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■20768
/ 親記事)
二つの願い
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□投稿者/ 槇
一般♪(1回)-(2008/04/07(Mon) 00:02:40)
こんなに他人の幸せを願ったことはなかった…
どうか…
あなたは幸せに…
誰の隣でもいいから…
あなたは笑っていて…
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■20769
/ ResNo.1)
二つの願い 1
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□投稿者/ 槇
一般♪(2回)-(2008/04/07(Mon) 00:05:29)
「いい加減にしといたら?」
親友は苦笑いでグラスを傾ける
「既婚者なんてどうせ最後は家庭に戻っていくもんだよ。男も女も。」
苦笑いを浮かべるだけで何も言わない親友にイライラしながら続ける
「彼女に何言われてるんだか知んないけど、既婚者の本気なんて当てになんないよ。『本気だけど家庭は捨てられない』でしょ?その程度の本気なんだよ。そんな相手に真剣に付き合うなんて不毛じゃない?」
ここまで言われても気分を害する様子もなく困ったように笑った。
「別に、家庭を捨てて欲しいなんて思ってないよ。週に一度会えるだけで幸せ。会えなかったら声聞くだけでいい。メールだけでいい。彼女と繋がっていられるそれだけで私は満足だから…」
ため息が出る
「何、その一昔前の典型的な愛人体質。いつからそんな風になっちゃったの?なんか、純愛みたいな事言ってるけどさ、結局ただの不倫だからね。許されないことしてるんだよ?あ〜、もしかして、その背徳感ってのが逆に燃えるの?」
わざと千尋を怒らせようとしている自分に気が付く。そんな私の心のうちを知ってか知らずか、千尋はただ微笑を浮かべて聞いてるだけ。
「うん、那智の言うとおり、ただの不倫だよ。許されないことしてる。だから、ずっと続くとは思ってないよ。いつか別れる時が来るんだろうなあって思うよ。それはお互いに分かってる。だから、今がすごく大事に思えるの。終わりがくるの分かってるからつまらない嫉妬とか不安とかを相手にぶつけて、二人でいられる時間を無駄にしたくないんだよ。」
なんだそれ
「別れる事が分かってる恋愛なんて恋愛じゃないよ。終わりが来るから、言いたいことも我慢して?それで幸せ?なんだそれ。」
最後は吐き捨てるように言った。
なんだそれ
なんだそれ
そんな恋愛
悲しすぎる
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■20770
/ ResNo.2)
二つの願い 2
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□投稿者/ 槇
一般♪(3回)-(2008/04/07(Mon) 00:10:57)
那智はこの話をする時はいつも泣きそうな顔をする。
分かってる。
私のことを非難するようなことを言うけど、那智はただただ、心配してるだけなんだよね。
「我慢なんかしてないって。私は今凄い幸せなんだよ?大体、那智だって人妻と付き合ってたことあるでしょ?私の記憶が確かなら、それも一人や二人じゃないはずだよ〜」
そう切り返してみると、那智は「ふんっ」と鼻で笑った。
「別に、付き合ってないよ。ただHしただけ。向こうだって欲求不満の解消に人のこと使うだけだからね、こっちも同じように対応してるだけだよ。Hするだけなら既婚未婚関係ないから。」
「那智は一回本気の付き合いしてみた方がいいよ。本気でその人のこと好きになっちゃったら、既婚だとか未婚だとかはどうでもいいことになっちゃうもんなんだって!」
「本気ねえ…」口の端で笑いながら、好物のオムライスを口に運ぶ。
「本気で好きになろうとしてる時点で、純粋な『好き』じゃないじゃん。私だって、本気で好きになれる人が現れたら、そりゃ一途にその人だけになるよ。でも、今のところそういう人と出会ってないし、それでも欲求はあるし、遊んじゃうのは仕方ないよ。自分の意思でできるようなお手軽な『本気のお付き合い』なんかしたくもないね。同じお手軽なら遊んでるほうがよっぽど罪はないと思うんだけどなあ〜」
思わず吹き出してしまった。
「なに?」眉間にしわを寄せて不機嫌そうな那智。
「いや…なんでもないけど…。那智はかわいいなあ〜!そういうとこ好きよ。」
「はあ?どこが!」更に不機嫌になってバクバクとオムライスを食べる。
何人も何人も女の子をとっかえひっかえしてる割に考えてることは、すごく純粋なんだもんなあ〜。純粋に好きになれる人と出会えることを待っているんだよね。10代の女の子みたい…。かわいいなあ〜
『遊ぶのやめたらいいのに。結構誤解されてるんだから…。』
そう言おうと思ったけど止めた。
『どうでもいい』
