ビアンエッセイ♪

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■21616 / 親記事)  赤い糸(1)
  
□投稿者/ 夢花 一般♪(1回)-(2012/09/06(Thu) 07:57:23)





    栞はここ数ヵ月、毎晩出会い系サイトを見て回るのが日課になっていた。
    どうしても彼氏が欲しいとか、両親に急かされているというわけではない。
    彼氏が欲しいと思わないこともないけれど、ネットで探すのはハイリスクだ。
    慎重なところがある栞は、そんなリスクを冒してまで出会いを求めたくなかった。




    時々、多少興味をそそられる募集記事を目にすることはある。
    しかし、栞が彼らにメールを送ることは今まで1度もなかった。
    いつも「あ、この人、いい感じの人だな」で終わってしまうのだ。




    今夜も最近と同じように、晩ご飯もお風呂も終えてからパソコンを開く。
    そして、いつも見ているサイトを見たり、リンク先に飛んだりした。
    今日も今日とて、栞にメールを送る気を起こすような人はいない。




    (・・・・ん?)




    それは、サイトからサイトへと飛んでいる途中で見つけたリンク。
    サイトのタイトルを見ると、栞が今まで見たことがないサイトのようだ。
    色々なサイトを見て回っていたので、まだあったのかと少し驚いた。
    まあ最近ではネット上の婚活も活性化しているようだし、不思議ではない。
    栞はそのまだ覗いたことがないサイトのリンクを・・・・クリックした。




    (えーと・・・・・)




    随分可愛らしい感じのサイトの内装だな、と思いつつ、とりあえず見て回る。
    友達を募集するところがあったので、まずはそこをクリックしてみた。




    (!?)




    栞は、そこに投稿された出会いを求める募集記事を見て驚いた。
    『男性・ネカマお断り』という言葉が、高確率で並べられていたから。
    よく読んでみると、出会いを求めている人は、全員が女性のようだ。
    ・・・・女性が女性との出会いを求めているサイトだったのだ。




    (これって“レズ”とかいう人たちの出会い系・・・・?)




    栞は同性愛者ではない・・・・というより、女性との恋愛経験がない。
    過去に女性を好きになったことはないし、反対になられたこともなかった。
    少なくとも女性同士の告白やキスやそれ以上のことは、一切したことがない。
    このサイトだって、リンクから飛ばなければ知らなかっただろう。




    (どうしよう・・・・)




    引き返した方がいいのかどうか迷いながらも、募集記事を読む。
    そこでは、さまざまなタイプの女性が出会いを求めていた。
    フェミニンな人、ボーイッシュな人、カジュアルな人・・・・。
    いくつかの分からない単語があったが、調べて理解した。
    彼女たちには彼女たちなりの世界や価値観があるのだろう。




    (こんな出会い系もあるんだ・・・・)




    男性同士の出会い系サイトがあるというのは、友達から聞いて知っていた。
    でも、女性同士の出会い系サイトがあるというのは、初めて知った。
    まあ私生活ではなかなか出会いがないだろうから、あってもおかしくない。
    若干男性が苦手な栞には、そのサイトはどこか居心地がよく感じられた。




    その日は友達を募集するところだけを見て、眠りについた。
    ・・・・そのサイトを、お気に入りに登録して。





引用返信/返信 削除キー/
■21617 / ResNo.1)  赤い糸(2)
□投稿者/ 夢花 一般♪(2回)-(2012/09/06(Thu) 17:49:20)





    次の日の夜もまた、晩ご飯もお風呂も済ませてからパソコンを開く。
    そして栞がすぐに開いたのは、昨日見つけた、あのサイトだった。
    今日は週末だということもあって、昨日よりも新しい募集記事が多い。
    昨日は友達の募集しか見ていなかったけれど、今日は恋人の募集も見てみた。
    専門用語は昨日で大体理解できているので、読みやすかった。



    (やっぱりみんな女性が好きなのかな・・・・)



    栞には、同性を好きになるという感覚が、いまいちぴんとこない。
    恋愛感情を抱く、ということになるんだろうけど、どんなものなのか。
    とりあえず、異性に恋するよりも何倍も大変であろうことは想像できる。
    世間の目や偏見、差別、結婚や子供の問題・・・・たくさんの壁があるだろう。
    それでもやっぱり、ここに集まる人たちは、同性である女性が好きなのだ。



