ビアンエッセイ♪

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■9967 / ResNo.80)  つちふまずさんへ。
  
□投稿者/ 秋 一般♪(10回)-(2005/06/04(Sat) 12:49:01)
    待ち望む。
    嬉しいお言葉、ありがとうございます。
    私が綴るのは非現実でも、まして不可思議でもなく、起こり得る日常のワンシーンです。言葉を介してそこに何かを見い出したと言うのなら、それはあなたのセンサーが敏感に感知したのでしょう。言葉を繰り出し、そして受け止められる人は皆、繊細なアンテナを巡らせているのだと思いますよ。
    次回はあまりお待たせしない内に更新しようと思いますので、あなたの時間をほんの一時でも委ねて頂けたら、と。再びつちふまずさんの目を楽しませられますように。


    (携帯)
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■10018 / ResNo.81)  ─Cold And Warm
□投稿者/ 秋 一般♪(11回)-(2005/06/07(Tue) 10:15:04)
    二学期もそろそろ終業式が迫った、十二月の半ば。
    他学年より一足早く期末試験を終わらせて、やって来ました修学旅行。
    これぞ二年生の、いや高校生活最大のイベントっ!
    例え行き先が定番中の定番・京都と言えど、気心の知れた友人達との旅行は楽しみなわけで。
    しかも、元来のイベント好きな私の性格。
    こりゃあもうはしゃぐしかないってゆーか、必然的にそうなるってゆーか、テンションは鰻登りってものだ。
    先週まで必死になってテスト勉強をしていたけれど、今となっては遠い過去。
    思いっ切り楽しもう!
    ……と、思っていました。今朝までは。



    「うー…だるいぃ…」
    旅行二日目の今日。
    班別の自由行動日である今日。
    市内観光である今日に。
    私は宿にてお留守番。ひとり、布団を引っ被ってがらんとした部屋でふて寝している。
    イベント好きという子供のような私の性格が、見事に裏目に出たらしい。
    出発日の前日は興奮して眠れなかった。
    当日になって睡眠不足による体調不良、現地に到着してからの気温の変化で完璧にノックアウト。
    昨晩から寝込んでいるというわけ。
    普段は自他共に認める程の健康体なのに、悪い事は重なるものだ。
    「ちくしょーっ私が何をしたぁ!」
    叫んだ傍からごほごほと咳き込む。
    こんな情けない姿は少なくとも川瀬には見せられない。
    あーぁと一つ大きく息を吐いた時、枕元の携帯がメールの着信を告げた。

    ─ちゃんと寝てる〜?

    見ると、差出人は皐月から。
    嫌味か、このやろ。
    思いながら、返信せずに携帯を放り投げる。
    予定だと今頃皆、金閣寺辺りかなぁ。
    木造の天井板の節目ををぼうっと眺めながら、中学の頃に見た金ピカな寺を思い浮かべて。
    私、どちらかと言えば銀閣寺みたいな質素な雰囲気の方が好きなんだよね。なんて。
    独りごちていると。
    静かに静かに襖が開いた。

    「あ…起こしちゃった?」

    物音を立てないようにそっと部屋へと入って来た人物は、事態が飲み込めずにいる私に申し訳なさそうな声を掛ける。

    「笹木〜。茜の様子どう?」

    少しの心配りも感じられず、ずかずかと入って来たのは勿論皐月。

    「皐月。茜は具合悪いんだから少し静かに、ね?」
    「だいじょーぶ、だいじょーぶ、茜だもん」

    何を根拠にそう言っているのか、笹木の後ろからひょっこり顔を出した陽子の、静かにする気が微塵もない無遠慮さに呆れる私は閉口して。
    ぞろぞろと、次から次へと顔を覗かせるのは現在市内観光中であるはずの我が班員達。

