ビアンエッセイ♪

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■19871 / ResNo.50)  - 98 -
  
□投稿者/ Y 常連♪(125回)-(2007/08/23(Thu) 20:00:24)
    穏やかな時間が流れる




    私は抱き合ったままで、色んな話をした。




    おかんが妊娠した事




    独り暮らしをする事




    ハワイの美味しいドーナツショップや、綺麗な海の話




    インターハイでレギュラーに選ばれた事




    奏音が異常な量の卵を食べる事




    他にも、色々……




    まなみはどれも真剣に聞いてくれて
    大袈裟な程のリアクションを見せながら


    『じゃあ、私が退院したら颯のお嫁さんになって2人で一緒に暮らしたいなぁ…♪』


    なんて冗談めかしながらぼやいている。


    『そうしましょう。』


    「え?」


    『一緒に暮らしましょう、先輩。』


    「……それ、プロポーズ?」


    『言葉にするのなら、そうかもしれません。

    でも
    籍なんて、そんな紙一枚の誓約なんて私達には必要ないでしょう?

    先輩がいて、私がいて。

    それが大事な事でしょう?』


    「……ん。そやね。。

    ありがとう…。」


    『今度、指輪見に行きましょうね。』


    「うん…っ!!」


    果たして




    この日の事が、まなみの生きる力になったのか




    逆に傷付けてしまったのか




    それはまなみにしか分からない。




    だけど
    幸せそうに笑うまなみの笑顔は




    今日で一番輝いて見えたのは確かだった。




    今日のまなみは
    良く咳込んでいる




    その度に私は
    華奢な背中を擦りながら抱き締める力を少しだけ強める。




    まなみの心が
    小刻みに震えているのが伝わってきたから…




    無言の空間に




    溢れんばかりの愛情が漂っている




    何故か泣きそうになったのは




    愛しくて




    愛しくて




    たまらなかったから。


    『先輩、どこにも行かないで下さい。

    お願いです…

    独りにしないで下さい。』


    口をついて出た言葉は
    初めて吐いた弱音だった。




    私が弱気でいちゃいけない、って




    不安にさせちゃいけない、って




    抑えてたものが
    堪えきれなくなってしまったんだ。




    まなみは
    私の頭を胸に抱き寄せて


    「どっこも行かんよ。

    颯のそばで生きる。

    約束するけん…。」


    そう言って
    私の髪を撫でる。




    私は無償にまなみをより近くに感じたくなって




    頭を上げ
    まなみの小さな顔を両手で包んでキスをした




    深く、熱く
    長いキスだった。

    (携帯)
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■19875 / ResNo.51)  - 99 -
□投稿者/ Y 常連♪(126回)-(2007/08/23(Thu) 23:51:34)
    温かい時間の中




