ビアンエッセイ♪

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■18079 / ResNo.10)  くもりのち:02-C
  
□投稿者/ 野良 一般♪(10回)-(2007/02/22(Thu) 23:30:41)
     
    わあああぁぁっ

    校庭から生徒たちの歓声が聞こえる

    体育の授業。
    種目はハンドボール

    白熱する試合

    きっと彼女らは、屋上にいる私達の存在に気付いていないのだろう


    「………」


    屋上の二人。
    しばしの沈黙

    びゅうっ、と吹き抜ける風


    「……相田を…どうしたい、とかは無いよ…」


    私の口から、ようやく言葉が紡がれた

    ドッ ドッ ドッ

    心臓の鼓動が徐々に強くなっていく


    「それは嘘だね」


    まるで私を見透かしたような目で、南が言い切った


    「……嘘じゃない」

    「虚勢だよ、かっさん」


    すっかり短くなった煙草を、持っていた空き缶の中に詰める


    「我慢してるようにしか見えないよ」


    “我慢”

    その言葉に心臓が強く脈打った。
    思い出したのは、先程の相田の姿

    私を置いて他の誰かと共に行く、あの背中


    「……」


    何も言い返せなかった

    強がっても無駄だろう。
    南には全て見抜かれている


    「……どうすればいい?」


    ふと口を突いて言葉が出た

    私の中の淫らな妄想と、薄汚い感情

    そうした爆弾を抱えながら相田と接していれば、いつか爆発するのではと不安になることがある

    そして、そのたびに思うのだ


    “なら、どうすればいい?”


    私は、今もその答えを出せずにいる
     


    (携帯)
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■18157 / ResNo.11)  くもりのち:02-D
□投稿者/ 野良 一般♪(11回)-(2007/02/26(Mon) 02:36:39)

    相田の周りには人が集まる。
    私はその中に入れない

    触れてはいけない

    まばゆいほどの笑顔。
    私みたいな人間には…

    私には……


    「…どうすれば……」


    手に残る、初めて彼女と握手をしたときの感覚

    思い出せば胸が軋んで

    近付けば、動き出してしまいそうで


    「……アタシはさ、」


    南が2本目の煙草に火を付け、切り出した


    「たま吉と居るときのかっさんが好きだよ」


    ふぅっと空に煙を吹きかける


    「独占欲ってのは、多かれ少なかれ皆抱えてるものさね。
    大事なのは、“それ”とどうやって付き合っていくかでさ」


    校庭から聞こえる歓声が、ずっと遠いところから響いているような気がした

    私の耳が、鼓膜が、脳が

    南の言葉だけを捉えようとしている


    「たま吉と一緒に居て楽しいのなら、もっと自分から歩み寄るべきだよ。
    周りがどう、とか。
    自分はどうだ、とか考えないで」


    抜ける空気は、抜いておけばいい

    楽観的とも思える彼女の意見はシンプルで、
    だけど、重く張り詰めた私の心を救ってくれるには充分だった


    「…そうか。うん、そうだね」


    あっけなく出された答えに、今まで葛藤していた自分が馬鹿バカしく思えて

    ずっと強張ったままの顔が、自然と弛んでいく


    「ほら、その表情!たま吉と居るときの顔になってるよー、かっさん」


    南がからかうように、にまーっと笑った

    気付けば授業の終わりを告げるチャイムの音

    「アタシ、応援するよー」なんて言いながら、背中を突っついてくる南に

    うるさいな、とボヤきながら屋上を後にする私


    見上げれば、澄み切った空に飛行機雲が一筋


    心は晴れやかだった
     


    (携帯)
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■18190 / ResNo.12)  野良さまへ★☆
□投稿者/ ひより 一般♪(1回)-(2007/02/28(Wed) 02:44:56)
    初めまして!いつも拝見させもらっていたのですが、思い切って書き込みしてみました(^O^)/
    南さんが好きすぎて。。。(*^_^*)
    続きがとても楽しみです!頑張って下さいね★

    (携帯)
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■18192 / ResNo.13)  初めまして☆
□投稿者/ 夏菜 一般♪(4回)-(2007/02/28(Wed) 16:05:17)
    私も女子高育ちなんで、なんか共感できます(●*vωv*艸)
    読みやすぃし、この先の展開がめっちゃ楽しみです♪♪

    実は・・・相田サンのイメージが友達にそっくりなんですょ(*OUO艸藁)+.゜
    その子はソフト部なんで、逆に真っ黒ですけど★ワラ

    これからも更新頑張って下さぃ.。*((●艸/∀≦*.+♪
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■18196 / ResNo.14)  TO.ひよりさん
□投稿者/ FROM.野良 一般♪(12回)-(2007/03/01(Thu) 01:15:44)
    2007/03/01(Thu) 01:16:59 編集(投稿者)

     
    初めまして。
    コメント、有り難う御座います!

    南 潤子は、私も個人的に愛着のあるキャラクターなので、気に入って頂けるととても嬉しいです

    未熟ながらも精一杯頑張りますので、これからも彼女たちの行く末を見守ってあげて下さいね
    (*^_^*)
     


    (携帯)
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■18197 / ResNo.15)  TO.夏菜さん
□投稿者/ FROM.野良 一般♪(2回)-(2007/03/01(Thu) 01:39:09)
     
    初めまして!

    私の女子校生活での経験も取り入れて書いている物語なので、共感して下さる方がいると何だか親近感を感じます(笑)

    内心、“間をとりすぎてやしないか”、“話の中身が見えてこないのではないか”と心配ではあったのですが、“読みやすい”との評価を頂き安心しました

    相田に似ているというご友人が、とても気になるところ……
    (^_^;)

    拙い文章ですが、これからも頑張っていこうと思います

    コメント、有り難う御座いました!
     