    「茜ぇ、大丈夫ー?」
    「茜ちゃん、具合は良くなった?」
    「そろそろ平気そう?」

    郁に比奈、弥生、そして…川瀬。
    どうして。
    「ほら、抹茶プリン。これなら具合悪くても食べられるんじゃないかなーって」
    皐月はそう言うと、持っていた袋から箱を取り出し、その中から一つを差し出した。
    「八橋も買って来たけど、消化に悪いかな」
    どうだろ?と、陽子が笹木に尋ねている。
    無言で川瀬が差し出したレモンティーのパックを、私はごく自然に、あまりにも素直に受け取った。
    目の前でお土産を広げ始める友人達を見つめ、
    「皆…観光は?」
    訝しげに訊ねる私に、
    「あー、その事ね。私らさ、中学の時にも修学旅行で京都行ってんの」
    八橋を摘みながら陽子はあっさり言った。
    それに笹木が頷く。
    「皆で話して全員一致で決まったの。一度行った事があるなら行かなくてもいいよね、って。自由時間は好きな場所に行っていいでしょう?だからね──」
    「ここってわけ!」
    笹木が言い終える前に床を指差しながら皐月が声を上げた。
    「だけど、行った事なかったとしても戻って来たよ」
    と、郁が言う。
    うんうんと大袈裟に首を縦に振る陽子を見ながら、疑問符を浮かべている私に、
    「やっぱり茜がいなきゃだめでしょ、あたしら皆揃ってこその班なんだから」
    一人でも欠けてちゃ意味ないよ、と。
    皐月はにかっと笑った。
    だよねー、そう頷き合う友人六人に悪友一人。
    …ちくしょう。こいつら。
    こみ上げてくる何かが何だか無性に悔しくて、私はがばっと布団に潜った。
    「あれー?どうしたの、茜」
    「私達、うるさかった?具合、悪化しちゃった?」
    「調子に乗って騒ぎ過ぎたかな…」
    口々に囁き合う優しい声の数々が、分厚い布団を通してくすぐったく響く。
    すると陽子は、
    「あぁ、違う違う」
    けらけらと笑って。

    「感動して泣いてんだよ、きっと」

    茶化すように言った。

    ぽんぽんと叩かれるのを布団越しに感じながら、
    「うるさぁ〜いっ」
    私は陽子のその手を内側から蹴っ飛ばし、低く唸った。


    …勿論、それは鼻声で。



    -Thanks to friend's warm hearts, bring tears to my eyes.-




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■10019 / ResNo.82)  ─Turn the light out!
□投稿者/ 秋 一般♪(12回)-(2005/06/07(Tue) 10:16:28)
    団体行動が苦手なあたしには、やはり行事というものは苦痛でしかない。
    それは修学旅行も例外ではなく。
    最終日となった今日。
    残すところは今夜だけで、明日になれば家へ帰れると思うと、あたしは大いに安堵していた。


    …しかし、それも間違い。
    最終日だからこそ、その夜は盛り上がるというものらしい。
    三泊四日の疲れは出ないのだろうか、今宵の宿の一室はいつも以上に騒がしかった。
    しかも、だ。
    旅行初日から寝込んでいた氷野が回復してしまったから、余計手に負えない事態となっている。
    大人しくしていた分の憂さを吐き出すかのように、このはしゃぎ具合は始末が悪い。
    ずっと倒れてりゃ良かったのに、胸中で毒づいていると、目の前に座っていた笹木と目が合った。
    にっこりと笑って、敷かれた布団に寝転がっているあたしの横へと移動する。
    「ね、川瀬。こんな時くらい楽しもう?」
    そしてまたふわりと笑う。
    こいつには、敵わない。
    あたしの考えてる事なんてお見通しなんだ。
    はぁ、と。
    溜め息をつく。
    「じゃあ次は王様ゲーム〜!」
    その声を聞いて。
    はぁ?と。
    悪態をつく。
    「定番だよねー」
    言いながら、既にゲームの為のくじを作り始めている皐月。
    「あ、当然全員参加。拒否権無効。川瀬もだからねっ」
    にんまりと笑う陽子。
    あたしはげんなりしながら、
    「くだらない。やるか、そんなの」
    立ち上がり、部屋を出て行こうとした。
    それは、あたしのTシャツの裾を掴んだ誰かの手によって阻まれたけれど。
    「たまには、ね。いいじゃない」
    笹木は笑った。
    やろうよ川瀬、と。
    こんな事でごねるのも何だかとても子供じみているように思えたので、あたしは何も言わずにそのままそこに腰を下ろした。


