ビアンエッセイ♪

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■19895 / ResNo.60)  - 103 -
  
□投稿者/ Y 常連♪(132回)-(2007/08/25(Sat) 05:34:38)
    最期にお父さんを見送ったのは、まなみ一人だけだった。




    その時
    二人が何を話していたのかは知らないそうだが
    きっと最後にお父さんは、まなみの人生を変える程の力をくれたんやろう。




    また前を向けるように




    また心から笑えるように




    それから
    まなみは以前のまなみのように笑えるようになり




    何事も斜に構えず捉えられる様になったそうだ。




    自分の病気ともしっかり向き合って




    辛い治療や大手術にも耐え抜いてくれた…と。




    お母さんが話す話の一つ一つを
    色んなまなみを思い浮かべながら聞いていた




    これまで
    大切な人を2人も失ったまなみは




    残された人間の気持ちと




    残してしまうかもしれない人間の気持ち




    その両方の間できっと随分苦しんでいた事だろう……




    抱き締めたい




    今すぐに
    思いきりまなみを抱き締めたいよ。




    早く…
    私の腕に帰ってきてくれませんか。




    その時
    病室の扉が開き、清水さんが入ってきた




    結希がバッと起き上がり


    『清水ちゃん…!
    ねーちゃんはっ…!?』


    と、聞くと




    清水さんは小さく微笑みながら頷いて


    『頑張ってくれたよ、まなみちゃん。』


    と、右手で小さくピースを作って言った。




    思わず立ち上がってしまっていたらしい私は




    胸を撫で下ろすのと同時に、また椅子に座り込んで大きく息をついた。




    すると


    『櫻井さん。』


    と清水さんに呼ばれて
    顔を上げると


    『まなみちゃんが、呼んどる。

    まだ意識は朦朧としとるけど、この部屋を出た時からずっとあなたの名前を呼んどったよ。

    まだココには戻ってこれんけん、まなみちゃんの所まで来てくれんかいな?』


    横にいるお母さんを見ると
    にっこりと笑って頷いてくれた。




    【ICU】




    そうプレートに書かれた部屋の中は
    色んな機械から出る音と、人工呼吸器が放つ規則正しい空気音だけが響いている




    入る前に手を消毒して、白い割烹着の様なエプロンと大きなマスクをつけさせられた。




    まなみの元に辿り着くまでに、何人かの憔悴しきった人達がいて




    その部屋の一番奥のベットに、疲れ果てた様子のまなみがいた。


    『何かあったらナースコールしてね。』


    と言い残して、清水さんがその場を離れる。






    (携帯)
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■19898 / ResNo.61)  - 104 -
□投稿者/ Y 常連♪(133回)-(2007/08/25(Sat) 19:36:01)
    清水さんの後ろ姿に
    軽く会釈を返して




