ビアンエッセイ♪

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■21077 / ResNo.10)  恋唄   Z
  
□投稿者/ sakura 一般♪(8回)-(2008/08/13(Wed) 00:22:08)
    出会ったのが夢だったのかも・・・と錯覚しかけたある日、いつものように携帯が鳴った。
    『サイ、ヒガキ様からご指名。19時にS駅ね。』
    「ヒガキ様?駅?」
    覚えの無い名前。
    しかも、待ち合わせが駅・・・。
    大体ホテルの部屋へ直行なのに、ますます誰だか分からない。
    また誰かの紹介だろうか・・・。

    不審に思いながらS駅に向かった。
    改札の隅で立っている女性・・・
    彼女だ。
    彼女は、あの花のような笑顔で私に手を振っていた。
    「み・・・美佐子さん?」
    「名前、覚えていてくれたんですね、サイさんっ。」
    少女のような、跳ねながらのリアクション・・・可愛い。
    「一緒にお食事したり、お酒を飲んだりもできるって、クラブの方に聞いたから・・・いいですか?」
    「あ、ああ。私の方は全然構わないですけど・・・料金が高くつきませんか・・・?」
    思わず私がそう聞くと、美佐子さんはちょっと不思議そうな顔をして言った。
    「サイさんはいつもそうやってお客さんの懐具合を心配してくださるの?優しいんですね。」
    「そういう訳では・・・。」
    「私は大丈夫です。エステに行ってリフレッシュするのと全く同じ事なの。サイさんとお話しすると、何だかとっても楽になれるから・・・。」
    言い分は全く他のお客様と同じである。
    ただ、『旦那が風俗行ったり浮気しまくってるんだから、妻が気持ちよくなったっていいじゃない』と言う意味合いだけど・・・。

    仕方なく、私は美佐子さんを連れ、女性が喜びそうな隠れ家風居酒屋で食事をして、少し落ち着いたワインバーへ向かった。
    ずっと他愛の無いおしゃべりが続いた。続くのである。
    普段ならつまらないと思ってしまうような内容でも、つい笑ったり、突っ込んだりしてしまった。
    見栄も張らず、駆け引きも無い美佐子さんといると、私の方が楽になれたような気がした。

    3杯目のワインで、美佐子さんは少し酔ってきた。
    おしゃべりのペースが落ち、ずっとニコニコしている。
    「結構気分が良さそうですね。そろそろ帰りましょうか?」
    「んー、今日は主人もいないし、娘も合宿でいないからいーの!」
    目が据わっている。
    完全に酔っている。
    可愛い・・・。
    「じゃあ、美佐子さんの家で飲みなおしますか。」
    「あっ!さんせーい!!」
    やっとこれで連れて帰ることが出来る・・・。
    酔いつぶれてしまうと、住所さえ分からなくなるから送ろうにも送れない。
    世間知らずな彼女をタクシーに乗せて、はい、さようなら、なんて出来ないから。

    ようやく美佐子さんの家の前に着いた。
    新しいようだけど、どっしりとした日本家屋。
    思わず着物姿の美佐子さんを想像してしまった。

    「はい、着きましたよ。もう遅いから私は帰りますね。」
    「・・・・」
    「美佐子さん?おやすみなさい・・・」
    「お水・・・飲ませて・・・。」
    苦しそうな顔。
    もしかして・・・初めて酒に酔ったのだろうか。
    仕方なく、美佐子さんを家の中へ運び、水を飲ませた。
    美佐子さんは美味しそうに水を飲んでいた。
    その横顔の、喉の動きが何とも色っぽくてドキッとした。
    「お〜やすみ〜、サ〜イ・・・。」
    名前を呼び捨てにされ、もっとドキッとした・・・が、彼女はそのまま眠り込んでしまった。

    彼女は、こうして酔いつぶれてソファで眠りこけてはいけないヒト・・・。
    そんな気がして、寝室を探し、彼女を担いで連れて行った。
    ブラウス、スカート、ストッキング・・・
    脱がすのは仕事上得意分野。
    キャミ一枚になった彼女は、私の性欲をかき立てるのに十分すぎるほど魅力的だった。
    お客様に欲情した事など一度も無かった。
    何よりも、プックリとして少し開いた唇に引寄せられた。
    彼女の寝息が私の唇にかかる。
    私は目を閉じ、人差し指をそっと美佐子さんの唇に当て、部屋を後にした。

    間違ってる・・・!
    帰り道、タクシーを拾う事も無く、ただ黙々と歩き続けた。
    間違ってる・・・・
    そう、何度も何百回も呟きながら・・・。




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■21078 / ResNo.11)  面白い!
□投稿者/ みや 一般♪(1回)-(2008/08/13(Wed) 21:21:05)
    文章の書き方も上手いし話もすごく面白いです!´∀` 早く続きが読みたいな!