    けれど、すぐにあたしは後悔した。
    その場に留まった事を。
    元々テンションが半端じゃないこの連中。
    連日の疲労と夜の興奮からか、いつにも増して異常な弾けっぷり。
    幸い大した被害は被ってはいないものの、この馬鹿げた雰囲気にはついていけない。
    布団の上でごろりと寝返りを打った時。
    「次はぁ……2番が5番にちゅー!」
    今一番ノリに乗ってる大馬鹿野郎、もとい陽子が叫ぶ。
    アルコールは入っているはずがないのに、何々だこの酔っぱらいのようなテンションは。
    「2番は誰ぇ?」
    訊ねる陽子に、
    「はーい。私〜」
    どこかのほほんとした笹木の声。
    「じゃあ5番は?5番はっ?!」
    興奮気味な陽子。
    嫌な予感がして。
    ついさっき引かされたくじに目をやる。
    「あ、川瀬じゃん。5番」
    寝そべっているあたしの頭上から、あたしの手元を覗き込む皐月の声が降ってきた。
    「えっ?まじっ?川瀬っ?!」
    陽子が、これは面白い組み合わせだと、笑う。
    ……この野郎。
    「それじゃあ笹木さんと川瀬さん、お願いしま〜す」
    頬でも口でもお好きにどうぞと、陽子はにやにやと下品な笑みを口元に添えてあたしと笹木を交互に見た。
    氷野が何だか不機嫌そうな気がするけれど、そんな事はどうでもいい。
    「馬鹿馬鹿しい。付き合ってられないね」
    あたしは手元のくじを投げ捨てて、「寝る」布団を被った。
    「川瀬ぇ、そーゆーのルール違反だよ。盛り下がるなぁ」
    ぶーぶーと文句を言う陽子。
    そのままあたしがくるまる布団へと飛び乗る。
    「キースッ、キースッ」
    その鬱陶しさに声を荒げて。
    「するかっ」
    がばっと身を起こし、馬乗りになる陽子を払った。
    「おかしいだろ、女同士でそんなの」
    どうかしてる、と陽子を睨みつけてやったけれど、やはりこいつもなかなか引かない。
    「たかがゲームじゃん〜」
    あっけらかんと笑う。
    …何を言っても無駄なのか?
    目眩すらしそうになってきたあたしは、
    「笹木。ほら、あんたからも何か言えって」
    すぐ側にいた、同じく被害者である笹木に助けを求めた。
    求めた…ものの。
    にっこりと、柔らかないつもの笑顔を見せるだけなので。
    だから何でそう楽しそうなんだ…脱力して、思わず問おうとすると、


    「川瀬はそんなに私とキスするのが嫌?」



    ───…は?

    はぁぁぁぁ?!

    おいおい、まさか連中の空気に中てられでもしたのか?
    今日はあんたも何かおかしい。
    何も言う事が出来ずにいるあたし。
    笹木は少しずつ少しずつ、近付いてくる。
    距離が、ゆっくりと縮まる。
    「嫌?」
    笑みはそのまま。
    「嫌とか、そうじゃなくて……」
    笹木があたしの頬に手を添える。
    もう陽子の野次は聞こえない。
    真っ直ぐにあたしの目を覗き込む笹木の瞳から顔を逸らす事も出来ず。
    顔が近い。
    息遣いまでも生々しい程に感じ取れる。
    笹木が瞼を閉じて──

