ビアンエッセイ♪

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■19538 / 親記事)  TIME ∞ LAG
  
□投稿者/ Y 一般♪(1回)-(2007/07/31(Tue) 04:03:07)
    チクタクチクタク……




    今日も私の腕で静かに時を刻むのは




    あなたからのバトン




    あなたがくれた時間




    あなたの鼓動




    今ここに




    あなたは確かに生きています。




    友達でも




    恋人でも




    家族でもない




    でも




    私は今でもあなたを




    愛してる








    ………愛してた。

    (携帯)
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■19539 / ResNo.1)  - 1 -
□投稿者/ Y 一般♪(2回)-(2007/07/31(Tue) 04:58:08)
    新しい季節に咲誇る花が




    新しい風に吹かれてひとひらずつ舞い上がる




    何もかもが目新しいこの街で




    私だけがまだ
    はじめの一歩を踏み出せずにいた。




    だけど




    2003年 春




    泣けるほど晴れたあの日に




    運命の歯車は
    静かに廻り出してたんだ。




    キーンコーンカーンコーン




    新しい学校に来ても
    この音だけは全国同じ。




    職員室の中の、煙草とコーヒーと紙の匂いが入り混じった、どこか酸っぱいような独特な匂いも…やっぱり同じ。




    『じゃー櫻井さん、行こっか?』




    突然手を取られて
    ハっと我に返る。




    確かにこの人が今まで何か話しかけてきていた様な気はするが………




    誰だっけ。




    ぼーっとしていて、実際この人の話は何も聞いてなかった。




    とりあえず掴まれた手の行方に困っていると
    その人は持っていた手を放し、今度は両手を私の肩に乗せかえ、満面の笑みでこう言った。




    『そんなに緊張せんでも大丈夫!うちのクラスの子達、みーんな良い子やし、櫻井さんが転校してくるのをすごい楽しみにしとったけん!』




    あぁ、この人担任か。
    なんか誤解されてるみたいやけど…まいっか。
    どーでもいいし、めんどくさいし。




    作り笑いくらいならできるだろう。




    『ありがとうございます。』




    少し目を細めてこう返すのが、人見知りの私には精一杯。




    担任の先生は、色白で背が小さく少しぽちゃっとしていて、笑うと目がなるなる可愛らしい人だ。




    私の前をちょこまか歩くその可愛らしい先生は、教室に向かう間も何やら色々と話していたけど、良く喋るなぁ…とか、九州なまりが新鮮やなぁ…とか考えてたら、また話の内容が分からなくなった。




    直さなあかんな、この性格。

    (携帯)
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■19541 / ResNo.2)  - 2 -
□投稿者/ Y 一般♪(3回)-(2007/07/31(Tue) 19:59:27)
    【2-C】


    そう書いてあるプレートの前で先生は止まり、こっちを振り返ってニコっと笑うと、教室の扉を引いた。




    『はいは-い、皆ちゃんと座らんね!
    転校生の櫻井さん紹介してやらんよ〜!!』




    ざわざわしていた教室が静かになる…
    と思いきや、余計に黄色い声が飛び交う。




    『もぉ〜…あんたたちは…;;
    ごめんねぇ〜櫻井さん、入って!』




    教壇から手招きされたので、教室に入ると
    一斉にその場が湧き上がる。




    先生が黒板に私の名前を書き出す。




    さぁ、始まるのはベタベタの自己紹介タイム。




    転校は人生でもう4回目やけど、私はほんまにコレが嫌い。




    はぁ……ダルイ。




    『はい、えっとぉ…今日からA年間同じクラスになる、櫻井 颯(さくらいそう)さんです!
    お家の都合で大阪から…………』




    やっぱりこの人良く喋る。
    まぁでも代わりに喋ってくれて助かった…




    教室を見渡す




    ……………あれ?




    何やろ?この違和感。




    あ、女しかおらん。




    え、ほなココって女子校?




    そういえば、こないだおかんがそんな事ゆーてた様な……?




