| 「いい加減にしといたら?」 親友は苦笑いでグラスを傾ける
「既婚者なんてどうせ最後は家庭に戻っていくもんだよ。男も女も。」 苦笑いを浮かべるだけで何も言わない親友にイライラしながら続ける
「彼女に何言われてるんだか知んないけど、既婚者の本気なんて当てになんないよ。『本気だけど家庭は捨てられない』でしょ?その程度の本気なんだよ。そんな相手に真剣に付き合うなんて不毛じゃない?」 ここまで言われても気分を害する様子もなく困ったように笑った。
「別に、家庭を捨てて欲しいなんて思ってないよ。週に一度会えるだけで幸せ。会えなかったら声聞くだけでいい。メールだけでいい。彼女と繋がっていられるそれだけで私は満足だから…」 ため息が出る
「何、その一昔前の典型的な愛人体質。いつからそんな風になっちゃったの?なんか、純愛みたいな事言ってるけどさ、結局ただの不倫だからね。許されないことしてるんだよ?あ〜、もしかして、その背徳感ってのが逆に燃えるの?」 わざと千尋を怒らせようとしている自分に気が付く。そんな私の心のうちを知ってか知らずか、千尋はただ微笑を浮かべて聞いてるだけ。
「うん、那智の言うとおり、ただの不倫だよ。許されないことしてる。だから、ずっと続くとは思ってないよ。いつか別れる時が来るんだろうなあって思うよ。それはお互いに分かってる。だから、今がすごく大事に思えるの。終わりがくるの分かってるからつまらない嫉妬とか不安とかを相手にぶつけて、二人でいられる時間を無駄にしたくないんだよ。」
なんだそれ
「別れる事が分かってる恋愛なんて恋愛じゃないよ。終わりが来るから、言いたいことも我慢して?それで幸せ?なんだそれ。」 最後は吐き捨てるように言った。
なんだそれ
なんだそれ
そんな恋愛
悲しすぎる
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