    「ちょっ、待っ…」

    最後の抵抗を試みて、けれど多分あたしは完全に拒み切れないだろう、そう思った瞬間。

    「消灯の見回り来たよ!」
    皐月が叫んだ。

    「え?!やばい!」
    陽子達はばたばたとトランプやらくじやらお菓子やらを片付け始め、
    「そんなの後でもいいじゃんっ。どこでもいいから適当に布団潜って!電気消すよっ!」
    そう氷野が叫んだと同時に─パチリ、と。
    スイッチが落とされた。
    部屋の外で見回りの担当だろう教師の足音がする。
    ガチャリとドアが開かれ、全員が床に就いているのを確認すると、再びドアは閉じられた。
    遠ざかる足音に、潜めていた息を解放して。
    ふぅと大きく息を吐いたら、すぐ目の前には普段から見慣れているルームメイトの笹木の顔。
    いくら適当にって言ったって人がいるとこに潜り込んでくるなよっ、そう言ってやろうとしたら。
    笹木の唇があたしの口を塞いだ。
    柔らかな感触が優しく伝わり。
    余韻を残して離れた瞬間、やっぱり笹木は笑っていた。


    「先生もう行ったよね」
    氷野のその声と共に再び電気が点けられた。
    ごそごそと布団から這い出る音がし始める。
    まだ身動きが取れずにいるあたしの布団は、共に潜んでいた笹木によって剥がされた。
    「あれ?笹木と川瀬、おんなじとこに潜ってたの?」
    「うん、急だったから近い布団に入っちゃった」
    「…川瀬?顔赤くない?」
    「息苦しかったんじゃない?」

    そんな会話をどこか遠くに聞きながら。



    もう一度──
    電気が消えはしないだろうか。




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■10020 / ResNo.83)  ─Merry Merry
□投稿者/ 秋 一般♪(13回)-(2005/06/07(Tue) 10:17:40)
    さくさく、と。
    降り積もった雪を踏みしめながら、歩く。
    昨夜から降り始めた雪は一晩で街中を白銀に染めていた。
    もう雪を見てはしゃぐような歳でもない。
    ただ学校の行き帰りが辛くなるだけだ。
    と、今現在、部活からの帰り道真っ只中の私は思うわけなのです。
    ざっくざっくと次第に足並みも荒々しくなってゆく。
    いつもの道が倍以上に感じられてしまうからこの季節の雪は嫌なのだ。
    …ただ、私の場合。
    理由はそれだけではないのだけれど。
    奇しくも世間は十二月二十五日。
    俗に言う、クリスマスである。
    ホワイト・クリスマスだなんて、神様も随分粋な真似をしてくれるじゃないか。
    皮肉たっぷりに胸中で呟いてみる。
    クリスマスムード高まる中、こんな風に雪が降ってみろ。
    益々浮かれた人々のお祭り気分はヒートアップするに決まっている。
    これだからクリスマスは、もう一度呟いた時。
    雪に足下を取られた私はずるりと見事にひっくり返った。
    あー…何やってんだろ、私。
    起き上がる意欲さえ湧かず、仰向けのまま、すっかり雪が止み晴天を取り戻した青空を眺める。
    陽射しで顔は暖かいものの、背中がじんわりと冷えてゆくのがわかる。
    冷たい、でも起きるのめんどい、そんな事を考えていると、ふっと頭上が陰った。
    「聖奈?何やってんの?」
    見れば、怪訝な顔をした久美が私の顔を覗き込んでいた。
    ほら、と差し出された彼女の手を借りて起き上がる。
    「転んだのはわかったけど、寝っ転がって何してたの?」
    風邪引くじゃないのと、再び怪訝な顔で訊ねる久美に、「起きるのめんどくて」短く答えると心底呆れた顔をされた。
    そのまま何となく、ふたり並んで帰路を行く。
    あ、と思い出したように久美が声を上げたので私は彼女の方を振り向いた。
    「そう言えば今日クリスマスだよ、クリスマス!しかもホワイト・クリスマスになったね!」
    にこにこと嬉しそうな顔。
    私はクリスマスなんてそんなものにはお構いなしに、ころころ表情が変わるなー、久美を見ながらそんな事しか考えてはいなかった。
    「聖奈…つまんなそう」
    反応が希薄な私が不満だったのだろうか、久美は拗ねたような眼差しを私に向けた。
    そんな事を言われても…私も少しばかり困ってしまう。
    そして。
    「…嫌いなの、クリスマス」
    ぼそっと呟いてみる。
    すると彼女は不思議そうに首を傾げた。
    何で?その目はそう言っていたから、
    「今日誕生日なんだ、私」
    応えてみせる。
    久美はくりくりと目を丸くさせた。
    「え?今日?」
    「そう、今日。クリスマスムードに皆浮かれてるからさ、毎年私は誕生日だって事忘れられるんだよね」
    やれやれと諦めにも似た溜め息を吐く。
    だから嫌いなの。わかった?
    そう言おうとすると突然、
    「おめでとうっ!」
    満面の笑みで彼女は言った。
    「この場合、Happy Merry BirthDay、かな?」
    うんうんと首を縦に振って一人納得している彼女。
    そしてまた、思い出したように言う。
    「プレゼント、何が欲しい?」
    予期せぬ問いに、ただただ面食らう私。
    「誕生日だって知ってれば何か用意しといたんだけど。ほら、知ったの今じゃない?」
    だから、と続けて。
    「今すぐには無理だけど用意するね。ちゃんとプレゼントしたいから」
    ね?と、彼女は優しく微笑んだ。