    その時




    『キクちゃん長いって!!』




    一際大きく甲高い声が教室に響いた。




    ビックリした。




    すると教室には笑いが巻き起こり、先生がごめんごめんと言いながら私の腕に絡みついて




    『それじゃあ、颯ちゃんに喋ってもらいまーす!』




    と、前フリを出した。




    やっぱり私は少し目を細めて




    『よろしくお願いします。』




    と言うのが精一杯。




    『という事で〜す!!
    皆、颯ちゃんが分かんない事は優しく教えてあげてね!
    先生が沢山喋りすぎちゃって颯ちゃんが話す事なくなっちゃったよね;;
    颯ちゃんごめんねぇ〜??』




    もう一度だけ目を細めてあげる。




    ………つか


    【颯ちゃん】って。
    さっきまで【櫻井さん】ゆーてなかった?
    別にえーけど。




    チャイムがなり、朝のHRの終わりを告げる。




    指示された席に着くと、周りにはすぐ人だかりができた。

    (携帯)
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■19542 / ResNo.3)  - 3 -
□投稿者/ Y 一般♪(4回)-(2007/07/31(Tue) 22:04:44)
    ばり綺麗やねぇ!


    顔ちっちゃ〜い!


    ほそーい!




    女の子って褒めたがる。
    なんでやろ?




    私はフランス人の父と日本人の母とのハーフ、らしい。




    【らしい】と言うのは、私が物心のついた時にはもう父はいなかったから。




    確か、出張にいく際の飛行機事故で死んだ…とか、とかおかんが言ってたような。




    あ、そうそう。
    だから背は174cmあるし、色は異様に白いし、髪の毛とか目とかの色素は薄い。




    日本人から見るといわゆる恵まれた容姿らしいが、どーでもいい。




    むしろ、目立ちたくもないのに目についてしまう自分の見た目が嫌いだったりもする。




    次々に湧き起こる質問攻めを適当にかわして、やっと鳴ったチャイムに心で小さくため息をつく。




    眠い。




    この学校で初めての授業は英語。




    幼少時代をニュージーランドで過ごした私にとって、日本の英語の授業なんて必要ない。




    私がついた窓際の席は春の陽射しがあたって、生暖かい風が吹いてきてなかなか気持ち良い。




    机に頭を伏せてみる。




    あ…やば、まじ寝そう。




    そう思った事までは覚えてる。




    ………?
    誰かが私の髪を触ってる。。。?




    そんな気配に気付いて、目が覚めた。




    目だけを開けてみたけど、誰もいない。




    気のせいか。




    そう思ってもう一度目を閉じると、やっぱりまた誰かが私の髪を触っている。




    今度は体を起こすと、前の席に座っていた子がこっちを向いて座ってる。




    『綺麗な髪。』




    え?




    『やなーって思って。』




    いきなりの事で静かに固まっていると、その子は微笑みながら


    『これ、ついとったよ。サクライさん。』


    と、一枚の桜の花びらを私の机に置いて、クルっと前を向き直した。




    開いた窓の外を見ると、校庭には沢山の桜が咲いていた。




    少し風が強くて




    前に座るその子の髪も揺れていた。




    直毛な私の髪とは全然違う




    細くてやわらかそうな
    いかにも女の子らしい髪だった。

    (携帯)
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■19543 / ResNo.4)  - 4 -
□投稿者/ Y 一般♪(5回)-(2007/08/01(Wed) 02:56:25)
    授業が終わると、さっきの子がまたクルっとこっちを向いたかと思うと


    『ねぇ、さっきの桜もらってもいい?』


    と、突然言ってきた。




    いや、別にいいけど
    机の上にはもうさっきの桜の花びらは見当たらなかった。




    『ごめん、どっかいっちゃっ……。』




    そう言いかけた所に
    また強い風に吹かれ、窓から桜の花びらが舞い込み、その子の頭に止まった。




    だから、それを取って




    『これでもいい?』




    と言って渡した。




    その子は子供みたいな笑顔で大きく頷いた。




    『私、かのん。
    沢田 奏音やけん、よろしくね。』




    へんな子。




    苦手な笑顔で軽く会釈を返して、鞄から読みかけの小説を出す。




    あまり人付き合いは得意じゃない。




    人に興味を抱く事もない。




    それなりに男性とも付き合ったりしたけど、依存なんてもっての他。




    いわゆるスキンシップも好きじゃないから、大人っぽく派手に見られがちな見た目とは裏腹に、キスもセックスも好きではなかった。




    求められれば拒む事もないけど、自分から求めた事もない。




    基本、何にも欲がない。




    だからいつも一匹狼キャラやけど、それが楽。




    面倒な事にも巻き込まれないし、干渉もされないから。




    とりあえずこの沢田さんって人ともこれ以上何を話していいかも分からんし、かと言ってどこかに行くにもこの学校の事なんて知らんから、鬱陶しがっているのかと誤解はされるかもしれないが、黙って本を開いて読み始める。




