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■19198
/ ResNo.20)
ありがとうございます
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□投稿者/ 槇
一般♪(7回)-(2007/06/01(Fri) 01:48:59)
更新遅すぎですよね。すみません
前の更新、3月って!!(笑)
今回はこの調子で完結までいけたらいいなあと思っております。
もしよければ、どうか最後までお付き合いください
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■19481
/ ResNo.21)
君が教えてくれるもの 15
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□投稿者/ 槇
一般♪(1回)-(2007/07/16(Mon) 01:18:50)
部室で昼寝をしていた。
意外にも、真夏でも電源の入っていないコタツの中は涼しい。
電源の入っていないコタツに入り寝転んでうつらうつらとしていた。
その時、いきなり人が入ってきた。声で成瀬と彩ちゃんだということがすぐに分かった。
昔…同じようなシチュエーションがあったような…
デジャヴ?
「どしたん?最近、なんか元気ないやん。歩も心配してたで?なんか悩んでんの?」
「別になんでもないよ…」
「どうしたん?ほんまに。なんでもないって言うてる側からなんでもないようには見えへんよ?」
「……。」
「あや?」
「……。」
長い沈黙の後、涙声の彩ちゃんの声がした。
「ほんとに山本さんと…付き合ってるの…?」
とうとうこの時がきたと思った。胸が痛くなる…
「私…さつきと付き合ってる時、ほんとは凄く不安だった。本当にさつきは私の事好きでいてくれてるのかなって…。さつきはいつもクールでかっこよくて…でも…全然スキがなくて、完璧で…気持ちが読めなかった。私はずっとさつきは本当は私の事好きじゃないって思ってたんだよ…」
…痛い
「そんなわけない!!私は本気で彩が好きだった!!」
「知ってる。私がそれに気付けなかっただけ…。さつきは私が思ってるよりもずっと深いところで私のこと愛してくれてたんだよね…。
私がそれに気がついたのは、さつきに別れ話をされた時だった。あんな…泣きそうな顔で他の人のとこに行けって…引き止めないように手を白くなるほど握り締めて…私はその時やっと自分は愛されていたんだってことに気が付いた。でも、私はもう、引き返すことが出来なくて…」
胸が…痛い…
「そうだよ」
「…っ!」
「もう引き返せん。もう終わったこと。そうやろ?」
「わたしは…やりなおしたい…。私は全然本当のあなたを見てこなかった気がする。別れてはじめて、私は本当のあなたを知ったの…」
「今さら…やめて」
「あなたが好き。今のあなたが好き。どうしようもないほど、さつきのことが好きなの」
「歩は…!どうなんの?私の親友なんやで?」
「でも私は…!」
「無理!私は無理やから!もう彩とのことは終わったことやから!」
「さつき…」
「歩を…傷つけんといて…。大事にしてあげて…」
胸が…痛い…
成瀬の痛みが身体の中に流れ込んでくる…
彩ちゃんは出て行った。
成瀬は泣いているだろう。
私は…身動き一つ取れなかった。
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■19482
/ ResNo.22)
君が教えてくれるもの 16
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□投稿者/ 槇
一般♪(3回)-(2007/07/16(Mon) 01:24:35)
「山本さん…」
呼びかけられて、飛び上がるほど驚いた。
しばらく迷って、答える。
「ん…」
成瀬が顔を出した。
「やっぱり…。いると思ったんですよ〜」
笑っている。
なんて言ったら良いのか…言葉が出てこない…
「や、違うな。おってくれたらええなあって思って」
コタツに入っている私の前に膝を抱えてしゃがんだ。目線が合う。
「これで…いいんですよね。よかったんですよね」
私に、答えを求めている。
私がここで成瀬の求めている言葉をかけてやれば、この子はもう苦しまないのかな。
でも私は、彼女を突き放した。
「それは、逃げなんじゃないの?」
彼女の気持ちは良く分かる。それと同時に、彼女の想いも悲しくなるほど伝わってくるから。
「まだ、彩ちゃんのこと好きなんでしょ?何を難しく考えてんの?もう一回やり直せば良いじゃない。余計なこと考えてんじゃないわよ。たまにはバカになったら良いじゃない。」
