ビアンエッセイ♪

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■20504 / ResNo.40)  34
  
□投稿者/ 壱也 一般♪(38回)-(2008/01/25(Fri) 13:47:31)


    愛里の父親は電気会社の社長という事もあって、自宅のマンションよりも高いビルが会社で、社長室は最上階だと言う。


    受け付け嬢に、娘が来た事を知らせると、愛里にはすぐにエレベーターへ向かうように言われた。


    私は、身分証明書を提示する様に言われ、ポケットにあった運転免許証を出すと手際良くコピーを取られ、笑顔でエレベーターに行くように指示された。


    『厳重だな』


    「念には念を…みたいな人ですから、セキュリティに関してはうるさいんです。」


    3分程エレベーターは上昇し、チンっと鐘の音を鳴らした。


    『緊張してきたな』


    「父は、変わった人ですから。大丈夫です」


    変わった人とはどういった事でだろうか?


    不安交じりに、社長室のドアを愛里がノックした。


    「お父さん、私です」


    小さく入れと聞こえたので愛里の後ろからそそくさと中に入った。

    (携帯)
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■20505 / ResNo.41)  35
□投稿者/ 壱也 一般♪(39回)-(2008/01/25(Fri) 13:48:33)


    ドラマの社長室みたく、応接室セットがあり、奥には社長のデスクが見えた。


    「おぉ〜♪愛里!よく来たなぁ♪」


    「話しがあって来たの」


    「そちらは?」


    『橘チカです。現在、愛里さんと一緒に生活させてもらっています。』


    「おぉ〜♪君がチカチャンね?」


    何だ?このひょうきんなおっさんは。


    「お父さん、私冬休みだけじゃなく、ずっとチカさんの家に居たいの!」


    「何でだよ〜お父さん寂しいじゃないか!」


    「あの家には居たくないから…」


    「ん〜…チカ君?」


    『はい』


    「娘をしばらく頼むよ」


    『…えっ、あ、はい』


    意外にあっさり決まった事に私は驚いた。


    「その代わり、月一で自宅訪問する。それが条件だ」

    急に真剣な顔付きになった社長は、私に握手を求めた。


    「この子を頼むな。私は来月にでも、あの子の母親と別れるつもりだ。」


    「お父さん…」


    「愛里…お前が母を好きでないのは分かってる。だから私がお前を引き取る。朱美の分まで幸せになるんだよ?」


    愛里は、それまで崩れかけそうだった体を、社長に預けた。


    社長室は愛里の泣き声と、社長の優しい笑顔で溢れていた。



    「それじゃあ…私は会議があるから。」


    社長と別れ、私たちは社長が手配した車に乗り込む。

    運転手に家の住所を教えると、勢いよく発車した。


    「変な父親でしょ?」


    『確かに…でも優しい人だね』


    「うん…」


    『今晩は、奈々も呼んで三人でご飯食べるか!』


    「わーい♪奈々に会える」

    子供のようにはしゃぐ愛里を横目に、私は携帯で奈々に連絡した。


    奈々は、了解と返事して、午後九時に集まる事にした。

    (携帯)
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■20506 / ResNo.42)  ロマンテックな感じ、いいですね。
□投稿者/ きゅん 一般♪(2回)-(2008/01/26(Sat) 04:20:06)
    読んでて一瞬きゅんと切なくなりました。パパはいい人で良かった。
    やっぱり愛里さんとチカさんの出会いは必然的な運命だった!
    ますますこの先の展開が楽しみになりました。

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■20507 / ResNo.43)  きゅん様
□投稿者/ 壱也 一般♪(40回)-(2008/01/26(Sat) 12:02:51)

    カキコミありがとうございます。

    何だか暗い話しばかりだったので、お父さんは明るく書こうと…(笑)


    愛里とチカの関係は変わるかもしれませんし、変わらないかもしれません(笑)

    また浮かんだらUP致します。

    (携帯)
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■20513 / ResNo.44)  36
□投稿者/ 壱也 一般♪(41回)-(2008/01/29(Tue) 13:54:36)
    今夜の愛里は、格別に張り切っていた。


