ビアンエッセイ♪

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■20370 / 親記事)  生徒売買
  
□投稿者/ 優美 一般♪(1回)-(2007/12/14(Fri) 00:01:59)


    セーターを羽織るだけでは肌寒く感じる季節に、転校生である彼女は入学してきた

    彼女が入学してきたこの高校は、地元でも有名な女子高だった。
    「入れば卒業後は安泰」
    「誰からも羨まれる高校」
    「選ばれた者しか入れない高校」


    主に、こう言われる所以の根拠は、

    「卒業後は安泰→入学するすべての生徒の親が企業を起こしていて、お金持ちであり、入学中に数々のコネが生徒同士の付き合いによって生まれる」

    「誰からも羨まれる高校→制服着用及び生徒手帳等の生徒と判断できるものを所持していれば、補導、軽犯罪、その他施設の優待等が受けられる」


    「選ばれた者しか入れない高校→学園に多大な寄付を与えた者、及び学園において何かしら利益をもたらした者や利益がある者」


    このような「お金」が理由となってこの高校はある意味金持ちの間で入学させることにステータスを生み出している。

    しかし今回入学してきた彼女は、この金持ち高校からはかけ離れた一般人。
    高校も彼女を入学させても利益などは出ない。

    なのに何故彼女が入学できたのか。
    答えは

    「学園長に気に入られたから」
    ただそれだけ。

    気に入られたといっても、ハゲかけた脂くさいオヤジにじゃない。
    たった25歳の若く綺麗な女性に気に入られたのだ。




    《入学一ヶ月前》


    『お願いします、私たちはもうこの子の面倒を見ることはできないんです』

    母親が疲れきった顔で涙ながらに学長に訴えた。
    父親はそんな妻を慰めるように抱きかかえて学長にすがる様な目で懇願した。

    そんな2人を冷めた目で見つめる彼女  

    『棗(なつめ)!お前の粗暴な態度のせいで母さんをこんなに苦しめていることが分からないのか!お前からもここに入学出来るようにその腐った頭を下げろ!』


    もう我慢できないというような目つきで父親が棗に掴み掛った。

    『あーーー!っと、暴力は止めましょうよお父様。棗さんの大事な体に傷つけちゃいけませんから♪』

    場にそぐわない明るい声で学長は父親を制した。
    納得いかないような顔で父親は棗から手を離し、学長に体を向けなおした。

    『そ・・・それでは、この子をこの高校に入学させてもらえるのでしょうか?』

    神妙な顔で俯き、母親と手を握り合う2人。
    学長はにっこりと笑みを浮かべ、2人が座るソファに手をついた。

    『こちらの条件を親御さん方が受け入れてくれるのなら、私はあなた方の娘さんを喜んで受け入れたいと思っております。』

    そう言うと、学長は一枚の書類を2人の前に差し出した。


    学長の言葉に2人はパッと顔を上げたが、書類に目を通していく内に、その顔は恐怖かつ不安の目になっていった。




    〔私立聖蘭女子高校規約〕



    1:学長に権利を委ねた以上、生徒の権利は全て学長に与えられる

    2:在学中はいかなる理由があっても生徒に接触することは禁ず
    但し、一番近い身内に不幸があった場合はこれを許可する

    3:在学中は生徒の親権を学長に委ねる

    4:生活費、その他生徒の必要な経費は学園側が負担する

    5:入学時に必要な経費は全て学園が負担する

    6:学長が生徒に何をしたとしても、これを口外、及び非難等しないこと

    7:生徒の体は自由に扱って構わないこと




    書類を読み終わり、父親と母親は絶句した。

    『こ・・こんな事を了解しろと言うんですか・・・』

    父親は青ざめ、母親は頼みの綱を無くしたショックで泣き叫んだ。

    『嫌なら別にいいんですよ?この高校には入学したくても出来ない子達が沢山いらっしゃいますからね。』


    ぐっ・・と怒りをこらえ、父親は窓の外を見つめている棗に声をかけた。

    『お前のことだ・・・俺たちが決めることじゃない・・』

    そう言うと、棗に書類を手渡した。


    「・・・・で?こんくらいで何もかもタダで入学できるんだからあたしは別に構わないよ。むしろアンタ達が助かるでしょ?厄介払いも出来るし金もかからない」