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■21081 / ResNo.12)  みやさんへ♪
□投稿者/ sakura 一般♪(9回)-(2008/08/18(Mon) 17:38:38)
    コメントありがとうございます。
    こんな拙い文章、読んでいただけて嬉しいです。
    これからもスローペースで更新していくので、読んでください^^
引用返信/返信 削除キー/
■21084 / ResNo.13)  恋唄   [
□投稿者/ sakura 一般♪(10回)-(2008/08/27(Wed) 23:10:20)
    最近ずっと調子が悪い・・・。
    ずっとイライラするし、ボーっとするし、とにかく情緒不安定だ。
    人に対して腹を立てたことのあまりない私が、CMにキレている始末。

    何なんだ・・・!

    ちゃんとした接待ができそうもなく、クラブの指名は断り続けている。
    学校も、もちろん行く気がなく、水疱瘡だと嘘をついて毎日主婦向けのTV番組を見ては悪態をついていた。

    “♪♪♪♪ ♪♪♪♪
    インターホンが鳴った。
    モニターに映っているのはさやかだった。

    「菜、大丈夫なの?」
    ドアを開けると、顔の半分だけを覗かせながらさやかが言った。
    「何ともないけど・・・。ま、入んなよ。」
    「いや、だって、水疱瘡だって聞いたから。」
    「え?ああ。嘘だよ。何、警戒してんの?」
    「嘘なの?私、やってないからさ、水疱瘡。伝染るとヤバイかなぁと思って。」
    「じゃあ何で来るんだ?」
    「だって、心配だから・・・」
    少し顔を赤らめながらドアを閉める姿が、可愛いと思った。

    「適当に座ってて。何か出すから。」
    さやかはちょこんとソファに座り、ノートの束を出した。
    「これ、もうすぐ試験だから。ちゃんと勉強してよ。」
    「はいはい、ありがと。どうぞ。」
    私は缶ビールとクウォーターのワインボトルを置いた。
    「何、これ。どっちもお酒じゃない!」
    「だって冷えてるのこれしかないんだもん。外に買い物に行くのも面倒くさくってさ〜。飲めないんだっけ?」
    「の、飲めるよ!」
    さやかは缶ビールを奪い取って、ゴクゴクっと勢いよく飲んだ。
    「乾杯くらいしなよー。はいカンパイ。」
    私がボトルをラッパ飲みすると、さやかは激しく咳き込んだ。
    「ゴホッゴホッ・・・グラスに注ぐくらい・・・すればぁ?」
    いちいちリアクションが面白く、久しぶりに気持ちが和んだ。

    「だけど、本当に今度の試験頑張らないと、卒業できないよ。」
    チビチビと缶ビールをすすりながら、真面目な顔でさやかが言った。
    「ん〜、別にいいけどねぇ・・・。」
    「ダメだよっ!」
    大きな声に私も、さやか自身も驚いた。
    「何もそんなに熱くならなくたって・・・。前から聞きたかったんだけどさ。何でそんなに心配するの?」
    「だって・・・一緒に卒業・・・したいんだもん。」
    さやかは消え入りそうにそう言って、またゴクっと音を立てて飲んだ。
    少し酔ってきたのか、恥ずかしいのか、さやかは耳まで赤くなっていた。
    当分お客も取っていない上、連日のイライラでストレスも溜まり、その上空腹にワインを流し込んだせいで、私も少し酔い始めていた。
    うつむくさやかの姿が無性に可愛く思えた。

    そして・・・仕掛けた。

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■21085 / ResNo.14)  恋唄   \
□投稿者/ sakura 一般♪(11回)-(2008/08/28(Thu) 00:00:07)
    「優しいなぁ、さやかは。」
    私はさやかの隣に座り直し、パラパラとノートを捲った。
    「じゃ、頑張ってみるか。」
    「ホント?よかった!」
    さやかが嬉しそうに顔を上げた。
    その瞳をじっと見つめると、またさやかは目を伏せた。
    「ちょっと炭酸っぽいのも飲みたいな。さやかの、ちょっとちょうだい。」
    「う、うん。」
    さやかの手から缶ビールを取り、一口飲んだ。
    「私のも、飲んでみる?」
    「ワインのラッパ飲みはちょっとぉ〜・・・。」
    さやかが笑顔になり顔を上げた瞬間、唇を塞いだ。