    そうすれば、この子も気まずくなってどこかに行くやろうし……




    …と思ってたのに。
    奏音は黙って動かずにこっちを向いたままこの場を離れない。




    しばらくそんな状況下で読書をしていたが、しびれを切らして奏音を見ると目が合った。




    それだけでも驚いたのに、挙句の果てには




    『どうしたの?』




    なんてニコニコしながら聞いてきた。




    いや、完全にそれこっちの台詞やろ。笑




    『沢田さんこそ、どうしたの?』




    そう返すと




    『沢田さんやけど、かのんだよ。』




    と返ってきた。
    そして、すぐに




    『綺麗な髪やなって思って。』




    と続けた。




    それしか言えへんのかな?
    やっぱり変やわ、この子。(笑)


    (携帯)
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■19544 / ResNo.5)  - 5 -
□投稿者/ Y 一般♪(6回)-(2007/08/01(Wed) 03:41:23)
    今日は午前だけで学校は終わり。




    帰りの支度をしていると、キクちゃんこと担任の菊池先生が私の元に来て


    『颯ちゃん、部活はどうするか決めとる?』

    と聞いてきた。




    小学校から続けてるバスケをしようと決めていたから


    『はい、バスケ部に入ろうと思ってますが。』

    と言うと


    『そっか、じゃあのんちゃんと一緒やね!
    のんちゃん案内してあげてね?』


    と、奏音の頭をぽんっと叩いた。




    この子もバスケ部なんや。
    なんか女の子らしいのに意外やな。




    はーい!と先生に返事をして


    『行こっ、さくら!』


    と手を引っ張られた。




    【さくら】?




    それを言うなら【さくらい】やし、今まであまり名字で呼ばれた事もない。




    部室に向かう途中も、ずっと手は繋がれたまま。




    150cmしかない奏音の歩幅は小さくて、私はいつもの半分位の速度で歩いた。




    呼ばれ方、つっこみたいけど…別にいっか。




    『桜がついてたからさくらね!
    あ、でもさくらいとカケたとかやないけんね!』




    まるで心の声が聞こえてたかのようなタイミングで奏音が私を見上げながら言った。




    なんとなく不安だったのだが、とりあえず身の毛もよだつギャグではなくて良かった。




    『じゃあアレがもし梅の花やったら、私はうめって呼ばれてたん?』


    と聞くと


    『ううん、お梅。』


    と真顔で言われた。




    思わずフっと笑ってしまうと、やっぱり奏音は真顔で


    『いや、梅子かな。』


    と言い直した。




    桜で良かった…




    そうこうしてる内にバスケ部の部室に着いた。




    中に入ると、何人かの部員達が着替えている所で、奏音は皆におはよ〜と言ってその中の1人の所に歩み寄った。




    『あや、こちら転校生の櫻井颯ちゃん。
    今日から部員追加で!』




    すると、笑顔満開で




    『まじで!?
    ばり綺麗やし!!
    てか背ぇ高っっ!!
    うちこれでもキャプテンやけん(笑)
    3年の池田亜也です!ヨロシクね!!』




    さらさらなショートカットでスレンダーな、いかにも女子バスです!みたいな亜也が、いきなりトップのテンションで自己紹介をしてくれた。




    そして、奏音が


    『とりあえず今日は見学でもしていきぃ?』


    と、また手を握って体育館まで連れていかれた。

    (携帯)
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■19545 / ResNo.6)  - 6 -
□投稿者/ Y 一般♪(7回)-(2007/08/01(Wed) 06:11:29)
    意外だと読んだ通り、奏音はバスケ部のプレイヤーではなく、マネージャーだった。




    部員達が着替えて体育館に到着する前に、部活動が円滑に始められる様、奏音の指示でマネージャー陣がテキパキと効率よく準備を進めている。




    女子バスのマネージャーは3年生が2人と2年生が3人の計5人。




    何でこんなにマネージャー多いんかな…?





    そんな疑問が解消されるのはこれから約5分後。




    ゾロゾロと体育館に入って来たプレイヤー陣の数に圧倒される。




    さっきニコニコ挨拶をしてくれた亜也を筆頭に、ざっと40人以上はいそうな大軍隊。




    そういえば、体育館広いし、他の部活が使用する気配もない。




    九州って、そんなにバスケ部が人気なん?


