、彼女のことも、親友のことも忘れちゃうよ。そうしたら、また誰かと恋をすればいい…。
    それまで私がいてあげる。独りで泣かなくて済むように、生意気なクソガキでいられるように、私が側にいてあげる。



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■18200 / ResNo.12)  君が教えてくれるもの 8
□投稿者/ 槇 一般♪(11回)-(2007/03/02(Fri) 01:53:11)
    「成瀬?」
    講義の空き時間、一眠りしようと部室に行くともうすでに先客がいた。最近失恋してさっぱり元気がない後輩の成瀬さつき。まあ、元気がないのは失恋のせいだけではないんだけどね。

    「あ〜、ヤマモッサン…」
    連日、夜明け近くまで酒盛りにつき合わせてきたから、若干やつれた感が漂っている。
    成瀬は、窓際のパイプ椅子に座り、肘をついて外を見ている。私には最初チラッと一瞥をくれただけだ。
    何を熱心に見てるんだろうと、窓に近づき視線の先を見てみると、外には成瀬の元彼女の彩ちゃんと、成瀬の親友の歩?だったかな?がいた。

    なるほどね。

    「あの二人、順調に付き合ってるみたいだね」
    「そうみたいですね〜」
    成瀬は大して興味なさそうに答えた。

    「ふっ。未練たらたらのくせに」
    片手で頭をぐしゃぐしゃにしてやる。
    「あ〜!やめ〜い!」
    困ったように笑って髪の毛を直す。

    「いや、でもほんまに、これでよかったと思ってますよ。ほんまに。」
    二人の姿を見つめながら言った。

    「別れる前までは、辛かったんです。彩のこと、疑って疑っての毎日やったから…。彩が『好きだよ』って言ってくれる度、『嘘付くな』って思ってたし、歩と三人で話している時も、二人に対してすごい、疑いというか…憎しみというか…嫉妬というか…、とにかくドロドロした感情でいっぱいやったんです。だから、こうなって…心の平安保ててるっていうか…スッキリしてるというか…。うまく、言えんのやけど…まあ、そんな感じですよ。」
    「ふ〜ん…元通り3人で仲良くするってのはもうできなくなっちゃったの?」
    窓の外を見たまま、「はっ」と口だけで笑う。

    「付き合い始めのカップルの邪魔できひんでしょ?」
    「一緒につるむことはなくても、話したりはしてる?」
    「…山本さん…オカンみたいですね。友達と喧嘩した子供心配してる感じ」
    相変わらず、目は外に向けたままそう言うと、「よいしょ」と立ち上がった。

    「歩とは、彩と別れた次の日に話しました。彩とはあれ以来まともな会話はしてないです。歩と二人で話すのは普通にしてるけど3人で話すことはないですよ。」
    出口に向かって歩き出す。

    「なんで?」
    「私が避けてるから。彩をというか、3人になるのを。」
    「なんで?」
    そこで初めて出口に向かう足を止めた。そして振り返り、初めて私の目を見た。

    「私がまだ、どうしようもなく彩のことが好きやから。」
    やけにきっぱりそう言うと、静かに部室から出ていった。


    バカな先輩に振り回されているだけで、忘れられるわけないか…。分かってたけどね…。
    今は仕方ないにしても、ケリつけるとこでつけとかないと…

    「逃げ癖がついちゃうよ、成瀬さん」

    校舎に向かって歩いて行く成瀬を、部室の窓から眺めながら、ひとり呟いた。



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■19184 / ResNo.13)  君が教えてくれるもの 9
□投稿者/ 槇 一般♪(1回)-(2007/05/31(Thu) 02:13:33)

    『それは逃げではないんですか?』

    昔、成瀬にいわれた言葉だ。

    『やらなければならないことから逃げてるだけにしか見えないですけど』

    サークルの新入生歓迎コンパで初めて成瀬に会った。
    その頃の私は、リュックサック一つでよく旅をしていた。
    いわゆるバックパッカーというやつだ。日本だけでは飽き足らず、外国にもよく行っていた。
    飽き足らずというか、正直なところ、日本に居たくなかったと言うのもある。
    当然、単位はとれずに留年を繰り返していた。
    そんな私を、周りの友人たちは「自由でイイ」だの「かっこいい」だの「勇気がある」だの、とにかく賞賛してくれていた。
    私も調子に乗って「日本は私には狭すぎる」などとほざいていた。

