ビアンエッセイ♪

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■19729 / ResNo.20)  あきらサン♪
  
□投稿者/ Y ちょと常連(99回)-(2007/08/09(Thu) 02:43:10)
    ありがとうございます☆

    先輩と付き合ってらっしゃるんですね!
    私も学年時代に付き合っていました(笑)

    あきらさんの幸せを願いつつ、頑張って書き上げようと思います(^O^)



    (携帯)
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■19730 / ResNo.21)  - 77 -
□投稿者/ Y 常連♪(100回)-(2007/08/09(Thu) 03:43:54)
    次の日から




    部活が終わると
    毎日まなみの顔を見に行っている




    いつも大体
    病院に着くのはちょうどまなみの晩ご飯が運ばれてくる時間帯だったので




    できるだけお弁当を持って行って




    私が病院食を食べ
    まなみがお弁当を食べていた。




    バレたら怒られるのは分かっているけど




    そうでもしないと
    まなみは病院食に一口も手を付けないから…




    だから
    なるべく塩分やコレステロールは控えて、栄養バランスを考えたお弁当にしていた




    『これだけが毎日楽しみ♪』




    と言って、毎日お弁当を完食してくれるまなみ




    その笑顔を見ながら、その日一日の出来事をお互いに話す




    バスケの事や




    試験の事




    亜也と結希の事




    毎日メールして
    毎日話してるのに




    一日会えるたった2時間ほどの時間じゃ




    私達には、到底物足りなかった。




    病院に着いた時は


    【ただいま】
    【おかえり】


    病院を出る時は


    【行ってきます】
    【行ってらっしゃい】


    そして、寝る前には


    【また、明日】


    そう交わすのが、私達の習慣になっていた。




    まなみいわく、それは




    【合言葉】


    ではなくて


    【愛言葉】


    らしい。




    最近は、まなみの体調も安定していて




    いよいよ何もする事ができない病院生活がつまらなくて仕方がないようだ。




    ある日
    面会の帰り道で、後ろから【櫻井さん】と声を掛けられたので




    振り返ってみると、そこにいたのはナースの清水さんだった。


    『今、帰り?』


    「はい。清水さんもですか?」


    『そうだよ。』


    「お疲れ様です。」


    『ありがとう。
    櫻井さんこそ、毎日大変でしょ?えらいね。』


    「全然大変じゃないですし、偉くもないですよ。

    私がまなみ先輩に会いたいから来てるだけですから。」


    『そっか(笑)

    いいなぁ〜まなみちゃんはこんなに愛されとって。
    やけんきっと最近すこぶる調子がいいんやね♪』


    「このまま調子がよければ…
    退院とかってできないものなんですかね?」


    『退院は…難しかろうね。』


    「じゃあ…せめて、外泊許可とか無理ですか?」


    『ん〜…先生に聞いてみらんと分からんけど、なんで?
    どっか一緒に行きたい所があると?』




    (携帯)
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■19731 / ResNo.22)  - 78 -
□投稿者/ Y 常連♪(101回)-(2007/08/09(Thu) 04:36:28)
    『ハワイ。』


    「……ハワイ!?」


    『…と本当は言いたい所なんですが、遠出なんて出来なくてもいいんです。』


    「え…?」


    『ただ、普通に同じご飯を食べて

    同じお風呂に入って

    同じベットで眠って…

    それだけでいいんです。』


    「そっか…
    うん、分かった。

    櫻井さんの元になら安心して帰せるし、今のまなみちゃんなら大丈夫な気がするけん明日先生に相談してみちゃ〜ね!

    そしたらメールするけん、アドレス教えて?

    どうせならまなみちゃんには内緒にして、喜ばせてあげよ♪」


    『ありがとうございます!』


    それから番号とアドレスを交換して別れた。




    もう6月も半ばになると、だいぶ日が長くなってきていて




    入院当初の帰り道とはまるで違う道のように感じる




    明日のお弁当何にしよっかな……




    と考えていたら
    帰り道恒例、まなみからのメールが届く




    【受信メール】
    差出人:早川 まなみ
    件名 :(*゜ω ゜*)

    本文 :明日のお弁当は中華希望☆(笑)








    ……でたよ、エスパー。




    【送信メール】
    宛名:早川 まなみ
    件名:Re;(*゜ω ゜*)

