ビアンエッセイ♪

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■21071 / ResNo.50)  10
  
□投稿者/ Kaoru 一般♪(42回)-(2008/08/11(Mon) 12:02:01)


    「じゃあ〜、とりあえず二人一組になって〜?」


    ミサトがみんなに言うと、友里・彩ペア。ミサト・歩美ペア。
    啓・未央ペアという事になった。


    「コースは、この山道をただひたすら登るだけ。途中で行き止まりだから、Uターンして終わりね。」


    その後、行く順番を決め、あたしとミサトは最後から二番目になった。


    「あたしらは最後みたいです〜♪」


    どうやら、未央と啓が最後みたいだ。


    「あ、ちなみにあたしはUターン地点でみんなが無事たどり着いたか見張る役だから、歩美!一人で回ってね♪」


    『えぇ!?ミサト居ないの?』

    「怖くないから大丈夫よ♪」


    そんな………泣


    「歩美先輩♪頑張って下さいねぇ〜?」


    未央のその一言で、あたしの心に火がついた。


    やってやろうじゃない!


    「歩美、気をつけてね?怖かったら無理しなくていいんだからね」


    啓は優しくあたしの頭を撫でる。心配してくれている。


    『大丈夫よ…何ともないんだから♪』


    内心はドキドキで、ぶっちゃけ逃げ出したかった。


    でも、未央にあんなにバカにされたら。。


    やるしかない!!


    順番は刻一刻と迫り、あと一組出発したらあたしの番だった。

    「あ、啓さん?あたしトイレ行ってきますね?怖くなって来ちゃって。」


    「うん、気をつけて?」


    未央は小走りに、トイレがある方へ向かっていった。


    「歩美、ふるえてない?」


    『え??』


    「やっば怖いんじゃん´`」


    『怖くないって!』


    「でも、足…」


    啓に指を指されたあたしの足は生まれたてのバンビのように震えていた。


    『これは…恐怖じゃなくて…その…』


    「歩美負けず嫌いだったんだね?意外だな♪」


    啓は私の体をギュッと抱きしめ、また頭を撫でる。


    「この山は、別に心霊スポットでもなんでもないよ?普段は山菜とかを採りに来るふつうの山だから。何も出ないよ」


    そうして、あたしの体をさすった。


    「あ、帰ってきた。歩美の番だよ?無理しないでね。」


    ポンっと背中を押され、あたしは体が軽くなった気がした。


    『ありがと!!』


    よっしゃー!!
    幽霊なんて怖くない!!


    どっからでもかかってこーい!


    ……いや、出来るなら会わないで(泣)

    (携帯)
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■21072 / ResNo.51)  11
□投稿者/ Kaoru 一般♪(43回)-(2008/08/12(Tue) 15:52:48)


    「歩美先輩遅いですね〜?もう帰ってきてもいい頃なのに」


    未央が心配そうに私を見る。
    うん、明らかに時間がかかりすぎている。


    『様子見てくるよ!未央さんはここで待ってて下さい』


    私は、夜の闇に包まれた山を見上げ、走り出した。


    嫌な予感がする……。



    山道は、石ころが転がっていて歩きにくい。


    何処かで転んで動けなくなっているのかな?


    一本道しかないこの山に、歩美はどこに居るんだろうか。


    『歩美〜!!聞こえたら返事してー!!』


    ザワザワと揺れる木々の音が妙に不気味に感じ、嫌な予感が次々と浮かび上がる。


    「啓ちゃん!!」


    『ミサトさん!!』


    「あれ〜?歩美は一緒じゃないの?てか未央は?」


    『どれだけ待っても歩美が降りて来ないんで私だけで探しに来たんです。ミサトさんも歩美見なかったんですね?』


    「うん…舗装された道はこの道しかないと思うんだけど…何処かで迷子とか?」


    それはマズい。
    この山は崖に繋がる道があったはず。もしそこへ迷い込んだら…。


    『ミサトさん!!下に居る人に呼びかけて探そう!崖に落ちたらヤバい!』


    「わかった!何かあったら携帯で連絡して!」


    私とミサトは別れ、私は草が生い茂る道へと足を踏み入れた。

    『歩美ー!!歩美ー!!』


    答えてくれない。
    マジでどこに居るんだよ!!


    『歩美ー!!歩美ー!!』


    答えてくれ!!


    歩美ー!!