    まなみの横に立つ




    真っ白で、まるで血の気のない顔に触れると
    ちゃんと温かくて安心した。




    額は少し汗ばんでいて
    濡れた髪が、壮絶な闘いだったことを物語っている……




    その髪を撫でながら


    『良く…頑張ってくれましたね。』


    と、小さい声で言ってみると




    うっすらとまなみの目が開き
    私が立っている右側の手が微かに動いた。




    私は両手でその手を握り


    『おかえり、まなみ。』


    と、声を掛けると




    まなみも何か言いたさげだったので、一瞬酸素マスクを浮かす




    消えるような声で聞こえてきたのは




    【ただいま。】




    私達の愛言葉




    いつもとは逆だけど
    確かに私はこの耳でまなみの声を聞いた。




    まなみは生きてくれた。




    私の腕に二つ並んでいる腕時計を見て
    まなみはとても幸せそうに笑っていた




    だから私は
    両手で包んでいたまなみの手を
    二つの腕時計の上に乗せて、更に自分の手をその上から重ねた。




    微笑むまなみの目端からは涙が流れて




    握っていたまなみの手に更にぎゅっと力を入れると




    まなみは
    静かにまた目を閉じて眠りについた。




    泣いてたまるか




    負けてたまるか




    命懸けて、私が守る。




    大袈裟でも綺麗事でもなくて
    まなみの為なら私の命なんか全く惜しくないと思えんねん。




    こんなに人を愛せた事が、どれ程幸せな事なのか




    初めて恋をした人に




    初めての愛を教えてもらえた私は、この上ない幸せ者やわ。




    先輩、絶対に私が助けてあげる。




    根拠なんてないけど




    妙に自信があるんです。




    なんやろう、この気持ちは……




    人を愛すると
    弱くなる事もある




    でも
    それを正面から受け入れる事で
    必ず強くもなれている。




    まなみのお父さん




    私のお父さん




    どうか
    まなみを守って。




    まだ迎えに来るのは早すぎるから……




    お願いします




    お願いします…




    時よ、止まらないで。




    結希とお母さんがいる病室に戻り


    『今、眠っています。』


    そう告げると
    2人は安堵の表情を浮かべて


    『ありがとう。
    今日はもう遅いから、帰りぃ?』


    お母さんから
    そう返ってきた。

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■19903 / ResNo.62)  NO TITLE
□投稿者/ ゼロ 一般♪(1回)-(2007/08/26(Sun) 07:20:59)
    はじめまして♪

    いつも彼女と一緒に楽しく読ませてもらってます☆

    胸がギューってなるくらい切ないお話ですね。
    この小説を読んで、より今を大切に生きなきゃって思いました。。。

    これからも楽しみにしているんで、無理せずマイペースに頑張ってください☆



    (携帯)
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■19905 / ResNo.63)  ゼロサン♪
□投稿者/ Y 常連♪(134回)-(2007/08/26(Sun) 20:02:17)
    初めまして♪
    ありがとうございます\(≧▽≦)丿☆

    愛する人と一緒に今を生きれる事は素晴らしい事ですよね!!

    ゼロさんカップルが末永く幸せでいてもらえたら嬉しいです♪

    これからもお付き合い下さい!

    また感想聞かせて下さい☆

    (携帯)
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■19912 / ResNo.64)  久しぶりです
□投稿者/ 希深 一般♪(4回)-(2007/08/27(Mon) 01:33:17)
    ずっと読んでます☆
    休憩中に読むことが多いんで、なかなか感想書けんくて(((^^;)
    大変そうですね(・・;) 大丈夫?あんま無理せんごとして続きお願いします(^^)

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■19927 / ResNo.65)  希深サン♪
□投稿者/ Y 常連♪(135回)-(2007/08/27(Mon) 18:31:28)
    お久し振りです(^O^)
    読んで下さっていて光栄です♪

    そして、ご心配ありがとうございます!

    かなりノロマな更新になってしまってはいますが、必ず完結まで頑張りますのでお付き合い下さい☆☆

    (携帯)
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■19928 / ResNo.66)  - 105 -
□投稿者/ Y 常連♪(136回)-(2007/08/27(Mon) 18:46:46)
    集中治療室にいる限り、いつ容態が急変してもおかしくはないだろう……




    帰るのは、かなり後ろ髪を引かれたが
    何かあったらスグに連絡をくれるという事だったので、一度自宅に戻る事にした。




    明日は試合だけど




    終わったらすぐに駆け付けよう。




    お母さんと結希に挨拶を済ませ、病院の外に出ると




    湿気が強くて




    まるで今にも降り出すかのような
    雨の匂いが鼻をついた。




    気分もどこか余計に沈んでしまいそう……




    切っていた携帯の電源を立ち上げると




    久々に、美帆からメールが来ていた。




    【受信メール】
    差出人:佐伯 美帆
    件名 :大丈夫?

    本文 :なんか今日の部活元気なかったみたいやけど…何かあったん(;_;)??

    美帆はいっつも颯ちんに救われてばっかやけん、たまには美帆も颯ちんの役に立ちたい!!

    いくらでも話は聞くし、何か出来る事があれば言ってね(*゜ω ゜*)♪♪




    いかにも美帆らしいメール




    こうやって気にかけてくれる友達がいてくれてる事は、ありがたい。




    今日の出来事っていう訳ではないけど




    美帆には
    まなみとの関係もはっきりと言っていなかったし、これを機にちゃんと話そうと思う




    だから




    【送信メール】
    宛名:佐伯 美帆
    件名:Re;大丈夫?