成瀬は、こみ上げてくるものを必死でこらえようと唇を噛んだ。
「歩は…親友なんです…。あいつが悲しむようなこと…したくないんです…。大事…やから…」
どうしてこんなにも、分かってしまうんだろう。ため息をついて、目を閉じた。
「それだけじゃないでしょう?何を恐がってるの?」
はっと顔を上げ私を見る。
「何が不安?何が恐いの?正直に言ってみなよ。」
成瀬が必死で堪えてきたものが、ボロボロと溢れ出してきた。
「う…やま…もとさ…ん…何でわかんの…?何で…そんな…」
頭を撫でてやる。
「どうしたの?何をそんなに恐がってんの?」
涙でぐしゃぐしゃの顔でまっすぐに私を見た。
「恐いんです…。彩とやり直して、また他の人にいかれたら…。
同じことになったら…多分…私は駄目になる…。あんな…悲しいことはもう嫌なんです…。今度同じことになったら、もう立ち直れない…。親友を失って、彩も失って、そうなったら…そんな苦しみ耐えられない。すごい恐い…」
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■19483
/ ResNo.23)
君が教えてくれるもの 17
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□投稿者/ 槇
一般♪(4回)-(2007/07/16(Mon) 01:28:56)
「成瀬!」
ぱんっ!!
両方の手のひらで成瀬の顔を強く挟んだ
「あんたは、彩ちゃんの話、ちゃんと聞いてる?付き合ってた頃は不安で仕方なかった。好かれてる気がしなかった。あんたの気持ちが分からなかった。だから、彩ちゃんは他の人を見るようになったんでしょ?」
成瀬の眼が頷く
「でも今のあんたは違うじゃない。自分の気持ち抑えて、かっこばっかつけてたあんたじゃないでしょ?彩ちゃんはそんな今の成瀬さつきの事を好きになったんだよ。
クールでかっこいい成瀬さつきじゃなくて、等身大で生きてる、今のあんたに惹かれてる。
前のあんたは自分を隠して彩ちゃんと付き合ってた。今度は本当の自分さらけ出して付き合っていくの。
本当の自分さらけ出して、それでも、もし彩ちゃんが他の人を好きになってしまったら、それは縁が無かったってこと。別れていいんだよ。他にいい人が待っててくれてるんだよ。お互いのためにその方がいい。
これはね、前に駄目になったこととは、全然意味が違ってくるんだよ?
同じなんかじゃない。前のあんたは違う自分演じて勝負してなかった。今度は本当の自分で勝負すんの。
勝負して、もし悲しい結果になってしまったら、あんたが言うように、一度目よりも辛いかもしれない。それでもあんたにとって凄くプラスになるよ。
その時、どんなに悲しかったとしても、真正面から向き合った結果だもん。ちゃんと、受け入れられるよ。大丈夫、成瀬は強くなったよ。大丈夫だよ。私が保証するから。」
「大丈夫」というように更に強く顔を挟みつける。
「歩は?歩にあんな思いをさせてしまう…そんなん…できひん」
「あんたの親友なんでしょ?いいやつなんでしょ?今すぐには無理でもいつかきっと分かってくれるよ。それに、彩ちゃんの気持ちは成瀬に行っちゃってるんだから、もうすでに裏切られてるようなもんじゃない。遅かれ早かれいつかきっと気付いちゃうもんだよ。成瀬だってそうだったんでしょ?」
成瀬は目を逸らす
「あんたが彩ちゃんを受け入れようと、拒絶しようと、歩ちゃんにとっては同じ結果になると思うよ。彩ちゃんは、あんな気持ちのまま付き合い続けられるような子じゃないでしょ?」
目を逸らしたまま呟く
「でも…」
「私を見なさい!!」
成瀬は驚いた顔で私を見た。
「ちゃんと、伝えられる時に、正直な気持ちを伝えないと、もう二度と伝えられなくなることだってあるんだよ!伝える前に大事な人を失ってしまうことだってある!永遠に…」
「そんな…縁起でもない…」
「ありえることだよ!そうなったら、どれだけ後悔するか、あんたに分かる?!」
涙が出てきた…
「私みたいに…なっちゃいけないの…。あんたは…」
「山本さん…」
手を離して成瀬に背を向けた。こんな所、見られたくない。
「早く行きなさい。自分に正直にならなきゃ駄目だよ。後悔しないように生きなきゃ…」
「山本さん」
「がんばりなよ?」
立ち上がる気配がした
「ありがとう」
成瀬が出て行ってから、信じられないほど涙が溢れた。
止まらなかった。
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■19484
/ ResNo.24)
君が教えてくれるもの 18
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□投稿者/ 槇