    「…………けぃ………」


    ―――――!?



    『歩美?居るんか?居るんやったらもう一回返事して!』


    「……………けぃ………」


    微かな歩美の声。


    その声を頼りに草をかき分けて行く。。


    『はぁはぁ…歩美!』


    草むらの中でうずくまる歩美の姿が見えた。

    (携帯)
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■21073 / ResNo.52)  12
□投稿者/ Kaoru 一般♪(44回)-(2008/08/12(Tue) 15:54:56)


    『大丈夫か??足やったんか??』


    「……痛い…足…」


    見ると右足から大量の血が見えた。


    私は無我夢中で、シャツを脱ぎ、出血している足にシャツを巻いた。


    「………っん!!」


    『ごめん、我慢して。ほら乗って』


    背中を差しだし、歩美を乗せる。


    振り返ると、少し先は崖で、地面がゆるんでいた。


    『もう、大丈夫やで』


    「迷惑かけてごめんね」


    『ほんまや』


    「……なっ」


    『負けず嫌いも大概にせんと、死んでからじゃ遅いんやで!』

    「啓、怒ってるん?」


    『別に』


    「怒ってるやん!」


    『そら、怒るわボケ!あんな後輩の挑発間に受けて怖い癖に一人で行って挙げ句に怪我かい!世話やけるっちゅーねん!』


    「ごめんって。あたしほんまドンクサイなぁ」


    しょんぼりしてるんだろうな。
    言い過ぎたかな…。


    『でも、怪我だけで良かった。崖に落ちてたりしたら、私一生後悔してた』


    「泣いてるの…?」


    『泣いてない!』


    目からは溢れる滴。
    めっちゃダサい。。


    私、ほんまに歩美を連れ去りたい。


    私のもんにしたい。。

    (携帯)
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■21079 / ResNo.53)  13
□投稿者/ Kaoru 一般♪(45回)-(2008/08/18(Mon) 12:49:22)


    「歩美ー!大丈夫!?」


    「歩美先輩!!」


    山を降りると、ミサトや後輩たちが心配して駆けつけてくれた。


    『ちょっと怪我してるから、車で病院行きますわ』


    「……分かった。あたしもついて行くよ」


    ミサトは、他の同僚や後輩に後片付けを頼み、車に乗り込んだ。


    病院に着くと、歩美はすぐ診察室に入り治療を受けた。


    大した事ありませんように…


    神様に私は祈った。


    「啓ちゃん、歩美助けてくれてありがとうな」


    ミサトさんが待合室のソファーに腰かけた私の隣に座り話し出した。


    「あの子どんくさいけど、あれでも一生懸命やねん。あんま責めんたって。何より肝試し提案したのはあたしなんだし」


    『分かってます。運んでる途中で思い切り叱ったんで♪』


    「啓ちゃんは、ほんまに歩美好きねんな?」


    『…え?』


    「歩美の話になったら顔ふにゃふにゃやで?クールな顔が台無しや♪」


    ミサトさんは、私の頭を優しく撫で、ほほえむ。


    「……歩美の事、諦めてくれへん?」



    『………はぃ?』


    「歩美に聴いてん。啓ちゃん歩美に告ったんやろ?別に軽蔑とか偏見ちゃうで?ただあの子の家庭複雑やねん」


    『複雑?』


    「母親は幼い時に蒸発して、父親が代わりに育ててた。その父親も病気であんまり働けないんやって。そんな父親に孫の顔見せたいって前言ってた。」


    『……そうなんですか』


    「子供も作れんし、周りの目もある。あの子は幸せにならなあかんねん。啓ちゃんはまだ若いんやし、また好きな人出来るよ」


    『……』


    「だから……諦めて?」


    『…それは歩実と話してから決めます。すいません』


    「諦めることも愛の形やで。」

    ミサトは、そう言ってソファーから立ち上がり、診察室へ向かった。


    歩実が出てきたようだ。

    (携帯)
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■21080 / ResNo.54)  14
□投稿者/ Kaoru 一般♪(46回)-(2008/08/18(Mon) 12:50:23)


