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■21432
/ 親記事)
宝物(1)
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□投稿者/ つぐみ
一般♪(1回)-(2012/02/05(Sun) 01:14:51)
『私と、付き合って?』
半年前の夏、8月21日。
蝉が五月蠅く鳴いている中、告白された。
・・・・・クラスメイトの、女の子に。
『・・・・・え?』
夏休みが終わってから行われる学校祭の実行委員になり、
実行委員のメンバーだけで、夏休み中に何度か集まった。
彼女は自分と同じ、学校祭の実行委員のメンバーだった。
クラスは一緒、でもいつも一緒にいる友達ではなく。
1日に何度かは話す仲だったけど、いつもそれだけ。
少し言葉を交わすだけで、一緒にお昼ご飯を食べることも、
休みの日に出かけることもなかった仲でもある。
それが自分と彼女なりの友情で、関係だと思っていた。
彼女―――――百合原琴音は、“美人”と言われる類の人だ。
日焼けなんて全く縁がない白い肌に、真っ黒な墨や闇のような髪。
つけまつげいらずの切れ長の、しかしぱっちりとした二重の黒い目。
程よく脂肪がついた、手足が長く、すらっとしたモデルのような体型。
しかも、容姿だけではなく、その中身も美しい人でもある。
明るく人見知りしない性格で、礼儀正しく、思いやりがあり、努力家。
更に成績優秀で、でも運動は少し苦手で、特に球技は苦手のようだ。
おまけにお嬢様育ちという、大きな大きなおまけまでついている。
まるで、マンガやアニメのヒロインか何かのような人だ。
どう生まれ、どう育てられたらこういう風に育つのか、みんなが不思議がった。
外見も中身も素晴らしい人なんて、そうそういないから。
それに比べて、自分―――――塩崎海は、平々凡々な人間だ。
小さい頃からテニスをやっているので、他の人よりも日焼けしている肌。
テニスの邪魔にならないように、と、楽だという理由でしているボブヘアー。
髪の毛は日光に長時間当たりすぎたためか、少し茶色くなっている。
目は母親に似て茶色っぽいぱっちりとした目で、大きい方じゃないかと思う。
手足には筋肉がついてしまったが、体型は部活のお陰で何とか普通体型だ。
性格はというと、明るいとは思うし、天然だの鈍感だの面白いだのと言われる。
成績はそこそことれているが、勉強より運動の方が断然得意だし、好きだ。
とりあえずは、多くの友達に囲まれ、充実した学校生活を送れている。
そんなある意味正反対のタイプである彼女が、自分のことを好き?
同性で、しかも特別仲がいいわけでもない、この自分を?
訳が分からなくなりそうだった、いや、実際なっていたと思う。
同性に告白されたという衝撃と、彼女が自分を好きなことを知った衝撃と。
いろんな衝撃と驚きで、危うく持っていた書類を落としそうになった。
『ごめんなさい・・・・いきなりだから、驚くわよね』
申し訳なさそうに微笑んだ彼女は、やっぱり綺麗だった。
しかし、そんな顔をされても、自分はどうしたらいいのか分からない。
確かに彼女のことは好きだ、しかし、“クラスメイト”として。
恋愛感情は抱いていないし、抱くはずがないとさえ思っている。
自分が誰か同性を好きになるなんて、全然想像が出来なかった。
だから、混乱していた自分は、なおも彼女と向き合ったまま黙っていた。
『だけど、どうしても伝えたいと思ったの』
『いや・・・・うん、ありがとう。どうしていいか分からないけど』
やっとの思いでそう伝えると、彼女はほっとしたような表情を浮かべた。
きっと、軽蔑されるんじゃないかと、気が気じゃなかったのだろう。
彼女は自分が好きで、普通の異性同士のように、恋人になりたがっている。
しかし、自分は彼女のことをそういう風には思っていない。
『嬉しいけど、だけど私、あな『知ってるわ』・・・・え?』
自分の思いを伝えようとしたのに、途中で遮られてしまった。
ぽかんとしているこちらにふわりと微笑むと、彼女は続けた。
『あなたが私をそういう風に見ていないのは、最初から分かってる』
