| 西日の強い電車内
とても横顔が綺麗な女の人が居た。
ショートの茶色い髪
白い肌
はっきりとした二重
長い睫
動かぬその横顔に釘付けになった時
ふと気がつきました
何かがおかしい
強い西日に似合わぬ
儚い目
儚いのに
強い強い何かを秘めた瞳
ゆっくり
ゆっくりと
スローモーションのように
その人がこちらを振り向く
その瞳と
私の瞳が一瞬だけ重なった
私は途端に目線をずらした
恥じらいや
気まずさからじゃなく
睨まれた訳でもなく
怖くなった
その人の眼は
誰も寄せ付けないのに
そこには居らず
深く
暗いなんて言葉が軽く感じる程
闇なんて言葉が浅く感じる程
今その人の居る 底知れぬ世界の果てに引き込まれそうになった
焦り目線を外し
視界にその人がギリギリ入る程に宙を見つめた
人の眼をみて
これほどの恐怖感を抱いたことはなかった
引きずり込む
その言葉がこれほど当てはまる間接的なものに出会ったのは
初めてだった
私はその瞳に怯えたにも関わらず
その人から目が離せなかった
むしろ
どうしても見れぬその瞳を
どうしても見たいと感じた
怖くてたまらないのに
また逢いたい
あの瞳に
駅を後にしても
この矛盾に包まれた
恐らく
もう逢うことはできない
そして
あの瞳を忘れることはできない
(携帯)
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