    本文:了解。お楽しみに。
    明日は部活休みなんで、早く帰れますよ。
    いい子にしてて下さい。




    【受信メール】
    差出人:早川 まなみ
    件名 :わ〜い♪
    本文 :良い子で待ってるワン(´`●)*・。゜★




    可愛いな。




    家の下で、偶然おかんと鉢合わせて




    今日はそのまま外食をする事になった




    おかんがエスニック料理が食べたい♪と言い出したのだが、土地勘がない私達は一体何処に行けばいいのやら………




    おかんが森田さんに電話して聞いてみたが、どうやら知らなかった様で、断念して電話を切るおかん。




    仕方ないから私が学校の友達に聞け、という事に……




    10代が知ってるか?
    普通…………。




    それでも一応電話をしてみる




    プルルルル……




    プルルルル……




    プル…ッ


    『はい…。』


    「あ、もしもし奏音?
    颯やけど。」


    『……………さくらぁ。。。』


    突然電話越しで泣き出されて、少し…焦る。


    「………もしもし?
    どしてん?」


    問い掛けても
    ひたすら泣き声が聞こえるだけ。


    【おかん、ごめん。
    ご飯森田さんと行って。】

    (携帯)
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■19732 / ResNo.23)  - 79 -
□投稿者/ Y 常連♪(102回)-(2007/08/09(Thu) 06:39:32)
    おかんは何かを悟って


    【おっけ〜♪】


    と笑って、背中を両手で押してくれた




    『奏音、今どこにおんねん?
    それだけ教えて。』


    と聞くと
    蚊の鳴くような声で


    『………体育館。』


    と返ってきた




    時間はもう20時を過ぎようとしている




    『分かった、ちょい待っててな。』


    そう言い残して電話を切ると、ダッシュで駅まで走って電車に飛び乗る




    学校には着いたが、門はもう閉じられていて




    それを飛び越えて中に入り、体育館へ直行すると




    入口の重い扉の前にある階段の一番上に
    人がうずくまっている様な影が見えた




    近付くと、それは間違いなく呆然と体育座りをして小さくなっている奏音で




    『奏音。』


    と、頭にそっと手を置くと




    奏音は私を見るでもなく
    自分の膝に頭を沈めて、大きく肩を揺らしながら再び泣きじゃくり出した




    私は、奏音が座っている一つ下の段に腰をかけて




    右後ろからする奏音の泣き声を聞きながら、白い三日月を見ていた。




    星はない




    薄い雲が月にかかっては消えていく




    『さくら…。』


    「んー?」


    『さくらは知っとったん…?』


    「亜也先輩とゆう先輩のこと?」


    『…知ってたんやね。』


    「うん、ごめん。」


    『ううん……

    自分で知れて良かった…ありがとう。

    あ〜ぁ…何かどっか行きたいな。』


    「奏音。」


    『……なん?』


    「お腹すいたやろ。
    何が食べたい?」


    『んー…卵。』




    たまご………って。




    『うちくる?
    卵あるよ。』


    「行く。」


    と言って階段をかけ降りる奏音




    私も立ち上がってお尻を払い、ゆっくりと後を付いていく。




    正門の所で
    ピョンピョン飛び跳ねている奏音


    『何してんの?』


    と聞くと


    『門閉められちゃってる!
    どうしよ、さくら…っ!!』


    と焦っている。




    私の肩程まである門は
    奏音の身長よりも高い。




    私は奏音を後ろから抱き上げて、一度門の上に座らせると


    【ちょっと待ってて】


    と言って、門を飛び越え
    今度は奏音を下で受け止める為に手を伸ばす。


    『さくらカッコイ〜♪』


    と抱き付いてくる奏音。


    地面に降ろすと


    『さくらっ、おんぶ!!』


    と言って、私が返事をする前に背中に飛び乗ってきた。

    (携帯)
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■19733 / ResNo.24)  - 80 -
□投稿者/ Y 常連♪(103回)-(2007/08/09(Thu) 11:25:41)
    『重いねんけど。』


    「最近食べ過ぎで太ったけんね〜♪

    てか、颯が細すぎとって!!

    今何キロなん?!」


    『さあ?

    でも身長デカイから細長く見られるけど、55キロ位はあんで。』


    「55キロ〜!?
    身長は??」


    『174位ちゃう?

    そう言えば今年の身体測定の結果見てへんかったわー。

    去年は174やった。』


    「ありえん!!
    そのバランスはありえんけん!!!」


    『ありえてるやん。

    私がそうやねんから。』


    「……本当やね(笑)」


    『つか、そろそろ降りようや。』


    「いやだ!