一般♪(5回)-(2007/07/16(Mon) 01:32:22)
その日の夜遅く、私のアパートに成瀬が来た。
「お世話になったお礼です」と、照れながら酒と肴の入ったビニール袋を差し出した。
「うまくいったんだ?」
「はい。おかげさまで」
成瀬は幸せそうに笑った。
「彼女はいいの?付き合い始めの記念すべき初夜なのに」
「初夜って!!」
勝手に人の家の冷蔵庫を開け、山ほど買い込んだビールを入れながら、成瀬は笑っていた。
「今日はバイト入ってるみたいです。私も山本さんには色々お世話になったからお礼したかったし」
「そっか」
成瀬から手渡された缶ビールを持ち上げる。
「え〜、では、若いお二人の前途を祝して…」
「なんじゃ、そら!」と吹き出す成瀬を無視して続ける。
「かんぱ〜い」
「あはは!あざーす」
「くぉら!!正しい日本語使いなさい!!」
「あははは」
あんなに山ほどあったビールをあっという間に空にし、私たちは焼酎に切り替えた。
二人ともいい感じで酔っ払い、くだらない話で盛り上がった。
成瀬にどんなに大切な人がいたとしても、こんなくだらない時間を共に過ごせるようになった。
それだけで、私は幸せだ。
もう…いいんじゃない?
自分に問い掛ける。
「山本さん」
不意に呼びかけられた。
「へ?」気の抜けた返事になってしまった。
「昼間、言ってたじゃないですか?大事な人を失うかもしれない、私みたいになっちゃいけないって…。山本さんは…大切な人を亡くしたんですか?ずっと気になってて…」
「ああ…よく覚えてたね」
「聞いても良いですか?山本さんの大切な人はどんな人だったんですか?」
もう…いいんじゃない?
自分の声が聞こえる
「そんな話、酒の肴にならないよ。暗い話になっちゃうよ?多分、成瀬が期待しているような内容ではないし…」
「聞きたいです」
グラスの中の氷を見つめる
声が震えないように、私は、少しトーンを上げて話し出した。
「大切な人っていっても、色恋の話じゃないの。亡くしたのは、私の両親。大学に入った年にね。両親て言っても、血はつながってなかった。私、養女だったから…」
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■19485
/ ResNo.25)
君が教えてくれるもの 19
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□投稿者/ 槇
一般♪(6回)-(2007/07/16(Mon) 01:35:58)
養女だってはじめて知ったのは、高校二年生の時。うちの高校の修学旅行って海外なんだよね。
私はその時までパスポート持ってなくて、自分で申請したの。その時に初めて自分の戸籍謄本を見た。ペラペラの紙に書かれた「養女」って言葉、信じられなくて、思わず笑っちゃった。
「戸籍って間違うことあるんだ〜」って何の疑いも無くそう思って、家に帰ってから母に見せたんだ。
「役所っていい加減なもんなんだね」って、笑いながら。
その時の母の顔を見るまで、私は本当の親じゃないなんて露ほども疑ってなかった。
両親から聞いたのは、私は生まれてすぐに駅のコインロッカーの中に置き去りにされていたこと。かなり危険な状態で発見されたって事。回復してから1歳になるまで施設で育てられ、今の両親に引き取られたって事。
周りからお母さんとよく似てるとか、大雑把なとこはお父さん似だとか言われてたから、血がつながってないなんて想像したことも無かった。
ニセモノだったんだ…って思った。
お父さんもお母さんも、この人たちがくれていた愛情も、何もかも…
今なら分かる。
そんな訳ない。
ニセモノなんかじゃない。
ほんとの親じゃなくたってあの人たちは本物の愛情で育ててくれていた。
全てを話してくれた後、父が言ったの。
「本当の両親に会いたければどんなことをしてでも探し出してあげる。お父さんもお母さんも世界中這いつくばってでも探し出してあげるから」
私はその言葉で、何かが壊れてしまったのかもしれない。
思いつく限りのひどい言葉を両親にぶつけた。傷つくような言葉をわざと選んで…
深く…深く…傷つくように…
あの言葉は、両親の優しさだったんだよ…全てを知った私へ、彼らが思いつく限りの最高の優しさだった。
でも私は、そんな優しさよりも強い言葉が欲しかった。
正直、私を捨てた親なんかに何の興味も無い。もしなんかの拍子に会えたとしても、一発くらい殴ってやれればそれでいい。
そんなことよりも、「血なんか繋がってなくたって、お前は私たちの子供だ」
そういう強い言葉が欲しかった…
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■19486