    「あ・・・・」



    彼女たちの想いを想像しながら読んでいると、1つの記事に目が留まった。
    名前は『かえで』、栞よりも4歳年上の24歳の人で、女性らしい人らしい。
    住んでいる場所も自分が住んでいる場所の近くで、親近感を覚えた。



    (どうしよう・・・・メール、送ってみようかな・・・・)



    その人が募集記事を投稿したのは朝の10時41分、何時間も過ぎている。
    おそらく既に何人かの女性が『かえで』さんにメールを送っただろう。
    今は夜の22時半過ぎ、今からメールを送っても相手にしてもらえるだろうか。



    (・・・・まあ、お試し、ってことで、送ってみたらいっか・・・・)



    相手はサブアドを載せていたので、栞もパソコンのサブアドで送ることにした。
    出会い系サイトを見てメールを送るなんて、栞にとっては初めての経験だ。
    何をどう書いて送ればいいか分からなかったので、彼女の文章を真似て書いた。
    自分の名前と年齢と住んでいる場所、簡単な容姿といくつかの趣味。
    “タチ”なのか“ネコ”なのか“リバ”なのかは、今の栞には分からない。
    なのであえて書かず、正直に女性との恋愛経験がない、と書いて送った。



    (返ってくるかな・・・・)



    どきどきしながらマウスを握り締め、『かえで』という女性からの返信を待つ。
    パソコンでメールをチェックしているなら、なかなか気付かないかもしれない。




    その日は、『かえで』さんからは、返信はこなかった。





引用返信/返信 削除キー/
■21618 / ResNo.2)  赤い糸(3)
□投稿者/ 夢花 一般♪(3回)-(2012/09/06(Thu) 18:19:02)





    次の日は土曜日、大学も休みで、用事もこれといって特にない。
    いつもよりも遅く起きて、軽い朝ご飯を食べ、洗濯と掃除を済ませる。
    昨日『かえで』さんにメールを送ってから、メールが気になって仕方がない。



    (どうせきてないだろうけど、見るだけ見てみよっかなあ)



    もう『かえで』さんからの返信は諦めていたけれど、一応確認してみる。
    メールを確認すると、新着メールは3件、どうせメルマガか何かだろう。
    受信ボックスを開いてみると、やっぱり普段利用している通販サイトからだ。



    「・・・・あれ?」



    その中で、誰のものか分からないアドレスからメールが届いていた。
    メールにタイトルはなく、友達やメルマガのアドレスではないようだ。
    送り主が誰なのか分からないまま、栞はその新着メールを開いた。



    (!!!)



    そのメールは、待ちに待った『かえで』さんからのメールだった。
    しかもそのメールには、『かえで』さんの顔の写メも添付されていた。
    明るい茶色に染めた長い髪は緩いパーマがかけられ、耳にかけられている。
    出された耳には小さなルビーのような赤いピアスがつけられている。
    目はたれ目気味で、雰囲気も顔も可愛らしく女性らしい人だった。




    『初めまして、メールありがとう。
     誰からもこなかったから諦めてたよ(笑)


     私でよければ是非メールして欲しいな♪
     栞ちゃんからのメール、待ってます(≧∀≦)』




    意外と『かえで』さんにメールを送った女性はいなかったようだ。
    メールが送られてきたのはつい数分前のようなので、急いで返信する。




    『メールのお返事、ありがとうございました!!
     私もこないと思っていたので嬉しいです(笑)
     女性同士の世界は未経験なんですけど・・・・
     かえでさんにいろいろ教えて頂きたいです(*・ω・*)』




    それから2人は、テンポよくメールのやり取りをし、会話は弾んだ。
    好みや趣味が一緒だったり似ていることもあり、話がしやすい。
    あそこのお店の服はおすすめだとか、あそこのお店はまずいだとか・・・・。
    本当に他愛もない話だったが、『かえで』さんとのメールは楽しかった。
    気付けば、途中で食事をしたりはしたものの、空はオレンジ色に染まっていた。




    『もう17時過ぎなんだねー><
     全然気が付かなかったな(´・ω・`)
     