    (携帯)
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■18233 / ResNo.16)  くもりのち:03-A
□投稿者/ 野良 一般♪(13回)-(2007/03/05(Mon) 00:12:36)
     
    新しい学年に進級してから、数週間が過ぎた

    私の通う瀬尾女子高等学校では、毎年この時期になると“新入生歓迎会”と称して、文化系の部活による舞台の催し物がある

    参加する部活は、
    軽音楽部
    ダンス部
    吹奏楽部

    そして
    私が所属している、演劇部


    「………は?」


    3日後に本番を控え、今日も追い込み練習。
    私は当然のことながら裏方、音響担当…

    ……だったのだけど……


    「ぶ、部長……今、なんて…?」


    一瞬、
    我が耳を疑った

    部長を除く演劇部員も、目をぱちくりさせている

    そこには、口をあんぐりと開けた相田の姿も


    「だ か ら!
    次の新入生歓迎会、負傷しちゃった村松の代わりにアンタが舞台に立つの。
    何度も言わせないでよね」




    ……ぶっ

    ぶ…ぶ…ぶっ!!!!


    「舞台っ……!?」


    いっそ叫んでしまいたかったが、ギリギリのところで理性が働いた

    落ち着け、落ち着くんだ

    部長は何か勘違いをしている!


    「わ、私…どう考えたって舞台に立てるような人間じゃあないですよ」


    おずおずと、遠回しに拒否の意を示した

    しかし、部長の中ではすでに私を代理にすることが決定しているらしい


    「容姿、衣装、役柄……村松の代わりになり得るのは、アンタしかいないの!これは部長命令よ、笠原」


    分かったわね?
    と、有無も言わさぬ勢いで台本を突きつけられた

    かなり使い込まれたであろう冊子

    表紙には“村松 雅代”と書かれてある


    「これから45分間、各自練習!笠原は台本のチェックをすること!!」


    部長の指示を受け、それぞれ自分のポジションに移動する部員たち

    そんな中
    呆然と立ち尽くす私に、相田の声が掛かった


    「外、行かん?」


    …と
     


    (携帯)
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■18237 / ResNo.17)  くもりのち:03-B
□投稿者/ 野良 一般♪(14回)-(2007/03/05(Mon) 12:56:12)
     
    演目は、ルイス・キャロルの“鏡の国のアリス”を演劇部なりにアレンジした“不思議の国のアリス”

    私が村松先輩の代わりに演じろと言われたのは、お茶会のシーンで有名な“いかれ帽子屋(マッドハッター)”


    「うちもイメージに合ってると思うで」


    部長が切り出したときはビックリしたけど、と
    食堂で買ってきたサンドイッチを片手に相田が言う


    村松先輩の身長は166センチ

    確かに、部員たちの中で最も先輩に近い体型をしているのは私だろう。
    加えて、台本の中の“帽子屋”は口数が少ない


    ……だけど


    「…だけど、私には無理だ」


    発声場に続く階段に腰掛け、呟いた


    「そうかなぁ?」


    その隣に相田も腰掛ける。
    頬いっぱいに詰まったサンドイッチをごくりと飲み込むと、今度は私のほうを向いた


    「いっぺん練習に参加してみたら?案外性に合ってるかもしれんし……
    っていうか、うちが椿ちゃんの帽子屋を見たいんやけど!」


    むふふっ、とイタズラっぽく笑う相田

    “椿ちゃんの帽子屋が見たい!”
    その言葉が少し嬉しくて

    くすぐったくて

    「簡単に言ってくれるな」と、照れ隠しに相田の頬を突っついた

    ああ、駄目だ。
    何でこの娘は、こんなにも……


    「うちかて“三月兎(マーチヘア)”の役をもろたのに、このまま中止になるなんて嫌やもん」


    むぅ、と今度は頬を膨らませ、拗ねたように相田が言った

    そうだ、彼女も舞台に立つんだ


    「“与えられた舞台を無駄にしたくはない”って、部長も言っとった」


    と、今度は私の手元に視線をやる

    視線の先にあるのは、一冊の冊子。
    ボロボロになるまで読み込まれた、村松先輩の台本だった
     


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■18313 / ResNo.18)  くもりのち:03-C
□投稿者/ 野良 一般♪(15回)-(2007/03/11(Sun) 17:31:23)

    台本を開く。
    中は、村松先輩が帽子屋を演じる際の注意点や、メモ書きでいっぱいだった

    先輩がどれだけ真剣に役と向き合っていたのかが伝わってくる

    舞台を成功させたいというのは、誰だって同じなんだ


    「…やってみるよ」


    私では役不足かもしれない。
    だけど私がやらなければ、舞台は始まる前に終わってしまう

    ならば、やってやれるだけのことを


    「うんっ」


    相田が嬉しそうな表情を浮かべる

    そう、
    この笑顔に応えられるのなら、私は……




    「覚悟を決めたって顔ね。良い心構えよ、笠原」




    外から戻った私達を見て、部長がふふっと笑った

    すでに立ち稽古の準備が整っている部室内

    学習机を並べて、一つの大きなテーブルに見せている

    これは、そう

    マッド・ティーパーティのシーン


    「じゃあ早速、お茶会のシーンから始めるよ」


    とりあえず今日は台本を持ったままでいい、と言われたが、
    セリフなら既に頭の中にインプットしている

    音響とはいえ、私も演劇部 部員

    裏方から、役者たちの練習風景をずっと見守っていた




    あとの問題は……


    ……私が、どれだけ村松先輩に近付けるか、だ
     


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