    実際は、罪悪感に押しつぶされそうになっていただけなのに…

    全身を覆い尽くす罪の意識から逃れたかっただけなのに…

    コンパで調子に乗ってそんな話をしていると、黙って聞いていた新入生が口を開いた。

    『それは逃げではないんですか?やらなければならないことから逃げてるだけにしか見えないですけど』

    それが、成瀬との初めての出会いだ。
    その時は、腹が立った。
    つい昨日まで高校生だったガキに何がわかる。生意気な!
    本人は留年を繰り返していることを指摘したつもりだったんだろう。でも、後ろ暗いところのある私は自分が目を背けている事を指摘されたように感じた。
    このクソガキに自分が隠してきたものを見抜かれたような気がして…
    恐かった…。
    話すのも目を合わすのも、自分の弱い部分を見抜かれそうで…
    恐ろしかった。
    同時に、気になる存在でもあった。
    意地っ張りで頑固で格好つけで…感情を押し殺すのが美徳だと思っている。
    バカなやつだ。そんなことをしていると、いつか大切な人を失うのに…

    死ぬほど後悔する事になるのに…

    私のように…

    私とあんたはよく似ている…

    本当にバカなやつだよ…


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■19185 / ResNo.14)  君が教えてくれるもの 10
□投稿者/ 槇 一般♪(2回)-(2007/05/31(Thu) 02:22:46)

    抗っても抗っても時間は過ぎる。
    人は変われなくても、季節だけはどんどん変わっていく。
    日々、気温は上がりもうすぐ夏休みだ。

    珍しく学食に行くと、成瀬がいた。相変わらず、例の二人を避け続けているようで、独りでいるのをよく見かけていた。

    「隣、空いてる?」
    隣の席に膳を置き、腰掛けてから聞いた。

    「珍しいですね。学食で昼食べるなんて」
    成瀬は問いには答えず、苦笑しながら言った。

    「夏休みには実家帰んの?」
    「いや〜、あっち帰っても、あっついだけですからね。こっちでバイト三昧ですよ。お盆には帰るつもりやけど。山本さんは?」
    「う〜ん…、私もバイトかな。あ、今度休み前にサークルで飲み会やるからね。」
    「へ〜。いつですか?」
    「明後日」
    「はあっ!?えらい急ですね!!なんかあるんですか?」
    「全然急じゃないよ。前から決まってた。2週間くらい前だったかな?決めたの」
    「ええっ!!全然聞いてないですよ!?」
    「うん。あんたには全然言ってないもん」
    「えええっ!?なんで!?いじめ!?」
    「あはは!違う違う!私が成瀬には言うなって言ったの」
    「………。いじめですよ!!!」
    「いや〜、直前に教えたほうが『サプラ〜イズ!!』って感じで嬉しさ倍増かな〜?って思って(はあと)」
    「嬉しさ倍増かな〜?って思って(はあと)…じゃないですよ!!そんな直前に言われて、予定入ってたらどうすんですか!!」
    「だあって、彼女にも振られたし、予定なんかないでしょ?」
    「う…。いや、バイトとか!」
    「入ってんの?」
    「入って…ないです」
    「行けるんでしょ?」
    「はい…行けます」
    「はい、成瀬参加〜っと。ね?結果オーライじゃん」

    成瀬はため息をついた。

    「大体、山本さんはマイペース過ぎなんですよ!こないだだって…」

    不自然に言葉が途切れた。隣の成瀬を見てみると、ある一点から目を離せないでいる。
    その視線の先を見てみると…彩ちゃんと歩ちゃんが揃って席につくところだった。
    成瀬は途端にそわそわし始め、
    「じゃあ…、私そろそろ…」
    ごにょごにょと口の中でなにやら呟きながら、半分以上残ったままの膳を持って席を立とうとする。

    私は、立ち上がりきる前に成瀬の肩をつかんで無理やり座らせると、一気にお茶を飲み干した。

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■19186 / ResNo.15)  君が教えてくれるもの 11
□投稿者/ 槇 一般♪(3回)-(2007/05/31(Thu) 02:29:32)

    「成瀬、お茶。」
    「は?」
    「お茶なくなっちゃった。お茶持ってきて」

    成瀬は信じられないという顔をしている。

    お茶は自分たちで自由に汲めるようになっていて、お茶が入れてある給湯器というか、給茶機?というのか、その機械は、『偶然にも』例の二人の真後ろにあった。

    「じ…自分で入れてきたらいいじゃないですか…」
    「先輩命令。先輩の言うことは聞くもんだよ、成瀬さん」
    「いつからそんな体育会系になったんですか…?」
    「今から。入れてきて!」