     あのね、栞ちゃんがよかったらなんだけど、
     Skypeで少しでもいいから話してみない?』




    お互いがSkypeにもLINEにも登録していることは、とっくに分かっている。
    Skypeだったらチャットもできて声も聞けて顔も見れる、しかも無料だ。
    イヤホンやマイク、カメラは既に持っているから、するのは簡単。
    『かえで』さんとかなり打ち解けていた栞は、すぐに承諾のメールを送った。




    『じゃあ、今からちょっと用事があるから、
     今夜の21時からでいいかな?(・ω・)
     Skype名を教えとくね☆、名前はそのまま!』




    メールに書かれた情報をもとに彼女を検索し、コンタクトの追加を要請した。
    Skypeは相手にコンタクトを追加をしてもらわないと、何もできないのだ。
    『かえで』さんはすぐに追加してくれて、用事を済ませに行ってしまった。




    約束の時間まで、あと残り約4時間。







     
引用返信/返信 削除キー/
■21619 / ResNo.3)  赤い糸(4)
□投稿者/ 夢花 一般♪(4回)-(2012/09/06(Thu) 18:37:01)





    晩ご飯を済ませ、食器を洗って片付けると、もう20時50分を過ぎていた。
    約束の時間よりも少し早いが、栞はパソコンを開き、Skypeにログインする。
    友達も何人かログインしているようだったけれど、『かえで』さんはまだだ。



    「早くオンラインにならないかなー・・・・・・あ」



    数分待っていると、遂に『かえで』さんがオンラインの状態になった。
    早速チャットを使って自分から『かえで』さんに話しかけてみる。




    『こんばんは☆用事お疲れ様です♪』


    『こんばんはー、ありがとう(*´∀`*)今準備するから少し待っててね;;』


    『了解です(´∀`)ノ』




    自分はもうマイクもカメラもイヤホンも繋いで、準備万端の状態だ。
    しばらくすると、『かえで』さんから通話がかかってきた。



    (遂に・・・・)



    緊張して、心臓がばっくんばっくんと大きな音をたてて飛び跳ねる。
    深呼吸をしてから、“応答”というボタンを・・・・クリックした。



    『・・・・あ、もしもしー』



    イヤホンから聞こえたのは、高めのこれまた女性らしい声だった。
    初めて聞く『かえで』さんの声に、更に栞の緊張が高まる。



    「も、もしもしっ!」


    『あはははは、もしかして緊張してる?』


    「は・・・・はい」


    『緊張しなくてもいいよ〜、まあ私もしてるんだけどね?』



    そう言ってくすくす笑う『かえで』さんに、少し緊張がとけた気がした。
    『かえで』さんはそれからカメラを繋ぎ、自分の顔を見せてくれた。
    添付されていた写メよりもカメラで見た方が、可愛らしく見えた。
    見せてもらうだけでは申し訳ないと、栞もカメラで自分を映す。



    『あ、可愛らしいね!』


    「えぇ〜、そんなことないですよ〜」



    栞は染めたことがない黒い髪を肩まで伸ばしたボブヘア―で、前髪はぱっつん。
    写メでは写りきれていなかった『かえで』さんの髪は、胸の下まであった。
    『かえで』さんの後ろに映っている部屋は、シンプルで落ち着いた感じだった。
    緊張は徐々になくなっていき、3時間ぐらいずっと2人で話をした。
    栞の敬語は『かえで』さんがいらないと言ったので、随分前になくなっていた。



    「あ、もう日付変わっちゃったよ」


    『ほんとだー・・・・もう寝る?』


    「うん、そろそろ寝ようかなあ」


    『寝不足は乙女の大敵だもんね♪』


    「じゃあ寝ますかー」


    『おやすみなさーい』


    「おやすみなさい、またメールするね」


    『うん、わかったー』



    通話を切ると、栞はそのまま眠ってしまった。





引用返信/返信 削除キー/
■21749 / ResNo.4)  Re[4]: 赤い糸(4)
□投稿者/ まる 一般♪(1回)-(2013/05/05(Sun) 11:19:33)
    続きが気になります。

    もうずっと更新をされていないようですけど
    ぜひぜひ続きをお願いします。

    たのしみに気長に待っていますね。 ^^
引用返信/返信 削除キー/



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