    冷え切った笑顔でそう言う棗に、両親はがっくりとうなだれた。

    『・・・・・俺たちは、少なくともお前を愛している。だからこそ、こんな人身売買みたいな真似・・・・』

    「もういいから。」

    父親の言葉をさえぎって棗は背をむけた。



    両親は諦めたように書類にサインをし、席を立った。

    『棗を・・・よろしくお願いします・・・・』

    泣き崩れている母親を抱えて言った、父親の最後の言葉だった。


    扉が閉まるの確認して、学長は棗に向き直る。

    『よろしくね、浅川 棗さん』


    こうして、棗は入学と引き換えに自分を売った。




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■20373 / ResNo.1)   生徒売買 2
□投稿者/ 優美 一般♪(2回)-(2007/12/14(Fri) 01:04:43)
    次の日、棗は学長が用意したマンションで目を覚ました。

    生活用品が揃った部屋には不自由など感じなかった。
    マンションのロビーに電話をすれば栄養が考えられた食事が昼夜問わず好きなときに持ってきて貰える。

    もちろんそれは破格の金額を払ってこそ成り立つ暮らしだが、棗はそれを体で払わされる。
    間接的に、学長に。

    入学手続きをした昨日の晩は大変だった。

    何度いかされても学長は棗を解放しなかった。
    それどころか、棗が飽きて寝てしまってもお構いなしに体を弄ばれる。
    さすがに勘弁してほしいと棗が切れ気味に言うと大人しく辞めてくれた。

    「あのばばぁ・・・・性欲強すぎなんだよ。」

    運ばれた朝食を軽めにとり、棗は学校へ行く支度をすませてロビーに下りていった


    「・・・・・・・」

    エレベーターの扉が開くと同時に、棗には沢山の視線が送られてきた。

    羨望 憧れ 非難 疎ましさ 妬み

    様々な女の欲が棗を朝から嫌な気持ちにさせた。
    その原因が彼女の外見にあるのは本人は知らない。

    身長165pの長身に華奢な体
    緩いウェーブがかかった長く綺麗な茶髪
    作られたように見事な顔の輪郭
    ハッキリと大きな目であるにもかかわらず、どこか寂しげで凛とした瞳

    どこに文句をつけていいのか分からない様な彼女にみんなは戸惑ったのだ

    棗はそんな眼差しの中、学長が言ったことを思い出して生徒手帳を取り出した。

    『マンションを出るときに必要になるから、ロビーの係員にその手帳を見せなさい』

    何の意味があるのか分からぬまま、棗は係員に手帳を差し出した。

    係員はそれを見るなりどこかに電話をかけだし、棗に丁寧な言葉でソファに座って入用支持した。
    周りにいる女子の顔がまた一段と色めき立った。

    「何なんだ、この高校・・・・」
    むすっとしながらも、棗は他の生徒がロビーから姿を消すのを見送った。

    5分くらい経っただろうか。
    係員がお辞儀をしながら棗をマンションの外へと誘導し、棗はわけが分からず係員に付いていった。


    「・・・・ばかじゃない?」

    思わず棗の口からそんな言葉がもれた。
    たかだか生徒の登校に高級車をよこすなんて。
    学長の「私物」は大変お金をかけられているらしい。

    係員に促されるまま、棗は高校に登校した。

    校門が見えたので降りる準備をしていると、車は校門をあっさりと通り抜けて
    どうやって作ったのか、校舎裏の地下へと吸い込まれていった。

    「あの・・・あたし普通に登校したいんですけど。」

    半分呆れながら運転手に言うと、運転手は「学長の支持なので・・」
    と、言葉を濁すだけだった。

    まぁ、この車で昇降口に横付けされるよりましか。と、少しポジティブに考える事にした棗だった。

    無駄に明かりが灯された地下駐車場に車は止まり、棗はホテルの入り口の様な扉まで案内された。

    「毎朝こちらの入り口まで私どもが案内させて頂きます。
    尚、お帰りの際に用事があるようでしたら、こちらの方にお電話を頂ければ我々は棗様をその場所にお迎えにあがります。
    明日からはロビーの者に声をかけて頂かなくとも、お時間になりましたら迎えにあがります。
    又、具合が悪い等の登校出来ない時もこちらの電話に連絡をして頂ければ結構です。それでは行ってらっしゃいませ」