    本文:ありがと。美帆にちゃんと話しておきたい事もあるから近々話そうな。




    そう返信をしておいた




    家に着き
    リビングに入ると、完全に動きが止まった。




    まるで空き巣にでも入られたかのようにぐちゃぐちゃに散らかっている…




    ………………え?




    しかも
    おかんの部屋からガタっと大きな音がした




    一瞬
    思考が停止して、息を飲む…―。




    まず通報?




    それとも
    おかんに連絡?




    いや、とりあえず逃げるべき?




    携帯を手にして迷っていると




    おかんの部屋のドアが勢い良く開いた…!


    『あ、やっと帰ってきたわ〜……!

    チビ!大阪からこっちに越して来る時、一体どないやって荷造りしてん…?!

    あんた一人でやってんやろ!?
    我が子ながら尊敬するわ(笑)

    教えて!
    つか…やってや!』


    なんと
    中から出てきたのは……




    髪もメイクもボロボロになったおかんだった。






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■19994 / ResNo.67)  NO TITLE
□投稿者/ 拓 一般♪(1回)-(2007/09/09(Sun) 20:27:40)
    どんどん話に引き込まれ、この先がどうなっていくのか、すごく気になります。続きを楽しみにしています。

    まだまだ暑い日が続きますが、体調を壊されないように!!更新楽しみにしています!



    (携帯)
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■20008 / ResNo.68)  拓サン♪
□投稿者/ Y 常連♪(137回)-(2007/09/11(Tue) 06:39:20)
    ありがとうございます(*^_^*)

    最近バタバタしていて更新できずにいましたが、またアップしていくのでお付き合い宜しくお願いします!

    (携帯)
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■20009 / ResNo.69)  - 106 -
□投稿者/ Y 常連♪(138回)-(2007/09/11(Tue) 07:25:26)
    『何してんの?』


    呆気にとられた私が聞き返すと


    『せ-や-か-ら-荷造り!!

    最初はな、リビングで持ってくもんだけ集めとったつもりやってんけど…なんや訳わからんよーなってきてん。

    で、自分の部屋のものを先に詰めよう思ってやっとってんけど…あかんわ!

    分かってたけど向いてへん!!』


    向いてへん…って。


    そう、私のおかんは
    THE・片付けられへん女。


    こんなんじゃ引っ越してからが思いやられるわ…


    小さくため息をついて


    【持っていくもの】らしいリビングに散乱しているものを
    陽気な顔をしたゾウがプリントしてあるダンボールに詰めていく。


    なんのかんの
    何かする事があって良かったのかもしれない


    何もする事がないと
    まなみが心配で、悪い方向にばかり考え込んでしまいそうやったから。


    あっという間にリビングは片付いて
    おかんの部屋を覗いてみると、大量のゴミ袋と詰めようとしている物で足の踏み場もない状態


    当のおかんは
    慣れない事をして疲れたのか、洋服を握り締めたまま寝ている。


    私はとりあえず
    また転がっている物を詰めて、クローゼットに手を掛けた。


    開けようとすると
    前に積み重なったゴミ袋で開けなくなっていたので


    ゴミ袋をどかそうと思って持った時
    溢れんばかりに入っていた中身がいくつか床にハラハラと落ちた


    ………写真?


    拾い上げて見てみると


    そこに写っていたのは
    若かりし頃のおとんとおかんだった。


    この上なく幸せそうな顔で寄り添っている写真


    落ちた写真の中には
    私を妊娠している時に
    大きくなったおかんのお腹に、おとんが顔をあてて微笑んでいるものや


    おとんの故郷であるフランスの綺麗な街並みで写したであろう、見るも恥ずかしい熱々っぷり満載のものがあった。


    それらが入っていたゴミ袋の中を見てみると


    中に入っていたのは
    全てがおとんとの思い出の品であろう物だらけだった。


    複雑な気持ちになる…


    捨てんねや……


    そういうもんなん?


    森田さんの為なのか


    おかんの自分なりのケジメなのか


    にしても…
    何も捨てる事ないやん。


    私は、ゴミ袋の中にある写真や思い出の品々をダンボールに詰め直して


    それを自分の部屋のクローゼットにしまって


    そのまま眠りについていた。


    (携帯)
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