/ ResNo.26)
君が教えてくれるもの 20
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□投稿者/ 槇
一般♪(7回)-(2007/07/16(Mon) 01:40:18)
その日から、私は両親を避けるようになった。
気持ちが落ち着いて、自分の親はあの人たち以外にいないって、ちゃんと分かっていたのに心を開けないでいた。
ひどい事を言ってしまった、深く傷つけてしまった罪悪感と、素直になることが恥ずかしいという、つまらない意地…
謝らなきゃ、謝らなきゃって思っていても、時間がたてばたつほど素直になれなくて…
大学に入るまで、ずっと両親を避け続けた…
大学一年の冬に両親は死んだわ。
初詣に二人で行って、その帰りに飲酒運転の車にはねられて…
あっけなかった…
行ったっきり帰ってこないんだもん…
帰ってきたのは、血の付いた破魔矢と、二人のお守りと、わたしの学業成就のお守り…
「初詣に一緒に行こう」って言われた時、私は「行かない」って一言だけ言って自分の部屋に入った…。
私は、最後、あの人たちにどんな顔を見せたんだろう…
両親は財産の全てを私に相続されるようにしていた。
私は家も土地も全部売り払って、私がひとり生きていく為に必要なものだけ残して、全て処分した。思い出になるようなものは残したくなかった。二人の事を思い出したら、罪の意識に押しつぶされそうになるから。
旅を始めたのも、二人の事忘れたくて…。
最初はこの町を出るだけでよかった。見たことのない光景の前なら少しの間忘れることが出来た。でもそのうちすぐに思い出す…
全然知らない所へ行っても、すぐに二人の記憶は追いかけてくる。そのうち日本には逃げ場所が無くなった。日本はどこに行っても似たような光景。何を見ても両親に繋がる…
だから、次は全く違う外国に逃げた。町並みも自然も人も、日本とは全く違う。
毎日新しいものの中に身をおいて、昔の事を考える余地を与えないようにした。
そんな風に、日本と外国を行ったり来たり…
何年もね…
そんな時に、あんたに言われたのよ。
「それは逃げではないんですか」
なんも分かってない18歳のガキに痛いとこ突かれたのよ
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■19487
/ ResNo.27)
君が教えてくれるもの 21
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□投稿者/ 槇
一般♪(8回)-(2007/07/16(Mon) 01:46:00)
「覚えてる?そう言ったの」
成瀬は驚いて首を振った。
私はその成瀬の顔がおかしくて吹き出した
「言ったのよ。もんのすごくむかついた」
成瀬は頭を抱えて思い出そうとしている。
「でもね、あんたにそう言われてから旅してないんだよね。一回も。」
顔をあげて、私を見た。
「生意気なクソガキに『やるべきことから逃げてる』って言われて、やっと、ちゃんと向き合わなきゃなって思ったの。今でも両親のこと考えると辛いけど、ちゃんとして、許してもらえるようになんなきゃなって思ったの。まだ、そんな人間にはなれてないけどね」
「山本さん…」
成瀬の手のひらが、頬に触れた。
私は…知らないうちに涙を流していた…
成瀬の手が、私に、涙とずっと抑えてきた感情を溢れさせた…
「なんで…!なんで、死んじゃうの?私…まだなんにもしてあげてない!なんにも親孝行してあげてなかったのに!!」
もう、止まらなかった…
「もっと、長生きしてくれると思うじゃない!もっと、ずっと側にいてくれると思うじゃない!!私の両親は二人以外にいないのに!!」
そのまま、抱きしめられた
ずっと…言えなかった…伝えられなかった…
辛すぎて呟くことも出来なかった言葉が、初めて成瀬の腕の中で言うことが出来た…
「ごめんなさい…ごめんなさい…ひどい事言って…ごめんなさい…」
もっと早く言えばよかった…
分かってたのに…
「ふたりのこと…大好きだったんだよ…」
私を抱きしめる腕が、強くなった
「大丈夫…きっと、分かってくれてます」
成瀬はずっと、抱きしめてくれていた。
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■19489
/ ResNo.28)
はじめまして
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□投稿者/ りさ
一般♪(1回)-(2007/07/16(Mon) 13:38:21)
はじめまして
小説読ませていただきました!何か胸にぐっとくる小説で…良かったです!!