    機械的に発せられた運転手の言葉に固まっていると、入り口にもう一台の車が止まった。

    同時に、運転手の深く下げられた頭が上がり、そのまま棗の乗った車は太陽が差す地上に戻って行った。












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■20374 / ResNo.2)   生徒売買 3
□投稿者/ 優美 一般♪(3回)-(2007/12/14(Fri) 01:34:47)
    呆然と車を見送る棗の肩を誰かが叩いた。

    ん?っと思い振り返ると、そこには芸能人もびっくりするような綺麗な女の子がニコニコしながら棗を見ていた。

    『あなた転校生でしょ?』
    身長165cmある棗と同じくらいの背の高さと、白くてきめ細かい肌が、涼しげで冷たそうな顔つきを際立たせている。

    そんな「笑顔なんて見せません」みたいな女の子が天使のように微笑んでいたら、
    いくらクールな棗でも表情を崩さずにはいられなかった。

    「あ・・・・っと。うん。そう、今日からこの高校に通うことになったんだ」

    初対面からこんな素直に話しかけてくれた同姓、いや、人間は棗にとって初めてだったので、しどろもどろに返事を返すのが精一杯だった。

    『ふふ♪可愛い♪もっと冷たく返されるか無視されるか不安だったから、何気安心しちゃった』

    「そ・・そんな事ない。何か、普通に話しかけてくれて嬉しかった」
    棗の心からの言葉だった。
    いつも外見のせいで同姓から妬まれ、異性からは性の対象でしか見られなかった棗は、この女の子の態度が心底嬉しかったのだ。

    『あ、いきなり話かけちゃったけど、名前まだ言ってなかったね。
    あたしは浅川夏輝。夏に輝くって書いて夏輝♪』

    「夏輝ちゃんね、分かった。」

    『あ、真咲って呼び捨てでいいよ♪どうせ同い年でしょ?リボンの色赤だし、
    二年生だからあたしと一緒』

    「そうなんだ、よかった同い年で。あと、あたしも浅川って苗字なんだよ。
    浅川棗。何か名前も似てるね」


    出会って数分だと言うのに、棗は夏輝に心を許した。
    前から知ってるような。
    そんな安心感が夏輝からは感じれたから。

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■20375 / ResNo.3)  生徒売買 4
□投稿者/ 優美 一般♪(4回)-(2007/12/14(Fri) 02:05:22)
    棗は校内に入ったとたん驚きを隠せなかった。
    それは校内の美しさと静かさ。
    棗がこれまで行っていた高校とは明らかに違う雰囲気。

