| 午前中の授業も、珍しく今日は眠くなくて
奏音が何度も後ろを向いては物珍しそうな顔をして前を向き直す。
意外と多いもんやねんな… 心から笑ってない人。
無理に笑うのは 心配をかけたくないという思いやりがあるから。
それは どんな人でも、どんな場合でも同じだと思う。
でも私からしたら
その人の涙を見るより その人が苦しそうに笑う顔を見た方が悲しくなる。
まなみ先輩も 亜也先輩も
素直な心で話し合えばきっともっと違う【終わり】があると思うのに。
別れという事実は変わらないとしても
あの2人は きっとお互いに一番言いたい事を隠してる気がする。
言葉がなくても通じ合える仲も素晴らしいとは思うけど
やっぱり時には言葉にするのも大事なんやろう。
私が言うのも何やけど
物分かりが良過ぎるのも、考えもんやな。
一番大切なものでさえ失ってしまうから。
窓の外を見ると
この学校に来た時には満開だった桜が、今はもうほとんど散っていて。
風が吹くと、下に落ちていた花びらが一度舞い上がり、またすぐに土の上に戻る。
それを繰り返して
あの花びらは一体どこに行くんだろう。
私達は、何度出会いと別れを繰り返したら
永遠になれるのだろう。
授業が終わり、部室に向かう途中
『今日、一日中ずーっと何考えよったと?』
奏音が隣から見上げて聞いてきた。
『ん〜…多分答えはどこにもない様な事。』
そう、きっと正しい答えなんてない。
『じゃあ。 その答えのヒント、のんが教えてあげる。』
何とも意外な答えに奏音を見下ろした瞬間に
たった一瞬の短いキス。
その後で
『愛だよ、愛♪ 世界の平和に必要なのは愛!』
と言って、スキップしながら【先行ってるね〜】と行ってしまった。
ツカメナイ。
でも、あながち 間違ってはいないかも。
鞄で鳴った携帯を見ると
【受信メール】 差出人:おかん 件名 :無題
本文 :昨日はごめん!やっぱりあんたの中華が一番やわ!今日焼肉行くから早く帰ってきや〜!
埋め合わせのつもりですか?
一番高い肉食ってやる。
(携帯)
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