    コクッ・・・・

    口移しに、さやかに贈ったワインが、さやかの喉を鳴らした。
    ゆっくり唇を離すと、さやかは目を丸くしたまま、固まっていた。
    「ごめん。・・・嫌だった?」
    まだ吐息がかかるほどの至近距離。
    「う・・う・・・ううん・・・。」
    搾り出すようにさやかが答えた。
    「び、びっくりして・・・あの・・・。」
    「嫌じゃない?」
    「う・・・うん・・・だけど・・・。」
    また唇を塞いだ。
    今度はワインの代わりに、さやかは私の舌を受け入れる。
    舌と舌が絡まるとOKの合図。
    すばやく左手の指先がブラウスの上から胸の突起を探る。
    ブラとブラウスが妨げているにも関わらず、その突起はみるみる存在をアピールし始めた。
    そして、徐々にさやかの吐息も荒くなる。
    唇から耳たぶへ、首筋へ私の唇が移動すると同時に、一つ一つブラウスのボタンを外していく。
    鎖骨に舌を這わせ、ブラウスの中に手を入れたとき、また消え入りそうにさやかが言った。
    「ね・・・菜・・・私の事・・・好き・・・?」
    私はそのまま、鎖骨に歯を立てて言った。
    「もちろん。スキだよ。」
    「あっ・・・!」

    その声に私のスイッチが入った。
    少し荒くブラを上にずらし、片方の乳首を片手でコリコリと硬くしながら、もう片方を舌先で転がす。
    時々歯を立ててやると、小型犬のように甘い声で短く吠える。
    さやかは荒くされるのがスキなんだ・・・。
    職業柄、ついつい分析してしまう。
    さやかをソファに横たえさせる。
    ブラウスがはだけ、ずり上げられたブラの下に乳房が露になって、その乳首も唾液に濡れている。
    自分も身に着けたりしている制服が、とても淫らに思えた。
    ミニスカートから覗く太腿の若さが、とても新鮮だった。
    太腿の間に手を滑らせると、その奥はもう、ショーツなど意味のないほどぐっちょりと濡れていた。

    「もうこんなに濡れてる・・・。さやかって意外にエッチだね。」
    「やだっ・・・何でそんな事言うのぉ・・・。」
    泣きそうな顔をしながらも、私の手を拒もうとはしない。
    濡れたショーツの中は、溢れていた。
    下の突起を探ろうにも、ニュルニュルと滑ってしまうほど。
    やっと人差し指と薬指で捕まえて、中指で擦ると、さやかはまた泣きそうな顔で身悶えする。
    「あぁ・・・ああ・・・ん・・・だめ・・ぇ・・・・」
    中指で下の突起を弄りながら、舌先で上の突起を転がす。
    突起をギュッと人差し指と薬指で強く挟み、中指で激しく弾くと、さやかはしがみついてきた。
    「あっあっあっ・・・だっだめ・・・い、いく・・・いっちゃうっ・・・!」
    ピンッと両脚を伸ばし、プルプルと震わせながら、さやかは難なく果てた。

    指だけでいくなんて・・・
    これからが本番だよ・・・

    私の心の声が聞こえたのか、さやかは、また消え入りそうな声で言った。
    「菜のも・・・ちょうだい・・・。」

引用返信/返信 削除キー/
■21086 / ResNo.15)  Re[9]: 恋唄   \
□投稿者/ sara 一般♪(1回)-(2008/08/31(Sun) 16:18:18)
    更新、楽しみにしています。続けてくださいね。
引用返信/返信 削除キー/
■21088 / ResNo.16)  saraさんへ♪
□投稿者/ sakura 一般♪(13回)-(2008/09/01(Mon) 14:16:36)
    読んで頂いてありがとうございます。
    今後ものんびりペースで更新していくので、また読んでください^^
引用返信/返信 削除キー/
■21094 / ResNo.17)  恋唄   ]
□投稿者/ sakura 一般♪(14回)-(2008/09/10(Wed) 00:05:51)
    「んぁ〜あ、疲れたっ」
    私はベッドに倒れこんだ。
    時計を見ると、もう20時をまわっていた。
    5,6時間、休みなくさやかと交わり続けていた事になる。
    泊まりたいと強く切望するさやかを、何とか言いくるめて、やっとさっき帰ってもらった。
    私よりもタフかもしれない・・・。