    ねぇ、まなみ先輩…具合どうなん?」


    『ん?最近絶好調。』


    「良かった。。

    私、なんやかんやでお見舞い行けてないけんね〜……今度の週末行こうかいな!」


    『喜ぶんちゃう?』


    「何持って行こっかな〜♪
    和菓子?洋菓子?
    ん〜それとも……」


    もー分かったから




    降りろや、小娘




    いえ




    降りて下さい、お嬢様




    結局学校から駅までずっと
    私はおぶらされ続け




    家に着くと
    食べたいと言われた卵料理を、全8品も作らされた。




    その全てを


    【いや〜…泣いたらお腹空くよね〜!】


    と綺麗に平らげて




    食後のコーヒーには
    ミルクと砂糖を山の様に入れている




    この子、栄養過多にも程がある……




    まぁ…今日はいっか。




    笑えるなら




    いくらでもどーぞ




    細かい事は




    話したくなれば
    自分で話してくるやろう




    だから今は敢えて聞かない




    話したくなったら
    その時は何時間でも聞いたるよ




    卵ばっかりのヤケ食いには付き合えへんけど。




    奏音を駅まで送ってから家への帰り道




    まなみの顔を思い浮かべていた




    まなみの声を思い出していた




    早く明日になればいいのに




    会いたいな。




    外泊許可が出たら




    好きな物を何でも作って食べさせてあげよう




    好きな事を何でもさせて沢山笑わせてあげよう




    沢山抱き合って




    飽きるほどキスをして




    耳にタコができる位
    愛してると伝えよう




    空を見上げると




    さっきは
    頼りなさげに見えた三日月が




    今は
    私に射す一筋の希望の光に見えた。






    (携帯)
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■19734 / ResNo.25)  - 81 -
□投稿者/ Y 常連♪(104回)-(2007/08/09(Thu) 23:03:55)
    次の日の昼休み




    清水さんからメールが届いた




    【受信メール】
    差出人:清水さん
    件名 :無題

    本文 :こんにちは。がいはくのけん、かくにんしました。おっけーでしたよ。よかったですね。とどけは、いつのひづけでだしますか?




    全部、ひらがなで読みづらい…




    でも結果オーライ。




    やった♪




    【送信メール】
    宛名:清水さん
    件名:Re;

    本文:こんにちは。
    本当ですか?
    ありがとうございます。
    日付は、もし金曜〜月曜が可能であれば、それが希望です!!




    せっかくなら、三泊四日位はほしいもんな。




    【受信メール】
    差出人:清水さん
    件名 :無題

    本文 :分かりました。許可証の発行をしてもらっておきます。




    ………なんや、漢字変換できるんやんけ




    ううん、とにかく感謝や。




    許可証が出たらすぐに言うたるべき?




    それとも当日まで黙っとくべき?




    どちらにせよ
    伝えた時のまなみの眩しい笑顔が思い浮かぶ。




    いつも部活の事を聞いてきては
    試合が見たいなぁ〜…とぼやいているまなみ




    今週末には、ちょうど練習試合があるし




    私もスタメン出場する予定やから気合いが入るな……♪




    あれこれ考えていると


    『さくら?

    なんぼーっとしよると?』


    と奏音が話しかけてきた


    『別に。』


    と返すと


    『嘘!!

    もぉ〜…ノンの話聞いとった!?』


    ………………話?


    『……何やっけ?』


    申し訳ないけど
    全っ然聞いてない。


    『やっぱりぃ!

    また1から〜??

    やーけーんー、部活!
    ノン、部活やめようかと思いよーっちゃん……。』


    「なんで?」


    『家、手伝わないかんけん。』


    「奏音の家って自営業やったん?」


    『呆れた〜!!
    その話ならさくらが引っ越してきてすぐの頃したやん!!
    うちは呉服店やってる〜って。』


    「へ〜…そうなんや。
    で?なんで手伝わなあかんの?」


    『おばあちゃんが倒れちゃって。
    お母さん1人じゃお店回せんけん手伝って、って今朝言われたんよ。

    そうなると部活やめないかんくなるし、絶対嫌やって思いよったけど…なんか、昨日の事も神様の思し召しやったんかな…とか考えよったらだんだんその方がいい気がしてきてさ。』


    「ふーん。」


    『………それだけっ!?』

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19735 / ResNo.26)  - 82 -
□投稿者/ Y 常連♪(105回)-(2007/08/10(Fri) 04:30:46)
    『もうえぇの?先輩は。』