続きも気になります(>_<)
頑張ってくださいね☆
(携帯)
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■19492
/ ResNo.29)
君が教えてくれるもの 22
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□投稿者/ 槇
一般♪(9回)-(2007/07/17(Tue) 03:01:33)
久しぶりに、学校へ行った。
用を済ませて、帰ろうとしていたらグランドが見渡せるベンチに成瀬がひとりで座っていた。グランドではサッカー部が練習をしていた。
夕方のこの時間、少し気温が下がって過ごしやすくなっていた。練習の声を聞きながら本を読むのが好きだと昔、成瀬から聞いたことがあった。
「成瀬」
本に夢中になっていた成瀬は驚いたように顔を上げて、声の主が私だとわかると穏やかに笑った。
いつから、成瀬はこんなに柔らかく笑えるようになったんだろう。
「山本さん、久しぶりですね」
あの夜から私たちは会ってなかった。私がずっと学校を休んでいたから…
「うん、ずっと休んでたからね。色々やることあって。」
「いい加減にしとかないとまた留年しますよって来た」
「教務?なんで?」
目の前の練習を見つめながら言った。
「退学届をね…出してきた。」
空が赤くなってきていた
「大学…辞めるん…ですか?なんで…?」
私はまっすぐに成瀬を見た。
「私、強くなりたいのよ。あんたみたいに。いつのまにか追い抜かれちゃってんだもん」
「全然、強くないですよ!!山本さんの方がずっと強い!私はいっつも助けられて…」
「私は弱いくせにそれを認めたくなくて、強がってただけ。でも、あんたはほんとに強くなったよ」
私は未だに自分の気持ちを伝えることさえ、できていないんだから…
「辞めて、どうするんですか?」
「うん、世界一周一人旅!全然知らない土地をひとりで旅してたら、頑固な私もさすがに強くなるでしょ。ああ、でも、頑固だから一周では足りないかもしれないな」
「……」
成瀬は何も言わず、俯いて聞いていた。
「逃げようって思ってるんじゃないんだよ?私は自分を変えたいの。色んなものを見て、色んな人たちに会って、そこで生活して、いろんなことを感じて…。私は変わりたいの…。世界の果てまで行ったら、なにか見つけられるかもしれない…。それが何なのかはわからないけど…」
「大学を…辞めてまで…しなきゃいけないことですか?休学にしたらいいじゃないですか…」
そうかもしれない…
私は人生を棒に振ろうとしているのかもしれない…
「逃げ道を作っておきたくないの。ここにやることがあれば、それを理由に逃げて帰ってきてしまう…。一番辛い時、それでもどうしても一歩踏み出さなければいけないときに、進めなくなってしまう…。今までがそうだったから…」
「どれくらい行くつもりなんです?もう帰ってこないつもりなんですか?」
「わかんないな…。そんなこといってすぐ帰ってきちゃうかも知れないし、どっかの国でそのまま暮らすかもしれないし…。ひょっとしたら、どっかのスラム街とかで死んじゃったりしてね」
自分の無計画さにはじめて気が付いて思わず笑ってしまった。
でも成瀬は、全然笑わなかった。
「今日会えてよかった。色んな事の整理ついたらすぐ行くつもりだったから、最後に顔見たいなって思ってた」
「いつ出発ですか?見送り行きますよ」
「教えない」
「え…?」
「絶対こなくていいから!」
私は断固として言った。
「……」
「見送り来られると、行きたくなくなっちゃうから…自分で決めたことでもね…」
「ねっ」と、成瀬の顔を覗き込んだ。
「……行きたくなくなるなら……」
「え?」
顔をあげて、まっすぐに私を見据える
「行きたくなくなるなら、行かなきゃいいじゃないですか!」