    「何が欲しい?」

    再び問われて。




    ─あなたを。



    …なんて。
    言えるわけないじゃない。
    代わりに彼女の片手を両手できゅっと包んで、暖を取る仕草をした。
    「寒い」
    一言呟くと、一瞬きょとんとし、すぐさま「こんなのでいいの?」と笑った。
    「寒がりだもんねー、聖奈」
    空いているもう片方の手をふわっと添えて。
    「そうだ。じゃあ手袋を買ってあげようっ」
    名案だとばかりに瞳を輝かせた。

    「だから今日は、これで我慢してね」

    そう言って力強く握られた私の手。
    ほんのりと暖かい。
    私達は互いの手を繋ぎながら帰り道を辿った。
    踏みしめられた白に残る足跡を見て、ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけだけど、この日が好きだと思えるような気がして。

    …メリークリスマス。

    小さな囁きに彼女はかすかに笑った。



    今はまだ、この温もりだけで。




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■10053 / ResNo.84)  はまった・・・
□投稿者/ ごんべぇ 一般♪(1回)-(2005/06/09(Thu) 11:22:11)
    やばいです・・・(==)・・・
    はまってしまった!すごく素敵です!!
    登場人物一人一人の気持ちがはっきりと・・・くはぁ(≧▽≦)
    最初から一気に読んでしまいました。。。
    笹木がんばれ!(笑)
    久しぶりの感動をありがとうございます☆
    続きも楽しみにしてますよっ♪
引用返信/返信 削除キー/
■10152 / ResNo.85)  おもしろぃ!!
□投稿者/ なぁ坊 一般♪(1回)-(2005/06/13(Mon) 22:33:59)
    文章が読みやすくて面白いです(*>∀<)/笹木と川瀬のコンビが大好きです!!2人には早く上手いこといってほしぃですね〜(●^ω^●)
    楽しみにしてます♪

    (携帯)
引用返信/返信 削除キー/
■10213 / ResNo.86)  ごんべぇさんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(14回)-(2005/06/16(Thu) 10:05:39)
    はじめまして。
    最初から読んでくださったという事で、感謝の念が尽きません。
    残すところは冬から春にかけて。ようやく季節が一年巡ります。最後までお付き合い頂ければ幸いです。

引用返信/返信 削除キー/
■10214 / ResNo.87)  なぁ坊さんへ。
□投稿者/ 秋 一般♪(15回)-(2005/06/16(Thu) 10:06:54)
    感想、ありがとうございます。
    おもしろいという言葉はとても嬉しいもので、それだけで原動力に繋がります。
    笹木と川瀬。二人共鈍く、その上不器用なので、どうなるのでしょうか。今後も見守って頂けたらと思います。

