| 嫌な夢をみた
詳しい内容は覚えていないが
滲み出る冷や汗と
悲しいと虚しいを混ぜたような
そんな感情で迎えた朝だった。
ふと嫌な予感がして 急いで携帯をチェックする
良かった 特に連絡はきていない……
用意をして 部員が待ち合わせる駅に向かう。
今日は生憎の雨
試合会場である他校に着く頃には、更に勢いを増した雨の音が
朝からざわついたままの胸を掻き回すようだった。
集中しなあかん。
ストレッチをしながら精神統一していると
亜也が後ろから背中を押しつつ話しかけてきた
『ゆうに、まなみの事聞いた。 颯…大丈夫?』
「はい、大丈夫です。」
『今日勝って、いい報告してあげよ!』
「そうですね。」
目を細めるだけの笑顔をするのは、いつぶりやろう。
試合には勝って
ベスト8まで来たっていうのに、100%では喜べない自分がいた。
終わると、一目散に病院に向かう
病院に着き、携帯の電源を切ろうとしたら奏音からの不在着信があっていたが、帰ってかけ直そうと思いそのまま電源を切った。
無意識にいつもの病室に向かっていて
空っぽのベットを見た時に、まなみはICUだという事実を思い出す。
ICUの前でマスクと面会着を付け、手を消毒した
中に入ると、一気に空気が重くなり
奥へ進むと
いつも笑顔でおかえりと言ってくれるまなみは
沢山の管に繋がれ 青白い顔をして、人工呼吸器に生かされていた。
必死に生きようとしていた。
あかん
泣いたら、あかん
まなみが不安になるから。
『ただいま。』
そう言って頭を撫でてみたけど
まなみが目を開ける事はなかった。
手を握ると
心拍数を表す機械の音が、少しだけ早まった。
そっか、分かってんねやな…。
先輩、そうです 私です。
ここにいますよ
先輩も生きてますよ
『先輩、ベスト8入りましたよ。
あと、昨日おかんの荷造りしました。
やっぱ…なんか1人になるのは寂しいもんやなって思いました。
早く退院して帰ってきて下さいね。
どれだけでも待ってますから。』
聞こえている事を願って話しかける。
普段は目を見て言えないような事も
ちゃんと目を見て言いたいと思えてくる。
『先輩、愛してます。』
ほんまに、愛してます。
(携帯)
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