    湯飲みを突き出す。
    「い…嫌ですよ。自分で…」

    湯飲みを激しく机に叩きつけ、その手で成瀬の胸倉をつかんで自分の顔の先、10数センチまで引きつけた。
    「逃げ回るのも大概にしなさいよ…」

    私は、搾り出すように、成瀬にだけ聞こえるように言った。

    「いつまでそうやって逃げまわるの?卒業まで逃げ回る気?そうやって逃げ回ってたらね、逃げ癖がつくのよ。親友も彩ちゃんも失うことになるのよ。」

    目を逸らす成瀬の胸倉を更に強くつかんで逃がさないようにする。

    「あんた、この間私になんて言った?こうなってよかった。スッキリしたって言ってたよね?
    どうせそうやって強がるんならとことんまで強がってみなさいよ。それが出来ないなら、とことん落ち込んで泣き暮らして、落ちるとこまで落ちてみたらいい。後は浮き上がるだけなんだから、その方がよっぽど前に進めるわよ。
    あんたはね、中途半端なのよ。口では強がって、行動では逃げ回って…。全然前に進めてないの。強がるならとことんまで強がって自分も他人も騙せるくらい強がってみなさいよ。」

    ただならぬ雰囲気を察して、周りの学生の何人かが、私たちを盗み見ていた。
    それでも私は構わず続けた。

    「あの子達と普通に話せるくらい強がってみなさい。そうしてたらそのうち、いい方向にいくかもしれない。何か今の状況が変わるかもしれない。強がるの疲れたら、また私が胸貸してあげる。側にいてあげるから…。
    それとも、落ちて落ちて独りで泣き濡れる?どっちにすんの!」

    成瀬は、固まっていた。
    「いい加減、ここらでケリつけないと私が許さない。私には全く関係のないことだけど…それでも、私は許さない!」

    無茶苦茶なセリフだと自分でも呆れてしまう…
    成瀬は「ふ〜」と息を吐きながら、ふにゃっと笑ってみせた。

    「鬼やな、山本さんは」

    そう言って、胸倉をつかんでいた私の手を外し、机に置いていた湯飲みを手にとった。
    「私は…強がることしか出来ませんから」

    湯飲みを手に立ち上がった。

    「また…胸貸して下さいよ?」

    思わず吹き出してしまう。

    「この胸でよければいつでも」

    遠ざかっていく成瀬の背中を見ながら「水にしてもらえばよかった」と、口の中をヤケドした私は激しく後悔していた。



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■19188 / ResNo.16)  感想
□投稿者/ mint 一般♪(1回)-(2007/05/31(Thu) 19:07:25)
    続編を書いてくれてありがとうございますw密かに読んでいたものです
    テンポよく、なにより頭の中で映像が浮かぶ文章はとても読んでいてわくわくさせられます。また、続きが読みたいです。ぜひ、ムリなさらずに書き続けてください
    ではでは
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■19193 / ResNo.17)  君が教えてくれるもの 12
□投稿者/ 槇 一般♪(4回)-(2007/06/01(Fri) 01:38:02)

    2日後のサークルの飲み会。

    彩ちゃんと楽しそうに話をしている成瀬がいた。あの学食での一件以来、3人で楽しそうに話をしている成瀬をよく見かけた。内心では辛いのだろうけど、さすが、「強がるしか能のない」成瀬だけあって、完璧にいい友人を演じきっている。
    自分でそうするように持っていったくせに、「ようやるわ」と毒づいてしまう私はとことん自分勝手な人間だと思う。

    私はあいつが弱ってるところを見たくない。泣いているところを見たくない。
    でも同時に、弱っているところ、泣いているところを見せて欲しいと願ってしまう。

    私だけに…

    つくづく、私って………

    ……Sだよね…

    焼酎をひとり、ちびちびやりながらニヤついていたら、向こうから成瀬がやってきた。

    「山本さん…飲み方がオヤジですよ」
    そう言いながら、私の好物の「たこわさび」の小鉢を差し出してくれた。

    「お、たこわさ。気が利くね〜。ほっといていいの?彩ちゃん」
    「何が?他の人たちと盛り上がってますよ。」

    向こうのほうで「わー!!」と歓声が上がっている。

    「盛り上がってんね〜。何やってんの?」
    「さあ?また誰か脱ぎ出したんじゃないですか?」
    「あはは!あり得る。あんたは?向こうでバカ騒ぎしなくていいの?」
    「…私はここでたこわさ食いながら、ちびちびやっていたいんです」
    「ふ〜ん…可愛くなっちゃって〜。ようやく私に懐いてきた?」
    「ま、そんなとこですかね」

    大騒ぎしている集団から離れて、二人でくたびれた中年オヤジのように、ちびりちびりとやっていたら、彩ちゃんがこっちに向かってきた。

    「二人とも、飲み方がオヤジだよ」
    なんとも愛らしい笑顔をふりまいて成瀬の隣に座った。

    「もう、私も山本さんも騒ぐだけの飲みは卒業したんや。ね?山本さん?」
    「そ、私なんてもう10年も前に卒業した…って、おい!そんな年じゃねえよ!」
    「いや、私はなんも言ってませんよ〜」