引用返信/返信 削除キー/
■10744 / ResNo.88)  ─年の瀬に逢瀬を重ね《have a reunion with…》
□投稿者/ 秋 一般♪(26回)-(2005/07/07(Thu) 09:57:43)
    あぁ、もうすぐ今年も終わる。
    雪がちらつく中、商店街を抜けるメインストリートを歩いていると、それぞれの店先はお飾りやら何やらですっかり年の暮れのムードが漂っていた。
    あと数日で門松が立ち並び、正月のおめでたい雰囲気で賑わう事は想像に難くない。
    つい最近まではクリスマス一色だったろうに、と。
    商店街の浮かれた空気に呆れつつ、やはり私もわくわくを隠せない。
    寮生である私は、冬休みを利用して実家へと帰省してきた。

    「天野さんとこの美和ちゃん?久しぶりだねぇ。いつ帰ってきたんだい?」

    「あれ、美和ちゃんかい?お盆以来じゃないか。もっとちょくちょく帰っといでよ」

    昔ながらの商店街は、小中学校時代から通い慣れた通学路であり、今も変わらず旧い顔がちらほら見られる。
    掛けられた声に笑ってお辞儀し、私は中通りの中心に位置する蕎麦屋の暖簾をくぐった。

    「ただいまー」

    正面から入ってすぐのカウンターに、ちょうど昼の営業時間が終わった所なのか、エプロンを外した父が座って新聞を広げていた。
    顔を上げて私を見据えると、
    「おう、帰ったか」
    がさがさとした声でぶっきらぼうに答える。
    すぐまた新聞に目を落としてしまったけれど、わずかに持ち上がった口の端に、私はしっかり気付いていた。

    「あらあら、美和。おかえりなさい。今来たの?」
    奥からぱたぱたと母が来る。
    腰に巻いたエプロンで手を拭いながら、
    「今お茶でも煎れようね」
    カウンターの中へと入っていくので、私も父の隣へと腰掛けた。
    「そろそろ大晦日でしょう?予約がいっぱいで大忙しよ」
    お父さんにはたくさん打ってもらわなきゃと、急須を動かす手は休めずに笑いながら言う。
    「私も出前手伝うよ」
    冬休み中はこっちいるし、カウンター越しに母が差し出す湯呑みを受け取って言った。
    「あら、ほんと?助かるわぁ」
    母の目元の笑い皺がますます深まる。
    「美和が出前行ってくれるって。良かったわね、お父さん」
    渡された湯呑みにずずっと口を付けて、父は「ん」と小さく返した。
    帰ってきたなぁと、思うのはこんな時。
    何の変哲もない一場面が、帰省の時に一番求めているものだ。
    両親のやりとりを横目に、私はお茶を口に含む。
    「あ。そう言えばさ、ちいちゃん今年受験生じゃなかった?どこの高校行くの?」
    私の言葉に、
    「酒屋さんの千佳子ちゃん?あぁ、あの子ももう中学三年生なのねぇ」
    母は過去を懐かしむように遠くを見つめた。
    「あんた達、小さい頃はいつも一緒だったわねぇ。千佳子ちゃんはいっつも美和ちゃん美和ちゃんってくっついて歩いて。この辺じゃ子供も少ないから、あんたも年下の千佳子ちゃんの面倒良く見てたものね」
    懐かしいわと、母が目を細めて話すのを私は静かに聞いていた。