    ピカピカの廊下や壁。
    場所をやたら取っている噴水。
    誰の絵か分からないが、立派な額縁に入った絵画。
    高く白い土台に置かれた彫刻品。

    何もかもが始めての場所だった。
    目を白黒させて「学校」という名の美術館に見入っていると、クスクスと夏輝から笑いがこぼれた。

    『あはは♪棗の顔おもしろい事になってるよ。』

    ケタケタと無邪気に笑う夏輝に顔を赤くしながら、棗は照れたように夏輝の前を歩き出した。

    『おーい♪先に歩くのはいいけど棗迷子になってもいいの?』

    また、夏輝はクスクス笑いながら棗に手招きをした。
    ばつが悪そうに棗は夏輝の後に続く。

    「てゆか、夏輝こそあたしの教室分かってんの?」

    にやにやしながら夏輝の顔を下から覗き見ると、夏輝もヘラっとした顔で分かんないと呟いた。

    「あはは♪バカだな夏輝も♪」

    『もー!うるさい!棗だってわかんないくせに!』

    綺麗な顔が照れくさそうに頬を膨らました。

    「分かるよ、えーっと。2−Bだって。」

    ひらひらと学園案内の紙を見せながら棗が言うと、夏輝は目を輝かせた。

    『あたしと同じクラス♪』

    「えっ!!!!」

    『不満?』

    そんな分けなかった。
    あまり期待してなかった高校生活が一気に楽しくなりそうな予感で一杯だった。

    「ううん・・・何か、嬉しすぎて・・・。やばい・・・。」

    棗の大人びた顔が、少女の様な素直な顔に戻る。
    夏輝はその表情にたまらなくきゅんとした。

    『そんな顔で喜ばれたらあたし・・・・』


    「え?」

    『ううん、なんでもない♪早く教室行こう』

    棗の手を取り、二人は教室へ向かっていった。

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■20377 / ResNo.4)  生徒売買 5
□投稿者/ 優美 一般♪(5回)-(2007/12/14(Fri) 02:22:18)
    静まり返った廊下に、2人の笑い声と足音だけが響く。

    「ねえ、もしかして授業始まってるとか?」
    不安になりながら夏輝にたずねると、夏輝は首を横に振った。

    『まぁ、この学校ってなんだかんだでお嬢ばっかだからね。
    やんちゃばっかしてた棗は苦労するかも♪』

    「え?!やんちゃってそんな・・・・多分してないし」

    ふーん、と「お見通しだよ」とでも言うように夏輝が笑う

    「まじだって」
    もごもごとしながら棗が言い訳しようとすると、優しく頭をなでられた。

    『心配しないで♪あたしも特別入学の口だから♪』

    〔特別入学〕

    それはつまり、夏輝も学長の私物になったと言う事だろうか。
    棗は何か得たいの知れない罪悪感が胸をよぎるのを感じた。

    『そんな顔しないで。あたしと棗は、この学校で唯一の仲間みたいなモノなんだから♪』

    「唯一の?他にあたし達みたいな子はいないの?」

    『うん。何でも学長が変わって、女好きだったからこんな入学がまかり通ったわけだし、ある意味学長に感謝だよね♪』

    そう明るく話す夏樹に、棗の心はいくらか軽くなった。




    長い廊下を歩き、やっと棗達の教室に辿り着いた。

    「こんなに学校広かったら、よっぽどじゃないかぎり太らなそう。」

    ぐったりとしながら話す棗の肩を叩き、夏樹が教室の扉を開けた。

    丁度その時、HRのチャイムが鳴った
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■20378 / ResNo.5)   生徒売買 6
□投稿者/ 優美 一般♪(6回)-(2007/12/14(Fri) 02:50:41)
    2007/12/14(Fri) 10:27:35 編集(投稿者)

    扉を開けると、そこは大学のような作りのクラス。
    階段のように机が並び、教師を見下ろすように無駄の無い作りになっていた
    あまりの広さと似つかわしくない生徒の少なさに棗は戸惑う


    シン・・・・とした空気にさすがの棗も体を緊張させた。

    しかし、夏樹が「おはよう」と声を出すと、以外にも女子たちは明るい返事を返してきた。

    『遅いですよ夏輝さん』

    漫画から出てきたような背の低い眼鏡をかけた中年の女教師がマイクを使い二人に声をかけた。

    しかし、そんな事を言っている教師が、優雅に教卓とは言えない様な豪華な机に腰賭け紅茶をすすっている。

    唖然としながらも、夏輝に後押しされて棗は教卓の横に並ばされた。

    『あぁ、あなたが転校生の浅川さんね。案内ご苦労様夏輝さん。あなたは席に着きなさい。』

    教師はそう言うと、腰を上げてホワイトボードにペンを走らせた。

    『今日からみなさんのお友達になる浅川棗さんです。一身上の都合によりこの時期に入学しました。仲良くしてくださいね』

    お決まりの言葉にクラスメイト達は口々に各席に取り付けられたマイクで
    返事をする。

    『んーー。あなたの席はどこがいいかしら?』

    教師がクラスを見回す。
    席といっても、普通の学校にあるような机などなかった。

    ふかふかのソファ調の椅子に大きな机
    まるで、漫画喫茶のソファ席の様な作りになっていた。

    〔やたら豪華な学校だけど、居心地よさそう〕

    悠長にそんな事を考えていると、聞き覚えのあろ女の子の声が教室に響いた。

    『先生、どうせ席はいっぱいあるんだし
    とりあえず私の後ろか前に浅川さんの席は決めて、
    パソコンとかの説明もしたいんで、しばらくは私と相席じゃ駄目でしょうか』