そういう返事が返ってくることが分かるから。
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■20771
/ ResNo.3)
二つの願い 3
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□投稿者/ 槇
一般♪(4回)-(2008/04/07(Mon) 00:14:33)
「あれ?那智?」
聞き覚えのある声がした。向かいに座っている那智の顔が微かに強張った。
振り返ると、久美子さんがいた。彼女はこの店の常連で親しくしていた。那智はもっと親しくしていたみたいだが…。
「那智〜!久しぶりじゃない。私、結構ここ来てんのに全然会えないんだもん〜。なんか私のこと避けてない?あ、千尋も久しぶりだね。」
私には、全然そっけないくせに那智にはベタベタとすり寄っている。
「いや〜、そんなことないですよ〜」と言いながら、体を硬くしている那智がおかしくて私はニヤニヤしていた。
那智は一度関係を持った人と、再び関係を持つことはないらしい。それが深みにはまらない遊び方だそうで、だから、周りからは結構いろいろ言われてる。
「お互い合意の上なんだから、周りがうだうだと口出すことじゃない」と、自分のスタイルを貫き通しているが、この久美子さんはやたらしつこく那智に迫っているらしく、那智はずっと彼女を避けていた。
人妻である彼女がこんな遅い時間にこの店に来ることはなく、那智にとってはまさに想定外の出来事なんだろう。普段はふてぶてしい態度の那智が困っているのを見るのは本当に久しぶりだったから、面白さと、少し困らせてやろうという思いから自分のかばんを手にとった。
「ごめん!那智。私、明日も仕事だからもうそろそろ帰るわ。」
那智が目を見開いた。
「え〜?久しぶりに会えたのに〜。美容師さんは日曜日関係ないもんね。残念。」
全然残念そうじゃない久美子さんに「また遊びましょう」と社交辞令を言って、固まっている那智に「またね」と満面の笑みを残し背を向けた。
その時に、初めて久美子さんが連れている大人しそうな女性に気がついたが、お辞儀だけして店を出た。
「あとで那智なんて言ってくるだろう?」そう思っただけでおかしくて、街を歩く人たちに変な目で見られないように笑いをこらえるのが大変だった。
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■20772
/ ResNo.4)
二つの願い 4
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□投稿者/ 槇
一般♪(5回)-(2008/04/07(Mon) 00:18:50)
薄情な親友に見捨てられて、しばし呆然としていたが、千尋が帰って初めて久美子さんが人を連れていることに気がついた。べたべたと擦り寄ってくる久美子さんの気をそらすために聞いてみた。
「久美子さん、その人はお友達ですか?」
久美子さんははっと気がついたように体を離した。
「そうそう!近所の人で仲良くしてるの。加奈子さん。きれいな人でしょ?」
私はやっと久美子さんから開放されたことに安心して、そこで改めて、その『きれいな人』に目を向けた。
確かに、『きれいな人』ではあるけど、大人しそうで、ぶっちゃけ地味な感じの人で、正直何の興味も湧かない。もっと綺麗で明るい人がいるから、遊びの相手にもならない。
久美子さんのほうがよっぽど綺麗だ。今は少し面倒くさいことになっているけど…。
千尋が帰ってからなんとなく帰るタイミングを逃して、なんだかわからないうちに3人で飲むことになってしまった。
「この子ね〜、那智って言うんだけど、気をつけてね。ほんと手が早いの!女なら見境なしなんだから!」
「一応、好みはありますよ〜」
「私が見てる限り、ストライクゾーン広すぎだよ!まったく違うタイプの人でもひっかけてるじゃない!」
別に引っ掛けてない。いつだって、向こうからやってくるんだ。別に断る理由もないから拒まないだけ。
そう言ったところで納得するような人ではないから、曖昧に笑っておいた。
それにしても、おとなしい人だなあ。さっきから私と久美子さんがほとんど2人で喋ってる。それをただニコニコしながら聞いてるだけで本当に静かな人…。っつうか、この人の声ってまだ聞いてないかも…
引用返信
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■20773
/ ResNo.5)
二つの願い 5
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□投稿者/ 槇
一般♪(6回)-(2008/04/07(Mon) 00:21:41)
そう思いながら、まるで観察でもするかのように加奈子さんを眺めていたら、その視線を勘違いした久美子さんが少し強い口調で言った。
「那智!加奈子さんに手ぇ出しちゃだめだよ。加奈子さんは完全なノンケなんだから」
「そんなんじゃないですよ〜」
