| 店内に入ると、すぐに白いグランドピアノが見えます。 今回は、ピアニストとエスコートのお話です。
「おはようございます!今日も宜しくお願いしまっすっ!」 あの子が店に入ると響き渡る声、入店当初から変わらない。 全く、どこからそんな元気がくるんだろなぁ〜。
「りんちゃん、来たわよ〜。伊達ちゃん」 ヘアメイクのおばちゃんが、笑いながら教えてくれる。 「…聞こえてますよ。今日も元気ね。」 そうよね。とニコニコしてるおばちゃん
皆に好かれる様になっちゃって…
「おっはようございます!今日も宜しくお願いしま〜す。あ、ねぇさん!」 「…おはよ。」 「二日酔いですか?!にゃはは〜」
…何あの笑顔!犬みたい。つか挨拶の前に二日酔いかよ!!
二日酔い大変ね〜。とおばちゃん もうヘアメイクも完了だ。クルクルと巻いてアップにした姿は、我ながら良い感じ。あとは、薔薇の飾りでいつも通り。
「今日も綺麗ですね☆」 「当たり前。」 「タイタニック弾いて下さいっ」 「やだ。」
いつものやり取り。 愛想の良い伊達ちゃんを、冷たくあしらう。端から見たら、意外としか言いようがないだろう。
今日は何を弾こうかな…
パラパラと楽譜を捲る。 タイタニックの楽譜が出てきて、手が思わず止まる。 視線は、ホールでトレンチを持っている伊達に。
どうしよっかなー…。あ、また愛想振りまいてる。 頑張ってるなぁ。話すの長くない? こっち見もしないで、素通り。 ふーん。
パラパラと楽譜を捲りなおし、いつも通りのオープニングを弾く。 そこから順に、次へ次へ。 その間にも、店内にお客様が入ってくる。
「おぅ、伊達ちゃん!今日も元気だね〜。」 「いらっしゃいませ!待ってましたよ〜!」
…お客さんにも愛想振りまいて。 頑張ってるなぁ。19で若いのに。 私なんて今年で28なんだよなぁ、あんなに元気じゃなかったな。
『愛してる♪』 『それ、もう言わなくていいですよ。嫌いにならないし。』 初めて言われた言葉。 伊達ちゃんは、何度も初めての言葉を言う。 いつの間にか、目で追うようになっていたくらいに。
(携帯)
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