    夏輝のそんな心使いが嬉しかった。
    何より、初めて会ったにも関わらず夏樹が自分を傍に置きたいと思って
    くれてる事が嬉しかった。

    『んー・・。でもそれじゃあ窮屈で勉強がはかどらないんじゃ・・・』

    「先生!あたしそれがいいです。」

    教師の言葉をさえぎって棗が嬉しそうに言った。
    夏輝も棗の声を聞いて嬉しそうに笑った。



    『じゃ・・それでいいわ。夏輝さん、浅川さんをよろしくね』


    うまい具合にHR終了のチャイムが鳴った。
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■20380 / ResNo.6)   生徒売買 7
□投稿者/ 優美 一般♪(7回)-(2007/12/14(Fri) 03:41:41)
    夏輝の席は浅川という苗字に関係なく後ろの席だった。
    荷物は自分の席に備え付けてあるロッカーに投げ入れ、先ほどの教師から去り際に貰った指輪をかざして鍵を閉める。

    「なんか、無くしたら学校で生きてけ無いような物ばかり渡されて困る。」

    そう言いながら夏輝の隣に腰を落とす棗を、夏輝は愛おしそうに見つめた。

    『そうだね、特に生徒手帳と指輪は無くしたら大変。
    って言っても2つ一緒に無くしさえしなければ大丈夫なんだけどね♪』

    棗の指輪を撫でながら夏輝の顔が近ずき
    ふわっと夏輝の髪の香りが棗の鼻をかすめる。

    「そっ・・そうなんだ。夏輝も無くしたことあるの?」

    自分の心臓の鼓動に動揺しながら棗は夏輝に質問する

    『無くした・・・?っていうか、盗られた。』
    呆れたように言う夏樹は、棗の指輪から手を離してソファに体を預けた。

    「盗られた・・・って。何それ!」

    むっとした表情をしてると、なだめる様に夏樹が頭を撫でた。

    『まぁね、結局はあんなもの顔が一致しなきゃ意味ないんだし、いくらでも再発行できるから。』

    「んで、手帳は再発行?」

    棗の質問に、おかしそうに首を振る

    『盗んだ子がちょっと悪いことして、警察に自分のと間違って手帳を提示したら、「明らかに他人だろ!」
    って言われて半日拘留されて無事返却された♪』

    「はは♪バカだなぁ♪」

    『でも手帳が無いと新しい運転手さんとか特別入学の生徒って中々信じてくれないし、外泊届けや学校の特定の施設が使えないとかあるから。
    そんな事にならないように手帳と指輪は大事にね♪』

    「うん、わかった」

    棗は夏輝のこうゆう説明の仕方が好きだと思った。
    ただあーしろ、こーしろと決まった言葉を並べる説明をするんじゃなくて、
    自分の体験とかを織り交ぜて分かりやすく説明してくれる所が。





    しばらく2人で話していると、やはり転校生は珍しいのか、周りに座っていたクラスメイト達が何人か夏輝の席に近寄ってきた。

    『あの、棗さんはどこの高校からきたの?』

    最初に話しかけてきた子は、みるからにお嬢様みたいな感じで、棗とは合いそうに無かったが、話してみると結構いい子だった。

    ここでも有名なくらいのバカ高の名前を口に出すと、信じられないと言う顔をされたが、棗の話し方に緊張がほぐれたのか普通に笑ってくれた。

    他のみんなとも話していたが、ある女の子だけは棗を疎ましそうに見ていた。



    その子がこれから棗の学園生活を左右することを、棗は知らない

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■20381 / ResNo.7)   生徒売買 8
□投稿者/ 優美 一般♪(8回)-(2007/12/14(Fri) 03:58:54)
    授業開始のチャイムが鳴ると、棗の周りにいた子達は手を振りながら自分の席に帰っていった。