思いがけないことを言われて、つい笑ってしまった。
「加奈子さんには、こんな時間まで遊んでても文句ひとつ言わない理解のある、優しいご主人がいるんだから。しかも高学歴の高収入のエリート!あんたが手を出していい奥さんじゃないんだからね!」
困ったように笑って、止めるように久美子さんの肩に手を置き、何事かを話している加奈子さんを見ていると、なぜだか無性に腹が立った。
「ノンケで、理解のある優しい旦那さんがいるのに何でこんなとこ来てるんですか?ここは女が女を探すような店ですよ?」
何か言おうとする彼女に割って入って久美子さんが答えた。
「加奈子さんは真面目な人だから、今まで全然外に遊びに行くってことしたことなかった人なの!だから、息抜きにって私が誘って私がここに連れてきたの!」
「あ、そうなんですか。すいません」
訳の分からない胸のむかつきは収まらなかった。
「ここにくる前にもどっか寄ってきたんですか?こんな遅い時間に来てるから。」
「今日は昼間から色々行ったわね〜。ランチ食べて、ショッピングして、夕食食べて〜。さっきまでミックスバーにいたのよ。ゲイの人っておもしろいわよね〜!」
「っていうか、久美子さん、旦那さん大丈夫なんですか?厳しいんでしょ?」
「うちの旦那は今出張中なのよ。さっき、メールしたら一緒に行ってる同僚と飲んだから今日はもう寝るって言ってたわ。怪しいもんだけどね。」
「へ〜」と何気ない風を装いながらも、さっきからのむかつきはどんどん大きくなるばかりで…。
どうしたんだろ…、何でこんなにイラつくんだろ…。
引用返信
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■20774
/ ResNo.6)
二つの願い 6
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□投稿者/ 槇
一般♪(7回)-(2008/04/07(Mon) 00:25:05)
そのうちに久美子さんは他の常連客の中に友達を見つけたらしく、「ちょっと挨拶してくる」と私たちを残して他のテーブルに行ってしまった。
2人で残されても共通の話題を見つけることもできず、しばらくの間は気まずく笑いあうだけだった。こんなに久美子さんを待ち焦がれたのは初めてかもしれない。
久美子さんが行ったテーブルを見てみると、すごく盛り上がっていて『ちょっと』で戻ってきそうな感じじゃなかったから、仕方なく話し掛けてみた。
「なかなか戻ってきませんね。友達多い人だから…」
「ええ…」
それだけかよっ!!!
えーと、えーと…
「彼女、普段からあんな感じで友達多いんですか?」
「ええ…」
…って、それだけ!!!?
「あんまり話したりするの好きじゃないんですか?」
「あ、ごめんなさい。好きじゃない訳ではないんですけど初対面の人と話すのは少し苦手で…。だから、友達もあんまり作れないんです…」
ああ、そんな感じ…。
「そうなんですか。ここに来る前行った店…、楽しかったですか?こういう人間と話したりするの初めてだったんじゃないですか?」
「そう…ですね。私はあまり話せなかったんですけど、楽しかったです。いい経験になりました。」
いい経験ね…
「加奈子さん、『普通の人』だから面白かったでしょうね。同性好きになるような人種なんて珍獣でも見たような気分なんじゃないですか?動物園でも行ってきたような感じ?」
知らず知らずのうちに言葉がきつくなる。
「そんな…」
「久美子さんに連れてこられたって言っても、まったく興味なかったら着いて来ないですよね。少しは興味があったんでしょう?優しい旦那さんに守られてる平凡な幸せは退屈ですか?刺激が欲しかったんじゃないですか?」
どんどん嫌な奴になっていく…
「いいですよね〜。女同士なら子供できる心配もないし。ノンケの人からしたら、女同士のセックスなんて浮気にもならないんでしょうね。罪悪感もなく、退屈な毎日のちょっとしたスパイスになる。興味深々なんでしょ?」
一番嫌いな言葉がどんどん溢れてくる。
「よかったら、お相手しましょうか?そこらの男よりも気持ちよくさせてあげますよ?」
最低だ…
何で初対面の人にここまで言ってしまうのか…
自己嫌悪に陥った
引用返信
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■20775
/ ResNo.7)
二つの願い 7
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□投稿者/ 槇
一般♪(8回)-(2008/04/07(Mon) 00:28:44)
2008/04/07(Mon) 00:30:26 編集(投稿者)
2008/04/07(Mon) 00:30:12 編集(投稿者)
こんな酷い事を言われても、加奈子さんは黙ったまま俯いていた。
無理やり連れてこられたとか、反論すればいいのに。自分で責めておいて身勝手にも加奈子さんのその態度にも苛立っていた。
更に攻撃しようと口を開きかけた瞬間、いきなり後頭部を叩かれた。ただならぬ私たちの雰囲気を察したこの店の店長のナオだった。