    「好きだよ。
    好きやけど、ノンじゃ先輩をあんな幸せそうな顔にはしてあげれんもん。」


    『そっか。

    ま…奏音の思うようにしたらいいんちゃう?』


    「さくらはノンが部活やめたら寂しくないん??」


    『部活やめてもこーやって毎日会うやん。』


    「そうやけど〜…。」


    『引き止めてほしい?』


    「そんなんじゃないもん。」


    『インターハイまでは、おったらいいのに。

    私はおってほしいけど。』


    「……やっぱりそう思う!?(笑)
    うん、じゃーそうする!!!」


    ………寂しがってるのはあなたじゃないですか。




    ま、でも
    こう見えて奏音はバスケ部の中で皆の妹的存在やったりするし




    こいつがやめたら寂しがる部員もおるやろう




    誰だって




    自分の存在意義を確かめたくなる時はある




    上手く伝わったかは分からないけど




    私にとっては精一杯の言葉だった。




    ちょうど週の真ん中にあたる水曜日の午後




    教室に響く教師の声にも全く覇気がない




    桜が満開だったこの窓から見える景色も随分と変わって




    体育を見学しながら私に手を振るまなみが座っていた大きな木の下には




    青々とした雑草が生い茂っていた




    学校が終わると
    一度家に帰り、リクエストの中華弁当を作って病院に向かう




    今日は病室に行く前に
    ナースセンターで清水さんから外泊許可証を受け取って




    それを手にした瞬間
    私はもう明後日からの三日間をどう過ごそうかで頭がいっぱいになった




    ノックをするのも忘れて


    『ただいまー。』


    と、いつもより勢い良く病室のドアを開けると




    そこには楽しそうに話す亜也とまなみの姿があって




    一瞬、時間が止まったような気がした




    まなみの【おかえり】を聞く前に


    『よっ、ディゾン♪
    つーか【ただいま】って何なん?!(笑)』


    と、一番に口を開いたのは亜也。




    私が返事をする前に




    『おかえり、颯。

    これ私達のアイコトバっちゃんね〜?』




    と首を傾けながら私を見るまなみ。




    ………………




    ある事に気付き




    心臓を鈍器で殴られた様な気分になる




    私は結局どちらにも返事をしないまま




    お弁当だけを置いて


    【また来ます】


    と、病室を後にした。

    (携帯)
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■19740 / ResNo.27)  - 83 -
□投稿者/ Y 常連♪(106回)-(2007/08/10(Fri) 08:38:20)
    【颯…!?】
    と引き止める声も




    今の私には意味を持たなかった




    ちゃんと聞こえてた




    聞こえてたけど
    聞こえないフリをしてん。




    病院を少しでも早く離れたくて




    いつもは
    また明日会える事を楽しみに、まなみを思い浮かべてぼちぼち歩く帰り道を




    今日は病院前に来たバスに
    なりふり構わず乗込んだ。




    一番後ろの窓際に座ると




    静かに鼻で深呼吸をする




    まなみからもらった時計をつけている左腕が
    やけに重く感じた




    多分、これは私が初めて感じた【嫉妬心】




    こんなに…
    胸を突くものだとは思ってなかった。




    今まで
    まなみと過ごしてきたどんな幸せな瞬間も




    2人で抱き合って泣いたどんなに苦しい瞬間も




    まなみの首に
    肌身離さずつけられていた、シルバークロスの細いネックレス




    さっき見た亜也の首元にも




    それと全く同じモノが光っていた。




    確かに2人の首で、仲良さげに揺れていたんだ。




    まだ…あの2人は……。。。








    私、1人で舞い上がってただけなんかな…




    亜也の代わりにそばにおるだけなんかな…




    違うよな……?




    誰か、違うって言って。




    行き先も確認せずに乗ったバスなのに




    気がつけば終点で着いたのは福岡タワーの下だった




    私はそのまま家には帰らずに




    海へと足を運んで




    初めてまなみとキスをした場所に座った。




    何をするわけでもなく




    何を考えるわけでもなく




    泣くでも
    笑うでもなく




    ただ海を眺めていた。



    空が曇ってきて




    海は藍色が濃くなってく




    さっきからずっと携帯のバイブが鳴っているけど




    今は、誰とも話したくなかった




    でも
    何も言わずに出てきてしまったから、まなみは訳も分からず不安がってるかもしれない




    体調が悪化したりしたらあかんから
    メール位は送るべきかな




    携帯を開くと
    沢山の不在着信と未読メールがあった




    全てがまなみからのもので




    10通以上にも及ぶメールを読むと




    まなみがパニックを起こしているのが良く分かった。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19741 / ResNo.28)  - 84 -
□投稿者/ Y 常連♪(107回)-(2007/08/10(Fri) 11:07:43)
    【どうしたと?!】


    【私なんかしちゃった…??
    亜也も気にしとるよ。。】


    【颯…?連絡して……】


    【何で電話出てくれんと……?】


    【お願い颯…答えて。】


    【颯がいなくなっちゃうのは絶対嫌だよ……。】


    【会いたい。】


    【颯………】


    読んでいるうちに




    ぽつり、ぽつりと




    雨が降り始めた。




    そして、私は




    【送信メール】
    宛名:早川 まなみ
    件名:無題

    本文:何も言わずに帰ってごめんなさい。
    体調は大丈夫ですか?
    先輩に聞きたい事があります。
    明日一日考えて、明後日部活が終わったら会いに行きます。