    「だって、ここに住めるんだもん♪」


    そういえば、私はふさぎ込んで、うやむやになっていたな。


    『何を作ってるの?』


    キッチンに立つ愛里の横から顔を覗かせる。


    「オムライスです♪奈々もチカさんも好きでしょう?」


    屈託のない笑顔で答えられて、少し気恥ずかしい想いをした私は、頷く事しか出来なかった。


    『…あ、愛里?敬語辞めないか?何で私だけ敬語なの?』


    「あ、すいません。お世話になる人ですから。」


    『…今更だけど、辞めていいよ、堅苦しいだろ?』


    「…うん♪分かった」


    その後も順調に調理を終え、奈々が来るまで、二人でテレビを見る事にした。


    ソファーに二人きりで座ると中々密着感があり、少しドキッとする。柔らかなシャンプーの匂いが風に流れる。


    「チカ、ありがとうね」


    ふいに、愛里が小さくつぶやいた。


    『どういたしまして』


    私は、この子が今までどれだけの傷を抱えて来たのか知らない。


    けれど、少しでも良い方向に進んでくれるなら、私は何だってすると思う。


    きちんとした職にも着くし、まとまったお金だって貯金しよう。


    愛里の父親の金には頼りたくない。


    全てにおいて、私が守る。

    そう心に誓った頃、奈々が玄関のベルを鳴らした。

    (携帯)
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■20514 / ResNo.45)  37
□投稿者/ 壱也 一般♪(42回)-(2008/01/29(Tue) 13:56:00)


    「奈々ー♪いらっしゃい」

    愛里は、威勢よくソファーから飛び出し奈々に抱き着く。


    「久しぶり〜!元気そうだねぇ♪」


    『いらっしゃい』


    「…その顔は全部分かったみたいね?」


    奈々は満足げに、ブーツを脱いで、部屋に上がった。

    私は愛里の作ってくれたオムライスを前に、奈々に問い掛けた。


    『一体いつから気付いてたんだ?』


    「チカがワインで潰れる一週間前に、愛里の父親に夕飯を誘われたの。会社の付き合い程度に、ついていったら、お酒のおかげで、ベラベラ話してくれたわ?」

    『まったく…手の込んだ事しなくたって、普通に言いなよ?』


    「調度、愛里が家を出たがっているのを聞いて、チカの家を薦めたの。朱美の友人ならって承諾してくれたわ。だから、これは愛里の為でもあるから」


    奈々の優しい物言いに、私は黙り、オムライスを食べ始めた。


    「おいしい?」


    愛里が可愛い声で尋ねてくるので、おいしいよって、優しく返した。


    「まるで、新婚ね」


    奈々が笑いを堪えながら、私たちを見る。


    『バーカ!』


    愛里も笑い、私も笑った。

    温かな食卓、何年振りだろうか。


    こんなに楽しい夕飯は、久しくなかった。


    このまま、時間が止まればって何度願っただろう。

    (携帯)
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■20515 / ResNo.46)  38
□投稿者/ 壱也 一般♪(43回)-(2008/01/29(Tue) 15:43:20)
    愛里が私の部屋に来て一ヶ月が経った頃、私と愛里の中で変わった事が幾つかある。


    始めは、愛里に朱美を照らし合わせたりしていたが、最近は“愛里らしさ”というか、朱美とは違う部分が出て来た。


    それは、とてもほほえましい事であり、ようやく素を見せて来たのだという安心感で満たされる。


    愛里は、私の中で大事な人になってしまった。


    要は、手を出してはいけない人。


    そう感じた。


    何も恋人として、幸せにしなければならない義務はないし、私は私なりのポジションで支えて行けたらいいと思う。


    姉妹、といった関係に近いかもしれない。


    愛里は、私に対して何を想っているのかイマイチ掴めないし、こんな幸せをわざわざ自分から壊す事もない。


    愛里は奈々が最初に言った様にノンケなのだ。


    これからたくさんの男性に出会い、恋をしていく。


    その都度、恋愛相談に乗ったり、応援したり。。


    朱美に対してもやったとおり、1番近い場所で見守ればいいんだ。


    例え、愛里を愛してしまったと私自身が気付いても、私の中で押し潰し隠せばいいんだ。


    もうすぐで年が明ける。

    (携帯)
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■20516 / ResNo.47)  39(愛里Side)
□投稿者/ 壱也 一般♪(44回)-(2008/01/29(Tue) 15:46:20)