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■No19492に返信(槇さんの記事) > 久しぶりに、学校へ行った。 > 用を済ませて、帰ろうとしていたらグランドが見渡せるベンチに成瀬がひとりで座っていた。グランドではサッカー部が練習をしていた。 > 夕方のこの時間、少し気温が下がって過ごしやすくなっていた。練習の声を聞きながら本を読むのが好きだと昔、成瀬から聞いたことがあった。 > > 「成瀬」 > > 本に夢中になっていた成瀬は驚いたように顔を上げて、声の主が私だとわかると穏やかに笑った。 > いつから、成瀬はこんなに柔らかく笑えるようになったんだろう。 > > 「山本さん、久しぶりですね」 > > あの夜から私たちは会ってなかった。私がずっと学校を休んでいたから… > > 「うん、ずっと休んでたからね。色々やることあって。」 > 「いい加減にしとかないとまた留年しますよって来た」 > 「教務?なんで?」 > > 目の前の練習を見つめながら言った。 > > 「退学届をね…出してきた。」 > > 空が赤くなってきていた > > > > 「大学…辞めるん…ですか?なんで…?」 > > 私はまっすぐに成瀬を見た。 > > 「私、強くなりたいのよ。あんたみたいに。いつのまにか追い抜かれちゃってんだもん」 > 「全然、強くないですよ!!山本さんの方がずっと強い!私はいっつも助けられて…」 > 「私は弱いくせにそれを認めたくなくて、強がってただけ。でも、あんたはほんとに強くなったよ」 > > 私は未だに自分の気持ちを伝えることさえ、できていないんだから… > > 「辞めて、どうするんですか?」 > 「うん、世界一周一人旅!全然知らない土地をひとりで旅してたら、頑固な私もさすがに強くなるでしょ。ああ、でも、頑固だから一周では足りないかもしれないな」 > 「……」 > > 成瀬は何も言わず、俯いて聞いていた。 > > 「逃げようって思ってるんじゃないんだよ?私は自分を変えたいの。色んなものを見て、色んな人たちに会って、そこで生活して、いろんなことを感じて…。私は変わりたいの…。世界の果てまで行ったら、なにか見つけられるかもしれない…。それが何なのかはわからないけど…」 > 「大学を…辞めてまで…しなきゃいけないことですか?休学にしたらいいじゃないですか…」 > > そうかもしれない… > 私は人生を棒に振ろうとしているのかもしれない… > > 「逃げ道を作っておきたくないの。ここにやることがあれば、それを理由に逃げて帰ってきてしまう…。一番辛い時、それでもどうしても一歩踏み出さなければいけないときに、進めなくなってしまう…。今までがそうだったから…」 > 「どれくらい行くつもりなんです?もう帰ってこないつもりなんですか?」 > 「わかんないな…。そんなこといってすぐ帰ってきちゃうかも知れないし、どっかの国でそのまま暮らすかもしれないし…。ひょっとしたら、どっかのスラム街とかで死んじゃったりしてね」 > > 自分の無計画さにはじめて気が付いて思わず笑ってしまった。 > でも成瀬は、全然笑わなかった。 > > 「今日会えてよかった。色んな事の整理ついたらすぐ行くつもりだったから、最後に顔見たいなって思ってた」 > 「いつ出発ですか?見送り行きますよ」 > 「教えない」 > 「え…?」 > 「絶対こなくていいから!」 > > 私は断固として言った。 > > 「……」 > 「見送り来られると、行きたくなくなっちゃうから…自分で決めたことでもね…」 > 「ねっ」と、成瀬の顔を覗き込んだ。 > > 「……行きたくなくなるなら……」 > 「え?」 > > 顔をあげて、まっすぐに私を見据える > > 「行きたくなくなるなら、行かなきゃいいじゃないですか!」 > >
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