| 2008/03/02(Sun) 14:54:35 編集(投稿者)
私の名前は佐江木優香、38歳。 とある病院で看護課長をしている。
病院に勤務していると、それなりに色々な場面で色々な問題に出会うが、今回私を悩ませている問題は、ちょっと今までのものとケースが違う。
それは、実習に来ているあるひとりの学生の一言から始まった。
「課長さん、…実習生の私も課長さんの相談室を利用してもいいですか?」
私の設けている相談室を訪れるのは、だいたい患者様か患者様の身内の方なのだが、その日訪れたのは看護実習に来ている学生だった。
「えっ?別に構わないけれど、どうしたの?実習で何か悩んだりしてるの?」
もしかしたら、看護学校の教員に話せない相談なのかもしれない。
…そう思って安易に受け入れてしまった後、私は後悔する事になるのだった。
「あの…っ、私、課長さんが大好きなんです!」
「………………はいっ!?」
唐突な彼女の言葉に、私はポカンと口を開ける。
「いつも廊下で見かける度に美人だなぁーってドキドキしてて、気が付いたら課長さんのせいで恋の病にかかっちゃってたんです!課長さん、…どうか私の恋の病を治して下さいVV」
「恋の病って…あなた女の子でしょ!?」
「人を好きになる事に性別は関係ありません!課長さんが好きなんですV」
彼女の真剣な眼差しに耐えられなくなって、私は思わず目をそらす。
「あ、あのねぇ…例え性別が関係なかったとしても、あなたまだ若いでしょ?私はあなたからしたらおばさんじゃない…」
「関係ないですよ♪課長さん美人さんだし、おばさんて感じしないですしVそれに年齢なんかで人を好きになったりしませんよ!」
もーすっごい魅力的Vと言い続ける彼女に呆れるが、ここは私がしっかり言わないといけない。
「…あなた学生でしょ?実習に来てるんだし、自分の身分を考えてから口をききなさい」
冷たく言い放つと、ようやく彼女がおとなしくなった。 分かってくれたのかな?と彼女に視線を移すと…
「…あぁ、怒った顔も素敵V」
「…………あなた、私の言ってる事分かってないでしょ?もう用がないなら出て行きなさい。」
怒ったのに効き目がない彼女を廊下につまみ出すと、私は相談室の鍵をかけた。
「佐江木課長〜…」
今にも泣きそうな声がドアの向こうから聞こえるが、無視を決め込む。
「はぁっ…厄介なものに好かれたもんだわ」
チラリとカレンダーに視線を移し、溜め息を付く。
「看護実習はあと1ヶ月で終了…それまでの辛抱だ。」
そう自分に言い聞かせたものの…
「佐江木課長〜VV」
昨日あれだけ冷たくしたのに、次の日も私に駆け寄ってくる彼女を見たら、1ヶ月が相当長いように感じた。
「課長さんっ☆今日も綺麗ですね♪」
「あーもーっ!実習生なんだから、ちゃんと勉強しなさい!!」
「だって課長さんの姿見てたら、実習どころじゃないですよV」
…何だかこの子を見てると、頭痛がしてくる。
「あなた、お名前は?」
「大比良愛美、21歳でーす♪あ、名前を聞くって事は、課長さんももしかして私の事…」
「看護学校の教員に、あなたのしつけをしっかりするように伝えておきますから」
「ガ、ガビーン!…そんなぁー課長さぁん!!」
彼女を脅して振り切ると、私は課長室に入ってグッタリとソファーにもたれた。
こんな日が実習が終わるまで続くのだろうか…? 考えただけで疲れてしまう自分に対して、私はゾッとした。
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