    酒の力もあってか、成瀬は彩ちゃんの前でも饒舌でよく笑ってた。
    成瀬と私のまるで漫才のような掛け合いに彩ちゃんはお腹を抱えて笑っていた。
    それはすごくいい空間で、彼女たちが付き合っていた頃は、こんな暖かい空間を作れていたかな?
    覚えている限り、こんなくだけた成瀬や彩ちゃんを見たのは初めてだった。




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■19195 / ResNo.18)  君が教えてくれるもの 13
□投稿者/ 槇 一般♪(5回)-(2007/06/01(Fri) 01:42:14)

    「なんか、さつきは変わったね〜。前はそんなに喋らなかったのに。関西弁に戻ってるさつきなんて、私初めてかも。」
    笑いすぎて出た涙を拭きながら彩ちゃんが言った。

    「山本さんの影響かな?この人に気ぃ張るのバカバカしくなったら、他の人にも気ぃ張るのしんどくなってきたわ」
    「ぅおい!私、一応先輩だからね!」
    「そういえばよく一緒にいるよね。見るたびにさつきと山本さん一緒にいた気がするなあ。仲良しになったんだね〜」

    見るたびにって…やっぱり彩ちゃんも成瀬のこと気になってたんだ…。
    そりゃ、そうか…

    「仲良しって言うか、付き合ってるしね〜。そりゃ一緒におるよ」
    「ぶっ!!」

    酒を吹き出しそうになった。何を言うんだこいつは…!!

    「え…付き合ってたの…?全然、知らなかった…」

    私もそんなこと初耳だ!

    「うん、誰にも言ってなかったから」
    「そう…だったんだ…」
    「うん」
    「そう…」
    「うん」

    何回か、「そう…」「うん」のやり取りを繰り返し、彩ちゃんは集団のほうへ戻っていった


    「あの〜…すいません、成瀬さん?」
    私はおずおずと隣の成瀬に向けて右手を上げた。

    「あ、はい、山本さん、どうぞ。」
    「いつから、私たちはお付き合いしてることになってたんでしょう?」

    「あ〜…」と、たこわさを口に運びながら言う。
    「だあって、付き合おうって言ってくれたの、山本さんですよ?」
    「前向きに検討中なんじゃなかったの?」
    「でも、山本さんいい人やし、私は好きですよ?」

    少し揺れた…。
    でも、ごまかされない。

    「調子いい事言ってんじゃないわよ。なんか魂胆があるんでしょ?」

    成瀬は困ったように笑って息を吐いた。
    「もう…、私のこと気にするのやめて欲しくて…」

    なるほど…
    やっぱりね…

    「彩も歩もやっぱり私のこと気にしてるんですよ。私そうゆうのほんと嫌で…。
    せっかく、思い通じ合って付き合ってるんやから自分たちのこと、大事にして欲しいんです。私はもう大丈夫ってか、大丈夫ちゃうけど…それは、自分自身で乗り越えるしかないことやから…ただただ、自分自身の問題っていうか…。
    だから、私がちゃんと次の人見つけてちゃんとやってたら安心するでしょ?自分らのこともっと考えて欲しいから…。
    すいません…。山本さん利用しちゃって…。
    また、かっこつけって言われるかも知らんけど…そう思ったから…」

    背中を丸めて、手にもった焼酎のグラスを見つめながら、うにゃらうにゃらと、いい訳のように話す成瀬の頭をぐしゃぐしゃにしてやった。

    「か〜っこいいじゃん!」

    赤くなった鼻を手で擦って、成瀬は笑った…
    こんな成瀬の隣にいられることが誇らしかった

    友達とか恋人とかそういうものを抜きにして、成瀬の側にいることが出来て嬉しかった

    成瀬の心に寄り添うことが出来たような気がして、それだけで幸せだった。



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■19196 / ResNo.19)  君が教えてくれるもの 14
□投稿者/ 槇 一般♪(6回)-(2007/06/01(Fri) 01:44:46)

    あの飲み会以来、彩ちゃんの視線が私に纏わりついていた。
    サークルで集まっている時も、キャンパスを歩いている時も、成瀬といる時、他の友人といる時、ひとりでいる時、気が付くと彩ちゃんに見つめられていた。

    それは、好意というよりもむしろ敵意と呼んだ方がしっくりくるような突き刺さるような冷たい視線だった。

    何故そんな目で私のことを見ているのか…思い当たることは一つしかないけれど、そうだったら、成瀬はまた辛い思いをすることになるんだろうな…

    それとも、喜ぶだろうか?
    成瀬にしたら、嬉しいことだろうけど、喜ぶとはとても思えない。
    きっと、また、あれやこれやと考え込んで苦しむだろう…
    あの子はいいやつだから…

    それでも、私は、喜んで欲しい…
    誰を傷つけることになっても、極悪非道の嫌なやつになっても…
    私がいいやつだって知ってるから

    もう…苦しまないで…

    十分、辛い思いをしたじゃない…

    もう…苦しまないで…

    お願いだから



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