    「そうそう、その千佳子ちゃん。あの子ね───」
    「お邪魔しまーすっ」

    何かを言い掛けた母の声は、勢いよく開かれた手動の扉の音によって遮られた。
    先程の声の主は黒髪を両脇でちょこんと二つに結わえた少女。
    彼女はピシャリと扉を閉め、こちらへ向かってきた。
    「お店まだ準備中なのにごめんね、おばさん」
    申し訳なさそうに両のの手の平を自身の顔の前で合わせ、
    「あのね、ぎりぎりになっちゃったけど大晦日のお蕎麦の予約、六人前頼めるかなぁ?」
    ちらりと上目遣いで母を見る。
    母は大きく頷いて、
    「承りました」
    常連さんだものね、と笑った。
    母の言葉に少女は顔を緩ませる。
    「良かったぁ〜」
    綻ばせた口元からは八重歯が覗き、あどけない笑顔は幼さをまだまだ残していた。
    子犬みたいでちょっと可愛い。
    私より四つ、いや五つは下だろうか。
    あれこれ考えていると、
    「あんた何ぼーっとしてるの。ほら、挨拶しなさい」
    あぁ、さっきの会話だとお得意様らしいしね。
    相手が子供とはいえ、確かに黙っているのは失礼だ。
    母に促された私は、
    「初めまして、娘の美和です。いつもご贔屓にして頂き、ありがとうございます」
    立ち上がって恭しく頭を下げた。
    どうだ。
    商売人の娘としてなかなかの挨拶でしょう?
    得意げに母の方を見やると、「何を言ってるのかね、この子は」と苦笑していた。
    「美和…ちゃん?」
    目線を移した先の少女も何やらぽかんと口を開いている。
    「美和ですけど?」
    訝しげに首を傾げると、
    「あんたほんとに気付いてないのねぇ。ほら、千佳子ちゃん。さっき話してたでしょうに」
    横から口を出す母。
    今度は私がぽかんと口を開けた。
    「ちい、ちゃん──…?」
    え?
    だってさ?ちいちゃんは今年で中学三年生のはず。
    この子はどう見たって中一くらい…。
    けれど確かに、目の前の顔は私がよく知っている顔だった。
    …てゆーかね。
    最後に会った時から三年経ってるんだよ?
    私の中のちいちゃん像はそれなりに成長していて。
    まさかそのままの姿でいるなんて、思うわけがなくて。
    むしろわかりづらいわっ!
    「あの…美和ちゃん?」
    いつの間にか私は彼女をまじまじと見つめていた。
    「あ、ごめん」
    視線をぱっと逸らすと、ふふふと含んだ笑みが耳に届いた。
    「美和ちゃん、大人っぽくなったね〜。気付けなかったよぉ」
    綺麗になった、そんな風に八重歯を見せて笑う。
    あんたは、変わらな過ぎだ…。
    私達のやりとりを、母は微笑ましそうに眺めている。
    「あんた達久し振りなんだから美和の部屋で話したら?」
    時計をちらりと見て、そろそろ店も開けるしねぇ、そう言うので、
    「行く?」
    天井を指差して訊ねた。
    ちいちゃんがこくりと頷いたのを確認して、私達二人は住居となっている店の二階に続く階段を上った。
    「後でお部屋にお蕎麦持ってってあげるからねー」
    そんな母の声を背中に受けて。