    「なんか、みんな思った以上にいい人って感じで安心したよ」

    ほっとしたようにソファに体を預ける棗

    『それは棗が可愛いからだよ♪』

    まるで自分の事の様に嬉しそうに夏輝が言い、棗のパソコンの電源を入れた。

    その仕草を見て、思い出したように棗がソファから体を起こす

    「あ!あたしパソコンなんか使ったこと無い!」

    不安そうにパソコン画面を見ながら棗が言うと、夏輝は安心しな、とでもいうようにテキパキと作業を進めていった。

    『んー、と。ここで・・・・こうして。あれ?これかな?・・・・』

    一分も経たないうちに夏輝は何やら作業を終了させたらしく、棗に画面を見るよう即した。

    「だから、分かんないって・・・」

    しぶしぶ画面を眺めていると、教師が入ってきた。

    〔あーーー、それでは数学の教科書を・・・〕

    教師の声がマイクで響くのと同時に、棗のパソコン画面にも同じ文章が書き出されていた。

    ご丁寧に「あーーー、」なんていう文字も。

    『ね♪これならわざわざノートもキー叩く必要も無いし、もう一度授業丸々見直しできるでしょ?』

    夏輝の笑顔が可愛く棗を見る。
    (う・・・そんな顔するなよ・・・)

    思いがけない天使の笑顔に不意打ちされた棗は、照れくさそうにお礼を言った。





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■20382 / ResNo.8)   生徒売買 9
□投稿者/ 優美 一般♪(9回)-(2007/12/14(Fri) 04:27:12)
    あっという間に高校初日は終わった。
    まだ夏輝といたかったが、学園長専用の携帯に呼び出しがかかった。

    棗はそれを知られないように夏輝と駐車場まで行き、急いで学長室へと足を運んだ

    夏輝はその光景を悲しそうに車の窓から見つめていた



    『着信あったんだからかけなおす位したら?』

    もう仕事がおわったのか、学長はのんびりと椅子に座ってコーヒーを飲んでいた

    「・・・すみません。急いで来たので気がまわりませんでした。」

    そう言う棗を見て、学長は笑みを浮かべ、椅子から立ち上がった。

    『そう、そんなに急いでここに来たかったのかしら?』

    くすくすと笑いながら棗の肩に手を回す

    『ふふ、そんなわけない・・・・って顔に書いてあるわね。』

    「別に・・・私は学長の私物なんですから。どうぞご自由に」

    夏輝といたころの棗の顔はもうここには無かった。
    入学手続きの時のままの冷めた眼差し。

    『くく・・・。そそるわ・・。あなたみたいな綺麗な子が嫌々体を自由にされるなんて・・・・。考えただけで濡れてきちゃう・・。』

    学長の歪んだ性癖にゾクっとした感情が走ったが、棗は顔色ひとつ変えずにその場に立っていた。

    『ところで、あなた夏輝とお友達になれたんですって?』

    棗の肩に回した手を解き、学長は来客用のソファに腰を下ろす

    夏輝という言葉に心が動く。

    棗のその一瞬の動揺を学長は見逃さなかった。

    『ふふ・・。そんなに警戒しないでよ。私はあなた達の関係にまで干渉しようなんて思ってないから。
    あなた達が友達でも、所詮はあたしの所有物よ。』

    《所有物》その言葉が棗の心に深く刺さる。
    自分はどんな事を言われようがされようが構わなかったが、何故か夏輝を物扱いされたことに無性に腹が立った。

    『あらあら・・・。ま、あまりあの子に深入りしない事ね。今日は何もしないからゆっくり休みなさい』


    「・・・・・・失礼します」


    いらいらしながら棗は駐車場に向かった。





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■20383 / ResNo.9)   生徒売買 10
□投稿者/ 優美 一般♪(10回)-(2007/12/14(Fri) 05:33:05)
    マンションに帰り、棗は自分の部屋の鍵をフロントから受け取った。
    フロントに手帳と指輪を見せないと鍵は貰えない。
    なるほど、二つ同時になくしたら危険だと言うことが頷ける。