    まなみが
    突然激しく咳込みだす。




    私の首に回していた手は
    苦しそうな自分の胸を抑えて




    息はどんどん上がり




    私の腕の中に倒れ込むまなみ…




    『先輩っ…!?』


    突然の事で一瞬動揺してしまったが




    ここは病院。




    無理矢理
    自分を冷静ぶらせて




    枕元にあるナースコールを激しく何度も押した




    【はーい?
    早川さんどうしましたー?】




    その看護師に対して
    私が何て答えたのかは覚えていない。




    とにかく私は
    苦しくてのた打ち回るまなみの名前を呼び続けて




    私の腕を物凄い力で
    必死に掴むまなみの左手を上から握りしめていた。


    『先輩、大丈夫ですからね。

    すぐに楽になりますから。

    私もここにいますから。

    大丈夫ですよ。』


    まなみからの返答はない




    その代わりに




    苦しそうな息と
    小さい悲鳴の様な声だけが、狭い病室にこだまする。




    駆け込んできた医師と看護師が
    手際良くまなみに酸素マスクをつけたかと思うと




    色々な機械にまなみを繋いでいく




    私は
    自分の心臓の音が頭に響いてきて




    『ちょっと離れていて下さい!』


    と、看護師さんが軽く私の肩を引いただけで




    そのまま床に座り込んでしまった。




    医師や看護師が何度もまなみに呼び掛ける声も




    注射を打ったり血圧を計る姿も




    全てスローモーションの様に聞こえたり見えたりする




    何もできないまま
    その場から動く事すらできない。




    次に病室に駆け込んできたのは




    大急ぎでストレッチャーを運び込んできた清水ナースだった。


    『櫻井さん!?
    どうしたの?大丈夫?!』


    そう言って私の肩を持ち、ベット脇の丸椅子に座らせて


    『大丈夫やけんね。

    ここで待っとってあげてくれる?』


    私の両肩に手を乗せて
    同じ目線までしゃがんでそう言う清水さん




    言葉さえ出せない私は
    首を縦に振るのが精一杯だった。




    ナース2人がかりで
    まなみをベットからストレッチャーに乗せ替え、部屋を出る




    運ばれていくまなみは




    もう激しく息をするでも、何かを必死に掴むでもなく




    ただ
    ぐったりとしていた。




    しばらく
    心臓は高鳴ったままで




    おさまってきたかと思うと、体中が震えてきた。

    (携帯)
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■19877 / ResNo.52)  - 100 -
□投稿者/ Y 常連♪(127回)-(2007/08/24(Fri) 02:04:31)
    私は
    まなみからもらった時計を握りしめて




    ついさっきまで見ていたまなみのあどけない笑顔を思い浮かべていた。




    その度にさっきの悶絶した表情がかき消していったけど




    何度も




    何度でも




    私は必死に思い出した。




    大丈夫や。。
    落ち着け、私……




    まなみがどこに連れて行かれたのかも




    あれからどの位の時間が経っているのかも




    私が今
    何を考えているのかも




    何も分からない。




    ふと




    看護師が外していった、まなみの腕についていた時計が目に入る。




    ベットの上に放り出されるようにあったそれが




    すごく無機質に見えて
    心がまたざわついた。




    それを手に取って




    二つ並べるように私の腕につけた。




    そんなに変わらないはずなのに




    一気に腕がズシっと重くなり




    これが命の尊さなのかな、とすら思えてくる。




    まさに神頼み




    まったく
    こんな時にだけ存在を思い出して頼ろうとするなんて




    都合がいいにも程がある……




    そんな事は分かっている。




    だけど
    今の私にはそれ位しか出来ない…




    ほんま、情けない。




    でも
    今はそんな自分を嘆くより他に、なんとかまなみの無事を祈る事が先決だ。




    その為なら
    何だってする




    いや
    何だってさせてほしい




    しばらくすると
    病院から連絡がいったのか




    息を切らした結希が入って来た。


    『ゆう先輩…。』


    まなみがベットにいない事が分かり
    結希の顔から、一瞬にして血の気が引いていくのが分かった。


    『ねーちゃんは!?』


    「どこかへ運ばれて行きました。

    清水さんにここで待つよう言われて……。」


    『………そっか。』


    結希は大きく静かに深呼吸をして
    ゆっくり私の方に近付いてくる


    『一人で怖かったやろう……。』


    そう言って
    私の肩に乗せられた結希の手も震えていた。




    少しすると
    また違う女性が入ってきて


    『ゆう!まなは?!』


    「落ち着いて、お母さん。
    ねーちゃんは今処置してもらっとるみたいやけん。」


    まなみのお母さん…




    初めて会った。




    若くて、可愛らしくて
    まるで少女か人形のような人




    小さくて、華奢で、色白な所はまなみそっくりだ。






    (携帯)
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■19878 / ResNo.53)  一回お休み♪
□投稿者/ Y 常連♪(128回)-(2007/08/24(Fri) 02:45:38)
    いやぁ〜……

    最近アップできてなかったので…
    以前読んで下さってた方がもう見てくれていないかもしれないですね……m(_ _)m

    しかもマンネリ化していないか心配ですっ…;;

    まさか自分でもこんなに長編になるとは思っていませんでした。°・(>_<)・°。

    ですが…まだまだ終わりそうもありません(笑)

    どうか、最後まで暖かく見守って頂ければ幸いです(;_;)!!