自分は相手のことが好きなのに、相手は自分のことを好きではない―――――
同性で、クラスメイトで、友達で・・・・・それが2人の間の全て。
異性同士でもないし、お互いがお互いを恋愛対象の範囲に入れている訳でもない。
なのに、相手が自分のことを全く相手にしていないことを承知のうえで。
彼女はこちらに自分の抱えていた思いを打ち明けてくれたのだ。
『でもね・・・・私が恋人としてあなたの隣に立てる日を、諦められないの』
『何度も諦めよう、って思ったわ、だけど諦められなかった・・・・』
『いつもあなたを視界に入れてしまって、あなたのことを考えてしまうのよ』
『しかも女の子同士だもの、もうかなりの確率で叶わない恋だわ』
『それでも・・・・・それでも私は、あなたが好きなの』
彼女の真っ直ぐな思いと言葉は、静かな2人きりの教室に小さく反響した。
真っ直ぐだけど、切なくて、甘くて、温かい、彼女の思い―――――
出来ることなら、それを自分は受け止めて受け入れてあげたかった。
が、今の自分が告白を承諾しても、彼女が喜ばないのは明白なことだ。
彼女はちゃんと、彼女に惚れた自分と付き合いたいと思っているのだ。
そんな、上辺だけの同情じみた感情で付き合うのは、逆に彼女を傷つける。
だからこそ、自分はいい返事も悪い返事も出来ずに突っ立っていた。
『・・・・・ああ、すっきりしたわ、聞いてくれてありがとう』
『・・・・百合原さんは、それで私をどうしたいの?』
『んー・・・・特に考えてなかったわ、思いを伝えることしか考えてなかった』
『普通それから先のことも考えて告白するもんじゃないの?』
『そうかもしれないわね、でもまあとりあえず、私の思いは知っていて欲しくて』
『そっか・・・・すごく嬉しかったよ、百合原さんの思い』
『ありがとう、とりあえず、今よりもっとお近づきになりたいわ!』
そう言うと彼女は、意外と幼く見える満面の笑みを浮かべた。
いつの間にか、真夏の2人きりの教室のカーテンを、かすかな風が揺らしていた。
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■21433
/ ResNo.1)
宝物(2)
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□投稿者/ つぐみ
一般♪(2回)-(2012/02/05(Sun) 01:46:04)
あの告白から月日は流れ、あっという間に半年が経った。
学校祭は大成功を収め、学校祭の終了と同時に委員会は解散した。
しかし、自分と彼女との関係は、あの日から変わっていった―――――
『琴音!私今日放課後寄りたいところがあるんだけど、いいかな?』
『いいわよ、予定は何もないし・・・・でも海、部活は大丈夫なの?』
『大丈夫、今日顧問の先生が出張だかで、部活休みだから!琴音こそいいの?』
『合唱部も今日は練習が休みなのよ、奇遇ね』
『じゃあ遅くならないねー』
あれから琴音のお望み通り、2人の距離はぐっと近づいた。
一緒にお昼ご飯を食べるようになり、放課後や休日も一緒に過ごすようになった。
深く付き合ってみると、琴音が付き合いやすいことに気が付いた。
お嬢様育ちのくせに、全然お嬢様らしくない性格や振る舞いなのだ。
まあ、言葉遣いはお嬢様らしい口調が定着しているようだけど。
琴音と過ごす時間は楽しくて、いつもあっという間に過ぎてしまう。
終礼が終わるのと同時に、琴音と一緒に教室を出た。
お嬢様なのに車で送り迎えなどはしていないので、気軽に寄り道が出来る。
琴音と一緒に近くのお気に入りのクレープ屋さんでクレープを買った。
いつも通り、自分はチョコバナナ、琴音はストローベリー。
食べながらお喋りをし、ゆっくりと歩き、目的地に向かう。
もうすっかり冬を迎えた外は寒くて、コートとマフラーが必須だ。
2人して白い息を吐きながら、寒いね、と言い合った。
『そういえば、どこに行きたいのか聞いていなかったわね』
『今日はね、洋服を見たいの』
『ならいつものところかしら?』
『うん、そうしようと思ってるー』
いつも琴音と行く洋服の店、『JACK』は、世界的に有名なブランドだ。
ブランドといっても学生のお客がほとんどの、リーズナブルなブランド。