    『全員揃った〜?』


    亜也の問掛けに、ハイ!!っと各々元気のいい返事をする。


    『じゃ〜今日は始める前に、美人新入部員の紹介するけん!
    皆見とれないよーに(笑)』


    こっち来て、という様に手招きをされて亜也の隣に行くと、私より少し背の低い亜也が肩を組んで


    『はい、今日からうちの彼女の〜…って違うね(笑)
    今日2-Cに転校してきた………えーっと…んー……ナントカ颯ちゃんです!!(笑)』


    一斉に部員達が笑って亜也の人望のあつさを物語る。


    『櫻井です。よろしくお願いします。』


    それだけ言って頭を下げると、亜也が始め〜!と言ってウォーミングアップが始まった。




    その様子をぼーっと眺めていると、マネージャーの1人が話しかけてきた。


    『颯ちゃん…やったっけ?
    私は3年の早川まなみ。女子バスのマネージャーリーダーやけん、分かん事があったら何でも聞きぃね?』


    妙に大人っぽいというか、ほんまに高校生?
    っていう位の色気を持ち合わせた人。
    透けるように白い肌と華奢な体で、何故か笑顔がどことなく寂しそうなのがまた大人の女っぽさを強調させる。




    生まれて初めて




    女性に…というか、人にドキっとした瞬間だった。




    そしてこの出会いが、最初で最後であろう私の、命をかけた大恋愛の幕開けだった。

    (携帯)
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■19546 / ResNo.7)  - 7 -
□投稿者/ Y 一般♪(8回)-(2007/08/01(Wed) 07:02:38)
    私の横に立って
    前を向いたまま
    ゆっくりと、静かなトーンでまなみが喋り出す。


    『部員が多くてびっくりしたでしょう?

    うちの高校はバスケが有名やけんね、お陰様で体育館も占領させてもらいよるっちゃけど、その分練習はキツイし、朝練だってどの部活よりも早いし、亜也も普段はあんなんやけどバスケとなったら鬼になるけん、毎年入ってくる沢山の新入生も3ヶ月後には半分残ってたらいい方なんよ…(苦笑)

    見ての通りこの大人数やから、レギュラーになれずじまいで高校生活が終わる子達も沢山おるし。

    今んとこインターハイ7連覇中やけん、亜也も特に自分がキャプテンをつとめる今年は負けるワケにいかん!って意気込んどるみたいでね。

    やけん、練習でキツイ事言われるかもしれんけど、本人も悪気はないけん、颯ちゃんがバスケ好きならやめんでね?』


    遠い目をして、そう一通り話すまなみは、まるで亜也の年上の奥さんみたいやった。




    確かに、経験者から見てこの学校のバスケのレベルが高いのは一目瞭然で、まなみの言うように、亜也も先程とはまるで別人の様に大声で怒鳴ったりもしている。




    ただ、その分ナイスプレーには大袈裟な位褒めちぎっている。




    バスケだと、こういう熱さも苦にならない。




    私の人生で、バスケだけは譲れない。




    唯一、颯が自分の中に熱いものを感じられるのも、バスケをしている時だけだった。




    それでも周りからはクールにプレイしている印象を持たれんねんな。




    『安心して下さい。
    バスケ好きなんで、やめませんよ。
    低血圧なんで、朝は危ういけど。』




    私も前を向いたまま返事をする。




    すると、まなみは顔だけこっちを向いて、ありがとうと微笑んだ。




    時折、亜也がこっちを見てニッコリ笑う。




    女子校は初めてやし、ただでさえ恋とか愛とか良く分かれへん上に、同性同士やけど…




    でもなんとなく




    亜也とまなみがお互いに好意を持ち寄っているのは、分かる気がした。




    ただ、それ以上の事は気にならないし、知りたいとも思わない。




    私には関係ないし




    別に同性愛に偏見もない。




    もう一度言うけど




    私は人に興味がない。




    はず




    やねんけどね。




    あの寂しそうな笑顔の理由が




    ほんの少しだけ、気になったのも事実。

    (携帯)
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■19547 / ResNo.8)  マジおもしろい
□投稿者/ 希深 一般♪(1回)-(2007/08/01(Wed) 07:32:22)
    博多弁のって珍しいけん、読みよったらハマってしまった☆頑張って最後まで続けてください(((^^)

    (携帯)
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■19548 / ResNo.9)  希深さん♪
□投稿者/ Y 一般♪(9回)-(2007/08/01(Wed) 15:23:17)
    コメントありがとうございます(´`●)!
    実は初めての試みなんで、ちゃんと書けてるかかなり不安やったんでめっさ嬉しいですK
    感想や応援を頂けると、やる気倍増です☆
    まだまだ長くなると思いますが、最後まで頑張るので見届けてやって下さい♪
    また感想聞かせて下さいね(*^_^*)

    (携帯)
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