    夏も終わりに近付いていますが、まだまだ暑い日が続いています。
    皆様も体調にはくれぐれもお気をつけて、残り少ない夏を楽しんで下さい♪

    ではでは…(*^_^*)



    Y

    (携帯)
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■19882 / ResNo.54)  NO TITLE
□投稿者/ あ 一般♪(6回)-(2007/08/24(Fri) 05:20:59)
    更新されてないか、毎日見てますよ(^O^)
    こちらに何度も書くと邪魔してしまうと思って控えてましたが、
    いつも楽しみにしてます。
    続きの更新頑張ってくださいp(*^-^*)q

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19884 / ResNo.55)  NO TITLE
□投稿者/ れん 一般♪(7回)-(2007/08/24(Fri) 10:59:12)
    2007/08/24(Fri) 11:21:16 編集(投稿者)

    いやいや、毎日拝見させてもらってます(≧∇≦)
    なんせ、Yさんの一ファンですから!!

    っていっても、私の事分からないかも(ρ_;)


    体だけには気をつけて無理しないで下さいね。

    更新はゆっくりでも、してくれたら嬉しいですo(^-^)o

引用返信/返信 削除キー/
■19885 / ResNo.56)  (^^)v
□投稿者/ 美紀 一般♪(2回)-(2007/08/24(Fri) 11:00:23)
    お久しぶりです
    毎日のように楽しみにしています♪♪
    読まないと一日が始まらないような気がして‥(笑)毎日読んでます(*^_^*)

    ゆっくりでいいので、またの更新を待ってます♪

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19887 / ResNo.57)  (*^_^*)
□投稿者/ Y 常連♪(129回)-(2007/08/24(Fri) 13:21:43)
    あサン♪

    ありがとうございます☆
    良かったです!!
    声を頂けるのはとても嬉しい事です♪
    駄文ですが、これからも宜しくお願いします!


    れんサン♪
    お久し振りです(^^)
    れんサンの事はもちろん覚えてますよ!
    一ファンだなんて…照れます(・_*)(笑)
    完結まで頑張って書き上げますので宜しくお願いします♪


    美紀サン♪

    ありがとうございます(*^_^*)♪
    見てもらえていると分かって、やる気はMAXです☆
    美紀サンの一日が始まるにふさわしいような文は書けていないかもしれませんが…(笑)
    最後まで頑張りますので宜しくお願いします☆



    Y

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■19890 / ResNo.58)  - 101 -
□投稿者/ Y 常連♪(130回)-(2007/08/24(Fri) 14:12:37)
    私は立ち上がって
    深々と頭を下げた。


    『初めまして。

    まなみ先輩のバスケ部の後輩で、櫻井 颯と申します。

    いつも、まなみ先輩やゆう先輩にはお世話になっております。』


    そう言って顔を上げると




    まなみの母も頭を下げて


    『いえいえ、こちらこそいつもまなみがお世話になってます。

    颯ちゃんのお話は、まなみから良く聞いとったんやけど、なかなかすれ違いで会えんくて、お礼が遅れてごめんね…?