    さやかと交わって、若い娘に溺れる親父達の気持ちが分かる気がした。
    いつものお客様とは違い、肌にはハリがあり、やはり綺麗だ。
    まだ熟していないところが、イケナイ事をしているようで興奮する。
    私も同い年だけど、それなりに発見する事が多かった。

    さやかとスポーツのようなセックスをして、今までのもやもやが晴れた気がした。
    そうだ。これが私なのだ。
    早速クラブに電話して、明日からまた仕事を始めることにした。
    電話を切るとすぐに、インターホンが鳴った。
    まさか・・・さやかっ?
    恐る恐るモニターを見ると、もっと驚く人が立っていた。

    「久しぶりね〜、元気だった?菜。」
    大きくウエーブした長い髪に、膝上のスカートからすらっと伸びた細い足の中年女性。
    思わず、お客様の名前を探してしまった。
    「久しぶりだね、母さん。」
    父の海外勤務に同行している母親だった。
    同行といっても、その背景にあるものは家族愛でも、夫婦愛でも何でもない。
    「いつ帰国したの?彼氏は?」
    「いやあねぇ、そんな人いないったら。」
    「んじゃ、オトモダチは?」

    最初にパートナーを変えたのは母の方だった。
    自分よりも10歳近く若い男と恋に堕ち、家庭を捨てるつもりだった。
    でも、父の仕事では離婚すると出世ゲームから降りなくてはならず、母の勝手を許す代わりに夫婦でい続けることを約束・・・いや、契約させた。
    父も母どころか家庭に興味はなく、ただただ、自分の人生を自分の為に生きている人なのだ。

    「娘の顔を見に帰ってきたんじゃないの。元気そうで何よりね。」
    「オトモダチと落ち合うまでの暇つぶしもいいけど、帰ってくるなら連絡してよね。」
    「自分の家に帰ってくるんだもの。別にいいじゃない。」
    その声を背中で聞きながら、後ろ手にドアを閉めた。

    ありがと。
    さやかと母さん。
    やっと自分に戻れるよ。
引用返信/返信 削除キー/
■21095 / ResNo.18)  恋唄   XI
□投稿者/ sakura 一般♪(15回)-(2008/09/10(Wed) 00:33:28)
    自分に戻った私は、仕事と学業(?)を精力的にこなした。
    仕事は今までサボっていた分、毎日のように指名が入った。
    学校へ行けば、当然のようにさやかがくっついてくる。
    どうやら、学校へ来るようになったのは、自分に会いに来てくれていると思っているらしい。
    まあ、自分を取り戻せたから、自由に思っていてくれていいんだけど・・・。

    「菜ー、一緒に帰ろうよ♪」
    放課後を心から待っていたさやかが弾む足で教室に入ってきた。
    「あー、ごめん。今日はバイトが入ってるんだよねー。」
    「えー!そうなのー・・・。」
    物凄く残念そう。
    これほど欲望を剥き出しにしても、いやらしく見えないのは、やはり若いからだろうな。
    何だかちょっと可哀想で、可愛くもある。
    「ごめんねー。」
    言いながら、軽くさやかにキスをした。
    嬉しそうにうつむく。
    もう一度キス。
    今度は舌を絡めながら。
    片手で腰を抱き、片手で制服の上から乳房を揉み、片手で教室の外をチェック。
    ブラウスのボタンを一つだけ外し、ダイレクトに硬くなった突起を弄る。
    「ん・・・だ・・・めぇ・・・誰か来ちゃう・・・。」
    そう言いながらも、膝と膝を擦り合わせてもじもじし始める。
    腰を抱いた手をグッと引き寄せ、今度は下の突起を目指す。
    辿り着く前に、ショーツはもうぐっしょりと湿っていた。
    「グチョグチョじゃん。」
    「いじわるぅっ・・・」
    ショーツの脇から中へ入っていき、ヘア越しにジョリジョリと突起を擦ると、さやかの息遣いが荒くなり始めた。
    突起を指で摘んで、グリグリと荒く捏ねると、さやかが私の両腕にしがみついて来た。
    今度は親指で包皮を引っ張り上げ、さやかの欲望と同じように剥き出しになったクリトリスを直接擦る。
    「んっあっあっ・・・うぅんっ・・・はっはんっ・・」
    もっと丁寧に愛撫するのが身上だけど、もう仕事まで時間がない。
    更に荒々しく擦りあげると、さやかは呻き声に似た声を漏らし、立ったまま果てた。