    奈々の紹介で、居候させて頂く家は、住宅地の中にある、普通のマンションで、部屋の主は中性的な女性だった。


    名前はチカ。


    姉の日記によく出て来る親友の一人。


    奈々とは、父親を通して前々から仲良くなっていたんだけど、姉が朱美だと知ったのはごく最近。


    最初は驚いてたし、日記を見せたら号泣しちゃうしで、大変だったのを覚えている。


    居候する上での約束事を奈々は幾つか話した。


    一つは、朱美に近いように話す事。


    もう一つは朱美の妹だってのは内緒にする事。


    姉に会った事がない私は、とても困ったけれど、日記を読み返していけば何となく雰囲気くらいは似せる事ができたみたい。


    そんなややこしい生活を始めて一ヶ月が経ち、もうすぐで年が明ける。


    「チカ、仕事でしょ?起きなさい!」


    目覚めが悪いチカを起こすのが私の日課。


    低血圧なチカの為に、コーヒーを入れ目を覚まさせる。


    『うまいな』


    優しい目で、毎日同じ言葉を発する。


    「ありがとう」


    チカが柔らかくなったのは、姉の日記を見せてから。

    比較的口数が少ないチカが今じゃ毎日たわいもない話しをしてくれる。


    『今日は遅くなるから、先に食べてて?』


    「分かった!いってらっしゃい」


    チカが居なくなると、この部屋はやけに静かになる。

    それはきっと、必要最低限の物しかない部屋だからだと感じた。

    (携帯)
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■20517 / ResNo.48)  40
□投稿者/ 壱也 一般♪(45回)-(2008/01/29(Tue) 15:47:26)


    「ん〜掃除するかぁ♪」


    几帳面な性格な事もあっと、私は毎日掃除をした。


    他にする事もないし。。


    大学に友達は居ない。


    人見知りで話す事が出来ないのが原因。


    なのに…どうしてチカは話せたんだろう。


    奈々の友達だから?


    そんな理由で話せたら、今頃一人くらいは友達が居ただろうな。


    私は少しばかり寂しくなって、掃除を終えたら近所の喫茶店に行くことにした。


    「いらっしゃいませ〜」


    チリンとドアに取付られたベルが鳴り、来客を知らせた。


    「あ、愛里ちゃん!いらっしゃい!」


    奥から出て来たのは、奈々の友人で、この店のオーナーの藤田さん。


    「…いつもので」


    「はぁい♪待ってて」


    藤田さんは、人見知りの私をよく分かってて、あまり話し掛けて来ない。


    ここは私にとって居心地が良かった。


    「はい、カプチーノ」


    カウンターに置かれたそれを手に取り、少しばかり眺めた。


    「今日はウサギちゃんね」

    藤田さんは、そう言って奥に入って行った。


    私はそんなに、寂しそうに見えたのかな?

    (携帯)
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■20518 / ResNo.49)  41
□投稿者/ 壱也 一般♪(46回)-(2008/01/29(Tue) 15:48:31)


    藤田さんは、洞察力が凄いから、私の気持ちを動物や花に例える。


    見透かされた気持ちと、分かってくれる気持ちが合わさって、いつしか自分から藤田さんに声をかけてしまうのが、パターンだ。


    チカや奈々の次に話せる相手だった。


    「友達ってどう作るんですかね?」


    藤田さんは悩みながら、口を開く。


    「…んー。人それぞれだけど、話しかけやすいオーラを出してみたら?」


    オーラですか…(汗)


    「焦らなくていいんじゃない?自分と馬が合う友達なんて中々見つけれないわ。見せかけの友達なんていらないでしょ?」


    「たしかに…そうかもしれませんね」


    「あたし的には話し相手が居なくなるの嫌だから、作って欲しくないわね♪なーんてね?」


    藤田さんは笑顔を見せて、私の頭を撫でた。


    「チカだって、奈々と朱美ちゃんくらいしか友達居なかったわ。チカって近寄りがたくてねぇー。奈々が声を掛けたのがきっかけなのよ」


    「へぇー…チカさんもそういう感じなんですか。」

    「人見知りもあるけど、あまり他人と関わりたがらなかったみたいよ?あたしは奈々の先輩だから、奈々からしか聞かされてないからよく解らないけどさ。」


    「…だからなのかも」


    「えっ?」


    「あ、ううん独り言です。今のチカさんは優しくて楽しいです。一緒に居て。」

    「そう?なら良かった。チカ愛里ちゃんの事を気にしてたから。」

    (携帯)
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