引用返信/返信 削除キー/
■10745 / ResNo.89)  ─年の瀬に逢瀬を重ね《ナキムシ》
□投稿者/ 秋 一般♪(27回)-(2005/07/07(Thu) 09:59:33)
    「三年振り、かな?」
    離れていた時間を埋めるように、幼馴染み二人は互いの話をし合った。
    ふと漏らした彼女の呟きに私はうんと答える。
    「まさか美和ちゃんが寮入るなんて思わないもん」
    「だってここからは遠過ぎて通えないから」
    「そうじゃなくてぇ…そんな遠い高校に行くなんて、って事!ほんと全く会わなくなるんだもんなぁ」
    今までも春休みや夏休み、そういった長期休暇中には帰っていた。
    けれど毎回、ちいちゃんの部活の合宿と私の帰省とが被ってしまって顔を合わせるに至らなかったのだ。
    本当に久し──
    「久し振りだね、美和ちゃん」
    そちらに顔を向けると、真っ直ぐこちらを見つめる幼い笑顔のちいちゃん。
    その瞳に何だか照れてしまって、懐かしさで泣きそうになってしまって、
    「そう言えば今年ちいちゃん受験生でしょ?」
    私は無理矢理誤魔化した。
    ちょっと強引だったかなと思いつつ、私は彼女に笑顔を向ける。
    「どこ受けるの?やっぱり地元?」
    待ってましたとばかりに彼女は妙に含みのある笑みを浮かべた。
    「…何?」
    私はわずかに眉をひそめる。
    「実は…──美和ちゃんと同じ高校でーっす!」
    推薦だから来月なの、と彼女は私の目の前でVサインを作ってみせて。
    「それでね?あたしも寮に入るからいっぱい一緒にいられるよ」
    言った後にはにかんだ。
    小さい頃から一緒の幼馴染みは、私を追い掛けてきたと、なんて可愛い事を言う。
    「あ…美和ちゃん?嫌だった、かな…?」
    黙っている私に不安を感じたのか、顔色を変えて訊ねるちいちゃん。
    私はふっと笑って。
    「ううん、嬉しい」
    そう言うと、ちいちゃんはぱっと顔を輝かせた。
    そして私は声のトーンを落としてもう一言。
    「でもね、ちいちゃん…私、今高三なんだけど」
    「──へ?」
    間の抜けた声を発して凍りつくちいちゃん。
    「だからね、ちいちゃんが入学してきた頃には私は卒業していなくなってるの」
    人差し指で自分とちいちゃん、交互に指差す。
    「……そんなぁ〜」
    みるみる内にちいちゃんは目の淵に涙を溜めてゆく。
    こればっかりはしょうがないよね、と私はわざとらしく溜め息をついてみせた。
    「お蕎麦持ってきたわよぉ。──…千佳子ちゃんどうしたの?」
    「おばさぁ〜んっ」
    二階へと上がってきた母にちいちゃんは泣きついた。
    母は「あらあら」と困ったように笑っている。
    私は心の中で密かに舌を出していた。

    『付属の大学に進学が決まってるから、校舎は違っても同じ敷地内にいるんだよ』ってね。

    母にしがみつきピーピー泣いているちいちゃんを傍観し、変わらないなぁとぼんやり考える。
    いつも私に騙されたりからかわれたり。
    そして母へと助けを求める。
    小さくて泣き虫で甘えん坊なちいちゃん。
    一人っ子の私は、そんなちいちゃんが妹のように思えて、それはもう可愛くて可愛くてついつい意地悪してしまうんだ。
    姿も幼いままのちいちゃんなので、昔へと引き戻されるような錯覚をしてしまう。
    目の前で泣きじゃくる、15歳。
    うわぁ子供がいる…呆れた声を上げそうになった時、

    「──決めたっ。せっかく久し振りに会えたんだもん。美和ちゃんが帰るまでここに泊まる!」

    ちいちゃんは目の端の涙を袖でごしごしと拭き取り、「いいよね?おばさん」と訊ねてから私の方へと顔を向け──

    「一緒の時間を過ごしたいじゃない?それが限られてても」
    にっこり笑った。

    その笑顔に不覚にもドキリとさせられ。
    幼い容姿から変わっていないと思ったけれど、やはり彼女の中の時は確実に流れていた。
    私にくっついて歩いていた小さいままのちいちゃんではないようだ。
    春になって再会したら、私に綺麗と言ったように、今度はあなたがそうなっているかもしれないね?
    ただ、口から覗く八重歯は変わらずにあって欲しいと願うけれど。


    冬休みはまだまだ長い。
    離れた時を埋めるように、
    年が暮れるまで、
    年が明けてからも、
    一緒にいようよ。



    真実は、いつ話そうか?



    気が抜けて再び涙するだろう幼馴染みの姿が目に浮かぶ、年の暮れ。


    あぁ。
    春の足音が聴こえてきた。
    すぐそこまで。




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