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その日は、すごい雨だった。
いつも行く河原に、段ボールを敷いて座って一人考え事をするのが日課であった私には最悪の天気。
仕方がないので、河原まで歩いてついでに近所のたこ焼きやさんに寄ろう、なんて考えていた。
大雨で周りの音はかき消され、湿気臭いのが鼻をかすめた。
「……いっ」
今想えば、何でこの一言だけ聞こえたんだろう。
河原の近くを歩いている時に微かに聞こえた声。
耳を澄まして河原を見る。
誰も居ない。
この雨だし、居るとしたら橋の下。
私がいつも座る場所だ。
「……いやっ!」
今度ははっきり聞こえた。女の子の声。
まさか……。
真相を確かめるのは少し怖い。が、行かなくては冗談で済まされなかったら嫌だ。
私の中の少ない少ない正義感を振り絞り、今すぐにでも逃げたい気持ちを押し殺した。
(携帯)
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