    それがなくても十分にセキュリティは万全だと思う。

    何しろ、徒歩で帰ってきても、バスの運転手等が連絡を入れない限り、強化ガラスの扉は開かないのだから。

    だから誰もが外泊時でも帰宅する時は必ず学園専用のバスで帰るのだ。

    時刻は夕方5時。
    まだ学生がマンション内を行き来していてもいいくらいだというのに
    どこにも人の姿は無かった。

    「変な学校・・・」

    あーあ、と棗はベッドに体を預けて横になった。

    初日の疲れが出たのか、うとうとして眠りにつく寸前だった。

    急に玄関のチャイムが鳴り響いたのだ。
    「え?!何?」

    驚いたように玄関に向かうと、インターホンに夏輝の姿が映った。

    「夏輝・・・」

    驚きと嬉しさで棗はいそいそと玄関の扉を開けた


    「夏輝♪」

    弾んだ声で夏輝を迎え入れようとすると、画面に映らなかったはずの女の子達が一斉に顔を出す。

    『ごめん棗♪みんなが棗の歓迎会やりたいっていうから連れてきた♪』

    ヘラっとあどけない笑顔で夏輝はケーキを差し出しながら棗を見つめる。

    「夏輝・・・・まじ好き♪」

    ぎゅうっと夏輝を抱きしめると、みんなはにやにやしながら2人を見ていた。

    『ねー、夏輝。あんたもそろそろ決めたら?』

    気の強そうなエリナが夏輝をこずく。

    すると口々に女の子達が賛同した。

    『二年近くフリーだもんね、もうそんな子学校中で夏輝だけだし。』

    『そうそう、夏輝ならすぐ出来るのにさ』

    『あんた如月先輩振ったくらいだしね〜』

    『え====!!!もったいない!!!』


    最後の言葉は全員が声を合わせた。

    「仲いいねみんな」

    へらっとしていると、みんなの視線が棗に集中している事に気がついた

    「な・・・・なに?」

    すると今度はエリナが棗をこずいた。

    『棗ちゃん。まだこの学校のシステムを理解してないようだね』

    『っと、その前に!棗、部屋上がらせて♪』

    夏輝がエリナの言葉をさえぎった。
    「あ、あぁそうだね。何も無いけどみんなあがって」

    棗は笑顔で招き入れた

    『大丈夫♪みーんな色んな物入学祝いに持ってきたから♪』

    そうみんなが言い終わるかの間に、殺風景だった棗の部屋に次々と贈り物と称された高価な品物が業者によって設置されていった。

    いつから業者が待機していたのかという驚きよりも、その贈り物に棗は驚いていた

    初めから設置されていたテレビが何十インチあるのかというくらい大きなテレビに変わり、これでも十分だったのにという大きなソファも撤去されてより豪華なソファに変えられ、床には高価そうな絨毯。セミダブルのベッドがキングサイズに。
    挙句、店にあるカラオケ機器まで設置。
    何から何まで撤去と交換が繰り返された。

    棗はもちろん驚いていたが、みんなも棗の部屋の広さに驚いていた。

    何しろ、マンションとはいっても棗の住んでいる34階半分が棗の居住スペースなのだから。
    いくら巨大なものを持ち込まれても、まったく部屋が狭くなった様には感じない。

    むしろ、これで丁度いい!くらいだった。

    『よかったよ、このくらい大きなものにして』

    エリナの言葉にみんな頷く。
    棗からすれば、こんな高価な贈り物は戸惑いでいっぱいだったのだが、みんなが特に「高価な物を送っている」という素振りを見せなかったので、素直にお礼を言った。

    一人で使うには大きすぎるダイニングテーブルに、バイキング風に料理が並べられていき、高校生という事は無かったかのように様々なお酒が並べられていった。

    「なんだ。みんな普通にお酒飲むんじゃん♪」

    棗の無邪気な感想にみんな笑った。

    『こんなお嬢様学校の生徒だからね、そう思われてても仕方ないね♪』
    そう言ってとりあえず乾杯した。

    夏輝とエリナが進行役になってみんなをまとめ、何時間か経つと自然に輪が出来ていて、まるで修学旅行みたいな感じになっていた。














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