    「もっとしたい・・・。」
    私に抱きついて、息を切らせながらさやかが呟いた。
    若さって・・・・。



引用返信/返信 削除キー/
■21108 / ResNo.19)  恋唄   XV
□投稿者/ sakura 一般♪(16回)-(2008/09/18(Thu) 23:43:51)
    いつものSホテルのバーへ行くと、もうタニグチ様が座っていた。
    「久しぶりね、サイ。長期休暇だったわね。」
    「ご心配おかけして申し訳ありません。」
    「マネージャー、旅行って言ってたけど、海外?」
    「あ・・・、いえ。どこにも。ちょっと体調が・・・。」
    「そう。だけど、体調が悪かったなんてあまり言わない方がいいわ。職業柄、警戒されても困るでしょう。」
    「ハイ・・・。」
    マネージャーも同じ事を言っていた。
    病気だったなんて思われたら、一気に客足が遠のく。
    ただ、タニグチ様には小細工はしたくない。

    「あなたの長期休暇のせいで、ちょっと困ってるのよね。」
    シャンパングラスを口に運びながら、少しニヤついてタニグチ様が言った。
    「何でしょう?」
    「美佐子さん。」
    名前だけ言って、タニグチ様は私を凝視した。
    私の心の底を探っている。
    「み・・・さこさん。・・・がどうかなさったんですか?」
    「彼女、酔いつぶれてしまった事、すごく気にしててね・・・。」
    あの夜の感情が再び押し寄せてきて、胃の辺りが締め付けられた。
    「謝りたいんだけど、クラブに電話しても休暇中だって言うし、避けられてるのかも・・・って。」
    「そんな・・・。」
    「私も、謝る事も避けられてる事もないって言ったんだけど。でも、相当な勇気が要ったみたいよ、あれからクラブに電話するのも。」
    「・・・ハイ。」
    「電話してあげてよ。これ、携帯番号。」
    タニグチ様が試すように、小さな紙切れをテーブルの上に置いた。

    「申し訳ないんですが・・・・。」
    困ったように笑って、その紙切れをそのまま押し戻した。
    「タニグチ様から言っていただけませんか?もうクラブを利用するのはやめた方がいいって・・・。」
    「・・・彼女と何かあったの?」
    「いえ、食事したり、お酒を飲んだり、それだけです。」
    「それなのにどうして?」
    「ああいう方には、手前どものクラブ、ふさわしくないと思うんです。汚れのない、というか、遊びを知らない方には・・・。」
    「ま。それじゃ、私達が汚れてて遊び過ぎって事かしら。」
    タニグチ様はそう言って笑いながら、私のすねの辺りをパンプスの先で蹴った。
    「スミマセン。そう言う訳では・・・。ただ、私も他の方々とタイプが違って、どう扱っていいのか・・・。」
    「正直ね。でも、そこまで私は面倒みきれないわ。自分でなさい。」
    「・・・ハイ。」
    「さ、それ飲んだら行きましょうか。」
    グラスをカウンターに置くと、タニグチ様は先に席を立った。
    足首の締まった、細くて長い足は年齢を感じさせない。

    サイドテーブルのタバコに火をつけ、タニグチ様に渡すと、うつ伏せのまま大きく煙を吸い込み、溜息と一緒に吐き出した。
    「長期休暇で充電したって感じねー。良かったわぁ。」
    「ありがとうございます。タニグチ様にお褒め頂くのが一番嬉しいです。」
    「久しぶりだから、今日は朝までヤってたいけど、行かなくっちゃ。」
    そう言って気だるそうにベッドから起き上がると、タニグチ様はバスローブを羽織った。
    「何かご予定があるんですか?」
    「ええ。彼が来るの。ひと月ぶりかしら。あんまり会ってないから顔を忘れそうだったわ。」
    例の元政治家かな・・・。
    「聞いていいですか?」
    「なあに?帰ってからもヤルのかって?」
    「いえ、どれくらい付き合われてるのかなって・・・。」
    「そうねぇ・・。20年は付き合ってるかしら。奥さんと同じくらいね。」
    「えっ・・・・結婚したいって思わなかったんですか?」
    「結婚する事に意味があるのかしら?これでも現役の頃は、政治のことでも結構相談されたのよ〜。」
    そう言って、タニグチ様はバスルームへ消えてしまった。
    本心だろうか。
    私も、結婚や家族の意味を見出せない。
    もっと話を聞いて見たい気がするが、所詮人の人生だし、無意味だ。

    しかし、タニグチ様って何歳なんだろう・・・。
引用返信/返信 削除キー/

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