| 数日後
学校や練習にもぼちぼち慣れてきた頃に、腕試しと言って参加させられた3 ON 3で、颯は部員の度肝を抜く事になる。
颯のバスケの腕前は、もう既にプロチームからのスカウトの声がかかる程の実力。
ゲームが終わると、亜也が興奮しながら駆け寄ってきた。
『颯っっ!すごいやん!! うちにバスケ教えて!!(笑)』
昔から、バスケで褒められるのはほんまに嬉しい。
容姿とか、成績とか そんなんは全然何とも思わんけど、バスケだけは素直に嬉しい。
『ありがとうございます。』
自然と顔がほころぶ。
すると、奏音も寄って来て
『さくらバリかっこ良かったばい!!』
と言ってタオルをかけ、冷たいお茶をくれた。
一休みする為に腰を掛け、汗を拭いて束ねていた髪のゴムを解く。
腰ほどにまであるストレートで綺麗な髪がさらっと落ちる
颯の髪は、いわゆるバージンヘアー。
色は元々、程よく明るめな栗色なので染髪はした事がない。 それに、パーマやエクステなんかもした事がないので、毛先ですら全く傷んでなくて、天使の輪がくっきりとある。
『さくらの髪、やっぱ綺麗やね。』
奏音がそう言った時
のんちゃ〜ん!!
と、怪我をした部員が向こうから奏音の事を呼んだ。
『呼ばれてんで、【のんちゃん】。』
麦茶片手に指を差すと
奏音は、丸い目を更に丸くして
『初めてやん!名前呼んでくれたの!』
と照れたように笑って、呼ばれた先に走って行った。
そう言われてみれば 人を呼ぶ時は、大概決まって、なぁ…とか、あのさ…とか。
そもそも自ら話しかける事は滅多にないけど。
せやけど、あんな風に喜ばれたらどこか嬉しい気持ちがしないでもない。
小動物みたいな不思議ちゃんが照れてる所が可愛いかったから、これからはたまに呼んでみよう。
そんな事を、体育館の入口から見える空を見ながら考えていた。
絵に書いたような青と白。
今日は風も弱いから 雲の動きも遅い。
しばらくじーっと見ていると、寝てまいそうになったから
あかんあかん、と軽く頭を振って、冷たい麦茶を一気に飲み干した。
(携帯)
|