「那智!!なに、新しいお客さん苛めてんのよ!!営業妨害するなら出入り禁止にするわよ!!」
自分では抑えられようもなかったこの苛立ちを、あっさりと止めてくれた友人に内心感謝しながら不平を漏らす。
「別に、営業妨害なんか…」
「してんのよ!あんたがそうやってチクチクチクチク人妻イビリするから、最近さっぱり結婚してるお客さん来なくなったんだから!平気で人妻と遊んだりするくせにネチネチ言うなんて、風俗行ってるくせにそこの女の子に説教たれるオヤジと同レベルだよ!」
まったくその通りだ。ぐうの音も出ない…。謝ろうと加奈子さんのほうを向くと、彼女はすっと立ち上がった。
「私は全然気にしてませんから。大丈夫です。でもそろそろ帰らないとさすがに主人も心配するので帰ります…。久美子さんにごめんなさいって言っておいてください。」
そう言うと、私にお辞儀をして、「ごめんなさいね」と繰り返すナオに送られながら出て行った。ナオに笑顔を向ける加奈子さんを見送りながら、唇を噛んだ。
さっきからのイライラがすべて自分に向けられる。あんなことを言いたかった訳じゃない。
「あんた、あの人に何言ったわけ?」
戻ってきたナオに言われた。何も答えられなかった…。
「別にあんたがどう周りに言われてもあんたの責任だからどうでもいいんだけど、あんたが誰かを傷つけるのは無視できないのよ。自分の考え持ってるのはいいことだけど、人にはそれぞれ事情ってものがあるの。そういう人たちに自分の思想押し付けるのやめて。見てらんない。」
分かってる…
「ごめん、帰るわ。今日の分ツケといて」
急いでカバンをつかんだ
「は?話聞いてる?っていうか、うちツケ禁止だから」
「そこをなんとか!明日絶対払いに来るから!」
「ちょっと!!」
止めるナオの言葉に耳を貸さず急いで飛び出した。
タクシーを捕まえられる大通りまでは結構距離がある。急いで追いかければ追いつくかもしれない。
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■20776
/ ResNo.8)
二つの願い 8
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□投稿者/ 槇
一般♪(9回)-(2008/04/07(Mon) 00:33:32)
どうしてこんなに必死で追いかけてるのか分からない。追いついたところで何を言うつもりなのか…何がしたいのか…。
今までだって似たようなことを言って人を傷つけたことは何度もある。他人にどう思われたってどうでもいい…そう思ってたのに…
行き交う人の中に、それらしき後ろ姿を見つけた。暗くて少し距離があるからはっきりとは判らないけど、とにかくその後ろ姿を目指した。
「あの!」
どう声をかけたらいいのか、迷った挙句いきなり肩を掴んでしまった。いくらなんでもそれはないだろう。人違いならかなり失礼だし、間違ってなかったとしても…やっぱり失礼だ。
その後ろ姿の人物は…
加奈子さんだった。
驚いたように振り返った彼女は、私だとわかると微笑んだ。あんなことをいわれた相手に対してどうしてこんな風に笑いかけられるのだろう?
「どうかしました?」
うまい言葉が見つからない。
「あ…えーと、その…」
言うべき言葉が浮かばない時は結局のところ、伝えたいことだけを伝えるしかない。
「さっきはごめんなさい!ひどいことばかり…」
加奈子さんは驚いたようだったが、ふっと微笑んだ。
「わざわざ、それだけ言いに追いかけてきてくれたんですか?」
「あぁ、はい。私…すごく口が悪くて…」
「いいんです。気にしていませんから」
改めて彼女の笑顔を見たら、スルスルと言葉が出てきた。
「もしよかったら、送らせてもらえませんか?せめてものお詫びに。大通りまでまだ距離あるし、私の車停めてる駐車場のほうがここから近いんですよ。」
「え…でも、お酒飲んでませんでした?」
「ああ、私一滴もお酒飲めないんです。飲んでたのはウーロン茶。あの店やってるナオって、私の古い友人なんです。だから、特別メニューでご飯食べさせてもらってるんですよ。金にならない客だって嫌がられてるんですけど」
「ああ、そうなんですか。そういう友達っていいですね。じゃ、せっかくなんで、お願いしましょうか」
加奈子さんは笑っていた。
私も知らないうちに笑顔になっていた。
今日彼女に見せた初めての自然な笑顔だったかもしれない。
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■20777
/ ResNo.9)
NO TITLE
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□投稿者/ 槇
一般♪(10回)-(2008/04/07(Mon) 00:34:43)
久しぶりの投稿です
今回は、少し長くなりそうです。
皆さんよろしくお願いします。
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