    本当に毎日毎日ありがとう。』


    と、柔らかい物腰と笑顔で挨拶を返してくれた。




    全身から優しさが滲み出ているかのような人。




    今なんて特に
    笑顔を作れるような心境じゃないやろうに……


    『とんでもないです。』


    そう言うと
    丸椅子をもう一つ出して、私の隣に置き、座る様に仕草で誘導した。




    結希は
    靴を脱ぎ、ベットの上であぐらをかいている。




    沈黙が続く―




    『颯ちゃん…?』


    一番に口を開いたのはお母さんだった


    『はい…?』


    「二人が、お互いに好意を持ってる事は…

    まなみから聞いとるんやけど。

    颯ちゃんに、もしかしたら無理させてしまってるんじゃないかと思って…ずっと気にかかってたんよ。」


    『無理……?』


    「えぇ…。

    あの子の病気の事知って…傷付けないようにそばにいてくれとるんやないかな。って…。

    同性同士なわけだし、まなみの方から好きになったって聞いているから…。」


    『違います!』


    私があまりに大きな声を出したので
    お母さんも結希も目を丸めてビックリしてる。


    『あ…大きい声を出してごめんなさい。

    でも、それはあまりに的違いなご心配だったもので…

    私、先輩に対して同情の念で一緒にいる訳じゃありません。

    本当に…本気で
    先輩と向き合っていて、愛し合っていると…思っています。

    少なくとも、私は愛しています。

    同性同士であろうが、どちらから好きになろうが関係ありません。
    私が先輩のそばにいるのは、先輩を傷付けない為なんかじゃなくて、私が先輩のそばにいたいと思っているからです。

    だから、そんなご心配はなさらないで下さい。

    できれば…暖かく見守って下されば幸いです。』


    お母さんの目を見据えて、一言一言ちゃんと伝わるように話した。




    お母さんも、きちんと目を見て聞いてくれた。


    『ありがとう…。
    まなみを宜しくね。』




    (携帯)
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■19892 / ResNo.59)  - 102 -
□投稿者/ Y 常連♪(131回)-(2007/08/24(Fri) 23:51:24)
    『はい、こちらこそありがとうございます。』


    もう一度
    私達は頭を下げて、少しずつ微笑みあった


    『ねーちゃん。

    きっと頑張ってくれるよ。』


    結希はそう言って
    ベットに寝転がり


    『そうですね、信じましょう。』


    私はそう答えて
    二つの腕時計を見る




    お母さんが
    ぽつり、ぽつりと




    幼い頃のまなみの話をし始めた。




    おてんばだけど、変に昔からしっかりしていたと言う。




    3才の時にバレエを始めたいと言い出して、それからのまなみはバレエ一筋だったらしい




    小学校高学年ともなれば国内のコンクールの賞を総嘗めする程の実力を持ち、パリの有名なバレエ団からのスカウトを受けたのもその頃だそうだ。




    高校に入ったのとほぼ同時に初めて全幕通してプリマドンナをつとめる舞台が決まり
    更に練習に力を入れていた所で今の心臓病を患い、急な入院を余儀なくされて…




    その頃のまなみはひどく荒れたらしい。




    食べ物は口にせず
    水分も本当に必要最低限しか摂らずに




    家族とすら、ろくに口を聞かない毎日が続いたそうだ。




    体はどんどん痩せ細り、体調も急降下の状態……




    このままだと、余命は半年だとも言われ
    周りの人間もかなり神経を磨減らしていたそうだ。




    そんなまなみが変わったのは、入院して一年が経とうとした頃に起こったある出来事がきっかけだった―…




    いつも仕事帰りに
    四季折々の果物を持ってお見舞いに来ていたお父さん




    そのお父さんとの
    突然の別れだった。




    恥ずかしがり屋だったというお父さんは
    病院に来ると、まなみに背を向いて果物を剥きながら
    一日の出来事を話していたそうだ。




    その背中を見ながら
    まなみは、返事をするでもなくただ聞いている




    そんな光景をお母さんは良く見ていたという。




    ある日
    いつもの様にまなみの元へ向かう途中




    交通事故に遭い




    手にはお土産の苺が入っている袋を握ったまま




    残酷にも
    まなみが入院していた病院に運ばれた。




    それを聞いて
    泣く事も、笑う事も
    忘れていたまなみが




    父にすがりついて
    ごめんなさい、と泣き叫んでいた…と
    お母さんは清水さんから聞いたらしい。




    お母さんや結希が病院に着く頃には




    もう
    お父さんには息がなかったそうだ。

    (携帯)
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