    少し、冷静になれる時間が欲しかった




    まなみの話もちゃんと聞けるように。




    夕立はどんどんひどくなり




    家に着く頃には
    ずぶ濡れだった。




    いつもより少し長めにお風呂に浸かって体を温める




    あがって煙草を吸おうとベランダに出て
    携帯を見ると、まなみからの返信メールがきていた




    【受信メール】
    差出人:早川 まなみ
    件名 :分かった…

    本文 :沢山連絡してごめんね……

    何で颯を傷つけてしまったかは分からないけど、私は颯を信じてる。

    やけん…颯にも私を信じていて欲しいよ。

    明後日、待っとるけん。




    私なんかより何倍も辛くて




    何倍も真剣に生きているまなみが




    こんなに真剣に向き合ってくれているというのに




    私はなんていう事をしてしまったんやろう。




    【逃げる】のは




    一番嫌いだったはずなのに




    真実を明らかにもしないまま
    好きな人1人信じられないで…




    何が【愛してる】だ




    自分のお子様加減に
    ほとほと呆れる




    一分一秒を大切にしようと決めていたのに。




    時刻は面会時間をとうに過ぎている




    でも、今じゃないと
    意味がない




    部屋着で
    髪も濡れたまま




    私は家を飛び出して
    タクシーに飛び乗った。




    病院に着くと
    救急の入口から入って病棟に向かう




    幸い
    ナースセンターには誰もいなかったので
    病室の前まで来るのは、案外容易だった。




    そっと…ドアを引く。




    個室だけど
    夜眠る時は、ベットの周りのカーテンは閉めているようだ




    まなみは
    入って来たのがナースだと思ったのか、何も言わない。

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19742 / ResNo.29)  - 85 -
□投稿者/ Y 常連♪(108回)-(2007/08/10(Fri) 12:21:29)
    少しだけ開けられていた窓から入った弱い風が




    カーテンを微かに揺らす




    静かな時間が流れる―………




    雨は、やんでいた。




    『先輩。』




    カーテン越しに、小さな声で呼び掛けてみる




    『………………颯……?』


    「はい。」


    『どうやって…?

    てか、こんな時間にどうしたと?!』


    「忍び込んじゃいました。」


    『………なんで?』


    「先輩…
    今日はごめんなさい。

    私が先輩を不安にさせてる場合じゃないのに。」


    『な…んで…、帰っちゃったの……っ…?』


    「先輩、ひとつだけ答えて下さい。

    正直に…です。

    その答えがどうであっても、私は先輩の言葉だけを信じて受け入れますから。

    先輩は………

    まだ亜也先輩の事が好きですか?」


    『………え?』


    「私、今日気付いてしまったんです。

    2人が同じネックレスをつけている事。」


    『まさか………

    颯…それで?』


    「はい…
    大人気ないですが。」


    『颯。

    私が今愛しとるのは、紛れもなく颯だけよ?

    亜也の代わりなんかじゃないし、寂しいけん颯とおるわけでもない。

    でもね、隠し事はナシって約束しとったのに…

    私、颯にひとつだけ言ってない事があったっちゃん。』


    「……なんですか?」


    『去年、親友が亡くなったと。

    この間連れていった、私のお墓から見えるあの海でね…。

    その子は静香っていう子で

    静香と亜也と私は
    静香だけがバスケ部じゃないにせよ、それ以外は一年生の時からいつも3人一緒やった。

    静香は、世界大会でも入賞してしまう程サーフィンが上手くてね
    常にサーフィンの事しか考えてない様な子でさ…

    よく3人で出掛けたりもしたし、亜也は静香にサーフィンを教えてもらっとったりして…

    このネックレスはね、初めて皆で遊びに行った時に3人お揃いで買ったモノっちゃん。

    ずっと仲良しでおろうね、って…

    子供みたいやけど、私達3人は本当にいっつも肌身離さずつけとった。

    去年の私達のインターハイ準決勝の日、静香は【今日の波は日本じゃ10年に一度くらいしかお目にかかれない】とか言って、1人で夜明けからあの海に行ったんよ。

    でも、途中で天気が崩れて…

    試合後に私達が聞かされたのは、静香が波に流されて行方不明だって事やった。

    何かの間違いやと思った。

    でも私達はとにかくすぐにあの海へ向かって




    (携帯)
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