3点セットで3000円などと、利益が心配になるほどの安さで売っている。
今から行く支店の『JACK』は、自分の母親の知り合いが店長を務めている店だ。
建物の3階にエレベーターで行き、1番奥の赤を基調としたブースにまっしぐら。
『JACK』のイメージカラーは赤で、全店舗赤を基調とした店内なんだそうだ。
夕方というのもあって、ブース内はそれなりに女性たちで賑わっていた。
『あら海ちゃん、琴音ちゃん!来てくれたのね!』
茶色く染めた髪を頭のてっぺんでお団子にし、フェミニンな服装をした店員。
母親の知り合いで秋からこの支店の店長になった、大津里佳子さんだ。
よく見ると、綺麗に整えられた縦に長い爪も、ピンクと白で飾られている。
『こんにちは、今日は里佳子さん、フェミニンなんだね!』
『そうなのよー、ちなみに昨日はロックにキメたわ』
『JACK』は様々な洋服を売っているため、一通りのジャンルの服は買える。
ロックでもカジュアルでもフェミニンでもなんでも売っているのも魅力の1つ。
『JACK』の服を着て接客している店員の服装のタイプも様々だ。
『さて、今日はどんなお洋服をお探しかしら?』
『今日は―――――』
自分が欲しい洋服のイメージを伝えると、里佳子さんはすぐさま選んでくれた。
一目見て気に入ったのでさっさと試着を済ませ、お会計を済ませる。
『ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております』
数人の店員の声をバックに、2人は『JACK』のブースを出た。
歩きながら、琴音があ、と小さく声を漏らした。
『どうしたの?』
『そういえば化粧水がもう少しでなくなるんだったわ、寄ってもいいかしら?』
『全然構わないよ!』
2階に降り、琴音は化粧品のコーナーで化粧水とマスカラを購入した。
新色のマニキュアが発売されていて、買うかどうか迷っていたがやめていた。
それぞれ買い物を済ませた2人は、同じく2階のカフェに向かった。
そして2人とも温かいカプチーノを注文し、身体を中から温める。
『今日は久しぶりに一緒にお買い物が出来て楽しかったわ』
『うん、私も楽しかったよ、最近部活の練習ばっかだったし』
『そうよね・・・・また明日から頑張りましょう』
そんなやり取りをして、2人は別れた。
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■21434
/ ResNo.2)
Re[2]: 宝物(2)
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□投稿者/ saya
一般♪(1回)-(2012/02/05(Sun) 16:50:47)
続きが楽しみです♪
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■21435
/ ResNo.3)
saya様
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□投稿者/ つぐみ
一般♪(3回)-(2012/02/06(Mon) 00:32:16)
続きが楽しみ、というメッセージ、どうもありがとうございます!
小説をこういった多くの方々の目に触れるところで公開するのは初めてで、
ドキドキしながら書いていたので、とっても嬉しいです。
頑張って書いていきたいと思いますので、これからも読んでやって下さい。
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■21436
/ ResNo.4)
Re[2]: 宝物(2)
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□投稿者/ 優心
@
一般♪(21回)-(2012/02/06(Mon) 00:57:24)
つぐみさん、初めまして♪久々に更新見付けて感動しましたw寒いですが、続編また読ませて下さい!
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