| 『ほな、行ってくるわ♪ まなみゆっくりして行きや〜?』
と言ってルンルンで出て行くおかんに
わけもわからず
『行ってらっしゃ〜い………?』
と見送るまなみ
『お母さん、こんな時間からどこに行ったと?』
「愛する人の元です。」
『じゃあ、今の私と一緒だ。』
そう言って、背伸びでキスをしてくる。
『ケーキありますけど、食べますか?』
とさっきもらったケーキの箱を開きながら聞くと
『わーい!食べる〜。』
と言って覗きこんできた。
まなみは 苺のタルトとモンブランでしばらく悩み、苺のタルトを選んだ
私は食べる気がなかったのだが
あまりにもまなみが悩んでいたから、モンブランをお皿に乗せてテーブルに運んだ。
幸せそうに食べるまなみ
私もまなみが気を使わないように一口、二口だけモンブランを口に入れて残していたら
案の定
【もう食べんと?】 と、聞かれたので 食べない意思を示すと、勿体ない!とペロっと食べ終えてくれた。
『私ね、実はコーヒー苦手やったっちゃん。』
「そうなんですか?」
『うん、颯がさ、この前海で缶コーヒー買ってきてくれたやん?
あの時から、飲める様になったと。』
「食わず嫌いやったんですかね?」
『ん〜…どうやか?
今でもね、1人じゃ飲みきらんと。
颯がおって、颯の淹れてくれたコーヒーはめっちゃ美味しいし落ち着くのに…
今日、1人で飲んでみたらやっぱりダメやった。。。』
「そうですか。」
『私、颯と一緒なら好き嫌いなくなりそうやね!(笑)』
「良い事じゃないですか。」
『うん、嬉しい♪ ありがとう、颯。』
「いえ、私何もしてませんけど。」
『あと。。』
と何かを言いかけて、下を向くまなみ
まつ毛…長いな。
なんて考えながら、次の言葉を待っていると
『これも…ありがとう。』
と言って、さっき記入して確かテーブルに置いたままにしてあった臓器提供意思カードを差し出す
その目はすごく穏やかで、幸せに満ち溢れていた。
微笑み返して 受け取ったカードを良く見ると、保護者同意記入欄にも署名と捺印がされていた。
……きっと さっきベランダに出てまなみと電話で話してた時にでも書いておいてくれたのだろう。
(携帯)
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