    「歩実〜大丈夫なん??」


    「ごめん、軽い捻挫と切り傷と打撲で済んだみたい」


    「そっかぁ〜良かったぁ!心配かけさせて〜」


    「ほんま、ごめん!啓ちゃんもごめんなぁ」


    『うん…』


    歩実は元気そうだ。

    良かった…。



    「バーベキューは時間も時間だしお開きにしたから、歩実はこのまま自宅で安静にね?」


    「うん…分かった」


    「啓ちゃん、歩実送ってあげて?あたしは近くでタクシー拾うからさ」


    『分かりました。』


    私は、歩実の方に視線を送り車へと促した。


    車に乗り込みエンジンをかける。


    未だ二人は無言状態だ。


    「啓ちゃん…怒ってへん?」


    『怒ってないよ?大したことなくてよかったなぁ』


    私の声に覇気は無く、ただ会話していた。


    「うん…ほんまありがとう」


    どうしてだろう、もっと歩実に聴きたいことがあるのに、口から言葉が出ない。


    それから歩実のマンションに着くまで無言が続いた。

    (携帯)
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■21090 / ResNo.55)  15
□投稿者/ Kaoru 一般♪(47回)-(2008/09/05(Fri) 07:51:11)


    「今日はほんまありがとう。あと迷惑かけてごめん」


    『気にしないで?それより怪我早く治してな?』


    見つめ合う視線は絡み合い、ただ切なくなる。


    『歩美、しばらく、いや怪我が治るまでは会わへんわ。』


    「何で?」


    『歩美の為に。じゃあ』


    私は未だに不思議がる歩美を無視して車を発車させた。


    こんなに悲しくなる別れ方はイヤだ。


    ほんまはキスして、抱きしめて怪我して心細い歩美の傍に居たかった。


    だけどそれは私がする事じゃない気がした。

    (携帯)
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■21091 / ResNo.56)  16
□投稿者/ Kaoru 一般♪(48回)-(2008/09/05(Fri) 07:51:59)


    啓の様子がおかしい。

    いつもあんな別れ方しないはずなのに。

    理由が分からない。
    あたしが心配かけたから?

    あたしが啓に対して何かしたのかな?

    考えれば考える程、苦しくなった。

    いつも隣で笑顔を絶やさない啓。

    今日は怒った啓をみた。

    あのレイプ未遂の日以来。

    そして冷たい態度の啓。

    初めて見た。

    怖い。

    あたしの知らない啓に出会う事が。

    友達なら距離を置けば自然に戻れるのに

    啓は戻れない気がした。

    (携帯)
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■21093 / ResNo.57)  NO TITLE
□投稿者/ ぱるぷんて 一般♪(1回)-(2008/09/06(Sat) 23:34:00)
    2008/09/06(Sat) 23:36:07 編集(投稿者)


    『戻れない気がした。』のフレーズかなりヤバイです。

    自分なりに彼女の将来を考えて、二度と会わない、会えないと覚悟を決めて別れを切り出した事を思い出します。


    よくわかんないけど、なんか‥ありがとうございますm(__)m

    啓さん、歩美さんに会えてよかったです。

    (携帯)
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■21096 / ResNo.58)  ぱるぷんてさんへ
□投稿者/ Kaoru 一般♪(49回)-(2008/09/11(Thu) 17:20:12)


    好きな人の為に別れを切り出す勇気って中々出来ない事ですよね。


    自分的には歩美と啓はくっついて欲しいんですけど…ノンケ相手なので中々手ごわいです(笑)

    そんな風に言ってくれて嬉しいです。


    マイペースではありますが
    引き続き読んで頂ければ幸いです。

    (携帯)
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■21097 / ResNo.59)  17
□投稿者/ Kaoru ちょと常連(50回)-(2008/09/11(Thu) 17:21:30)


    夏休み後半に差し掛かり、お盆が過ぎ、季節は秋に向かい涼しい風が流れ出す。


    バイトも忙しくて、課題も今一つ手をつけていない。


    いや、歩実が気になって何もできないんだ。


    バイトをいつもより増やしたのは歩実に会えない時間を埋めたいから。


    一人になればずっと考えてしまうから。


    歩実は怪我治ったのかな?


    会社でヘマしてないかな?


    未央と仲良くできているのかな?


    そんないらない心配ばかり。


    あれから連絡のない歩実。


    自分でしばらく会わないと言ったのに、気になる自分がイヤだ。


    もう私は歩実の友達にすらなれない気がした。


    そう思うだけで胸が苦しくて泣きたくなる。


    今までこんなに人を好きになった事があるだろうか?

    (携帯)
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